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魔王様教えて
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「うぇ~い! 今年一年お疲れ様でしたー!」
「いやあ、良い一年だったぜ!!」
マリエルとレンが盃を手に、テンションも高くそんな事をのたまって来た。
場所は俺とオニキスが住む屋敷。
時は、大晦日の夜。
囲炉裏を囲んで、俺、オニキス、レン、マリエルがそれぞれ、思い思いに寛いでいた。
カラヲはおせち料理やら、年越しそばやら、諸々の準備をして自分の家へと帰って行った。
オニキスが、ニャンタとゆっくり過ごせと、休暇を与えたのだ。
カラヲは『年越しからの姫初めがあばば』と、途中であばばしながらも、ニャンタに連れられて帰って行った。
だから、この広い屋敷には、今、ここに居る四人しか居ない。
てか、こんな行事をしていると、ここは日本なのかと錯覚してしまうが、ここはれっきとした異世界だ。
米もあるし、そばもあるが、異世界だ。
てか、異世界の定義って何?
パチパチと囲炉裏の炭が爆ぜる音が、静かに響く。
ふんわり、やんわりと暖かい部屋。
障子を開ければ、そこは見事な雪景色だ。
友達と騒ぎながら、年を過ごす。
それも、俺の前世からの憧れだった。
一人、炬燵に入りながら、テレビから流れる除夜の鐘を聴きながら、ずるずるとカップ麺のそばを啜る大晦日は、もう来ない。
と、感動に浸りたい処だが、俺には物申したい事がある。
今日の俺は真面目だ。
「おい。レン、マリエル。特にマリエル。俺に、何か言う事はないか?」
盃の代わりに、俺は暖かい日本茶の入った湯呑を手に、俺の正面に座るマリエルを睨む様にして言った。
言葉使いも態度も、勇者モード発動だ。
長年、この口と付き合って来たんだ。
意識すれば、ほら、この通りってもんだ。
「んん~? やだあ、ライザー君たら怖あい。お姉さん、泣いちゃう~」
両腕で、胸を挟んでイヤイヤするマリエルに、目眩がする。
おい、まさか、もう酔ってるのか?
本当に、これが聖女で良いのか?
人選間違えていないか?
「そんな怖い顔をするなよ。お前の為を思ってしたんだからよ。な? 憂いは晴れたんだろ?」
レンの言葉に、俺は額に手をあてた。
「ああ、その事に関しては感謝をしている。だがな、限度と云う物があるだろう? あの回復薬の量、それに媚薬まで。やり過ぎだ」
そう。
あのクリスマスの夜から、翌日の夜まで、それはそれはオニキスに付き合わされたんだ。
文句の一つも言いたくなるのが人情だ。
マリエル特製だけあって、もう、ちょろっとも出さなくなったそれが、あら不思議。飲んだら立ちどころに精力も回復しましたよ、トホホ。
あの回復薬が無ければ、オニキスもあんなにはしなかった…と、思う。思いたい。思わせてくれ、頼む。
「んん~。ぢゃあねぇ~、お姉さんが良い事を教えてあ、げ、る♡」
ばちこーんと、長い睫毛を見せ付けるかの様に、マリエルはウィンクをして、右手の人差し指を顔の横で振りながら、更に言葉を続ける。
「あのねぇ? 何時も、受け身なライザー君にもお、問題があると思うのぉ~」
おい。
見て来たかの様に言うな。
レン、何で鼻を押さえているんだ。
オニキス、何で俺の肩を抱いて来るんだ。
「だからあ、まずはライザー君が抜いて上げたら良いと思うのよね」
…ぬく…?
「オニキスさんのぉ、おちんちんを、ぱっくんちょしちゃいなさい」
…ぱっくんちょ…。
「上のお口でぇ、ぺろりんちょして、ニ、三発抜いてあげれば良いと思いますぅ~。あはは~」
…ぺろりんちょ…。
おい、この酔っぱ聖女は何を言っているんだ?
俺のせっかくの勇者モードが萎えかけているぞ?
「……………悪い…トイレ…」
おい、レン?
鼻と股間を押さえて、前屈みで何処に行くって?
なあ?
呑み過ぎただけだよな?
「…ふむ…。そなたへの身体の負担が減るのなら、是非も無し」
おい、オニキス?
自分の股間を見ながら何を言っているんだ?
お前が加減すれば良い話だぞ?
「何ですか、それは! 一大事です! 是非とも見届けあばばばばばばば!!」
「んにゃばばばばばばばば!!」
おい、カラヲにニャンタ、お前ら帰ったんじゃなかったのか?
