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攻略されていたのは、俺?
【13】
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チチチ…ピチチ…と、鳥の囀りが聞こえそうな爽やかな朝、俺はベッドで上半身を起こして両手で顔を覆って項垂れていた。
「…有り得ない…」
いや、有り得ない事等有り得ないと云う事は、前世でそれなりに経験した様な気がするが…それでも、有り得ないと云う言葉が出てしまう。
前回と云い、今回と云い、何で俺がヤられる側なんだ。いや、違う、そうじゃない。落ち着け、俺。
夢で叫んでいたが、本当にメゴロウに何て事をさせるんだ。メゴロウはあんな事をする子じゃない。あんなのは悪役がする事だろう。合意も無しに嫌がる相手をなんてレイプ以外の何物でもない。主人公は、そんな事をしたら駄目だ。
「…ん…?」
…俺…夢の中で嫌がっていたか?
「…あ…れ…?」
止めろとは口にしていたが、嫌悪感とかは…。
「…あ、れ…?」
…あっるぅえぇええええええええっ!?
いや、落ち着け俺。
ここは、大人の男の子向けのエロゲの世界だぞ? その主人公が好きなのは当然女の子だし、俺だって女の子が好きだから、このゲームをプレイしてたんだぞ?
メゴロウはヒロインとくっつくんだ。俺の尻とくっついて良い訳が無い。
これは女神様が何が何でも、俺にメゴロウを虐めようと仕向けさせている罠だ。
その筈なのだろう。だが…ふっ…。甘いな。ああ、甘いぞ。
俺は、メゴロウがこんな事をする子じゃないと知って居る。
様々な女の子達と、キャッキャウフフして来たのを知って居る。
だから、どんなメゴロウを見せられようと、俺があいつを嫌って虐める事なんて有り得ない!
「ケタ…アニキ、あ、起きてました?」
グッと拳を握り締めた処で、寝室のドアが開いてメゴロウが顔を覗かせて来た。何時もの如く、コーヒーを淹れ終わったんだろう。俺は笑顔を作ってベッドから下りる。
「ああ、おはようメゴロウ君。朝食の前に…」
「…それです…」
草むしりに行こうかと言い掛けた処で、メゴロウが軽く頬を膨らませてポテポテと俺の前まで歩いて来た。
「…僕も…あの、我儘を言わせて貰えるなら…メゴロウで…"君"は…要らないです…」
少しだけ顔を俯かせて、上目遣いで放たれた言葉に、俺は『うっ』となった。
何だ、この可愛い生き物は。
生徒会長は男で除外されたから、これはやはり、隠し攻略キャラのウーゴ教諭ルートなのだろう。
見ろ、この可愛さを! 年上のお姉さんは、間違いなくイチコロだろう!
女神様だって、こんなメゴロウにイチコロかも知れない!
こんなメゴロウにあんな事やそんな事をさせた事を悔やむが良い!!
こんなメゴロウを虐める奴の気が知れない! 俺だけど!!
