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攻略されていたのは、俺
【15】
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「…話を続けても大丈夫か?」
俺が腹を押さえた事に気付いた生徒会長が、心配そうに語り掛けて来る。
「…大丈夫です。食べた物が消化されて来たのでしょう。我慢出来なくなったら、トイレに駆け込みますので」
これ以上心配掛けてたまるか。俺は、そんなに貧弱じゃないぞ。
てか、まだ何かあるのか?
「…む、無理はするなよ…」
おい!
何、椅子引いて後ろに下がってるんだ!?
漏らすとでも思っているのか!?
失礼な奴だな! 傷付くだろ!!
「では…。"隠れた人物"とは何だ?」
「…は…?」
また、間の抜けた声が出てしまった。
が、生徒会長は構わずに話を続ける。スルースキルぱないな。
「話の腰を折っては悪いと思い、聞きに徹していたが…。君は、今は、隠れた人物の道筋に居ると口にした。隠れた人物の予知夢は見ていないから、その人物が誰なのかは解らないと言った」
おう。言ったぞ?
けど、それが何だってんだ?
「何故、隠れた人物の夢を見ていないのに、その人物が居ると言えた? 見ていないのなら、知らない筈だ。しかし、君はそれを断言していた。知らないのに、知っている。この矛盾は何だ?」
あ。
「もう一度聞こう。君は、本当に、ウ・ケタロウなのか? 君は誰だ? 君は何を知っている?」
ひんやりとした汗が背中を流れた。
そうだ。
隠しキャラなんてのは、ゲームでの設定だ。『隠し攻略キャラが居るよ』って、教えて貰ったから、俺は知っていた。教えて貰わなければ、隠しキャラが居るだなんて、気付きもしなかっただろう。ネットが気軽に楽しめる様な時代ではない頃は、雑誌や何かで、それが発表されるまでは知らない人が殆どだったんだ。
ともかく。
知らない事は知らないのが普通なんだ。
俺は、隠しキャラだなんて言わないで、夢で見たけど何かが違う…そう言えば良かったんだ。
目を鋭く細めて、探る様に見て来る生徒会長の視線が痛い。
グッと唇を噛む。腹を押さえる手に力が入る。
…どうする?
正直に話すか?
けど、前世とかゲームの世界とか、そんなの話して頭おかしいとか思われないか?
…いや…時を駆けるとか、ぶっ飛んだ事を言い出す奴だ…。下手に誤魔化すより、正直に話した方が良いかも知れない…。
それに…何だかんだで、俺の事を、俺達の事を気に掛けてくれているんだ。
その気持ちに泥を塗りたくない。
「…失礼しました…。…正直にお話します…」
もう、どうにでもなれってんだ。既に、予知夢として、俺もそれなりにぶっ飛んだ事を話しているんだ。毒を喰らわば皿まで、蓼食う虫も好き好き、旅は道連れだ!
◇
カチャリ…と、音を立てて、運ばれて来た三杯目のコーヒーがテーブルに置かれた。
話した。
全部、まるっと。
いつか来る危機の事も、洗いざらい全部。
おかげで腹が、コーヒーでたぷたぷだ。二杯目からカップの大きさが変わって、三杯目のこれはまた、一回りデカい。何だ、これは。引き留められているのか?
「…つまり、ここはゲームの世界で、俺は本来なら女で、あの、メゴロウの恋人になる可能性があったと…それで性転換がどうとか言っていた訳か…」
あ、それも言ってたか。良くスルー出来たな。
『ごゆっくり』と、店員が笑顔で去ってから、生徒会長が眼鏡を外して、眉間によった皺を解しながら、重そうに口を開いた。
てか、あのって、何だよ?
メゴロウは可愛いだろうが。あん?
「…前世…予知夢より信じ難いが…しかし…それなら、隠れた人物の存在を知っている事も…納得…出来る…な? …未来から来たとかよりも、まだ、信じられる…か? …時間については否定しなかったし…何より、この変わりよう…」
お?
