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おまけ
フラグは続くよ、どこまでも・前編
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ガチャッとした音を立てて山が崩れた。
「あ、悪い」
例によって例の如く、俺は麻雀に興じていた。が、どうにもここ数日は絶不調だ。
…まあ、その原因は解っているんだが。
思わず『はぁ~…』と長い息を吐けば、同卓してる爺さん達が心配そうな顔を向けて来た。
「ヨーチ殿、何処か具合が悪いのですかな?」
「昨日はフリテンリーチで罰符を払ってましたな」
「一昨日はポンからの、うっかりリーチを宣言してましたかの?」
良く覚えてるな、爺さん達。
他の卓に居る爺さん達も、落ち着かない視線を送って来ている。
心配されるのは嬉しいが、何かむず痒い。
「別に具合は悪くないよ。ちょっと寝不足で集中力が欠けてるだけ」
そう、俺は寝不足なんだ。
俺の発言に『二徹、三徹、四徹は余裕のヨーチ殿がっ!?』って、爺さん達が驚いている。おい、お前ら人を何だと思ってんだ。
「てな訳で、俺はここであがる。ノア、後はよろしく~」
けど、そうツッコむ余裕も今の俺には無い。ヒラヒラと手を振りながら、俺は麻雀部屋を後にした。俺が居なくても、もう皆、そこそこ点数計算も出来るし、何より超優秀なノアが居れば大丈夫だろ。
流石に山積みしてて、それを崩すのは駄目だ。この睡眠不足の原因を何とか片付けないと、全然麻雀が楽しめない。それは、人生の過失だ。大損も大損、大損失だ。
「…ここは、もう奥の手しかない」
ぐっと拳を握った俺は、あの部屋へと足を運んだ。
◇
「…あ~…、さっぱりした」
俺が来たのは、精神と時の部屋だ。この部屋は何でも揃っているからな。
そんな至れり尽くせりの部屋でひとっ風呂浴びて、ふわふわのバスローブを身に着けて行く。
「しっかし、神官って清廉なイメージがあったんだけどな。…まあ、お蔭で邪魔は入らないから良いけど」
ぼそっと呟いて、俺はベッドへと腰掛け、そのヘッドに置いてある壺を手に取った。
パカッと蓋を取れば、何か甘い匂いがする。何かの花を使って~とか聞いた気がするが、忘れた。だって仕方がないじゃん。スロや麻雀に関係無い事なんて覚えていられない。俺の脳みそ、そんな容量無い。
「…けど、流石にスロの事は忘れかけてるな…」
まあ、もうスロなんて打てないから良いけど。
とにかく、今はコレだ。
膝の上に乗せてた壺の中へと俺は指を突っ込む。何時もはノアが使ってるから、俺がこうして魔法の液体を使うのは初めてだ。
え? 何に使うのかって?
そんなの決まってる。
ナニだ、ナニ。
「アナニーに決まってんだろっ!」
誰も居ないのを良い事に、俺は声を張り上げる。
ノアは爺さん達に押し付けて来たから、問題無い。だいたい、俺が自らこの部屋に来るなんて思っていないだろう。
「一人でしごいても、全然イけないんだよっ! 一向聴までは行けるけどっ!! 足りないんだよっ!! 代わりに尻は疼くしっ! だからって、幾ら恋人だからって、ノアにオナニーの手伝いなんて頼めないしっ! となれば、もう、禁断のアナニーしかないだろ! 俺のちんこに理性が残っている内に処理しないとなっ!!」
一気に捲し立てて、ぜいぜいと肩で息をした。
そう、全てはノアが悪い。
あいつが俺を気持ち良くさせたのが悪い。
あいつの手で扱かれたり、唇でちゅっちゅされたり、舌で鈴口をちろちろされるのが、とても堪らない。
それと同時に、あの長い指で尻の中を弄られたりしたら、俺の身体は、あっと言う間に天井に到達だ。どんだけゲーム数短縮してんだと言いたい。
と、愚痴愚痴言った処で溜まった物は発散されない。天井だって到達しないと恩恵が発動されない。
「とにかく、ガセじゃなく本前兆を…」
そう、何時までも一向聴止まりじゃ、焼き鳥だ。
せめて聴牌までは持って行きたい。
壺の中に突っ込んでた指を動かして、ぬるっとした液体を掬う。
「何か冷たいな。何時もノアはどうしてたっけ?」
確か、掌でモミモミしてたか?