「ああ、そうだね。君にだけ押し付けるのは平等では無かったね。これから、また、宜しく頼むよ、メゴロウ」
「はい!」
スッと左手で耳に掛かる髪を掻き上げながら、右手を差し出せば、メゴロウは晴れ渡った青空の様な笑顔で、俺の手を握り返して来てくれた。
◇
「うわ、ミミズ!!」
「落ち着いて下さい! ミミズが居るのは、土壌が良い証拠なんです。土に帰してあげて下さい」
草を引っこ抜いたら、土がついた根の部分にミミズがくっ付いて来てて、驚いた俺にメゴロウが声を掛けて来た。
「あ、そ、そうか…掘り出して悪かったね」
そう云えば、そんな話を聞いた覚えがある様な無い様な。まあ、メゴロウが言うのなら、その通りなんだろう。俺は、そっとミミズの付いた根の部分を土の上に下ろした。
あれからコーヒーを飲んで、時計を見たら時間は五時半だったから、先に軽く草むしりをしてから朝食をとなった。学園を挟んで男子寮、女子寮となっていて、ここまで片道十分程だが、手間ではないか? と、メゴロウに訊いたら、実家に居た頃より全然楽だといった返事が返って来て、逆に俺の方が大変なのではと心配されてしまった。俺をそこらの坊ちゃんと一緒にするな。と、軽く頭を小突いてやれば、メゴロウはまた嬉しそうに笑った。きっと、兄貴ともこんな風にじゃれあっていたんだろうな。
安心しろよな。俺は、お前の兄貴みたくお前を置いて行ったりしないからな。
「…本当に勿体ないです…こんなに良い土壌なのに…使われていなかったなんて…」
そんな風に思うのは、ここではメゴロウだけだろうな。
「まあ、そのお蔭で私達がこうして使う事が出来るのだから、きっとそう云う巡り合わせだったのだと思うよ。採れたての新鮮野菜なんて口にした事が無いから、楽しみだよ」
家庭菜園なんて、前世でもやってなかったからな。道の駅とかで、採れたて野菜とか買ったりしてたけど、やっぱ、その場で食べてみたいもんな。
「…野菜…?」
俺がそう言ってメゴロウに笑い掛けた時、カサリと草を踏む音と声が聞こえて来た。
「あっ、おはようございます!」
隣に居たメゴロウが慌てて立ち上がり、そんなに慌てなくてもと思いながら顔を上げた先には、生徒会長が立っていた。
「おはようございます。まだ登校にはお早い時間かと思いますが、何かご用でしょうか?」
俺も立ち上がり、生徒会長へと挨拶をする。
「ああ、おはよう。いや、部費の話をしていなかった事に気付いてな。食堂で君達が来るのを待っていたのだが、朝一番で来ると云う君達が来ないから、こちらかと…それより、野菜とは?」
ありゃ。もしかして、野菜は駄目だったのか? いや、野菜だって花は咲くし、園芸の一種で良いよな? おまけとして、実が付く様な物だと思って…くれないかな?
「…有り得ない…」
いや、有り得ない事等有り得ないと云う事は、前世でそれなりに経験した様な気がするが…それでも、有り得ないと云う言葉が出てしまう。
前回と云い、今回と云い、何で俺がヤられる側なんだ。いや、違う、そうじゃない。落ち着け、俺。
夢で叫んでいたが、本当にメゴロウに何て事をさせるんだ。メゴロウはあんな事をする子じゃない。あんなのは悪役がする事だろう。合意も無しに嫌がる相手をなんてレイプ以外の何物でもない。主人公は、そんな事をしたら駄目だ。
「…ん…?」
…俺…夢の中で嫌がっていたか?
「…あ…れ…?」
止めろとは口にしていたが、嫌悪感とかは…。
「…あ、れ…?」
…あっるぅえぇええええええええっ!?
いや、落ち着け俺。
ここは、大人の男の子向けのエロゲの世界だぞ? その主人公が好きなのは当然女の子だし、俺だって女の子が好きだから、このゲームをプレイしてたんだぞ?
メゴロウはヒロインとくっつくんだ。俺の尻とくっついて良い訳が無い。
これは女神様が何が何でも、俺にメゴロウを虐めようと仕向けさせている罠だ。
その筈なのだろう。だが…ふっ…。甘いな。ああ、甘いぞ。
俺は、メゴロウがこんな事をする子じゃないと知って居る。
様々な女の子達と、キャッキャウフフして来たのを知って居る。
だから、どんなメゴロウを見せられようと、俺があいつを嫌って虐める事なんて有り得ない!
