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僕から君へ
贈り物【完】
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「な、んで…?」
涙を滲ませた赤い目で、瑞樹は優士を見上げる。
あと少し、あと少しで絶頂を迎えられたのに、と、優士を睨む。
そんな瑞樹に優士は目を細め、口の端だけで笑いながら、布団の上に倒した瑞樹の腰を跨ぐ。膝立ちになり、自分の腰に手を回し帯を解いて行く。
「…え…?」
帯が解かれ、ハラリと開けさせられ、見せられたそれに瑞樹が目を見開いて、思わず呟く。
「…デカい…」
瑞樹の視線を釘付けにしている物は。
胸から腹にある傷痕では無く。
引き締まった腹筋でも無く。
限りなく天を仰いでいる、優士の男根だった。
「…って、いや、何で何も!?」
そこから目を離せないまま、瑞樹は叫ぶ。
(デカい、間違い無く、俺のよりデカい! てか、何で褌締めてないんだよっ!?)
「…どうせ外す事になるのだから、無意味だろう?」
確かにそうだけど、違うだろっ!
情緒って物があるだろっ!!
何!?
って事は、それをブラブラさせたまま、自分の部屋から歩いて来たのか!?
誰かに見られたら…っ…!!
と、瑞樹は頭の中で叫ぶが、実際に口から出たのは。
「ほあっ!?」
と、云う引っくり返った声だった。
「…少し、萎えたか?」
「わ!?」
優士の手が再び、瑞樹の男根へと伸びる。
そっと撫でられ、裏筋を撫で上げられれば、それは再び雫を浮かべて首を擡げた。
「ま、ま、ま、ゆ、待って! そっちより…ケ、ケツ…!!」
瑞樹は両腕を顔の前で交差させて叫ぶ。
肝心の尻穴はまだ指一本さえ挿れていないのだ。
それなのに、そんなご立派な物が挿入る訳がない。
暖簾に腕押しじゃないが、弾かれるに決まっている。
「安心しろ。僕の準備は整っている」
(そんなのは見れば解るし! 全然安心出来ないっ!!)
獲物を前にとろとろとした涎を垂らすそれは、正に肉食獣その物だ。
「そんなので食い付かれたら死ぬっ!!」
「そんな簡単に千切れたりはしない。…また硬度が…」
(千切れてもぶち込むのか!?)
目を白黒させて自分の尻の心配をする瑞樹に構わずに、優士は僅かに身を引き身体を倒し、瑞樹の両膝を立たせた間へと顔を寄せて、力を失くしつつある茎をそっと掌で包み、先端を口に含んだ。
「ひょあっ!?」
これまでに感じた事の無い、突然の刺激に瑞樹の身体が跳ねた。
柔らかく温かい物に包まれて、瑞樹はもう混乱の境地も良い処だ。
(口がっ! 優士の口が!! 俺のちんこが優士の口の中にいぃっ!!!?????)
優士の唾液を絡ませた舌が瑞樹の亀頭を舐め上げて行く。
「や、あ、駄目、だ…っ…! ち、んこじゃなくて…っ…尻…っ…!!」
(ちんこ刺激されても、デカくなるのはちんこだけで尻穴は大きくならない…っ…!! 先っぽじゅぼじゅぼするなっ!! 吸うなっ!!)
「…せっかちだな。急いては事を仕損じる」
「ほあああああぁぁああぁぁぁぁあぁあ!?」
(どの口がそれを言うんだ!?)
そこから口を離し、ぺろりと唇を舐めて真面目な顔で言う優士に、瑞樹は叫ぶ事しか出来ない。
有り得ない位置に優士の顔があって、それを見る自分に頭がクラクラする。
身体を起こそうにも、何かの弾みで優士の顔を蹴ってしまったらと思うと、それも出来ない。
それに、先程から与えられている刺激で身体に力が入らない。
優士から齎される快感は、決定的な物を避けている様で、早く何とかして欲しいとも思う。
今だって、優士の舌は丁寧にもどかしい程に瑞樹の竿を舐めている。
「…も、やだ…早く……引導を渡して、くれ…」
(もう、尻が裂けてもいい…っ…!!)
