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とあるストーカーのストーカー
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今日も今日とて、魔王様はどちらへ行かれるのでしょうか?
いい加減、気になった私は、こっそりと後を付けてみる事にしました。
新たな勇者が誕生したと聞かされた日から、魔王様は何やら楽しそうに見えます。
鬱々としていた物が消えた様な、そんな感じがします。
何ででしょうか?
魔王様は、鼻歌を歌っています。
地の底から響く声で、ちょっと、いや、かなり不気味です。
小さい子が聞いたら、お漏らししそうです。
気のせいだとは思うのですが、頭に花が咲いている様にも見えます。
いけませんね、疲れているのでしょうか?
ああ、そうこうしている内に、人間が住む街まで来てしまいました。
こんな処に何があると云うのでしょうか?
はっ。
まさか、最近ご機嫌なのは、こうして人間の街にやって来て、通り魔的な事を!?
駄目です、いけません!
人間から攻撃して来ない限り、こちらからは手を出さないと、そう云う決まりですよ?
そんな私の心配をよそに、魔王様は悠々と人の中を歩いて行きます。
え?
何で騒ぎにならないのかって?
魔王様を舐めてはいけません。
認識阻害の魔法を使っているのですよ。
え? 私ですか?
姿を隠す?
そんな地味な魔法なんて、私は使いませんよ。
そんな訳で、私は今は真っ黒なカラスに化けています。
この鋭い嘴に、艶やかな漆黒の羽。綺麗でしょう?
魔王様は、一件の家の前で足を止めました。
そして、閉められている窓へと近付いて行きます。
「…っぐ、ふぐ…っ…」
耳を澄ませば、子供の泣き声が聞こえて来ます。
「…痛い…痛いよぉ…」
その子は、両の掌を広げて、それを見て泣いている様です。
目を凝らして見れば、何ともまあ、見事に豆が潰れていました。
ふと、座り込んでいるその子の傍らにある物が目に入りました。
…聖剣…。
まだ、5歳ぐらいでしょうか?
この子は、勇者に選ばれてしまったのですね…可哀想に…。
はっ!?
まさか、魔王様!?
こんな小さい勇者を、ここで殺してしまうおつもりなのですか!?
いけません、いけませんよ!!
勇者が城に乗り込んで来るまでは、放置プレイですよ!!
しかし、魔王様は、ただそんな勇者を見ているだけでした。
ただ、じっと。
僅かに口元が緩んでいる気がします。
その双眸も、何処か優しげに見えます。
そんな時です。
ぽたり…と、何かが落ちて、地面に何やら赤い染みが出来ました。
ぽたりぽたりと、それは落ちて増えて行きます。
恐る恐ると、私は魔王様のご尊顔を…………………。
………いいえ……。
私は、何も見ていません…。
はい…何故か、その時の記憶が頭からすっぽりと抜けているのですから…。
…ワタシハナニモシリマセン。ワタシハナニモミテイマセン。
いい加減、気になった私は、こっそりと後を付けてみる事にしました。
新たな勇者が誕生したと聞かされた日から、魔王様は何やら楽しそうに見えます。
鬱々としていた物が消えた様な、そんな感じがします。
何ででしょうか?
魔王様は、鼻歌を歌っています。
地の底から響く声で、ちょっと、いや、かなり不気味です。
小さい子が聞いたら、お漏らししそうです。
気のせいだとは思うのですが、頭に花が咲いている様にも見えます。
いけませんね、疲れているのでしょうか?
ああ、そうこうしている内に、人間が住む街まで来てしまいました。
こんな処に何があると云うのでしょうか?
はっ。
まさか、最近ご機嫌なのは、こうして人間の街にやって来て、通り魔的な事を!?
駄目です、いけません!
人間から攻撃して来ない限り、こちらからは手を出さないと、そう云う決まりですよ?
そんな私の心配をよそに、魔王様は悠々と人の中を歩いて行きます。
え?
何で騒ぎにならないのかって?
魔王様を舐めてはいけません。
認識阻害の魔法を使っているのですよ。
え? 私ですか?
姿を隠す?
そんな地味な魔法なんて、私は使いませんよ。
そんな訳で、私は今は真っ黒なカラスに化けています。
この鋭い嘴に、艶やかな漆黒の羽。綺麗でしょう?
魔王様は、一件の家の前で足を止めました。
そして、閉められている窓へと近付いて行きます。
「…っぐ、ふぐ…っ…」
耳を澄ませば、子供の泣き声が聞こえて来ます。
「…痛い…痛いよぉ…」
その子は、両の掌を広げて、それを見て泣いている様です。
目を凝らして見れば、何ともまあ、見事に豆が潰れていました。
ふと、座り込んでいるその子の傍らにある物が目に入りました。
…聖剣…。
まだ、5歳ぐらいでしょうか?
この子は、勇者に選ばれてしまったのですね…可哀想に…。
はっ!?
まさか、魔王様!?
こんな小さい勇者を、ここで殺してしまうおつもりなのですか!?
いけません、いけませんよ!!
勇者が城に乗り込んで来るまでは、放置プレイですよ!!
しかし、魔王様は、ただそんな勇者を見ているだけでした。
ただ、じっと。
僅かに口元が緩んでいる気がします。
その双眸も、何処か優しげに見えます。
そんな時です。
ぽたり…と、何かが落ちて、地面に何やら赤い染みが出来ました。
ぽたりぽたりと、それは落ちて増えて行きます。
恐る恐ると、私は魔王様のご尊顔を…………………。
………いいえ……。
私は、何も見ていません…。
はい…何故か、その時の記憶が頭からすっぽりと抜けているのですから…。
…ワタシハナニモシリマセン。ワタシハナニモミテイマセン。
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