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おまけ
俺、年越しする・中編
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ノアに姫抱っこされて、神殿の中に戻れば、爺様達にえらい心配された。
ギックリだの、牌より重い物を持つからだの、足の骨を折ったのだの…うん、ちょっと俺を何だと思っているのか問い質したい。いや、やっぱ問い質したくない。爺様達じゃ雪掻きは辛いだろうと、仏心を出したのが間違いだった。
けど、ノアが風邪を引いて発熱したと話せば、爺様達の手により、俺の部屋は直ぐ様に暖められ、俺はぬっくぬっくのベッドへと突っ込まれた。
…まあ、心配してくれてるのは嬉しい。
「あー、おひさまのにほいがする」
って、風邪なんて引いてないし、熱も出ていないんだが。
まあ、疲れたし、一休みするかな。
「早く良くなって下され。まあじゃんをしながら、新しい年を迎えるのが、儂らの楽しみなのですじゃ」
あったかい胃に優しいスープを手に、ロマノフ爺さんがやって来れば、ベッドの脇に椅子を持って来て座ってたノアのこめかみがピクリと動いた。
…やっぱ、麻雀嫌いなんだ。
俺が麻雀好きだから、同じく好きになりたいって言ってたしな。
俺の好きな物に興味を持ってくれるのは嬉しいし、更にそれを好きになってくれたら、もっと嬉しい。
けど、嫌々とそれに付き合って貰っても嬉しくない。
…だからの、狙い撃ちなのか?
「まあじゃんは毎日毎日飽きもせずにやっているでしょう? 新しい年を迎える日ぐらい、粛々と過ごしても罰はあたりませんよ」
ロマノフ爺さんから、スープの入った皿が乗ったトレイを受け取りながら、ノアが淡々とツンドラな息を吐く。
「ほっ…、そ、そうですな…邪竜の脅威から解放されて、初めての年明けですからの…ふむ…」
顎に手をあてて真面目な事を呟きながら、ロマノフ爺さんは部屋を出て行った。
いや、ツンドラな空気な中、ノアと二人きりにするなよ。爺さんのくせに、逃げ足が早い。いや、爺さんだからか? 麻雀だって、逃げるとなったら、きっちりと逃げ切るからな。何度、追っ掛けリーチして逃げられた事か。
「はい、どうぞ」
「んあ?」
そんな事を考えていたら、何時の間にか目の前に木製の匙があった。
「口を開けて下さい」
こ、これは…っ…!?
バカップル定番の『あ~ん』ではっ!?
「やめろ! 似合わない事をするな!」
まさかの『あ~ん』に、俺は慌てて起き上がった。
ツンドラのくせに、何を考えているんだ。
こんな、確定演出は要らない。
てか、真顔で『あ~ん』なんてするなよ、怖いだろうが。
「…身体を動かすのが辛いかと思ったのですが…」
だから!
そこでしょぼくれるなよ!
「別に風邪なんて引いていないし、熱もないし、身体が辛くなるのは、筋肉痛になる明日だ!」
悲しいけど、これ現実。
学生の頃は、その日の内に筋肉痛になったけど、今は翌日へ持ち越しだ。持ち越すのは、天井ゲーム数だけで良い。
「そうなのですか? あんなに険しい表情をされていたので、てっきり…そうですか…何ともないのですか…」
いや、そんなガッツリ肩を落とすなよ。
「…寝込んで下されば、このまま新年を二人で迎えて、新しい朝陽に照らされながら新たな愛の誓いを」
「おおおいいぃいぁあぃっ!?」
何か、さらりとこいつとんでもない事を言わなかったか!?
このまま閉じ籠もって、姫始めを…って、俺には聞こえたんですけどっ!?
「あ、あのな!? 俺の世界には大晦日…その年の終わりの日に、鐘を突くイベントがあるんだよっ!!」
冗談じゃない!
俺の尻が壊れる!
壊れるのは、特化ゾーンだけで良いんだよ!
「オオミソカ? 鐘…チャペルですか?」
どんな変換してくれてらっしゃるんですかね!?
それは、結婚式だろがっ!!
「…除夜の鐘って言ってな、ゴォン、ゴォンって、五臓六腑に響く音だ。………それを108回鳴らすと、悪い気が飛んで行くんだよ」
本当は、煩悩だけど。
俺から、煩悩を取ったら何が残る?
スロも麻雀も、俺の趣味で生き甲斐なんだ。
「ヨーチ樣の世界にも、その様な神聖な儀式があるのですね…。私達は、この一年を無事に過ごせた事への感謝と、また新たな一年を無事に過ごせる様にと神へ祈りを捧げながら、その年を終え、新たな一年を迎えます」
待て。
『も』って、何だ。
『も』って。
俺の世界を…俺を何だと思っているんだ。
俺だって、年がら年中スロや麻雀やってた訳じゃないぞ。たまには仕事もしてたぞ。金がなきゃスロも麻雀も出来ないからな。
てか、ムカつく。
こいつ、俺の事が好きなんだよな?
いや、俺もこいつの事を好きになってしまったけど。これが、好きな奴に対する物言いか?
「そうです。では、チャペルを鳴らしながら、新たな年の幕開けを祝いましょう」
いや?
待て?
何で俺の両手を取る?
そして、何故に指を絡める?
激熱って文字が浮かんでいそうな、保留玉の様な目で俺を見るな。
何の演出だよ、これ?
チャペルに拘るなよ。
絡めた指をにぎにぎするな。
やめろ。
大晦日を新婚初夜にする気か?
いや、それ以前に、今、まさに俺を押し倒そうとしているな? スープ皿はどうした? あ、何時の間にかベッド脇のチェストに移動させてやがる。
今、お前の頭の中では、チャペルが鳴り響いているのか? 俺の頭の中では『ドアが開いています』の警告音が鳴り響いているけどな!
身体が辛いだろうって、口にしたのは誰だよ?
お前だろうが!
明日、筋肉痛になるって、俺言ったよな? それに上乗せするな!
この、生臭エロ神官がっ!!
「じょっ、除夜の鐘を鳴らそう!!」
こいつの煩悩を取っ払ってやるっ!!
ギックリだの、牌より重い物を持つからだの、足の骨を折ったのだの…うん、ちょっと俺を何だと思っているのか問い質したい。いや、やっぱ問い質したくない。爺様達じゃ雪掻きは辛いだろうと、仏心を出したのが間違いだった。
けど、ノアが風邪を引いて発熱したと話せば、爺様達の手により、俺の部屋は直ぐ様に暖められ、俺はぬっくぬっくのベッドへと突っ込まれた。
…まあ、心配してくれてるのは嬉しい。
「あー、おひさまのにほいがする」
って、風邪なんて引いてないし、熱も出ていないんだが。
まあ、疲れたし、一休みするかな。
「早く良くなって下され。まあじゃんをしながら、新しい年を迎えるのが、儂らの楽しみなのですじゃ」
あったかい胃に優しいスープを手に、ロマノフ爺さんがやって来れば、ベッドの脇に椅子を持って来て座ってたノアのこめかみがピクリと動いた。
…やっぱ、麻雀嫌いなんだ。
俺が麻雀好きだから、同じく好きになりたいって言ってたしな。
俺の好きな物に興味を持ってくれるのは嬉しいし、更にそれを好きになってくれたら、もっと嬉しい。
けど、嫌々とそれに付き合って貰っても嬉しくない。
…だからの、狙い撃ちなのか?
「まあじゃんは毎日毎日飽きもせずにやっているでしょう? 新しい年を迎える日ぐらい、粛々と過ごしても罰はあたりませんよ」
ロマノフ爺さんから、スープの入った皿が乗ったトレイを受け取りながら、ノアが淡々とツンドラな息を吐く。
「ほっ…、そ、そうですな…邪竜の脅威から解放されて、初めての年明けですからの…ふむ…」
顎に手をあてて真面目な事を呟きながら、ロマノフ爺さんは部屋を出て行った。
いや、ツンドラな空気な中、ノアと二人きりにするなよ。爺さんのくせに、逃げ足が早い。いや、爺さんだからか? 麻雀だって、逃げるとなったら、きっちりと逃げ切るからな。何度、追っ掛けリーチして逃げられた事か。
「はい、どうぞ」
「んあ?」
そんな事を考えていたら、何時の間にか目の前に木製の匙があった。
「口を開けて下さい」
こ、これは…っ…!?
バカップル定番の『あ~ん』ではっ!?
「やめろ! 似合わない事をするな!」
まさかの『あ~ん』に、俺は慌てて起き上がった。
ツンドラのくせに、何を考えているんだ。
こんな、確定演出は要らない。
てか、真顔で『あ~ん』なんてするなよ、怖いだろうが。
「…身体を動かすのが辛いかと思ったのですが…」
だから!
そこでしょぼくれるなよ!
「別に風邪なんて引いていないし、熱もないし、身体が辛くなるのは、筋肉痛になる明日だ!」
悲しいけど、これ現実。
学生の頃は、その日の内に筋肉痛になったけど、今は翌日へ持ち越しだ。持ち越すのは、天井ゲーム数だけで良い。
「そうなのですか? あんなに険しい表情をされていたので、てっきり…そうですか…何ともないのですか…」
いや、そんなガッツリ肩を落とすなよ。
「…寝込んで下されば、このまま新年を二人で迎えて、新しい朝陽に照らされながら新たな愛の誓いを」
「おおおいいぃいぁあぃっ!?」
何か、さらりとこいつとんでもない事を言わなかったか!?
このまま閉じ籠もって、姫始めを…って、俺には聞こえたんですけどっ!?
「あ、あのな!? 俺の世界には大晦日…その年の終わりの日に、鐘を突くイベントがあるんだよっ!!」
冗談じゃない!
俺の尻が壊れる!
壊れるのは、特化ゾーンだけで良いんだよ!
「オオミソカ? 鐘…チャペルですか?」
どんな変換してくれてらっしゃるんですかね!?
それは、結婚式だろがっ!!
「…除夜の鐘って言ってな、ゴォン、ゴォンって、五臓六腑に響く音だ。………それを108回鳴らすと、悪い気が飛んで行くんだよ」
本当は、煩悩だけど。
俺から、煩悩を取ったら何が残る?
スロも麻雀も、俺の趣味で生き甲斐なんだ。
「ヨーチ樣の世界にも、その様な神聖な儀式があるのですね…。私達は、この一年を無事に過ごせた事への感謝と、また新たな一年を無事に過ごせる様にと神へ祈りを捧げながら、その年を終え、新たな一年を迎えます」
待て。
『も』って、何だ。
『も』って。
俺の世界を…俺を何だと思っているんだ。
俺だって、年がら年中スロや麻雀やってた訳じゃないぞ。たまには仕事もしてたぞ。金がなきゃスロも麻雀も出来ないからな。
てか、ムカつく。
こいつ、俺の事が好きなんだよな?
いや、俺もこいつの事を好きになってしまったけど。これが、好きな奴に対する物言いか?
「そうです。では、チャペルを鳴らしながら、新たな年の幕開けを祝いましょう」
いや?
待て?
何で俺の両手を取る?
そして、何故に指を絡める?
激熱って文字が浮かんでいそうな、保留玉の様な目で俺を見るな。
何の演出だよ、これ?
チャペルに拘るなよ。
絡めた指をにぎにぎするな。
やめろ。
大晦日を新婚初夜にする気か?
いや、それ以前に、今、まさに俺を押し倒そうとしているな? スープ皿はどうした? あ、何時の間にかベッド脇のチェストに移動させてやがる。
今、お前の頭の中では、チャペルが鳴り響いているのか? 俺の頭の中では『ドアが開いています』の警告音が鳴り響いているけどな!
身体が辛いだろうって、口にしたのは誰だよ?
お前だろうが!
明日、筋肉痛になるって、俺言ったよな? それに上乗せするな!
この、生臭エロ神官がっ!!
「じょっ、除夜の鐘を鳴らそう!!」
こいつの煩悩を取っ払ってやるっ!!
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