そう思い出しながら、俺は壺を足元へと置いて、両手をもみ始めた。
こないだもやっぱり恥ずかしくて、俺の頭はいっぱいいっぱいだった。
とにかく俺はマグロで、ノアのされるがままに、早くこの恥ずかしい時間が過ぎれば良いと思っていた。
いや、気持ち良いんだが、自分の喘ぎ声が恥ずかしくて。それをノアに聞かれてるとか、何か、もう居た堪れなくて。顔だって、情けないアヘ顔してる自信がある。
「こんな平凡な顔じゃなくて、可愛かったり、美形だったりすりゃ、絵になるんだろうけど…ん、あったまって来た」
とは言え、長年付き合って来た顔だし、整形したいとかは思わない。
「ん~と…」
ベッドに腰掛けては出来ないな。尻がベッドに埋もれてる。
もぞもぞと俺はベッドへと上がり、こてんと仰向けになって、両膝を立てて脚を開く。うん、恥ずかしい。何だこれ。何のAVだ。何処に需要があるんだ。
「…ん、よ…と…」
って、ちんこが邪魔でやり難いな。尻を拭く時は後ろからだから、後ろからの方がやりやすいか?
そう思った俺は、身体を起こしてバスローブを脱いで、雌豹のポーズを取った。
うん、ますますAVっぽいが、残念ながら主演は俺だ。
「…ん…届く…けど…」
けど、だ。
洗ったとは云え、尻の穴に触るのは、やっぱ、抵抗がある。良くノアは触れるな。しかし、これを乗り越えないと天井には辿り着けない。レア役引いても、ウンともスンとも言わない、あの虚無の時間と比べたら、これはちゃんと終わりが見えているんだ。天井直前でレア役引いて、はいはい、ハイワロハイワロと思っていたら本前兆で、何度も涙を飲んだよな? これは、それとは違う。ちゃんと天井に辿り着けて、恩恵を授かれるんだ。頑張れ、俺。
「ノアの指だと思え…って、ノアの指にはスロタコは無いか…」
「私の指がなんです?」
呟きながら、穴の周りを指で撫でていたら、何か聞こえた。
「………………」
空耳だ、空耳。
「一人で何をしているんです?」
「………………………」
近付いて来る空耳に、俺はガックンガクンと暫く回されていない、スロのリールの様な動きで後ろを振り返った。
「良い眺めですが、私以外の誰かが来たらどうするつもりだったんですか?」
「…ひょ…っ…!!」
何でお前が居るんだ!?
麻雀はどうしたっ!?
ってのが、顔に出ていたんだろう。
「ヨーチ様の具合が悪そうでしたので、親のトリプル役満あがって沈めて来ました」
と、しれっとツンドラな空気を纏わせて言ってくれた。
「ほあっ!?」
役満なんて、和了ろうと思って和了れるもんじゃないからな!? だから、役満ってんだし! しかもトリプルなんて、どれだけの確率だよ!? てか、老い先短い爺さん達の寿命を縮める事をするなっ!!
「沈めてからヨーチ様のお部屋に行けば、姿が見えないし…探しましたよ」
そう言いながら、ノアが近付いて来る。
心配してくれるのは嬉しいが、それならそれでそれらしい表情をしろ。ツンドラな空気を振り撒いて来るな。
「…それで、私の指がなんですって?」
「ひょいっ!?」
ツンドラな空気に固まっていた俺は、ノアに尻を向けたままだった。その尻を、ベッドに上がって来たノアが、がしりと両手で掴んだ。
「私の指では物足りないから、自身で慰めていたと? この、可愛いお尻を?」
違うっ!!
逆だ、ボケッ!!
てか、俺の尻と会話すなっ!!
と、叫びたいが、ツンドラな空気にカチカチに凍らされた俺は『あ゙』とか『ぅ゙』とかの情けない声しか出せない。
「…いえ…この部屋に閉じ籠もった事が答えですよね…」
と、思ってたら、途端にしょんぼりとした声と表情になって、カチカチの俺は解凍された。
「…答えって何だよ?」
何、一人で納得してしょんぼりしてるんだ?
