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番外編
告白【1】
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カサカサと音を立てて地面に落ちた葉が、風に攫われて行く。
そこがあなたの好きな…と、歌いたくなる季節だ。ん? 古い? 俺の青春ナンバーなんだよ、ほっとけ。ユルカとかオビコースに亜崎は俺の青春の代名詞だ。まあ、親父や母さん…あ、前世のな。が、カラオケで歌ってたから、自然と覚えたんだけどな。お蔭でそらで歌える。
って、何でそんな事を言っているのかって? いや、ちょっと遠い日を懐かしんでも良いだろう?
『君に恋心を持っている』
なんて、真面目な顔で生徒…元生徒会長のトイセ先輩に言われたら、ケツ捲くって逃げたくなるだろう? そうしない為に、俺は今、猛烈に頭の中で亜崎の十七の夜を歌っていた。
◇
ことの発端は三日前だ。
サークル活動で落ち葉掃除をして、集めたそれを畑で燃やし、ついでにサツマイモやじゃがいもを投入していた時。
「はい? 私と話、ですか?」
「ああ、二人きりで話したい事がある。君の時間を俺にくれないか」
くるりくるりとサツマイモをアルミで包みながら、トイセ先輩が真面目な顔でそう言って来た。
俺も新たなサツマイモを手に、アルミを巻いて行く。
そんな俺の隣では、メゴロウが熱々の焼き芋を手に、無言で俺を見て来ていた。
「まあ、構いませんが…温室に入りますか?」
早くに話が終わると良いな。メゴロウが俺に焼き芋を食べさせてくれるのを待っているから。
「いや。外で話がしたい。邪魔が入らない処で。二人で」
んん?
「今度の土曜日。テ・リヤアに午後二時でどうだ?」
んんん? 外って、そう云う事?
何でまた?
邪魔って…メゴロウが居たら話せないって事か?
いや、本当に何で?
俺は別に構わないんだが…と、ちらりと隣に居るメゴロウを見れば、見事に目からハイライトが消えていた。
うん、無理だな。
頭の中で秒で俺は頷いた。
先輩と二人で会ったら、俺、またゾンビになりそう。
それは勘弁して欲しい。
人間に戻った…てか、俺がゾンビになる前に時間を戻したメゴロウは、滅茶苦茶落ち込んで泣きながら俺に謝って来たからな。また、あんなメゴロウを見たくないし、で、またメゴロウにそんな想いはさせたくない。
何でか知らないけど、メゴロウは先輩が俺の事を好きだと思っているから、そんな相手と二人きりなんて駄目だろう。
先輩にはお世話になったから、その希望は叶えてやりたいと思うけど…メゴロウの視線がグサグサと痛い。俺、今夜眠れるのかな?
「バターとチーズ貰って来たよ! …って、何か空気が重いね? どうしたの?」
何て思っていたら、やたらと明るい声がした。
後ろを振り返ればゴンべ王子が、右手には業務用のアルミ缶だかスチール缶だか知らないが、四角い銀色の容器を、左手には"大容量! 二キロ。シュレッドチーズ!"って書かれた袋に入ったチーズを持って立っていた。
そう言えば、カフェに物々交換に行ったんだった。
てか、王子がパシリとか良いのか? いや、良いんだな。いい加減慣れろ、俺。
「まあ、いっか。じゃがいもは焼いてくれてる? バター乗せて食べるんだあ。塩辛だとアルコールが欲しくなるから、それは後でやる。焼き芋にチーズ乗せて食べたら甘じょっぱくなって美味しいと思うんだよね。メゴロウ君、食べてみて~」
うん。
マイペースで羨ましいな!
ニコニコと笑いながら、戦利品を地面に置いてゴンべ王子は近くに置いていた火かき棒を手に取って、ぷすぷすといぶいぶしてる落ち葉を掻き分けて行く。
「まあ、返事は前日まで待つ」
そんなゴンべ王子を見て居たら、先輩が静かな声で言って来た。
待つんか!
今、ここでって譲歩はないのか!!
そんなに二人で話したいのか!!
どうやってメゴロウを説得しろって言うんだよ!?
「ん? ん~? そっか、やっとか!」
その先輩の言葉に、ゴンべ王子がパンと柏手を打った。
んん?
「メゴロウ君、ちょっと」
俺が首を傾げたら、ゴンべ王子がメゴロウを手招きしながら俺達から距離を取って行く。
んんん?
「…何ですか?」
俺と同じくそれを不審に思うメゴロウの声。
しかし、そう思いながらも、メゴロウは腰を浮かせてゴンべ王子の方へと歩いて行く。
ひゅる~って、メゴロウが消えた隣から、冷たい風が吹き込んで来た来た気がした。
いや、風は先刻から吹いていたけどな?
