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おまけ
とある腐女子の華麗な日々・にぃ※
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そして、速攻で私は泣き崩れていた。
「…何で、メゴロウが居るのよぅ…」
生徒会長とキャッキャウフフしようと思っていた私の目論見は、ゲーム開始僅か五分で断たれた。
それは、ケタロウがメゴロウに殺されたからだ。
表とは違い、ケタロウが主人公の裏は、二年生になる春休みにガディシス様と夢の中で邂逅した処から始まる。
『世界に危機が訪れようとしています。ウ・ケタロウ…あなたの持つ力で世界をどうか…』
『…力…とは…?』
『真に愛する者を見付けなさい。その者と情を交わせば、あなたの中で眠る力は目覚め、情を交わせば交わす程に、それは強力な物になるでしょう』
『…情とは…?』
『…性交…セックスです…』
と、表の時と同じくガディシス様はポッと頬を赤らめた。
表の時も思ったけれど、この女神、絶対に腐ってる。
大人の男の子達は『ガディシス様が隠し攻略キャラだと思っていたのに!』と泣き崩れたとか崩れていないとか。そんなに良いのだろうか…私達、腐の間では、ポンコツって話なんだけど…。
そんなこんなで、実家に居たケタロウは春休みの内に寮へと戻るのだ。
で、速攻で私は生徒会室を目指した。
春休みだが、間違いなく生徒会長は居る筈だと。
そして、生徒会室の扉に手を掛けた途端、ケタロウは身体に衝撃を受けて廊下に崩れ落ちた。
「…は…?」
と、間抜けな声が出た。
そして、ノートパソコンのスピーカーから聞こえて来たのは…。
『…僕が居るのに、何処へ行くつもりなの?』
と云う、冷たく昏い、メゴロウの声だった。
「…は…?」
と、また間抜けな声が出た。
「…え…? 何で、メゴロウが居るの…? リーフレットには、メゴロウのメの字も…え?」
『…悪い子には…お仕置き…』
思考が追い付かない私の目の前で、メゴロウが背中を切られて苦しむケタロウのズボンを脱がし…って、ちょっとおおおおおぉおおおおッ!?
『あ、あああああっ!?』
『ふふ…熱い、ね…』
『何だ、何の騒ぎだ?』
廊下でズコバコやり始めた二人の前に、生徒会室から生徒会長が出て来た処で…GAME OVERの文字がゆっくりと浮かんで来た…。
「…田中のボケが――――――――ッ!!」
しばらく呆然とそれを眺めていたけど、カラカラに乾いていた喉に気付いて、潤す為にビールを一口飲んだ処で、私はマウスを投げて泣き出した。
「…何で、メゴロウが居るのよぅ…」
開幕五分足らずで処女喪失で、しかも瀕死って、何処のエロゲよ!?
「メゴロウが隠し攻略キャラの一人って事なんだろうけど、酷過ぎないッ!? 何でいきなり殺すのよ!?」
ヤバい。ヤバすぎる。
そりゃ、メゴロウはヤンデレだったけど。
けど、ストーカーでは無かった筈だ。…多分…。
「…この…ストーカーの目をかいくぐりながら、生徒会長と交流しろ…そう云う事なの…? ハードル高過ぎない…? 大体、何処からメゴロウ湧いて来たのよ…」
ポロポロと流れる涙を拭いて、負けてなるものかと、私は投げたマウスを手に取った。
これは、田中からの挑戦状だ。
この試練を乗り越えて、見事愛を勝ち取れと云うのだろう。
これでも『表君』をクリアしたのだ。
表も中々にエグかった。その裏が、まともな訳がなかったのだ。
「っしゃあーッ! 私に死角も地雷も無いッ!! 待っててね、生徒会長! 必ずケタロウと幸せにしてあげるからね――――――――ッ!!」
とにかく、初手から生徒会室に行くのは悪手だと身を持って知ったので、大人しく寮に居る事にした。お昼時になったので、食堂へ行けばメゴロウが居た。何故居る貴様。無視しようかと思ったが、無視して殺されても困るので、話し掛けた。