真っ裸で何処から湧いて出た?
てか、秒であばばされるなよ。
「まあー、私達の事は気にしゅないでぇ、練習しゅてきなしゃひー。ひょらー、カラヲきゅん、ニャンタきゅん、おねーしゃんと呑むのらー」
「ソウデスネ」
「呑ムニャー」
いや、その前に服着ろよ。
風邪引くぞ。
「ん?」
そんな遣り取りを見ていた俺の身体が、ふわりと浮かび上がった。
「…おい…?」
何でいきなりオニキスに横抱きにされているんだ?
「今宵、お主を独り占めして良いとの許可が出たのだ。行くぞ」
「はあああああああっ!?」
あ、勇者モードヲワタ。
「許可って、何時!?」
慌てる俺とは裏腹に、オニキスは余裕のある笑みを浮かべた。
「練習をと」
ほわああああああっ!?
何、それって許可になるの!?
てか、許可がいるもんなの!?
「いってりゃ~」
こんの、酔っぱ聖女があああああああっ!!
「冗談じゃない! 俺は、このままここで年を越すっ!!」
「へあ~…ここで、見せてくれりゅんれすか~?」
ほあっ!?
「んなっ!? もう一度トイレ!!」
おい、レンじぃっ!!
戻って来た傍から何処へ行くっ!!
元気だな!?
「オヒロメ、オヒロメ」
「パクパクニャー」
黙れ、あばば組っ!!
「せっかくの好意なのだ。無下にする訳にはゆかぬ」
「無下にしていいからっ!!」
しかし、俺の叫びも虚しく、良い笑顔を浮かべたオニキスは、俺を横抱きにしたまま部屋を出て廊下を歩き寝室へと。
そこは既に、カラヲの手に寄って布団が敷かれていた。
…ああ…帰る前に『今日は必要無いかも知れませんけど』って言ってたなあ…。
はは…要らねえ…世話係、本当に要らない…。
俺を横抱きにしたまま、オニキスは布団へと腰を下ろして胡坐を掻いた。
必然的に、俺はオニキスの膝の上ぇ。
そして、何やら硬い物がケツにあたる不思議ぃ。
「…あ、あの、さ…その…」
ぱっくんちょとか、ぺろりんちょとか、無理っ!
いや、オニキスは俺のを、ぱっくんもぺろりんもやってるけどさ!
けどけどけどっ!
あうあうしてたら、頭にぽんと手を置かれて、そのまま軽くぽんぽんされた。
「無理せずとも良い。そなたに無理強いはせぬよ」
おお、話がわか…。
「俺を舐めるな。それぐらい、俺にだって出来る」
なぁんでえええええええええええぇぇえぇぇえぇっ!?
ねえ、口!?
何で、ここに来て回避しないで突っ込んで行くの!?
ねえっ!?
これ、何のチキンレースなの!?
ブレーキ踏んでっ!!
壊れてるなら全力で回避してっ!!
「良い。解っておる」
頭をぽんぽんしながら、優しいとさえ思える微笑をオニキスは浮かべているけど。
「…い、いや…」
めちゃくちゃ硬くなって来てますやん…。
めちゃくちゃ期待されてますやん…。
めちゃくちゃヤバいですやん…。
上のお口でぱっくんちょもぺろりんちょもしなくても、下のお口でそれをする流れですやん…。
ま、まあ…クリスマス事件から、その、俺を気遣ってか何もなかったし…。
今年、最後だし…。
いやいや、落ち着け、俺。
落ち着いて、オニキスの拘束から抜け出してだな、そうそう、正面に座ってだな、そうそう、その着物を捲ってだな、そうそう、身を屈めて顔を寄せてだな、そうそう、下着の中からオニキスのちんこを取り出し…。
「ふぉっ!?」
ちんこを握り、口を開けた処で俺は我に返った。
「うあ…うあ…あう…」
あ、あぁれぇ?
何、流れる様にやってるの、俺ぇ!?
やっぱり、エロゲーの世界だろ、ここはっ!!
こんなの、有り得ないだろ!!
涙目でオニキスを見上げたら、くしゃりと頭を撫でられた。
「うう…」
その金色の双眸が熱を孕んで俺を見ている。
ちんこを握り締める俺の指が濡れて来た。
「…あう…」
見てないで、何か言えよぉ…。
「うぐぐぐ…」
そろそろと手を離して、濡れた指を口に含んだ。
無理! 俺には、まだ無理っ!!