両腕で顔を隠して、再び涙を流して瑞樹は懇願する。
しかし、優士の頭部を、顔を見ていた瑞樹は知らない。
瑞樹の男根を掴まない方の、優士の右手がどの様な動きをしていたかなんて。
「…そうだな……」
何時もの塩な優士の声だが、顔を隠している瑞樹は知らない。
その時の優士がどんな顔をしていたか、なんて。
身体を起こして、優士が再び瑞樹の腰を跨いで、その鍛えられた腹筋に右手を置く。
討伐隊を離れてからも、瑞樹は鍛錬を続けていた。
何時か戻りたいと言っていた、その言葉に偽りは無く。
己の目指す処へと、しっかりと進んでいる。
立ち止まる事はあっても、戻りはしない、先へ進もうと足掻いている。
それの何処が強くないと云うんだ?
「…お前は…十分に強いさ…」
「…え…?」
静かだけれど、何処か甘さが滲む優士の声に、瑞樹は顔の上に乗せていた腕を退かす。
豆電球の明かりと、窓から差し込む月の光の白が照らし出す優士の姿が、とても優しく、また儚げに見えて瑞樹は目を細めて見惚れてしまう。
(…綺麗だな…)
と瑞樹は思った。
全然余裕そうに思っていたが、優士の目元は熱に浮かされた様に赤くなっていて、よくよく目を凝らせば、頬も赤く染まっている。
こんな優士に強いと言われて、また、こんなに赤くなりながら、自分の物に触れたり口に含んでくれたりしていたのかと思えば、自然と流していた涙も引いて行って、頬が緩むのを止められなくて。
「…ありがとな…我慢しないで…もう来いよ…」
優士を迎え入れる様に両手を伸ばして、瑞樹ははたと気付く。
(…あれ…? 尻、このままじゃ無理だよな? 最初は後ろからの方が良いかもって、みくさん言ってたし…)
「ゆ、ちょ、たんま。今、体勢を…」
片肘を付いて瑞樹は身体を起こそうとしたが、腹に置かれた優士の手がそれを許さない。
「問題無い」
「いや! あるよな!?」
「問題無いと言った。…この二年の間、弄って来た…風呂で解して来たし、先程までも解していた」
優士はそう言って口の端だけで笑ってから、左手ですっかりと芯を持ち立ち上がった瑞樹の男根を持ち、瑞樹の腹に置いた右手に力を籠めた。
「は? え?」
そして、静かに降りて来る優士の腰が目指す物は。
「ちょ、待っ…!」
瑞樹の男根の先に熱い何かが触れる。
それが何かなんて考えるよりも先に、瑞樹の腹に置く優士の手の数が増え。
「…僕からの贈り物だ、受け取れ瑞樹」
額に汗を滲ませて目を細めて笑う優士が、更に腰を落とす方が早かった。
「おあああああああぁあああああああ――――――――っ!?」
◇
チチチ…と雀の鳴き声が聞こえる朝、顔を赤くした瑞樹が布団の傍に両膝を付いて、そこで横になる優士に声を掛ける。
「…じゃ…俺、行って来るから…その、布団と敷布と浴衣と…その…頼むな…」
「ああ、任せろ」
今日が休暇の優士は瑞樹からの頼みに、身体を起こして浴衣の襟を正しながら快く頷いた。
優士は今日明日と休みだ。
だから、あの様に思い切った行動に出たのだろう。
「…その襟巻きも…」
(…俺の涙と涎でぐちゃぐちゃだし…)
「…いや、これはこれで良い」
俯いて優士の首にある襟巻きを上目がちに見れば、優士はそれを口元に引き寄せて、そっと唇を押し当てて目を伏せて笑った。
ぼんっと、瑞樹が顔から火を噴く。
「じゃ、じゃあ、頼んだからなっ!!」
バタバタと部屋を出て行く瑞樹の後頭部にある、ピョンと跳ねた寝癖を見送って、優士は寝乱れた髪を手櫛で梳きながら、軽く息を吐く様に笑う。
「…まあ…らしいと言えば、僕達らしいのか…?」
その呟きが何を意味するのかは、優士の休みが明けてから判明する。
とにかく今は、布団を干し、敷布やら浴衣やらの洗濯をするのが先だ。
「後は…風呂掃除か」
