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願うものは

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『…っ、あ…ん…っ、ん…っ…!』

 薄い明かりの漏れる障子の向こうから、艶めかしい声がひっきりなしに聞こえて来ていた。

「…だ…カイ…」

 言霊を用いて、彼との…カイ様との時にだけしか、発さない言葉に、甘いお館様の声も。

『…あ、あいし…? っあ…!!』

 パンパンとした肉を打つ音と、グチュグチュとした水音も。

『あ、あっ、あ…っ…!』

 絶え間無く上がる嬌声に、そろそろ絶頂が近いのだと思われる。
 ちゃぷりとした音に伏せていた顔を上げれば、障子を挟んで並ぶ黄色が、湯の入った桶を膝へと抱え直した処だった。
 この湯は、カイ様の御身体を清める為の物。
 お館様がカイ様を湯殿へとお連れする事もあるが、お館様は大変に精力のあるお方だ。カイ様を抱き潰してしまわぬ様に、程々の処で切り上げ…。

「…行くぞ…」

 と、考えていた処でカラリと障子が開き、裸のままのお館様が私に声を掛け、お一人で先へと歩いて行かれた。

「…あ"…」

 後はお願いしますね、と、黄色の方へと私が持って来た桶を移動させた。

「う"」

 黄色が頷いて桶を手に部屋の中へと入るのを見てから、私は歩き出した。

 ◇

「…あ"…」

 お館様に遅れる事、数刻。
 足を踏み入れたお部屋では、灰色が柱に繋がれていた。

「…っ"…! …っ"…!」

 柱を抱くように、前へと回した手首を縄で縛られ、着物を着てはいる物の、それは、ただ、袖を通しただけ。着物を捲り、空気に晒された白い尻に、お館様の肉棒を銜えさせられ、灰色は声にならない声を上げていた。

 …朝から姿が見えないと思ってはいたが…。
 
 たらりたらりと、二人が繋がる箇所の隙間から白く濁った物が流れて行く。
 流石のお館様とて、今、出した物ではあるまい。お館様がここへ来る前に、誰かが彼を使い、慰めて行ったのだろう。

 …女は孕むから…。
 これが、私達の仕事なのだから…。
 と、目を閉じ、幾度言い聞かせて来た事か…。

「…ち…っ…! カイと違って締まりのねえ尻だな…っ…! 来い…っ…!」

 お館様が灰色から肉棒を抜き、私を手招きする。傍へと寄れば、お館様は私の腰に腕を回し、灰色へと押し付けた。

「…っ"…!」

 そのまま、腰を掴まれ引かれ、上体を灰色の背中に乗せる形になり、肉棒を挿れられた。
 準備をしておいて良かった。前戯無しでこれは辛過ぎる。

「…ああ…まだ、お前の方がマシだな…」

 熱い息がお館様の口から溢れ、私の背中に降り注ぐ。
 腰を動かし、熱い肉棒が私の中で蠢く。ずちゅりずちゅりと腹の中を動き回る。

「あ"、あ"…」

 中の良い処を攻められれば、私の雄も勃ち上がる。

「あ"ー、あ"ー」

 私のそれがぬるりぬるりと灰色の腰に、尻に擦れ、灰色が中に挿れてくれとせがんで来た。

「挿れて…やれよ。…この間、してやったんだろうが? 許可無く俺の物に手を出しやがって…」

 …ああ…見られていたのか…。
 灰色のこの姿は…私のせいなのか…。
 
 お館様の肉棒が挿入されたまま、私は腰を動かし、灰色の中へと挿入りこんだ。

 …熱い…。
 誰の物とも知れぬ白濁がまだ残っているが、それを気にする余裕等与えられない。
 
「…っ"あ"!!」

 お館様が抜ける寸前まで肉棒を引き、再び強く押し込んで来たからだ。その勢いのまま、幾度も抜き挿しされる。激しく抜き挿しされ、灰色を気遣う事も出来ない。優しさ等、無い。ただ、欲の捌け口にされる我々に優しく出来るのは我々だけなのに。

「あ"あ"っ"!!」

 悲鳴にも似た嬌声は、私の物なのか、灰色の物なのか。私は、ただ一刻でも早く、お館様が満足されるのを祈る事しか出来ない。

 ◇

 ―――――――――…ここは…地獄だ…。
 何故、我々は捕まってしまったのか…。
 
 空へ昇り、消え逝く白い煙を見ながら私は思う。

 願わくばあの方が…カイ様が…どうか我々の様な地獄を見る日が来ない事を…。
 見せかけの平和だけを見て欲しいと…―――――――――。
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