7 / 7
番外編
とある剣士の苦悩
しおりを挟む
「お前が良い。気に入った」
そう言って、地面に座り込む俺に手を伸ばして、太陽の陽射しを浴びて笑う男は、正に光に選ばれた存在だった。
◇
勇者が、間もなくこの街に到着する。
強い仲間を求めて、辻斬り、もとい、腕自慢大会を、訪れる街や村で開催していた事は、誰の耳にも入っていた。
「な、仲間になったらさ、モテるのかな!?」
「阿呆か。どう考えても引き立て役だろうが」
酒場で酒臭い息を吐きながら、俺の対面に座る呑み仲間が寝言をほざくから、俺はバッサリと斬り捨ててやった。
くだらない。
くだらなさ過ぎて欠伸が出る。
どいつもこいつも勇者、勇者、勇者だ。
そんなのに騒ぐよりもやる事があるだろうが。
勇者も勇者だ。
強いんだろ?
強いんなら、仲間なんか要らないだろ?
あんたのせいで、街はめちゃくちゃだ。
どいつもこいつも浮かれて、剣なんか手にした事もない奴が、鍬の代わりに剣を振りかざしてる。
どの女も、浮かれて育児や家事を放って、めかしこんでいる。
どうするんだよ、これ?
畑の手入れも忘れて雑草が伸び放題じゃねえかよ。
勇者が食わしてくれるとでも思ってるのか?
そんな訳ないだろうが。
幻想なんかに振り回されてんじゃねえよ。
「ったく」
翌朝、朝露の残る草を俺はひたすら毟っていた。
さっさと勇者の野郎がやって来て、とっとと去ってくれねえかな。
畑に我が物顔でのさばる雑草を、俺はひたすら無心に排除していく。
何で俺が他人の畑の世話をしなくちゃならないんだよ?
誰もやらねえし。作物が採れなくなったら困るのは、勇者じゃなくて、俺達だろ?
本当に、どいつもこいつも浮かれ過ぎだっての!
「…っ…う、う…」
…なんだ?
小さく聞こえて来る泣き声に、草を毟る俺の手が止まった。
腹でも空かせたガキが泣いてるのか?
こんな朝の畑の真ん中で?
いや、作物泥棒?
期待してた作物が無くて、泣いてる?
おいおい、どんな泥棒だよ?
俺はそっと腰を浮かせて辺りを見渡した。
一面、緑の草だらけだ。
立てば、俺の太腿までの高さがあるから、屈んでいれば見つかる事は無いだろう。
「…うぅ…っ…」
…居た。
金色の髪が、朝日に輝いて草の間から見える。
少しばかり距離があるから、その頭がぷるぷる震えているのしか解らない。
…どうしたもんかな…。
幾ら泥棒でも、ガキを虐める趣味は無いし。
腹空かせてんなら、飯を食わせてやっても良い。
何処ぞの家の子が、勇者騒動のせいで親に構って貰えずに泣いている可能性もあるか?
しかし、何て声を掛ける?
うんうん唸っていたら。
「勇者様ー! 何処においでですかー!?」
そんな声が聞こえて来た。
…勇者?
そんなもんここには居ない…。
「…何だ。そちらの準備は整ったのか?」
金色の頭が動いた。
すっと立ち上がった姿には、ぷるぷる震えていた面影なんか微塵も無い。
…は…?
「はい。お待たせして済みません。町長様がお待ちです。ささ、こちらへ」
へこへこと揉み手をする、恐らくは町長からの使いの元に、勇者と呼ばれた金髪の男が歩いて行く。
その背中まである金色の髪は、朝日を浴びて眩く輝き。
少しだけ見えた横顔の瞳は、空の青より青く澄んで見えた。
その腰にあるのは、勇者の証とされる聖剣なのだろう。
鞘に収められているのに、何故か光が漏れている様に見えた。
「…ガキじゃなかったのか…」
勇者は確か、今年19歳になると聞く。
まあ、俺からしたらガキみたいな物だけど。
俺、レンブラント・リッツには前世の記憶がある。
前世の俺は、60歳で死んだ。
今の俺は、25歳。前世と合わせたら85歳だ。
だから、勇者なんてガキどころか孫みたいな物だ。
「…てか…勇者って泣くのか…」
俺の勇者へのイメージが、少しだけ変わった瞬間だった。
その翌日。
俺は参加したくも無い腕自慢大会に参加させられていた。
若者は腕に覚えが無くても参加せよ、との厳命が町長から下ったせいだった。
自分の街から、どうしても英雄を出したいらしい。
おーい。
俺は、鍬しか持った事がないんだけど?