もう一度、軽く目を閉じて笑ってから優士は立ち上がり、秋の陽が入り込む窓を開けに向かった。
先は未だ不透明だけれど、真っ暗な訳では無い。
理想とする二人には到底追い付けないが、理想はあくまでも理想だ。
無理をする必要は無い。
自分達は自分達らしく在れば良い。
あの二人の様に、自然体で居れば良いのだ。
そうすれば、きっと何時かは。
◇
優士の休み明けの朝。
高梨は隊長室で頭を抱えていた。
「………すまんがもう一度…あ、いや、やっぱり良」
優士の発言に、一瞬意識を飛ばし内容も飛ばしてしまい、高梨は改めて内容を確認しようとして、いや、この流れは拙いと思い直し、その必要は無いと言おうとしたが、机を挟んで高梨の前に立つ優士は律義に真面目な顔をしたまま、首にある襟巻きを弄りながら、再びそれを塩の声で口にする。
「はい。瑞樹の早漏をどうにかしたいのですが、どうすれば良いですか? 俺の中に挿入した途端に果ててしまいましたので。まあ、その後兜合わ…」
「帰」
頬を引き攣らせ、目元も痙攣させながら高梨が口を開こうとした時、扉が勢い良く開いた。
そこに飛び込んで来た星は、腹を押さえながら叫んだ。
「ゆかりんたいちょ! つきとにちんちん挿れらるたんびに腹がゴロゴロすんだけど、おいらどうしたら良いんだっ!?」
「二人共帰れ――――――――――――――――――――――――っ!!」
そして、今日も朝から元気な高梨の声が第十一番隊の部屋を過ぎ、廊下にまで響くのだった。
☆★☆★☆★おまけ☆★☆★☆★
雪緒「はあ…襟巻きを弄る瑞樹様、可愛らしかったですね。きっとあれは優士様から贈られた物なのでしょうね」
高梨「…(橘が贈った物だがな。…匂い付けか何か、か? …俺が纏った物を雪緒が身に着ける…?)…雪緒…その、襟巻き…」
雪緒「紫様も襟巻きが欲しいのですか? そうですよね、風が冷たいですものね。機織りの経験は有りませんが、頑張って織りますね」
高梨「………雪緒ェ………」
――――――――旦那様は今日も不憫・完――――――――
涙を滲ませた赤い目で、瑞樹は優士を見上げる。
あと少し、あと少しで絶頂を迎えられたのに、と、優士を睨む。
そんな瑞樹に優士は目を細め、口の端だけで笑いながら、布団の上に倒した瑞樹の腰を跨ぐ。膝立ちになり、自分の腰に手を回し帯を解いて行く。
「…え…?」
帯が解かれ、ハラリと開けさせられ、見せられたそれに瑞樹が目を見開いて、思わず呟く。
「…デカい…」
瑞樹の視線を釘付けにしている物は。
胸から腹にある傷痕では無く。
引き締まった腹筋でも無く。
限りなく天を仰いでいる、優士の男根だった。
「…って、いや、何で何も!?」
そこから目を離せないまま、瑞樹は叫ぶ。
(デカい、間違い無く、俺のよりデカい! てか、何で褌締めてないんだよっ!?)
「…どうせ外す事になるのだから、無意味だろう?」
確かにそうだけど、違うだろっ!
情緒って物があるだろっ!!
何!?
って事は、それをブラブラさせたまま、自分の部屋から歩いて来たのか!?
誰かに見られたら…っ…!!
と、瑞樹は頭の中で叫ぶが、実際に口から出たのは。
「ほあっ!?」
と、云う引っくり返った声だった。
「…少し、萎えたか?」
「わ!?」
優士の手が再び、瑞樹の男根へと伸びる。
そっと撫でられ、裏筋を撫で上げられれば、それは再び雫を浮かべて首を擡げた。
「ま、ま、ま、ゆ、待って! そっちより…ケ、ケツ…!!」
瑞樹は両腕を顔の前で交差させて叫ぶ。
肝心の尻穴はまだ指一本さえ挿れていないのだ。
それなのに、そんなご立派な物が挿入る訳がない。
暖簾に腕押しじゃないが、弾かれるに決まっている。
「安心しろ。僕の準備は整っている」
(そんなのは見れば解るし! 全然安心出来ないっ!!)