『見ない顔だね。新入生かな?』
『は、いえ、二年生になります。家の事業が成功して、それでドイ・ナカの町から来ました』
なるほど。表と同じく転校生なのか。事業って、どこぞの商会がブルーベリーに一目惚れしたのかな? まあ、良い。それが解っただけでも…いや、良く無い。何で、これに狙われているんだ。かと言って下手に踏み込んで、メゴロウルートに入るのは戴けない。
→『ここ、良いかな?』と、メゴロウと食事をする。
→『そう、これから宜しくね』と、立ち去る。
私は迷わず下の選択肢を選んだ。
そしたら、後ろからナイフとフォークで刺されて殺された。
「ちょっとおおおおおおおおおおおおおおおおッ!? どんだけの力なの!? てか、何で、殺されるのッ!? いや、落ち着け私。負けるな私。めげるな私!」
メゴロウがこちらをじっと見ている。
→『一口食べるかい?』と、スプーンを差し出す。
→無視して食べ続ける。
無視したら、やっぱりナイフとフォークで殺された。口の中をそれでグリグリされると云う、おまけ付きで。
「…このッ…! でも、負けないッ!!」
それからもそれからも、メゴロウを避ける選択肢を選ぶ度に、ケタロウは殺された。
「…どんだけ殺されるねん…」
と、私は似非関西人になって遠い目をした。
「…全然、生徒会長に会えない…会いに行こうとすると、速攻で殺されるし…春休みが終わったらメゴロウは一人で園芸部作って、しっかりケタロウ入部させられるし…てか、断ったら殺されたし…これ…もう、メゴロウルートに入ってない…?」
遠い目をする私の視線の先では、ケタロウがメゴロウにご飯を食べさせていた。
「…も…今日は寝よう…明日…明日…頑張ろう…」
と、さんさんと陽の光が差し込む部屋で私は呟いた。
うん、完徹した。
ムキになって、気が付いたら陽が沈んで昇っていた。
寝て起きるまでが今日。起きたら明日だ。
「…頑張れ…明日の私…」
ベッドに入り、私は頭から布団を被って目を閉じた。
「…何で、メゴロウが居るのよぅ…」
生徒会長とキャッキャウフフしようと思っていた私の目論見は、ゲーム開始僅か五分で断たれた。
それは、ケタロウがメゴロウに殺されたからだ。
表とは違い、ケタロウが主人公の裏は、二年生になる春休みにガディシス様と夢の中で邂逅した処から始まる。
『世界に危機が訪れようとしています。ウ・ケタロウ…あなたの持つ力で世界をどうか…』
『…力…とは…?』
『真に愛する者を見付けなさい。その者と情を交わせば、あなたの中で眠る力は目覚め、情を交わせば交わす程に、それは強力な物になるでしょう』
『…情とは…?』
『…性交…セックスです…』
と、表の時と同じくガディシス様はポッと頬を赤らめた。
表の時も思ったけれど、この女神、絶対に腐ってる。
大人の男の子達は『ガディシス様が隠し攻略キャラだと思っていたのに!』と泣き崩れたとか崩れていないとか。そんなに良いのだろうか…私達、腐の間では、ポンコツって話なんだけど…。
そんなこんなで、実家に居たケタロウは春休みの内に寮へと戻るのだ。
で、速攻で私は生徒会室を目指した。
春休みだが、間違いなく生徒会長は居る筈だと。
そして、生徒会室の扉に手を掛けた途端、ケタロウは身体に衝撃を受けて廊下に崩れ落ちた。
「…は…?」
と、間抜けな声が出た。
そして、ノートパソコンのスピーカーから聞こえて来たのは…。
『…僕が居るのに、何処へ行くつもりなの?』
と云う、冷たく昏い、メゴロウの声だった。
「…は…?」
と、また間抜けな声が出た。
「…え…? 何で、メゴロウが居るの…? リーフレットには、メゴロウのメの字も…え?」
『…悪い子には…お仕置き…』
思考が追い付かない私の目の前で、メゴロウが背中を切られて苦しむケタロウのズボンを脱がし…って、ちょっとおおおおおぉおおおおッ!?