木剣とは云え、剣なんて初めて持つんだけど?
そりゃ、それなりに筋肉はあるし、体力もあるけどな?
俺、唯の農夫だからな?
土大好き人間だからな?
土壌を豊かにしてくれるミミズに感謝する人間だからな?
「手加減は必要無い。本気で掛かって来い。一対一とは言わない。纏めて来い」
青い瞳を細めて、口角を上げて挑発する勇者に、殆どの者が一斉に飛び掛かり、一斉に地面に倒れた。
馬鹿な奴等だな。
そんなあからさまな挑発に、あっさり引っ掛かって頭に血ぃ上らせるなんて。
やる気の無い俺は、何処か冷めた頭でそれを見ていた。
挑発に乗らなかったのは、俺の他に四人。
皆、自警団の奴等だ。
四人はそれぞれ目配せしながら、勇者を囲んで行く。
…へえ。
常日頃から訓練してるからか、見事な物だな。
ただの税金泥棒じゃ無かったんだな。
『行け―!』だの『訓練の成果をー!』だの『腕を見せてやれー!』だの『何やってんだ、レン!!』だのとの言葉が聞こえて来るが。
いや、俺はただの参加枠だから。
勇者の仲間になる気は無いからな。
勇者におべっか使う気もないし。
勇者の引き立て役になる気もないし。
勇者に使い捨てられる気もないし。
魔王だなんて途轍もないモノに、立ち向かう勇気なんてないし。
土と戯れながら、スローライフを満喫して死ぬのが、今の俺の夢なんだ。
ノー社畜。ノーブラック企業だ。
勇者の仲間なんて、どう考えてもブラックだろうが。
ブラック企業で使い潰されて死ぬなんて、真っ平ごめん…。
「…ん…?」
何て考えていたら、俺の喉元に木剣の切っ先があてられていた。
「…あらら…」
目だけで追える範囲を見れば、自警団の四人が倒れていた。
今、この広場に立っているのは、俺と勇者だけだ。
えええええ…。
頑張ってくれよ、自警団さん達…。
何だよ、この荒野のウェスタンな雰囲気は。
今にもコイン投げて、互いに背中向けて歩き出しそうな雰囲気は。
「…良い度胸をしているな。俺の分析は終わったか?」
…いんや?
俺、そんなのしてないから。
「顔色一つ変えずに、堂々としているな?」
…いんや?
単に不愛想ってだけだ。
良く言われる。
表情があまり動かないって。
「無駄の無い筋肉だ」
おや、そう?
それは嬉しいかも?
日々、鍬を手に土と遊んでいるだけだけど?
「ああ、そうだな」
勇者は一人で何やら納得して、目を伏せて頷いた。
何に納得したんだ?
と、思った瞬間、俺の身体が傾いた。
「…へ?」
足を払われたと思った時には、もう遅い。
俺は見事に背中から地面に倒れた。
「…ってえ…」
打ち付けた背中から腰に掛けてを撫でながら、俺は上半身を起こした。
畑作業に支障が出たらどうしてくれるんだ。
「お前が良い。気に入った」
すっと目の前に手が差し出された。
その手には、日々鍬を握る俺の手と同じ様に幾つもの豆を作り、潰して、また豆を作り、潰した…そんな痕があった。
…ああ…。
そっか。
勇者っても、いきなり強くなれる訳が無いのか。
これは、日々努力して来た男の手だ。
俺は素直に、その手を取って促されるままに立ち上がった。
その瞬間、周囲がドッと沸いた。
広場が、俺達の周りが歓声と拍手に包まれる。
「レンが選ばれた!!」
「英雄の誕生だ!!」
「我らが街から英雄が!!」
…は…?
何て?
訳が解らず呆然とする俺の耳に、勇者の言葉が届く。
「これから宜しく頼む。俺はライザーだ。安心しろ。剣の使い方なら俺が教えてやる。今からお前は剣士レンだ」
…えええええ…何だこれ…。
俺、ブラック企業に就職決定か?