けど、何か、より冷たくなった気がした。
秋の空は高くて、何だかその分も風が吹く範囲が広がっている気がする。
そこがあなたの好きな…と、歌いたくなる季節だ。ん? 古い? 俺の青春ナンバーなんだよ、ほっとけ。ユルカとかオビコースに亜崎は俺の青春の代名詞だ。まあ、親父や母さん…あ、前世のな。が、カラオケで歌ってたから、自然と覚えたんだけどな。お蔭でそらで歌える。
って、何でそんな事を言っているのかって? いや、ちょっと遠い日を懐かしんでも良いだろう?
『君に恋心を持っている』
なんて、真面目な顔で生徒…元生徒会長のトイセ先輩に言われたら、ケツ捲くって逃げたくなるだろう? そうしない為に、俺は今、猛烈に頭の中で亜崎の十七の夜を歌っていた。
◇
ことの発端は三日前だ。
サークル活動で落ち葉掃除をして、集めたそれを畑で燃やし、ついでにサツマイモやじゃがいもを投入していた時。
「はい? 私と話、ですか?」
「ああ、二人きりで話したい事がある。君の時間を俺にくれないか」
くるりくるりとサツマイモをアルミで包みながら、トイセ先輩が真面目な顔でそう言って来た。
俺も新たなサツマイモを手に、アルミを巻いて行く。
そんな俺の隣では、メゴロウが熱々の焼き芋を手に、無言で俺を見て来ていた。
「まあ、構いませんが…温室に入りますか?」
早くに話が終わると良いな。メゴロウが俺に焼き芋を食べさせてくれるのを待っているから。
「いや。外で話がしたい。邪魔が入らない処で。二人で」
んん?
「今度の土曜日。テ・リヤアに午後二時でどうだ?」
んんん? 外って、そう云う事?
何でまた?
邪魔って…メゴロウが居たら話せないって事か?
いや、本当に何で?
俺は別に構わないんだが…と、ちらりと隣に居るメゴロウを見れば、見事に目からハイライトが消えていた。
うん、無理だな。
頭の中で秒で俺は頷いた。
先輩と二人で会ったら、俺、またゾンビになりそう。
それは勘弁して欲しい。
人間に戻った…てか、俺がゾンビになる前に時間を戻したメゴロウは、滅茶苦茶落ち込んで泣きながら俺に謝って来たからな。また、あんなメゴロウを見たくないし、で、またメゴロウにそんな想いはさせたくない。
何でか知らないけど、メゴロウは先輩が俺の事を好きだと思っているから、そんな相手と二人きりなんて駄目だろう。
先輩にはお世話になったから、その希望は叶えてやりたいと思うけど…メゴロウの視線がグサグサと痛い。俺、今夜眠れるのかな?
「バターとチーズ貰って来たよ! …って、何か空気が重いね? どうしたの?」
何て思っていたら、やたらと明るい声がした。
後ろを振り返ればゴンべ王子が、右手には業務用のアルミ缶だかスチール缶だか知らないが、四角い銀色の容器を、左手には"大容量! 二キロ。シュレッドチーズ!"って書かれた袋に入ったチーズを持って立っていた。
そう言えば、カフェに物々交換に行ったんだった。
てか、王子がパシリとか良いのか? いや、良いんだな。いい加減慣れろ、俺。
「まあ、いっか。じゃがいもは焼いてくれてる? バター乗せて食べるんだあ。塩辛だとアルコールが欲しくなるから、それは後でやる。焼き芋にチーズ乗せて食べたら甘じょっぱくなって美味しいと思うんだよね。メゴロウ君、食べてみて~」
うん。
マイペースで羨ましいな!
ニコニコと笑いながら、戦利品を地面に置いてゴンべ王子は近くに置いていた火かき棒を手に取って、ぷすぷすといぶいぶしてる落ち葉を掻き分けて行く。
「まあ、返事は前日まで待つ」
そんなゴンべ王子を見て居たら、先輩が静かな声で言って来た。
待つんか!
今、ここでって譲歩はないのか!!
そんなに二人で話したいのか!!
どうやってメゴロウを説得しろって言うんだよ!?
「ん? ん~? そっか、やっとか!」
その先輩の言葉に、ゴンべ王子がパンと柏手を打った。
んん?
「メゴロウ君、ちょっと」
俺が首を傾げたら、ゴンべ王子がメゴロウを手招きしながら俺達から距離を取って行く。
んんん?
「…何ですか?」
俺と同じくそれを不審に思うメゴロウの声。
しかし、そう思いながらも、メゴロウは腰を浮かせてゴンべ王子の方へと歩いて行く。
ひゅる~って、メゴロウが消えた隣から、冷たい風が吹き込んで来た来た気がした。
いや、風は先刻から吹いていたけどな?
けど、何か、より冷たくなった気がした。
秋の空は高くて、何だかその分も風が吹く範囲が広がっている気がする。
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