転移英雄は異世界の中で

あかし

文字の大きさ
上 下
16 / 62
転移英雄は見知らぬ星の中で

路地裏の少女

しおりを挟む
 宴会から数週間、俺達は王国を調査しながらギルドを改造したり、ギルドの依頼をこなした。
 相当数の依頼をこなしたが、まだDランクに上がらない。やっぱりEランクが受けれる依頼は重要性が低いのか……。
 王都の異変についても何ら進展無し。何も変わらない生活を数週間過ごした。1つ、変わった事とすれば、シャカルナ達Sランク冒険者が2回目の宴会後姿を見せなくなった事か。
 まぁ、Sランク冒険者はその強さからか、必要とされる所が多いからそこまで1つの場所に留まれないのだろう。
 またいつか会える事を信じて、俺達は自分のする事をこなして行こう!

 そう、決意したのが昨日の話。今俺らは、ルナと1を抱え、憲兵から逃げ出していた。

 「君ぃ!もっと速く逃げるんだぁ!」

 「気絶しない速度で走るのもキツイんだよ!」

 「コラァ!!待ちなさい!!」

 「ほら!来ちゃうよ!早く!」

 「あぁ!もう!俺にしっかり掴まれ!飛ぶぞ!そこの嬢ちゃんも!」

 「は、はい!」

 「掴まったよ!」

 「そぉら!!」

 2人をしっかり掴み、家を踏み台にジャンプ。その高さは城壁を越え、そのまま国の外に出た。

 「着地するぞ!」

 「OK!」

 「へ?あ、きゃぁぁぁぁ!!」

 もの凄い音を立て着陸する。と、最初の速度を維持したまま人気の無い雑木林に身を隠す。

 「はぁ……!はぁ……!ここなら大丈夫だろ!」

 「お疲れ様、雄一。もう被り物は取っていいと思うよ」

 「そっか、これ暑いんだよなぁ!」

 顔一面を覆う被り物を脱ぐ。憲兵が見えた時、咄嗟に付けたのは正解だったか。
 だけど、自分のやる事をこなして行こうと昨日決意したのに、今やってる事が兵から逃げる事か……。
 と、一緒に抱えて逃げた少女が声を掛けてくる。

 「その、この度はありがとうございました!お陰で逃げれました!」

 「なぁ、頼まれて咄嗟に連れ去ったが、何故君は沢山の憲兵に追われてたんだ?」

 「危うく私達はそのまま犯罪者になる所だった。それに足る理由が欲しいな」

 「え、えっと、そのぉ……」

 「こら、あまり酷い事を言うな」

 「はいはい」

 まぁ、ルナの言ってる事は分かる。被り物をして、服も変えたから憲兵にはこちらの素性は分からない筈。だが、いきなり出会い頭に『私を憲兵から逃して』と言われたら正常な判断はしづらい。その為、それ相応の答えが欲しい。
 と、おどおどしながらその少女は話し始める。