これが精一杯っ!!
勘弁して、お願いっ!
てか、何だよこの味…しょっぱいとか、苦いとか…ない…?
え…何か…甘い…?
え…? 嘘だろ…?
確認する様に、もう一度手を伸ばしてちんこの先端から零れている我慢汁を指で掬って、口に含む。
…うん…甘い…。
何か…ふわりと溶ける様な…生クリームみたいな…優しい甘さ…?
「…んん?」
指を咥えたまま首を傾げたら、ぐっと腕を掴まれ引かれて、オニキスの胸に顔をぶつけてしまった。
「んな…っ!」
見上げて、いきなり何だと文句を言うより早く。
「そう、可愛い事をしてくれるな」
恍惚とした顔をしたオニキスに顎を取られ、口の中から指を抜かれて、唇を重ねられた。
「んぅ…っ…」
差し込まれたオニキスの舌に、自然と自分の舌を絡ませる。
何度も何度も絡ませて、貪る様に。
ぴちゃぴちゃとした音が、耳の中で木霊する。
「…んで…あま…」
どちらからともなく、唇を離して、零れた唾液を指先で拭うオニキスに聞けば。
「相性が良いのであろう? そなたも口にしていたではないか」
掬った唾液をぺろりと舐めてから、オニキスがそう言った。
「…んあ…?」
…ああ…。
魔剣を貰った時…か…。
「…私も、常々言うておろう? そなたは甘いと…」
…いや…それは単に比喩と云うか、揶揄と云うか…ゲームとか、漫画や小説なんかで良くある奴かと。
実際に、本当にそうだとは思わなかったんだよ!
背中に手を回され、身体を押され、ゆっくりと布団へと押し付けられた。
膝を立たせられ、着物の裾をはだけられる。
着物を着る様になって、オニキスが喜んだのは、これだ。
曰く、脱がす手間が省けた、と。
いや、お前、指ぱっちんで服剥ぎ取れるだろ。
何処の悪代官だよぉ。
帯の端を掴んでクルクルさせられて『あ~れ~』とか、俺は言わないからな!
「…ん…っ…」
立たせて、開かれた脚の間にオニキスが蹲り、俺の下着をずり下ろして、ちんこを取り出す。
少しだけ頭をもたげてるちんこの先を、軽く舐められただけで、何とも言えない声が出る。
「そなたのこれは、砂糖菓子の様に甘い…」
だから、そんな処で話すな!
息を吹きかけるな!
ただ、それだけで、ちんこが元気になって来て、我慢汁が溢れて来るから、何かもう困る。
何時の間に、こんなんになってしまったのやら。
「…あ…う…」
執拗に先端を舐められ、時には吸われ、甘噛みされ、やわやわと玉を揉まれる。
「…は…ん…」
竿にも舌を這わされ、裏筋を舐めあげられ、腰が踊ってしまう。
僅かながらに腰が浮いた隙を逃さずに、オニキスの指がケツの穴に触れて来る。
「んあ、あ…」
俺の我慢汁で湿らせた指で、何度も軽く押す様にしてから、ゆっくりと、指を挿れて来る。
その間も、俺のちんこをぴちゃぴちゃと舐める音は止まない。
「あ、あ、あ…っ…!」
繰り返されるそれに、身体も思考も溶かされて行く。
ただ、ただ、この行為が続けばと願ってしまう。
最初は訳の解らない内に、犯されて。
終わったと思ったら、優しく抱き締められていて、謝られた。
何だ、こいつ。そう、思った。
それが。
気が付けば。
何時の間にか。
本当に、何時の間にかに。
「ふっ…あ、ああああっ!」
こうやって、容赦無く挿入って来る熱を。
俺の中をかき乱す熱を。
「うっ、ん、ん…っ…!」
待ち望む様になっているなんて。
「…ひっ…や…あっ…!」
ただ、みっともなく声を上げて、強請る様になっているだなんて。
揺さぶられて、自らも腰を振って。
もっと、もっと感じさせて欲しいって。
もっと、もっと俺で感じて欲しいって。
「あ、あ、あ…っ…!!」
なあ…?
教えてくれよ…?
これは…この気持ちは、何なんだよ…?
何で、こんな事を思うんだよ…?
まだ、解らないんだよ…。
この気持ちが…思いが…何なのか…俺には…まだ…。
これは…お前と…同じ気持ちなのか…?
…なあ…?