『あ、あああああっ!?』
『ふふ…熱い、ね…』
『何だ、何の騒ぎだ?』
廊下でズコバコやり始めた二人の前に、生徒会室から生徒会長が出て来た処で…GAME OVERの文字がゆっくりと浮かんで来た…。
「…田中のボケが――――――――ッ!!」
しばらく呆然とそれを眺めていたけど、カラカラに乾いていた喉に気付いて、潤す為にビールを一口飲んだ処で、私はマウスを投げて泣き出した。
「…何で、メゴロウが居るのよぅ…」
開幕五分足らずで処女喪失で、しかも瀕死って、何処のエロゲよ!?
「メゴロウが隠し攻略キャラの一人って事なんだろうけど、酷過ぎないッ!? 何でいきなり殺すのよ!?」
ヤバい。ヤバすぎる。
そりゃ、メゴロウはヤンデレだったけど。
けど、ストーカーでは無かった筈だ。…多分…。
「…この…ストーカーの目をかいくぐりながら、生徒会長と交流しろ…そう云う事なの…? ハードル高過ぎない…? 大体、何処からメゴロウ湧いて来たのよ…」
ポロポロと流れる涙を拭いて、負けてなるものかと、私は投げたマウスを手に取った。
これは、田中からの挑戦状だ。
この試練を乗り越えて、見事愛を勝ち取れと云うのだろう。
これでも『表君』をクリアしたのだ。
表も中々にエグかった。その裏が、まともな訳がなかったのだ。
「っしゃあーッ! 私に死角も地雷も無いッ!! 待っててね、生徒会長! 必ずケタロウと幸せにしてあげるからね――――――――ッ!!」
とにかく、初手から生徒会室に行くのは悪手だと身を持って知ったので、大人しく寮に居る事にした。お昼時になったので、食堂へ行けばメゴロウが居た。何故居る貴様。無視しようかと思ったが、無視して殺されても困るので、話し掛けた。
『見ない顔だね。新入生かな?』
『は、いえ、二年生になります。家の事業が成功して、それでドイ・ナカの町から来ました』
なるほど。表と同じく転校生なのか。事業って、どこぞの商会がブルーベリーに一目惚れしたのかな? まあ、良い。それが解っただけでも…いや、良く無い。何で、これに狙われているんだ。かと言って下手に踏み込んで、メゴロウルートに入るのは戴けない。
→『ここ、良いかな?』と、メゴロウと食事をする。
→『そう、これから宜しくね』と、立ち去る。
私は迷わず下の選択肢を選んだ。
そしたら、後ろからナイフとフォークで刺されて殺された。
「ちょっとおおおおおおおおおおおおおおおおッ!? どんだけの力なの!? てか、何で、殺されるのッ!? いや、落ち着け私。負けるな私。めげるな私!」
メゴロウがこちらをじっと見ている。
→『一口食べるかい?』と、スプーンを差し出す。
→無視して食べ続ける。
無視したら、やっぱりナイフとフォークで殺された。口の中をそれでグリグリされると云う、おまけ付きで。
「…このッ…! でも、負けないッ!!」
それからもそれからも、メゴロウを避ける選択肢を選ぶ度に、ケタロウは殺された。
「…どんだけ殺されるねん…」
と、私は似非関西人になって遠い目をした。
「…全然、生徒会長に会えない…会いに行こうとすると、速攻で殺されるし…春休みが終わったらメゴロウは一人で園芸部作って、しっかりケタロウ入部させられるし…てか、断ったら殺されたし…これ…もう、メゴロウルートに入ってない…?」
遠い目をする私の視線の先では、ケタロウがメゴロウにご飯を食べさせていた。
「…も…今日は寝よう…明日…明日…頑張ろう…」
と、さんさんと陽の光が差し込む部屋で私は呟いた。
うん、完徹した。
ムキになって、気が付いたら陽が沈んで昇っていた。
寝て起きるまでが今日。起きたら明日だ。
「…頑張れ…明日の私…」
ベッドに入り、私は頭から布団を被って目を閉じた。
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