神様には頼らない

三冬月マヨ

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ペアルック

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「あ? ホワイトデーに何をあげたら良いかって? あ? お前、それ本気で言っているのか?」

 レンが座椅子に背中を預けて、天井を仰ぎながらそう言って来た。

「ああ、俺は何時だって本気だ。俺の辞書に手抜きと云う文字は無い」

 先月は散々な目に遭った。
 チン毛も剃られて、ゼブラなチョコにトッピングされた。
 だが、俺は学んだ。
 性女なんかに頼ったのが間違いだったんだ。
 ここはやっぱり、同じ男で年配者の意見を尊重するべきだと。
 そんな訳で、レン、お前の出番だ。
 さあ、年配者の知恵と経験を俺にくれ。
 前世では孫も居たんだろ?
 頼むぞ、レンじい。

「ってもなあ、お前があげた物なら、あいつは何だって泣いて喜ぶだろ? 抱き潰されるのは間違いない」

 だから、何で抱き潰されるのが確定してるんだ。

「それによお、俺が若い時はホワイトデーって、そんな騒ぐ物でも無かったしなあ」

 くっ、ジェネレーションギャップかっ!!

「とにかく。別にホワイトデーに拘らなくても良い。お前は、前世でプレゼントとか貰った経験があるんだろ? 何を貰ったとか、そんなので良い。あ、裸リボンや、乳首やちんこにホワイトチョコを塗り付けたりするのは無しで」

 俺のその言葉に、レンがカッと目を見開いて、座椅子ごと後ろにずり下がった。
 おい!

「…え…そんなプレイしてるのか…?」

 おい、ドン引くな。
 俺も、つい口にして後悔してるんだ。
 けど、万が一って事があるだろ?
 念の為の確認だ。

「俺達がどんなプレイをしようとお前には関係の無い事だ。さあ、知恵を寄越せ」

 お願いお口さん、余計な事を言わないで。
 本当にもう、俺、このお口さんと添い遂げるしか無いのかも。

「んーあーそーだなあ…まあ…男の浪漫って言ったら、やっぱ…いや、止めとく。お前がかわいそすぎる…」

 レンがぐしゃぐしゃと髪を掻き回して言うが、男の浪漫と聞かされて黙っていられる筈が無い。

「俺の事はどうでも良い。オニキスが喜ぶか喜ばないか、それだけだ」

「…まあ、喜ぶだろうよ。まあ、その昔だな…―――――――――」

 ◇

 そして、ホワイトデー当日。
 寝室の布団の上で、俺は遠い目をしていた。

「…何で…オニキスまで、そんな格好してんの?」

 俺がそう聞けば、目の前に座るオニキスが真面目な顔で頷く。

「ふむ。ホワイトデーとは、バレンタインにチョコを貰った者が、返礼をする日なのだろう? マリエルにそなたが喜ぶ物を、と、言ったら、こうなったのだ」

 …マリエルェ…。

『その昔だな、ノーパン喫茶ってのがあってな? フリルの付いた白いエプロンに、あ、勿論裸エプロンな。エプロンはしっかり胸を隠すヤツ。バニーの耳付けて、脚はさ、ここ…太腿までの白いストッキングとかを、ガーターベルトっての? あれで、引っ張ってさ、で、その後ろ姿がな? 結ばれたリボンがゆらゆら揺れててさ、ガーターベルトのレースとかがさ、また、尻を見えそうで見えなくしてて、まあ、床は全面鏡なんだがな? でも、お触りもお持ち帰りも禁止なんだよな~、これが』

 とのレンの言葉を、俺は思い出していた。
 そう、俺たち二人は、今、正に、そんな格好をしていた。
 因みに、オニキスはフリフリの黒いエプロンに、黒の網タイツ、頭には黒い兎の耳がついたカチューシャ。俺はフリフリの白いエプロンに、白の網タイツ、そして頭には白い兎の耳が付いたカチューシャだ。
 うん。レンもマリエルも、やはり同類だったと云うのが証明された。
 もう、あの二人には何も聞くまい。
 俺は固く決意した。
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