だが。
街の皆が、涙を流して狂喜乱舞してる中、断る勇気なんて元日本人の俺に出来る訳も無く。
気が付けば、翌日には住み慣れた街を出ていた。
畑は任せろと云う、呑み仲間のイマイチ頼りない言葉を胸に。
それから、度々隠れて泣くライザーを見て。
まあ、良いかと。
仕方が無い。
孫の為に、じいちゃん頑張るか。
…何て、思ってたんだけどなあ…。
まさか、魔王に気付かされるなんてな…。
…いや、聖女は前々から気付いていた様だったけど。
…女の勘って、すげえよな。
取り敢えず、早く動ける様にならないかな…。
下着がぐちょぐちょで気持ち悪い…。
そう言って、地面に座り込む俺に手を伸ばして、太陽の陽射しを浴びて笑う男は、正に光に選ばれた存在だった。
◇
勇者が、間もなくこの街に到着する。
強い仲間を求めて、辻斬り、もとい、腕自慢大会を、訪れる街や村で開催していた事は、誰の耳にも入っていた。
「な、仲間になったらさ、モテるのかな!?」
「阿呆か。どう考えても引き立て役だろうが」
酒場で酒臭い息を吐きながら、俺の対面に座る呑み仲間が寝言をほざくから、俺はバッサリと斬り捨ててやった。
くだらない。
くだらなさ過ぎて欠伸が出る。
どいつもこいつも勇者、勇者、勇者だ。
そんなのに騒ぐよりもやる事があるだろうが。
勇者も勇者だ。
強いんだろ?
強いんなら、仲間なんか要らないだろ?
あんたのせいで、街はめちゃくちゃだ。
どいつもこいつも浮かれて、剣なんか手にした事もない奴が、鍬の代わりに剣を振りかざしてる。
どの女も、浮かれて育児や家事を放って、めかしこんでいる。
どうするんだよ、これ?
畑の手入れも忘れて雑草が伸び放題じゃねえかよ。
勇者が食わしてくれるとでも思ってるのか?
そんな訳ないだろうが。
幻想なんかに振り回されてんじゃねえよ。
「ったく」
翌朝、朝露の残る草を俺はひたすら毟っていた。
さっさと勇者の野郎がやって来て、とっとと去ってくれねえかな。
畑に我が物顔でのさばる雑草を、俺はひたすら無心に排除していく。
何で俺が他人の畑の世話をしなくちゃならないんだよ?
誰もやらねえし。作物が採れなくなったら困るのは、勇者じゃなくて、俺達だろ?
本当に、どいつもこいつも浮かれ過ぎだっての!
「…っ…う、う…」
…なんだ?
小さく聞こえて来る泣き声に、草を毟る俺の手が止まった。
腹でも空かせたガキが泣いてるのか?
こんな朝の畑の真ん中で?
いや、作物泥棒?
期待してた作物が無くて、泣いてる?
おいおい、どんな泥棒だよ?
俺はそっと腰を浮かせて辺りを見渡した。
一面、緑の草だらけだ。
立てば、俺の太腿までの高さがあるから、屈んでいれば見つかる事は無いだろう。
「…うぅ…っ…」
…居た。
金色の髪が、朝日に輝いて草の間から見える。
少しばかり距離があるから、その頭がぷるぷる震えているのしか解らない。
…どうしたもんかな…。
幾ら泥棒でも、ガキを虐める趣味は無いし。
腹空かせてんなら、飯を食わせてやっても良い。
何処ぞの家の子が、勇者騒動のせいで親に構って貰えずに泣いている可能性もあるか?
しかし、何て声を掛ける?
うんうん唸っていたら。
「勇者様ー! 何処においでですかー!?」
そんな声が聞こえて来た。
…勇者?
そんなもんここには居ない…。
「…何だ。そちらの準備は整ったのか?」
金色の頭が動いた。
すっと立ち上がった姿には、ぷるぷる震えていた面影なんか微塵も無い。
…は…?
「はい。お待たせして済みません。町長様がお待ちです。ささ、こちらへ」
へこへこと揉み手をする、恐らくは町長からの使いの元に、勇者と呼ばれた金髪の男が歩いて行く。
その背中まである金色の髪は、朝日を浴びて眩く輝き。
少しだけ見えた横顔の瞳は、空の青より青く澄んで見えた。
その腰にあるのは、勇者の証とされる聖剣なのだろう。
鞘に収められているのに、何故か光が漏れている様に見えた。
「…ガキじゃなかったのか…」
勇者は確か、今年19歳になると聞く。
まあ、俺からしたらガキみたいな物だけど。
俺、レンブラント・リッツには前世の記憶がある。
前世の俺は、60歳で死んだ。
今の俺は、25歳。前世と合わせたら85歳だ。
だから、勇者なんてガキどころか孫みたいな物だ。
「…てか…勇者って泣くのか…」
俺の勇者へのイメージが、少しだけ変わった瞬間だった。
その翌日。
俺は参加したくも無い腕自慢大会に参加させられていた。
若者は腕に覚えが無くても参加せよ、との厳命が町長から下ったせいだった。
自分の街から、どうしても英雄を出したいらしい。
おーい。
俺は、鍬しか持った事がないんだけど?
木剣とは云え、剣なんて初めて持つんだけど?
そりゃ、それなりに筋肉はあるし、体力もあるけどな?