胸の前で腕を組んでブツブツと自問自答しだしたぞ?
「…しかし、ゲームの世界…か…」
おう。
説明に苦労したよ。ゲームとは? って処からの説明になるとは思わなかったよ! ゲームの世界なのに、ゲームが無いって、どんな世界だよ! 口にして、そう云えば? って、はたと気付いたよ。車あるし、電話(ダイヤル式だけど)あるし、水洗トイレだし、シャワーだってあるしの、近代化してる世界なのに! そのくせボドゲはあるんだよ! オセロやらチェスやらはあるんだよ。なのに、テレビゲームは無いんだよ!
「…信じて下さいとは言えません」
うん。
俺だって、前世の記憶が無くて、いきなりそう言われたら、とりあえず相手の額に手をあてるだろうな。
けど、実際に生きて来たし、今も生きてこうしているんだから、信じるしかない、ってか、事実で現実なんだ。
「…そうだな。これまでの事、これからの事が、仕組まれた事だなんて考えただけでぞっとするし、俺はこうして生きている」
…本当にな。俺達は、こうして生きている。この世界で生まれて生きて来たんだ。それぞれが、それぞれなりに考えを持って生きている。それがプログラムだなんて冗談じゃない。
ゲームじゃあ、それぞれの、それこそ主人公の感情すら描かれて無かったりするからな。出て来た選択肢を選んで、進めるだけだ。けど、そんなもんじゃないんだ、現実は。俺一人とったって、こうして悩んだり、色々な思いをしてるし、色々な感情を持って生きているんだ。
「…まあ、ゲームと似た世界だと云う事にしようか。こうして話している事も、仕組まれた事だとか考えたくもない」
「そうですね。まあ、こうして私が生徒会長と話す場面なんて、ゲームではありませんでしたし」
うん。
どちらかと言えば、こうして生徒会長と話すのは主人公のメゴロウだろう。
「…ん?」
「どうしました?」
「…いや。そう云えば、君は自分が悪役だと言っていたが、何をしたんだ?」
「は?」
何を?
俺が腹を押さえた事に気付いた生徒会長が、心配そうに語り掛けて来る。
「…大丈夫です。食べた物が消化されて来たのでしょう。我慢出来なくなったら、トイレに駆け込みますので」
これ以上心配掛けてたまるか。俺は、そんなに貧弱じゃないぞ。
てか、まだ何かあるのか?
「…む、無理はするなよ…」
おい!
何、椅子引いて後ろに下がってるんだ!?
漏らすとでも思っているのか!?
失礼な奴だな! 傷付くだろ!!
「では…。"隠れた人物"とは何だ?」
「…は…?」
また、間の抜けた声が出てしまった。
が、生徒会長は構わずに話を続ける。スルースキルぱないな。
「話の腰を折っては悪いと思い、聞きに徹していたが…。君は、今は、隠れた人物の道筋に居ると口にした。隠れた人物の予知夢は見ていないから、その人物が誰なのかは解らないと言った」
おう。言ったぞ?
けど、それが何だってんだ?
「何故、隠れた人物の夢を見ていないのに、その人物が居ると言えた? 見ていないのなら、知らない筈だ。しかし、君はそれを断言していた。知らないのに、知っている。この矛盾は何だ?」
あ。
「もう一度聞こう。君は、本当に、ウ・ケタロウなのか? 君は誰だ? 君は何を知っている?」
ひんやりとした汗が背中を流れた。
そうだ。
隠しキャラなんてのは、ゲームでの設定だ。『隠し攻略キャラが居るよ』って、教えて貰ったから、俺は知っていた。教えて貰わなければ、隠しキャラが居るだなんて、気付きもしなかっただろう。ネットが気軽に楽しめる様な時代ではない頃は、雑誌や何かで、それが発表されるまでは知らない人が殆どだったんだ。
ともかく。
知らない事は知らないのが普通なんだ。
俺は、隠しキャラだなんて言わないで、夢で見たけど何かが違う…そう言えば良かったんだ。
目を鋭く細めて、探る様に見て来る生徒会長の視線が痛い。
グッと唇を噛む。腹を押さえる手に力が入る。
…どうする?
