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攻略していたのは、僕

【34】

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「…つまらなそうだな?」

 こっちの花壇はまだ手を付けていないから、草むしりから始まる。リクエストしたのは生徒会長なんだから、当然手伝ってくれるんでしょう? って、話をしていたら、軽く肩を竦めた生徒会長にそう言われた。

「そんな事はありませんよ」

 何、その態度。
 ちょっとだけムッとしたら、生徒会長が苦笑して、僕の頭に手を置いた。何、コレ。

「それなら、笑っていろ。彼は…君の笑顔が好きな様だからな」

「え?」

 ぽんぽんと軽く頭を叩いてから、生徒会長の手が離れて行く。
 言葉の意味が解らなくて、隣に立つ生徒会長を僕は軽く見上げた。
 そんな僕に、生徒会長は人差し指で、鼻に掛かる眼鏡のフレームをクイッと上げながら話す。

「君が来るまで、彼は一人だった。笑う事はあっても、表面上だけだった。人当たりは悪くは無いんだが、他人を寄せ付けなかった。…それが…君が来てからの彼は…心からの笑顔を見せる様になったし、他者を排除する様な空気を出してもいない。君達は気付いてはいないみたいだが、何人かが、時々様子を覗きに来ているのを知っているか?」

「え?」

 入部希望者が居たの? それなら、何で声を掛けないんだろ?

「悪戯をされては楽しみが減るからな。何人か捕まえて話を聞いたら、君達二人が仲良く作業をしているのを見るのが好きだと言ってた。入部すれば近くで見れると言ったら、皆、邪魔はしたくないと言っていたな」

 …楽しみって、何? 捕まえるって…。
 …けど…じゃあ、ほぼほぼ毎日現れるのって、悪戯防止の為? 
 …どうして? 

「…感情的な彼も悪くは無い。君に感謝する」

 そんな僕の思いが解るのか、生徒会長は眼鏡の奥の目を細めて軽く口の端だけで笑った。

 …あ、これ、ちょっと照れてるヤツだ。
 前の時間までの生徒会長も、こんな風に笑ってた事があったっけ…。
 …けど、僕が来てから?
 …そう言えば申請しに行った時、同じ事を言っていた様な…?
 …この時間のケタロウ様は、最初からそうだったんじゃ…あ、ううん、そうだ。ケタロウ様は、ここに来てから、初めて僕と…誰かと一緒に食べたって言ってた。…うん、そうだ。この時間でも、教室に入った時、僕はあの強い視線を感じたし、握手をしようとした時に、ケタロウ様はやっぱり、僕に足を引っ掛けようとして…。…でも…その後は…倒れた後からは、今のケタロウ様…だった…よ、ね…?
 …え? 
 …あ、れ?
 …もしかして…倒れた…いや、僕が倒したんだけど…あの時に頭を打って…打ち所がおかしかった…とか…? え、でも…何か異常とかは…ない…いや、今のケタロウ様が異常なの…? え?

「…顔色が悪いな…」

「え?」

 僕に言った言葉かと思ったけど、生徒会長は早足でケタロウ様のトコへ行ってしまった。僕も慌てて後を追う。

「どうした? 具合が悪いのか?」

「え?」

 生徒会長に声を掛けられて、顔を上げたケタロウ様は確かに苦しそうな表情をしていた。

「無理は駄目です! まだ、ウーゴ先生居ますよね? 救護室へ行って下さい! 後は僕がやりますから!」

 だから、僕は咄嗟にそう言ったんだ。

 …その後の悲劇なんて知らずに――――――――。
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