垂れた尻尾と犬耳の幻が見えて来るだろ、やめろ。
「この部屋が何か忘れたのですか?」
「は? 便利な精神と時の部屋だろ?」
「………………………………」
おい、何だ、その沈黙は。
何、残念な生き物を見る目をしてるんだ。
確かに、前だけじゃイけない残念な俺だけど。
やめろ、俺をそんな目で見るな。追い打ちをかけるな。
「…………交わらないと出られない部屋ですが…」
「あ」
「あ、悪い」
例によって例の如く、俺は麻雀に興じていた。が、どうにもここ数日は絶不調だ。
…まあ、その原因は解っているんだが。
思わず『はぁ~…』と長い息を吐けば、同卓してる爺さん達が心配そうな顔を向けて来た。
「ヨーチ殿、何処か具合が悪いのですかな?」
「昨日はフリテンリーチで罰符を払ってましたな」
「一昨日はポンからの、うっかりリーチを宣言してましたかの?」
良く覚えてるな、爺さん達。
他の卓に居る爺さん達も、落ち着かない視線を送って来ている。
心配されるのは嬉しいが、何かむず痒い。
「別に具合は悪くないよ。ちょっと寝不足で集中力が欠けてるだけ」
そう、俺は寝不足なんだ。
俺の発言に『二徹、三徹、四徹は余裕のヨーチ殿がっ!?』って、爺さん達が驚いている。おい、お前ら人を何だと思ってんだ。
「てな訳で、俺はここであがる。ノア、後はよろしく~」
けど、そうツッコむ余裕も今の俺には無い。ヒラヒラと手を振りながら、俺は麻雀部屋を後にした。俺が居なくても、もう皆、そこそこ点数計算も出来るし、何より超優秀なノアが居れば大丈夫だろ。
流石に山積みしてて、それを崩すのは駄目だ。この睡眠不足の原因を何とか片付けないと、全然麻雀が楽しめない。それは、人生の過失だ。大損も大損、大損失だ。
「…ここは、もう奥の手しかない」
ぐっと拳を握った俺は、あの部屋へと足を運んだ。
◇
「…あ~…、さっぱりした」
俺が来たのは、精神と時の部屋だ。この部屋は何でも揃っているからな。
そんな至れり尽くせりの部屋でひとっ風呂浴びて、ふわふわのバスローブを身に着けて行く。
「しっかし、神官って清廉なイメージがあったんだけどな。…まあ、お蔭で邪魔は入らないから良いけど」
ぼそっと呟いて、俺はベッドへと腰掛け、そのヘッドに置いてある壺を手に取った。
パカッと蓋を取れば、何か甘い匂いがする。何かの花を使って~とか聞いた気がするが、忘れた。だって仕方がないじゃん。スロや麻雀に関係無い事なんて覚えていられない。俺の脳みそ、そんな容量無い。
「…けど、流石にスロの事は忘れかけてるな…」
まあ、もうスロなんて打てないから良いけど。
とにかく、今はコレだ。
膝の上に乗せてた壺の中へと俺は指を突っ込む。何時もはノアが使ってるから、俺がこうして魔法の液体を使うのは初めてだ。
え? 何に使うのかって?
そんなの決まってる。
ナニだ、ナニ。
「アナニーに決まってんだろっ!」
誰も居ないのを良い事に、俺は声を張り上げる。
ノアは爺さん達に押し付けて来たから、問題無い。だいたい、俺が自らこの部屋に来るなんて思っていないだろう。
「一人でしごいても、全然イけないんだよっ! 一向聴までは行けるけどっ!! 足りないんだよっ!! 代わりに尻は疼くしっ! だからって、幾ら恋人だからって、ノアにオナニーの手伝いなんて頼めないしっ! となれば、もう、禁断のアナニーしかないだろ! 俺のちんこに理性が残っている内に処理しないとなっ!!」
一気に捲し立てて、ぜいぜいと肩で息をした。
そう、全てはノアが悪い。
あいつが俺を気持ち良くさせたのが悪い。
あいつの手で扱かれたり、唇でちゅっちゅされたり、舌で鈴口をちろちろされるのが、とても堪らない。
それと同時に、あの長い指で尻の中を弄られたりしたら、俺の身体は、あっと言う間に天井に到達だ。どんだけゲーム数短縮してんだと言いたい。
と、愚痴愚痴言った処で溜まった物は発散されない。天井だって到達しないと恩恵が発動されない。
「とにかく、ガセじゃなく本前兆を…」
そう、何時までも一向聴止まりじゃ、焼き鳥だ。
せめて聴牌までは持って行きたい。
壺の中に突っ込んでた指を動かして、ぬるっとした液体を掬う。
「何か冷たいな。何時もノアはどうしてたっけ?」
確か、掌でモミモミしてたか?
