1/65536のフラグ

三冬月マヨ

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おまけ

フラグは続くよ、どこまでも・中編

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 そうだ、すっかり忘れてた。
 この部屋に来る時は、何時も二人だったから、綺麗にラムクリされてた。

「…一人で、この部屋に入ったと云う事は、もう交わる気が無いと…」

 なんて思っても、声に出さなければ相手には伝わらない訳で。
 現にノアは、目に見えるぐらいに、ズンッと落ち込んでくれている。
 が、尻から手は離していない。
 いや、怖いから。
 目のハイライトが消えかけた状態で、ガクンと両肩を落としながらも、尻を掴んでるの怖いからっ!! その両手をどっかの役物みたく高速で落とすなよ!? 俺、あれよりも甲高い声を出すからな!?

「忘れてたっ! って、違うんだ!! 俺の部屋だと邪魔が入るかも知れないだろ!? オナ…自慰に耽りたかっただけっ!! お前としたくないとか、そんな事は無いからっ!!」

 だから、俺は力の限りに叫ぶ。
 これ以上、首は回らないだろうってぐらいに後ろを振り返って、叫んだ。
 多分、フリーズ決めた時の『よっしゃあっ!!』以上に、声を振り絞った自信がある。

「…自慰…?」

 ぴくりとノアの肩が跳ね、その目に光が戻って来るのが見えた。
 だから、俺はペラペラと喋る。

「そう! 溜まっててさ! でも、ちんこだけじゃイけなくて! だから、尻も弄ればイけるんじゃないかとっ!!」

 多分、後から思い返せば、言わなくても良かったんじゃないかと、のたうち回るかもだけど、そんなの今の俺に考え付く筈も無い。

「…それで、この部屋に? 一人で?」

 ノアの目から影が消えて、声のトーンもどん底から這い上がって来たから、俺は安心して思い切りの笑顔で答えた。

「そう! だって、幾ら恋人でも、ヌくの手伝ってくれなんて言えないだろ!?」

「………………………」

 って、何で黙る!?
 おい、長い溜め息を尻に吹き掛けるなっ!!

「……ええ、本当にどうして、こんなに馬か…わいいのでしょう…」

 今、馬鹿って言い掛けたな!?

「私達は恋人同士なのですよ? 何故、私を頼ってくれないのですか…」

 だから!
 そう言いながら尻に息を吹き掛けるな!

「いや、だから…幾ら恋人同士でも…甘える訳には…」

「甘えてくれて良いんですよ? 一人で達する事が出来ないのなら、二人ですれば良いのです」

 ちょっと切なさを滲ませたノアの声に、俺の目からポロポロと鱗が落ちた。いや、鱗なんてないが。

「え? あ、そうなの?」

 そうか、甘えて良いのか。

「チョロ…ではなくて、そうです。これは、二人でする物でしょう?」

 待て。
 今、チョロいって言わなかったか? こいつ?

「ま、まあ、良いか。じゃ、早速だ。指貸せ」

「…はい?」

 何で疑問形なんだ?
 ああ、言葉が足りなかったか?
 俺は片腕を伸ばし、人差し指をベッドの下へと向けて、足りなかったであろう言葉を付けたす。

「ほら、そこに魔法の液体もあるし。ちょちょいと尻を…いや、先にちんこの方が良いかな。とにかく、ちゃちゃっと俺を昇天させてくれ」

 我が天井に悔いなしって、拳を天に突き上げる程の勢いでな!

「……ヨーチ様…」

 …あれ? 何か、ノアの声のトーンが下がったな? てか、尻を掴む手の力が強くなってないか? 指、めり込んでないか、これ? ちょっと痛いぞ? おかしいな? あれ? 何で?

「…手伝ってくれ…ぐえっ!?」

 手伝ってくれるんだよな? って言おうとした俺は、潰された蛙の様な声を出した。
 いや、実際に尻から手を離したノアに圧し掛かられた俺は、脚をおっぴろげて潰された蛙の様な格好になっている。おい、ちんこ潰れたらどうしてくれるんだ。と、叫びたいが。

「あだだだだだだだっ!?」

 が、何でか知らないが、俺はノアに片手で後頭部を鷲掴みにされて、思っていたのとは違う叫び声を上げていた。
 おおおおぉおぉおぉいっ!?
 何で怒ってるんだ!?
 手伝うって言ったよな!?

「この部屋がどう云う部屋か確認した後で、何を言っているんです?」

「いだいっ! あだま割れるっ!! 何怒ってんだよっ!? オナ、自慰の手伝いをしてくれるんだろっ!?」

「何故、自慰になるのですかっ! 私は二人でと言いましたよね!? ここは、その為の部屋だと確認した後で、何故、そうなるのですかっ!!」

 話が違うと怒鳴れば、ノアも負けじと声を張り上げた。

「あ」

 あ、そうか。
 俺、ずっとオナる事しか考えてなかったけど、ノアの手伝いって、そう云う事か!
 CZチャンスゾーン通り越して、AT直撃って事か!

「…え…? 良いのか? …俺が溜まっててイきたいだけなのに?」

 恐る恐る聞けば、ノアは犬耳の幻をペタリと下げて見せた。

「私達は恋人なのですよ? 水臭い事を言わないで下さい。…それに、どちらにせよ交わらなければ、この部屋から出る事は出来ません。…まあ…私としては、そちらでも構いませ…いえ、そちらの方が良い…か? まあじゃん欲に耐え切れなくなったヨーチ様が私に泣いて縋る…あ、良いで」

 最初はしょんもりとした声だったが、段々おかしくなって来たから、俺は慌てて叫ぶ。

「そうだな! 水臭かったよなっ!! 良しっ! 水じゃなくて、青臭い事をしよう!!」

 お前神官だよな!?
 何、人を監禁する様な事を口走っているんだよっ!?
 怖いよっ!!
 
「…そうですか…良いのですか?」

 残念そうに言うなっ!!
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