正直に話すか?
けど、前世とかゲームの世界とか、そんなの話して頭おかしいとか思われないか?
…いや…時を駆けるとか、ぶっ飛んだ事を言い出す奴だ…。下手に誤魔化すより、正直に話した方が良いかも知れない…。
それに…何だかんだで、俺の事を、俺達の事を気に掛けてくれているんだ。
その気持ちに泥を塗りたくない。
「…失礼しました…。…正直にお話します…」
もう、どうにでもなれってんだ。既に、予知夢として、俺もそれなりにぶっ飛んだ事を話しているんだ。毒を喰らわば皿まで、蓼食う虫も好き好き、旅は道連れだ!
◇
カチャリ…と、音を立てて、運ばれて来た三杯目のコーヒーがテーブルに置かれた。
話した。
全部、まるっと。
いつか来る危機の事も、洗いざらい全部。
おかげで腹が、コーヒーでたぷたぷだ。二杯目からカップの大きさが変わって、三杯目のこれはまた、一回りデカい。何だ、これは。引き留められているのか?
「…つまり、ここはゲームの世界で、俺は本来なら女で、あの、メゴロウの恋人になる可能性があったと…それで性転換がどうとか言っていた訳か…」
あ、それも言ってたか。良くスルー出来たな。
『ごゆっくり』と、店員が笑顔で去ってから、生徒会長が眼鏡を外して、眉間によった皺を解しながら、重そうに口を開いた。
てか、あのって、何だよ?
メゴロウは可愛いだろうが。あん?
「…前世…予知夢より信じ難いが…しかし…それなら、隠れた人物の存在を知っている事も…納得…出来る…な? …未来から来たとかよりも、まだ、信じられる…か? …時間については否定しなかったし…何より、この変わりよう…」
お?
胸の前で腕を組んでブツブツと自問自答しだしたぞ?
「…しかし、ゲームの世界…か…」
おう。
説明に苦労したよ。ゲームとは? って処からの説明になるとは思わなかったよ! ゲームの世界なのに、ゲームが無いって、どんな世界だよ! 口にして、そう云えば? って、はたと気付いたよ。車あるし、電話(ダイヤル式だけど)あるし、水洗トイレだし、シャワーだってあるしの、近代化してる世界なのに! そのくせボドゲはあるんだよ! オセロやらチェスやらはあるんだよ。なのに、テレビゲームは無いんだよ!
「…信じて下さいとは言えません」
うん。
俺だって、前世の記憶が無くて、いきなりそう言われたら、とりあえず相手の額に手をあてるだろうな。
けど、実際に生きて来たし、今も生きてこうしているんだから、信じるしかない、ってか、事実で現実なんだ。
「…そうだな。これまでの事、これからの事が、仕組まれた事だなんて考えただけでぞっとするし、俺はこうして生きている」
…本当にな。俺達は、こうして生きている。この世界で生まれて生きて来たんだ。それぞれが、それぞれなりに考えを持って生きている。それがプログラムだなんて冗談じゃない。
ゲームじゃあ、それぞれの、それこそ主人公の感情すら描かれて無かったりするからな。出て来た選択肢を選んで、進めるだけだ。けど、そんなもんじゃないんだ、現実は。俺一人とったって、こうして悩んだり、色々な思いをしてるし、色々な感情を持って生きているんだ。
「…まあ、ゲームと似た世界だと云う事にしようか。こうして話している事も、仕組まれた事だとか考えたくもない」
「そうですね。まあ、こうして私が生徒会長と話す場面なんて、ゲームではありませんでしたし」
うん。
どちらかと言えば、こうして生徒会長と話すのは主人公のメゴロウだろう。
「…ん?」
「どうしました?」
「…いや。そう云えば、君は自分が悪役だと言っていたが、何をしたんだ?」
「は?」
何を?
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