獲物を前にとろとろとした涎を垂らすそれは、正に肉食獣その物だ。
「そんなので食い付かれたら死ぬっ!!」
「そんな簡単に千切れたりはしない。…また硬度が…」
(千切れてもぶち込むのか!?)
目を白黒させて自分の尻の心配をする瑞樹に構わずに、優士は僅かに身を引き身体を倒し、瑞樹の両膝を立たせた間へと顔を寄せて、力を失くしつつある茎をそっと掌で包み、先端を口に含んだ。
「ひょあっ!?」
これまでに感じた事の無い、突然の刺激に瑞樹の身体が跳ねた。
柔らかく温かい物に包まれて、瑞樹はもう混乱の境地も良い処だ。
(口がっ! 優士の口が!! 俺のちんこが優士の口の中にいぃっ!!!?????)
優士の唾液を絡ませた舌が瑞樹の亀頭を舐め上げて行く。
「や、あ、駄目、だ…っ…! ち、んこじゃなくて…っ…尻…っ…!!」
(ちんこ刺激されても、デカくなるのはちんこだけで尻穴は大きくならない…っ…!! 先っぽじゅぼじゅぼするなっ!! 吸うなっ!!)
「…せっかちだな。急いては事を仕損じる」
「ほあああああぁぁああぁぁぁぁあぁあ!?」
(どの口がそれを言うんだ!?)
そこから口を離し、ぺろりと唇を舐めて真面目な顔で言う優士に、瑞樹は叫ぶ事しか出来ない。
有り得ない位置に優士の顔があって、それを見る自分に頭がクラクラする。
身体を起こそうにも、何かの弾みで優士の顔を蹴ってしまったらと思うと、それも出来ない。
それに、先程から与えられている刺激で身体に力が入らない。
優士から齎される快感は、決定的な物を避けている様で、早く何とかして欲しいとも思う。
今だって、優士の舌は丁寧にもどかしい程に瑞樹の竿を舐めている。
「…も、やだ…早く……引導を渡して、くれ…」
(もう、尻が裂けてもいい…っ…!!)
両腕で顔を隠して、再び涙を流して瑞樹は懇願する。
しかし、優士の頭部を、顔を見ていた瑞樹は知らない。
瑞樹の男根を掴まない方の、優士の右手がどの様な動きをしていたかなんて。
「…そうだな……」
何時もの塩な優士の声だが、顔を隠している瑞樹は知らない。
その時の優士がどんな顔をしていたか、なんて。
身体を起こして、優士が再び瑞樹の腰を跨いで、その鍛えられた腹筋に右手を置く。
討伐隊を離れてからも、瑞樹は鍛錬を続けていた。
何時か戻りたいと言っていた、その言葉に偽りは無く。
己の目指す処へと、しっかりと進んでいる。
立ち止まる事はあっても、戻りはしない、先へ進もうと足掻いている。
それの何処が強くないと云うんだ?
「…お前は…十分に強いさ…」
「…え…?」
静かだけれど、何処か甘さが滲む優士の声に、瑞樹は顔の上に乗せていた腕を退かす。
豆電球の明かりと、窓から差し込む月の光の白が照らし出す優士の姿が、とても優しく、また儚げに見えて瑞樹は目を細めて見惚れてしまう。
(…綺麗だな…)
と瑞樹は思った。
全然余裕そうに思っていたが、優士の目元は熱に浮かされた様に赤くなっていて、よくよく目を凝らせば、頬も赤く染まっている。
こんな優士に強いと言われて、また、こんなに赤くなりながら、自分の物に触れたり口に含んでくれたりしていたのかと思えば、自然と流していた涙も引いて行って、頬が緩むのを止められなくて。
「…ありがとな…我慢しないで…もう来いよ…」
優士を迎え入れる様に両手を伸ばして、瑞樹ははたと気付く。
(…あれ…? 尻、このままじゃ無理だよな? 最初は後ろからの方が良いかもって、みくさん言ってたし…)
「ゆ、ちょ、たんま。今、体勢を…」
片肘を付いて瑞樹は身体を起こそうとしたが、腹に置かれた優士の手がそれを許さない。
「問題無い」
「いや! あるよな!?」
「問題無いと言った。…この二年の間、弄って来た…風呂で解して来たし、先程までも解していた」