そう思い出しながら、俺は壺を足元へと置いて、両手をもみ始めた。
こないだもやっぱり恥ずかしくて、俺の頭はいっぱいいっぱいだった。
とにかく俺はマグロで、ノアのされるがままに、早くこの恥ずかしい時間が過ぎれば良いと思っていた。
いや、気持ち良いんだが、自分の喘ぎ声が恥ずかしくて。それをノアに聞かれてるとか、何か、もう居た堪れなくて。顔だって、情けないアヘ顔してる自信がある。
「こんな平凡な顔じゃなくて、可愛かったり、美形だったりすりゃ、絵になるんだろうけど…ん、あったまって来た」
とは言え、長年付き合って来た顔だし、整形したいとかは思わない。
「ん~と…」
ベッドに腰掛けては出来ないな。尻がベッドに埋もれてる。
もぞもぞと俺はベッドへと上がり、こてんと仰向けになって、両膝を立てて脚を開く。うん、恥ずかしい。何だこれ。何のAVだ。何処に需要があるんだ。
「…ん、よ…と…」
って、ちんこが邪魔でやり難いな。尻を拭く時は後ろからだから、後ろからの方がやりやすいか?
そう思った俺は、身体を起こしてバスローブを脱いで、雌豹のポーズを取った。
うん、ますますAVっぽいが、残念ながら主演は俺だ。
「…ん…届く…けど…」
けど、だ。
洗ったとは云え、尻の穴に触るのは、やっぱ、抵抗がある。良くノアは触れるな。しかし、これを乗り越えないと天井には辿り着けない。レア役引いても、ウンともスンとも言わない、あの虚無の時間と比べたら、これはちゃんと終わりが見えているんだ。天井直前でレア役引いて、はいはい、ハイワロハイワロと思っていたら本前兆で、何度も涙を飲んだよな? これは、それとは違う。ちゃんと天井に辿り着けて、恩恵を授かれるんだ。頑張れ、俺。
「ノアの指だと思え…って、ノアの指にはスロタコは無いか…」
「私の指がなんです?」
呟きながら、穴の周りを指で撫でていたら、何か聞こえた。
「………………」
空耳だ、空耳。
「一人で何をしているんです?」
「………………………」
近付いて来る空耳に、俺はガックンガクンと暫く回されていない、スロのリールの様な動きで後ろを振り返った。
「良い眺めですが、私以外の誰かが来たらどうするつもりだったんですか?」
「…ひょ…っ…!!」
何でお前が居るんだ!?
麻雀はどうしたっ!?
ってのが、顔に出ていたんだろう。
「ヨーチ様の具合が悪そうでしたので、親のトリプル役満あがって沈めて来ました」
と、しれっとツンドラな空気を纏わせて言ってくれた。
「ほあっ!?」
役満なんて、和了ろうと思って和了れるもんじゃないからな!? だから、役満ってんだし! しかもトリプルなんて、どれだけの確率だよ!? てか、老い先短い爺さん達の寿命を縮める事をするなっ!!
「沈めてからヨーチ様のお部屋に行けば、姿が見えないし…探しましたよ」
そう言いながら、ノアが近付いて来る。
心配してくれるのは嬉しいが、それならそれでそれらしい表情をしろ。ツンドラな空気を振り撒いて来るな。
「…それで、私の指がなんですって?」
「ひょいっ!?」
ツンドラな空気に固まっていた俺は、ノアに尻を向けたままだった。その尻を、ベッドに上がって来たノアが、がしりと両手で掴んだ。
「私の指では物足りないから、自身で慰めていたと? この、可愛いお尻を?」
違うっ!!
逆だ、ボケッ!!
てか、俺の尻と会話すなっ!!
と、叫びたいが、ツンドラな空気にカチカチに凍らされた俺は『あ゙』とか『ぅ゙』とかの情けない声しか出せない。
「…いえ…この部屋に閉じ籠もった事が答えですよね…」
と、思ってたら、途端にしょんぼりとした声と表情になって、カチカチの俺は解凍された。
「…答えって何だよ?」
何、一人で納得してしょんぼりしてるんだ?
垂れた尻尾と犬耳の幻が見えて来るだろ、やめろ。
「この部屋が何か忘れたのですか?」
「は? 便利な精神と時の部屋だろ?」
「………………………………」
おい、何だ、その沈黙は。
何、残念な生き物を見る目をしてるんだ。
確かに、前だけじゃイけない残念な俺だけど。
やめろ、俺をそんな目で見るな。追い打ちをかけるな。
「…………交わらないと出られない部屋ですが…」
「あ」
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