 「わ、私、この国に何か違和感を感じて街に出たの……。で、街の中でふと気になって路地裏に言ったら何か怖い魔法陣が沢山書いてあったんです……!」

 「「何!?」」

 これは知らなかった!この少女、違和感を感じたと言ったが、十中八九この街の異変についてだろう。

 「それで、その事を憲兵さんに言ったらね、『アンタは見てはいけない物を見た』って言って襲ってきたんです!だから私、隙を突いて逃げて、その先に貴方達がいたの……」

  「成る程、そうゆう事だったのか……」

 「その……ごめんなさい!お2人方に迷惑を掛けてしまって!」

 「いや、良いさ。そうゆう事情なら仕方ない。見た感じ怪我は無さそう?」

 「はい、大丈夫です……」

 「そう、なら良かった」

 少女を安心させる。
 と、ルナが喋り出す。

 「雄一、これからどうする?先程の話の限り、兵達も敵側の可能性が高い」

 「そうだな……。さっきの逃走時点ではまだ門の兵達には情報が入ってないと仮定して、今すぐ街に戻ってギルドに匿った方が良さそうか」

 「そうだね。今のこの子の格好も探してる兵達は覚えてると思うから、私の服を貸そう。私はペンダントに戻っておくか」

 ルナはペンダントに戻り、雄一の首に下がる。

 「え?さっきのお姉さんはどこ行ったの??」

 「今は時間がない。さぁ、この服に着替えてギルドに行くぞ!」

 「え、え、分かりましたぁ!」

 急いで着替える少女。ぱっと見、先程の少女には見えまい。
 着替え終えた少女を連れて門を通る。その際少女には一言も喋らず俯いてるよう言ってある。

 「通行証を」

 「ギルドカードで」

 「最近いつも通るアンタか。分かった。で、そちらの嬢ちゃんは大丈夫か?」

 「今日は疲れてるみたいで……。あ、はい通行証」

 「了解。じゃあ取り敢えず本人確認を……」

 と、ルナはペンダント越しに話す。

 「すまない。吐きそうで顔を上げれない。私の声で何とか」

 「だが顔を見ないと……」

 「今顔の近く来たら噴き出ちゃう」

 「わ、分かった!いつも聞く声だ、良いだろう。お大事にな!」

 「感謝する」

 そのまま門を通る。どうやら情報は入っていない様だ。
 はぁ、偽装はやっぱり慣れないな。最近常連になったから覚えてもらえてたから良かったが、咄嗟の偽装は危ない。

 「ルナ、わざとらしかったぞ」

 「良いじゃないか気付かれてないし」

 と、少し歩いた頃、後ろで声が聞こえる。

 「おい、この辺りで少女2人と被り物をした男を見なかったか?」

 「いや、ここを通る奴にそんなのは居なかったぞ」

 「そうか。じゃあその3人組を見つけたら即刻捉えてくれ。俺らはもう一度探してくる」

 「了解した」

 あっぶない!!後少し遅れていたら捕らえられてた!だが今ここも危ない!悟られない速度でギルドに避難だ!
 探す兵達の視線を掻い潜り、進む。
 一見してギルドも危なそうだが、ギルドは国に訪れるで国と関わる事は無い。そんなギルドは格好の逃げ場だ。

 「よし、ギルドも目の前……ってなんだあれは」

 ギルドの周りにいたのは複数人の兵だった。
兵達もギルドの中には入れない。だから外で待ち伏せって魂胆か。

 「あれ、ずるくないかい?」

 「いや合理的だ。あっちもここに来る事は分かってた筈」

 「え、じゃあどうしよう!このまま皆んな捕まっちゃうの?」
 「大丈夫だよ嬢ちゃん。それ対策にちゃんと裏道があるから」

 「そ、そうなの?」

 「あぁ、安心してくれ」

 そう言い、俺達は反対側の通りを進む。と、そこに小さな民家が見えて来た。

 「こ、ここ?」

 「そうだ。この事は他の人には内緒だぞ?」

 「うん!」

 民家に入る。そして、一番端にある棚の上から2段目を触り魔力を込める。すると、魔法陣が展開し、ギルドの2階の一部屋にテレポートした。

 「本当、これ考えた奴は面白い脳してるよね。ねぇ雄一」

 「そいつは天才なんだろ」

 「自分で自分の事そう言うか!」

 「だが実際に助かっただろ?」

 「まぁそうだけど」

 と、ずっとだんまりを決め込んでた少女が興奮気味に喋り出す。

 「お、お兄ちゃん達さっきの凄い!カッコよかった!」

 「お!分かってくれるか!」

 「あーそこのお嬢ちゃんもそっち側だったかぁ」

 「だってこうゆうロマンも必要だろ?」

 一先ず逃走成功を果たして、緊張が解れる。その時、ロイドが部屋に入ってきた。

 「1週間前に作ったばっかりなのに、もう使ったのか裏道を」

 「まぁこっちだって事情があるんだよ」

 「それは、今連れてる嬢ちゃんの事か?」

 「御明察。そこでロイドに折行って話がある」

 「……良いだろう聞こうじゃないか。ここでは何だ、ギルド長室に来い」

 ロイドに言われ部屋を出る。
 外が騒がしい。何か異常が起きる前に事情を聴きたい所だ。
 そう考えながら俺達はギルド長室に向かう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...