優士はそう言って口の端だけで笑ってから、左手ですっかりと芯を持ち立ち上がった瑞樹の男根を持ち、瑞樹の腹に置いた右手に力を籠めた。
「は? え?」
そして、静かに降りて来る優士の腰が目指す物は。
「ちょ、待っ…!」
瑞樹の男根の先に熱い何かが触れる。
それが何かなんて考えるよりも先に、瑞樹の腹に置く優士の手の数が増え。
「…僕からの贈り物だ、受け取れ瑞樹」
額に汗を滲ませて目を細めて笑う優士が、更に腰を落とす方が早かった。
「おあああああああぁあああああああ――――――――っ!?」
◇
チチチ…と雀の鳴き声が聞こえる朝、顔を赤くした瑞樹が布団の傍に両膝を付いて、そこで横になる優士に声を掛ける。
「…じゃ…俺、行って来るから…その、布団と敷布と浴衣と…その…頼むな…」
「ああ、任せろ」
今日が休暇の優士は瑞樹からの頼みに、身体を起こして浴衣の襟を正しながら快く頷いた。
優士は今日明日と休みだ。
だから、あの様に思い切った行動に出たのだろう。
「…その襟巻きも…」
(…俺の涙と涎でぐちゃぐちゃだし…)
「…いや、これはこれで良い」
俯いて優士の首にある襟巻きを上目がちに見れば、優士はそれを口元に引き寄せて、そっと唇を押し当てて目を伏せて笑った。
ぼんっと、瑞樹が顔から火を噴く。
「じゃ、じゃあ、頼んだからなっ!!」
バタバタと部屋を出て行く瑞樹の後頭部にある、ピョンと跳ねた寝癖を見送って、優士は寝乱れた髪を手櫛で梳きながら、軽く息を吐く様に笑う。
「…まあ…らしいと言えば、僕達らしいのか…?」
その呟きが何を意味するのかは、優士の休みが明けてから判明する。
とにかく今は、布団を干し、敷布やら浴衣やらの洗濯をするのが先だ。
「後は…風呂掃除か」
もう一度、軽く目を閉じて笑ってから優士は立ち上がり、秋の陽が入り込む窓を開けに向かった。
先は未だ不透明だけれど、真っ暗な訳では無い。
理想とする二人には到底追い付けないが、理想はあくまでも理想だ。
無理をする必要は無い。
自分達は自分達らしく在れば良い。
あの二人の様に、自然体で居れば良いのだ。
そうすれば、きっと何時かは。
◇
優士の休み明けの朝。
高梨は隊長室で頭を抱えていた。
「………すまんがもう一度…あ、いや、やっぱり良」
優士の発言に、一瞬意識を飛ばし内容も飛ばしてしまい、高梨は改めて内容を確認しようとして、いや、この流れは拙いと思い直し、その必要は無いと言おうとしたが、机を挟んで高梨の前に立つ優士は律義に真面目な顔をしたまま、首にある襟巻きを弄りながら、再びそれを塩の声で口にする。
「はい。瑞樹の早漏をどうにかしたいのですが、どうすれば良いですか? 俺の中に挿入した途端に果ててしまいましたので。まあ、その後兜合わ…」
「帰」
頬を引き攣らせ、目元も痙攣させながら高梨が口を開こうとした時、扉が勢い良く開いた。
そこに飛び込んで来た星は、腹を押さえながら叫んだ。
「ゆかりんたいちょ! つきとにちんちん挿れらるたんびに腹がゴロゴロすんだけど、おいらどうしたら良いんだっ!?」
「二人共帰れ――――――――――――――――――――――――っ!!」
そして、今日も朝から元気な高梨の声が第十一番隊の部屋を過ぎ、廊下にまで響くのだった。
☆★☆★☆★おまけ☆★☆★☆★
雪緒「はあ…襟巻きを弄る瑞樹様、可愛らしかったですね。きっとあれは優士様から贈られた物なのでしょうね」
高梨「…(橘が贈った物だがな。…匂い付けか何か、か? …俺が纏った物を雪緒が身に着ける…?)…雪緒…その、襟巻き…」
雪緒「紫様も襟巻きが欲しいのですか? そうですよね、風が冷たいですものね。機織りの経験は有りませんが、頑張って織りますね」
高梨「………雪緒ェ………」
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