「あ、う…っ…! や…っ…で…っ…!!」
オニキスの背中に回した腕に力を込めて、爪を立てて食い込ませたのと同時に、俺はイッた。
「…っ…!」
少し遅れて、俺の中に熱い何かが弾けた。
「…あ…は…あ…」
乱れる息を整えようとした時、いきなりそれが鳴り響いて来た。
『ゴンゴンガンガンゴンゴンガンガンゴンゴンガンガンゴンッガンッ!!』
「んな、何だっ!?」
頭が割れそうな程の、けたたましい、何か銅鑼を叩く様な音だ。
「見て来る。そなたは休んでおれ」
「…っん…」
ずるりと、俺の中からちんこを抜いて、はだけた着物を整えて、オニキスが障子へと向かう。
それを目で追ってから気が付いた。
何か、外が明るくないか? と。
気怠い身体を起こして、俺も着物を整えて、そろそろと四つん這いでオニキスの後を追う。
そして、障子が開けられた先には。
「…は…?」
空に。
夜の空に、沢山の白と黒の鐘が浮いていて、それが一斉に揺れていた。
呆然とそれを見上げていたら。
「除夜の鐘だよ~」
「煩悩退散~」
光の精霊と、闇の精霊の声が聞こえて来た。
…え…?
あの鐘…光と闇の精霊の仕業…?
「あひゃひゃ~ひゃくはちありゅ~」
「ほんとだゃ~」
「心ガ洗ワレマス」
「ソウデスニャ~」
遠くから、酔っ払い組とあばば組の声が聞こえて来た。
…いや…鐘が108個では無くて、108回、鐘を突くんだけど…。
一斉に108個の鐘を鳴らすって意味では無いんだけど…。
「…頭痛ぇ…」
「む。風邪を引いてはいかん。今一度、熱くなろうぞ」
頭を押さえてそう呟いたら、オニキスが真面目な声と顔で、ひょいっと、俺の腰を掴んで肩に担ぎ上げた。
「お、おいっ!? こんな騒音の中でっ!?」
鐘は、まだゴンゴンガンガン鳴っている。
周囲からは、ざわざわとしたざわめきも聞こえて来ている。
「掻き消せば良かろう」
オニキスがぱちんと指を鳴らすと、周りの音が、微かに聞こえる程度になった。
うわあい、消音機能便利~。
何て思うかよっ!!
ヤりながら年越しかよっ!?
煩悩の塊だな、おいっ!?
皆で初日の出を拝むとか、夢だったんだけどっ!?
「…ごっ、御来光っ!! それを拝む…っ…!!」
再び布団の上に降ろされて、オニキスの腕を掴みながら言えば、奴は神妙な顔で俺の帯を外しながら、頷いた。
「ふむ、理解した」
と。
当然、俺は朝日を拝む為に早くに終わらせろ、と云う意味で言った。
しかし、オニキスは当然の様に、朝日が昇って来るまで、俺を離さなかった。
教えてくれよ、魔王様。
俺の言い方の何処が悪かったのか、何が足りなかったのかっ!!
「いやあ、良い一年だったぜ!!」
マリエルとレンが盃を手に、テンションも高くそんな事をのたまって来た。
場所は俺とオニキスが住む屋敷。
時は、大晦日の夜。
囲炉裏を囲んで、俺、オニキス、レン、マリエルがそれぞれ、思い思いに寛いでいた。
カラヲはおせち料理やら、年越しそばやら、諸々の準備をして自分の家へと帰って行った。
オニキスが、ニャンタとゆっくり過ごせと、休暇を与えたのだ。
カラヲは『年越しからの姫初めがあばば』と、途中であばばしながらも、ニャンタに連れられて帰って行った。
だから、この広い屋敷には、今、ここに居る四人しか居ない。
てか、こんな行事をしていると、ここは日本なのかと錯覚してしまうが、ここはれっきとした異世界だ。
米もあるし、そばもあるが、異世界だ。
てか、異世界の定義って何?
パチパチと囲炉裏の炭が爆ぜる音が、静かに響く。
ふんわり、やんわりと暖かい部屋。
障子を開ければ、そこは見事な雪景色だ。
友達と騒ぎながら、年を過ごす。
それも、俺の前世からの憧れだった。
一人、炬燵に入りながら、テレビから流れる除夜の鐘を聴きながら、ずるずるとカップ麺のそばを啜る大晦日は、もう来ない。
と、感動に浸りたい処だが、俺には物申したい事がある。
今日の俺は真面目だ。
「おい。レン、マリエル。特にマリエル。俺に、何か言う事はないか?」
盃の代わりに、俺は暖かい日本茶の入った湯呑を手に、俺の正面に座るマリエルを睨む様にして言った。
言葉使いも態度も、勇者モード発動だ。
長年、この口と付き合って来たんだ。
意識すれば、ほら、この通りってもんだ。
「んん~? やだあ、ライザー君たら怖あい。お姉さん、泣いちゃう~」
両腕で、胸を挟んでイヤイヤするマリエルに、目眩がする。
おい、まさか、もう酔ってるのか?