「ケタ…アニキ、あ、起きてました?」
グッと拳を握り締めた処で、寝室のドアが開いてメゴロウが顔を覗かせて来た。何時もの如く、コーヒーを淹れ終わったんだろう。俺は笑顔を作ってベッドから下りる。
「ああ、おはようメゴロウ君。朝食の前に…」
「…それです…」
草むしりに行こうかと言い掛けた処で、メゴロウが軽く頬を膨らませてポテポテと俺の前まで歩いて来た。
「…僕も…あの、我儘を言わせて貰えるなら…メゴロウで…"君"は…要らないです…」
少しだけ顔を俯かせて、上目遣いで放たれた言葉に、俺は『うっ』となった。
何だ、この可愛い生き物は。
生徒会長は男で除外されたから、これはやはり、隠し攻略キャラのウーゴ教諭ルートなのだろう。
見ろ、この可愛さを! 年上のお姉さんは、間違いなくイチコロだろう!
女神様だって、こんなメゴロウにイチコロかも知れない!
こんなメゴロウにあんな事やそんな事をさせた事を悔やむが良い!!
こんなメゴロウを虐める奴の気が知れない! 俺だけど!!
「ああ、そうだね。君にだけ押し付けるのは平等では無かったね。これから、また、宜しく頼むよ、メゴロウ」
「はい!」
スッと左手で耳に掛かる髪を掻き上げながら、右手を差し出せば、メゴロウは晴れ渡った青空の様な笑顔で、俺の手を握り返して来てくれた。
◇
「うわ、ミミズ!!」
「落ち着いて下さい! ミミズが居るのは、土壌が良い証拠なんです。土に帰してあげて下さい」
草を引っこ抜いたら、土がついた根の部分にミミズがくっ付いて来てて、驚いた俺にメゴロウが声を掛けて来た。
「あ、そ、そうか…掘り出して悪かったね」
そう云えば、そんな話を聞いた覚えがある様な無い様な。まあ、メゴロウが言うのなら、その通りなんだろう。俺は、そっとミミズの付いた根の部分を土の上に下ろした。
あれからコーヒーを飲んで、時計を見たら時間は五時半だったから、先に軽く草むしりをしてから朝食をとなった。学園を挟んで男子寮、女子寮となっていて、ここまで片道十分程だが、手間ではないか? と、メゴロウに訊いたら、実家に居た頃より全然楽だといった返事が返って来て、逆に俺の方が大変なのではと心配されてしまった。俺をそこらの坊ちゃんと一緒にするな。と、軽く頭を小突いてやれば、メゴロウはまた嬉しそうに笑った。きっと、兄貴ともこんな風にじゃれあっていたんだろうな。
安心しろよな。俺は、お前の兄貴みたくお前を置いて行ったりしないからな。
「…本当に勿体ないです…こんなに良い土壌なのに…使われていなかったなんて…」
そんな風に思うのは、ここではメゴロウだけだろうな。
「まあ、そのお蔭で私達がこうして使う事が出来るのだから、きっとそう云う巡り合わせだったのだと思うよ。採れたての新鮮野菜なんて口にした事が無いから、楽しみだよ」
家庭菜園なんて、前世でもやってなかったからな。道の駅とかで、採れたて野菜とか買ったりしてたけど、やっぱ、その場で食べてみたいもんな。
「…野菜…?」
俺がそう言ってメゴロウに笑い掛けた時、カサリと草を踏む音と声が聞こえて来た。
「あっ、おはようございます!」
隣に居たメゴロウが慌てて立ち上がり、そんなに慌てなくてもと思いながら顔を上げた先には、生徒会長が立っていた。
「おはようございます。まだ登校にはお早い時間かと思いますが、何かご用でしょうか?」
俺も立ち上がり、生徒会長へと挨拶をする。
「ああ、おはよう。いや、部費の話をしていなかった事に気付いてな。食堂で君達が来るのを待っていたのだが、朝一番で来ると云う君達が来ないから、こちらかと…それより、野菜とは?」
ありゃ。もしかして、野菜は駄目だったのか? いや、野菜だって花は咲くし、園芸の一種で良いよな? おまけとして、実が付く様な物だと思って…くれないかな?
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