俺、唯の農夫だからな?
土大好き人間だからな?
土壌を豊かにしてくれるミミズに感謝する人間だからな?
「手加減は必要無い。本気で掛かって来い。一対一とは言わない。纏めて来い」
青い瞳を細めて、口角を上げて挑発する勇者に、殆どの者が一斉に飛び掛かり、一斉に地面に倒れた。
馬鹿な奴等だな。
そんなあからさまな挑発に、あっさり引っ掛かって頭に血ぃ上らせるなんて。
やる気の無い俺は、何処か冷めた頭でそれを見ていた。
挑発に乗らなかったのは、俺の他に四人。
皆、自警団の奴等だ。
四人はそれぞれ目配せしながら、勇者を囲んで行く。
…へえ。
常日頃から訓練してるからか、見事な物だな。
ただの税金泥棒じゃ無かったんだな。
『行け―!』だの『訓練の成果をー!』だの『腕を見せてやれー!』だの『何やってんだ、レン!!』だのとの言葉が聞こえて来るが。
いや、俺はただの参加枠だから。
勇者の仲間になる気は無いからな。
勇者におべっか使う気もないし。
勇者の引き立て役になる気もないし。
勇者に使い捨てられる気もないし。
魔王だなんて途轍もないモノに、立ち向かう勇気なんてないし。
土と戯れながら、スローライフを満喫して死ぬのが、今の俺の夢なんだ。
ノー社畜。ノーブラック企業だ。
勇者の仲間なんて、どう考えてもブラックだろうが。
ブラック企業で使い潰されて死ぬなんて、真っ平ごめん…。
「…ん…?」
何て考えていたら、俺の喉元に木剣の切っ先があてられていた。
「…あらら…」
目だけで追える範囲を見れば、自警団の四人が倒れていた。
今、この広場に立っているのは、俺と勇者だけだ。
えええええ…。
頑張ってくれよ、自警団さん達…。
何だよ、この荒野のウェスタンな雰囲気は。
今にもコイン投げて、互いに背中向けて歩き出しそうな雰囲気は。
「…良い度胸をしているな。俺の分析は終わったか?」
…いんや?
俺、そんなのしてないから。
「顔色一つ変えずに、堂々としているな?」
…いんや?
単に不愛想ってだけだ。
良く言われる。
表情があまり動かないって。
「無駄の無い筋肉だ」
おや、そう?
それは嬉しいかも?
日々、鍬を手に土と遊んでいるだけだけど?
「ああ、そうだな」
勇者は一人で何やら納得して、目を伏せて頷いた。
何に納得したんだ?
と、思った瞬間、俺の身体が傾いた。
「…へ?」
足を払われたと思った時には、もう遅い。
俺は見事に背中から地面に倒れた。
「…ってえ…」
打ち付けた背中から腰に掛けてを撫でながら、俺は上半身を起こした。
畑作業に支障が出たらどうしてくれるんだ。
「お前が良い。気に入った」
すっと目の前に手が差し出された。
その手には、日々鍬を握る俺の手と同じ様に幾つもの豆を作り、潰して、また豆を作り、潰した…そんな痕があった。
…ああ…。
そっか。
勇者っても、いきなり強くなれる訳が無いのか。
これは、日々努力して来た男の手だ。
俺は素直に、その手を取って促されるままに立ち上がった。
その瞬間、周囲がドッと沸いた。
広場が、俺達の周りが歓声と拍手に包まれる。
「レンが選ばれた!!」
「英雄の誕生だ!!」
「我らが街から英雄が!!」
…は…?
何て?
訳が解らず呆然とする俺の耳に、勇者の言葉が届く。
「これから宜しく頼む。俺はライザーだ。安心しろ。剣の使い方なら俺が教えてやる。今からお前は剣士レンだ」
…えええええ…何だこれ…。
俺、ブラック企業に就職決定か?
だが。
街の皆が、涙を流して狂喜乱舞してる中、断る勇気なんて元日本人の俺に出来る訳も無く。
気が付けば、翌日には住み慣れた街を出ていた。
畑は任せろと云う、呑み仲間のイマイチ頼りない言葉を胸に。
それから、度々隠れて泣くライザーを見て。
まあ、良いかと。
仕方が無い。
孫の為に、じいちゃん頑張るか。
…何て、思ってたんだけどなあ…。
まさか、魔王に気付かされるなんてな…。
…いや、聖女は前々から気付いていた様だったけど。
…女の勘って、すげえよな。
取り敢えず、早く動ける様にならないかな…。
下着がぐちょぐちょで気持ち悪い…。
0
お気に入りに追加
55
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる