矢は的を射る

三冬月マヨ

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番外編

オセロじゃない・3(※リバ)

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「うご…っ…!」

 力を抜こうとしてはいる。
 いるんだけど…ろーたのチンコ、本当にずっしりどっしりと存在感があり過ぎんだよっ!!
 なんとか、ぐにぐにと亀の子が挿入はいったけど、竿はまだだ。
 汗に塗れて、ふーふーと息を吐くろーたは辛そうで、見てるこっちも苦しくなる。
 いや、物理的に苦しいけど、それは脇へ投げて、心理的、感情的にも。
 羽間はざまのアホ、ボケ、カス。
 って、違うか。
 俺が怖がらないで、ちゃんとディルドとか使ってれば良かったんだ。
 けど、怖いのもあるけどさ…指は仕方ないとしても…チンコれんなら、ろーたのしか欲しくなかったんだよ…。
 うう…俺って、我が儘。
 やっぱ、まだまだガキだ。
 でも…まあ…良かったな…俺の…こんな立派じゃなくて。
 俺、ここまで辛くなかったし、ろーたも多分、そうだった筈だ。

「んあ…っ…!」

 何か、変に安心したせいか、力が抜けたんだと思う。
 ぐぬって、ろーたのチンコが動いた。
 けど、それは亀の歩みみたいなもんだ。亀だけに。

「…穂希ほまれ…やはり…後ろからの方が…」

 片方の腕で額に浮かぶ汗を拭いながら、ろーたが言う言葉に俺は噛み付く。

「ぜっっっっってえ、嫌だ!! ろーたの顔見ながらするっ!!」

 ろーたの感じてる顔が見てーんだよ!
 俺の中で感じて、俺の中でイくトコが見たい!

「い、いや、しかし…穂希辛そうだし…俺の…ほら…無駄に大きいし…」

 無駄ぁっ!?
 何が!?

「無駄なんかじゃねーっ!! ろーたに無駄なトコなんて、無駄なモンも、何一つねーよっ!!」

 ガシッて腰を掴むろーたの腕を掴めば、ろーたが驚いた様に、目を瞬かせた。

「ほ…まれ…」

「綺麗に丁寧に箸を持って食べんのとか、ピンと背筋伸ばすのとかっ! 髭の剃り残しとか! ちょっと緩くなった靴下は部屋用に使うとか! 薄くなったタオルは重ねて縫って雑巾にしたりとかっ!! フダンシ爆発して悶えたりしてるトコとかっ!! ぜんぶ、ぜえーんぶっ、ろーただし! そんなろーたがっ、好きなんだかんなっ!!」

「待てっ!! 解った、解ったから落ち着いてくれ!!」

 ろーたに負けず劣らず鼻息荒く、ふーふーとしながら言えば、ろーたは自由な方の手で赤くなった顔を隠して、もう片方の手は俺が掴んでるせいか、ぶるぶると震わせながら、そう叫んで来た。
 …まあ、ふーふーしてんのは、ろーたのチンコが中途半端に引っ掛かってるせいもあるんだろうけど。
 ずっとこのままなんて訳にはいかない。
 ろーたも、俺も辛い。
 怒って興奮したせいか、苦しさとかどっか飛んでった気がする。
 いや、チンコに慣れて来たって言った方が良いのか? どっちでもいっか。

「…少し…楽になった気がするし…もっと挿れてもいんじゃね?」

 俺ん中にチンコ突っ込んでるくせに、真っ赤になってるのが可愛くて笑いながら言えば、ろーたは赤い顔のままで頷いた。

 ぐっ、ぐっ、ぬっ、ぬって、ろーたのチンコが奥へ奥へと挿入って来る。
 笑ったりしたせいで、変に強張ってた身体は解れたけど、やっぱ苦しい。
 腹が圧し上げられるってか、腹ん中が圧迫されるってか。
 けど、ろーたは言った。
 気持ち良いとか、心地良いとかは、俺にはまだ解んねーけど。
 けど、幸せだってのは解る。
 ろーたが、俺の中に居る。
 それだけで、嬉しい。
 熱くて、どくどくと、脈打ってるそれが居るのが嬉しい。
 ろーたも、俺が中に居る時はこんな気持ちなのかな?
 そうだと良いな。
 そうなら嬉しいな。
 おんなじ幸せを感じてくれてんなら、最高に嬉しいし、幸せだ。

「…ろーた…」

 両手を思い切りろーたの方へと伸ばせば、身体を倒して来てくれる。
 ぽたりぽたりと汗を落としながら。
 でも、優しく笑いながら。
 首に腕を回して引き寄せて、近付いて来た唇に軽く俺の唇を合わせれば『ふっ』て、ろーたが息を吐いて、頭を撫でてくれた。

「…ありがとう…」

 なんで、ろーたが礼を言うんだろ。
 礼を言いたいのは、俺なのに。
 そう言おうと思った。
 けど、頑張ったなって感じで、優しく頭を撫でてくれるのが嬉しくて、やっぱり、それが幸せで。

「愛してんぞ」

 気が付いたら、そんな言葉を口にしていた。
 頭を撫でていたろーたの手が、ぴたりと止まる。

「…そ、んな…」

「…ろーた?」

 顔を赤くしたり青くしたり、目は落ち着きなくうろうろさせるろーたに、俺は一気に不安になった。
 もしかして、言ったら駄目なヤツだった?
 ガキのくせに何言ってんだって、思われた?
 え? 俺、ろーたに嫌われる?
 いや、嫌われた?
 チンコ挿れたまんまで?

「ろ、ろーた…今の…」

「…また、先を越された…」

 今の無しって言おうとしたら、目を真っ赤にしたろーたが呟いた。

「へ?」

 間抜けな声を出した俺に、ろーたが眉をへにゃりと下げて、困った様に笑った。

「本当に、穂希には何時も驚かされる…」

 けど、声は全然困ってなくて。
 優しくて嬉しそうな、そんな声だ。

「え、なにが?」

 俺、驚かせてるつもりなんてねーけど?

「夢で穂希に"愛してる"って言われたから、現実では俺が先に言おうと思っていたのに…」

 なにっ!?

「え? え? ろーた、俺の夢見た? 夢ん中の俺、どうだった?」

 ろーたが俺の夢を見てくれてた?
 何それ?
 そんな嬉しい事、もっと先に教えてくれよ。
 てか、何で夢の中の俺に先越されてんだよ!
 俺のくせに、何言ってんだよ!

「…少し強引だったが…格好良かった…」

 んおっ!?

「え、マジ!?」

 めちゃくちゃ顔を赤くして言うろーたに、俺は瞬きを繰り返す。
 信じらんねーけど、嘘なんかじゃない。
 ろーたの顔を見れば解る。
 照れてるけど、めっちゃ嬉しそうってか、嬉しかったんだな。

「ああ」

 その証拠に、ろーたは迷いなく、力強く頷いてくれた。
 夢は願望を映す鏡って言うもんな。
 そっか、強引なのが良いのか。
 で、ろーたは俺に格好良くなっ…って…。

「…て、今の俺は、やっぱ格好良くねーって事じゃん…」

 思わずしょぼくれた俺の耳に、ふはって噴き出したろーたの声が聞こえた。

「…笑うなよ…」

「いや。穂希は、可愛いし…格好良いよ」

「なんか、おまけみたいに言われた…」

 カッコいいより、可愛いが先に来るんだな。
 で、イイ男とは言われないんだな…トホホだ。

「いや、本当に。こんなに、真っ直ぐ体当たりして来てくれるのなんて、穂希しかいない。…穂希の壁になりたいだなんて、到底無理な話だった」

 でも、頭撫でながら言われたそれが、無性に嬉しくて。
 ろーたの手が、目が、声が優しくて。
 褒められてんのか、おだてられてんのか、とにかく、その言葉にめちゃくちゃに気持ちが持ち上げられて、身体も何か軽くなった気がする。
 俺って、単純だ。いや、知ってたけど。

「…俺はろーたの壁になって見守るとか、ぜってぇ無理。壁になったら、手ぇ出せねーじゃん」

 壁、かあ。
 壁になりたいってのは、フダンシ用語だ。
 推しや、そのCPを無機質な壁になって、その様子を見守るってヤツ。
 少しでもフダンシの…ろーたの気持ちを知りたくて、BL読み出したけどさ、俺に壁は無理。
 BLに出て来るヤツら、皆、ろーたに変換して読んでるせいか、手ぇ出したくなるじゃん。
 それを、抑えるなんて、本当に無理。俺は、壁になんてなれない。

「ああ、そうだな」

 ちょっと唇を尖らせて言ったせいか、拗ねてるって思われたのか?
 苦笑したろーたが、俺の頭を撫でてたその手を頬に持って来た。
 あんなに綺麗に箸を持つ手が、この指が、俺の中にあったんだと思うと、ぞくぞくする。
 すりって、頬を動かせば、その指先がピクピクって震えてるのに気付いた。

「…笑うなよ」

「笑ってない」

「笑ってんだろ! 腹震えてるし、中でチンコ動いてんだよっ!!」

「あ…」

「あ。じゃ、ねーっ!! こんだけくっついてんのに、バレねー訳ねーだろ!」

 尻ん中にチンコ挿れたままでろーたは身体を倒してて、右手は俺の顔にあって、曲げた左腕で身体を支えている状態だ。で、俺のチンコに、ろーたの腹があたってんだよ。その微妙に伝わる振動のせいで、しおしおと萎れてた俺のチンコが、復活しつつあったりする。

「…ああ…」

 ろーたも、それに気付いたのか…何か…何だか嬉しそうに…へにゃって眉を下げた。

「…そうだな…動いても良いか?」

 それなのに、その笑顔はなんだったんだって、言いたくなるぐらいに強い…雄みの溢れる目で見詰められて、俺の心臓がバックンッて鳴った。
 だから、ずりーんだよ、その顔。
 いきなり変わるなよ。

「お、あ…う、の、望むところだ! かかって来い!!」

 何か、言い方を間違えた気がしなくもない。
 けど、雄み溢れるろーたに飲まれそうになったから、つい、飲まれてたまるかって思っちゃったんだよな。受け(覚えた)なら、ここは『うん』一択なんだろうな。でも、これが俺なんだから、仕方ねーよな?
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