本当に、これが聖女で良いのか?
人選間違えていないか?
「そんな怖い顔をするなよ。お前の為を思ってしたんだからよ。な? 憂いは晴れたんだろ?」
レンの言葉に、俺は額に手をあてた。
「ああ、その事に関しては感謝をしている。だがな、限度と云う物があるだろう? あの回復薬の量、それに媚薬まで。やり過ぎだ」
そう。
あのクリスマスの夜から、翌日の夜まで、それはそれはオニキスに付き合わされたんだ。
文句の一つも言いたくなるのが人情だ。
マリエル特製だけあって、もう、ちょろっとも出さなくなったそれが、あら不思議。飲んだら立ちどころに精力も回復しましたよ、トホホ。
あの回復薬が無ければ、オニキスもあんなにはしなかった…と、思う。思いたい。思わせてくれ、頼む。
「んん~。ぢゃあねぇ~、お姉さんが良い事を教えてあ、げ、る♡」
ばちこーんと、長い睫毛を見せ付けるかの様に、マリエルはウィンクをして、右手の人差し指を顔の横で振りながら、更に言葉を続ける。
「あのねぇ? 何時も、受け身なライザー君にもお、問題があると思うのぉ~」
おい。
見て来たかの様に言うな。
レン、何で鼻を押さえているんだ。
オニキス、何で俺の肩を抱いて来るんだ。
「だからあ、まずはライザー君が抜いて上げたら良いと思うのよね」
…ぬく…?
「オニキスさんのぉ、おちんちんを、ぱっくんちょしちゃいなさい」
…ぱっくんちょ…。
「上のお口でぇ、ぺろりんちょして、ニ、三発抜いてあげれば良いと思いますぅ~。あはは~」
…ぺろりんちょ…。
おい、この酔っぱ聖女は何を言っているんだ?
俺のせっかくの勇者モードが萎えかけているぞ?
「……………悪い…トイレ…」
おい、レン?
鼻と股間を押さえて、前屈みで何処に行くって?
なあ?
呑み過ぎただけだよな?
「…ふむ…。そなたへの身体の負担が減るのなら、是非も無し」
おい、オニキス?
自分の股間を見ながら何を言っているんだ?
お前が加減すれば良い話だぞ?
「何ですか、それは! 一大事です! 是非とも見届けあばばばばばばば!!」
「んにゃばばばばばばばば!!」
おい、カラヲにニャンタ、お前ら帰ったんじゃなかったのか?
真っ裸で何処から湧いて出た?
てか、秒であばばされるなよ。
「まあー、私達の事は気にしゅないでぇ、練習しゅてきなしゃひー。ひょらー、カラヲきゅん、ニャンタきゅん、おねーしゃんと呑むのらー」
「ソウデスネ」
「呑ムニャー」
いや、その前に服着ろよ。
風邪引くぞ。
「ん?」
そんな遣り取りを見ていた俺の身体が、ふわりと浮かび上がった。
「…おい…?」
何でいきなりオニキスに横抱きにされているんだ?
「今宵、お主を独り占めして良いとの許可が出たのだ。行くぞ」
「はあああああああっ!?」
あ、勇者モードヲワタ。
「許可って、何時!?」
慌てる俺とは裏腹に、オニキスは余裕のある笑みを浮かべた。
「練習をと」
ほわああああああっ!?
何、それって許可になるの!?
てか、許可がいるもんなの!?
「いってりゃ~」
こんの、酔っぱ聖女があああああああっ!!
「冗談じゃない! 俺は、このままここで年を越すっ!!」
「へあ~…ここで、見せてくれりゅんれすか~?」
ほあっ!?
「んなっ!? もう一度トイレ!!」
おい、レンじぃっ!!
戻って来た傍から何処へ行くっ!!
元気だな!?
「オヒロメ、オヒロメ」
「パクパクニャー」
黙れ、あばば組っ!!
「せっかくの好意なのだ。無下にする訳にはゆかぬ」
「無下にしていいからっ!!」
しかし、俺の叫びも虚しく、良い笑顔を浮かべたオニキスは、俺を横抱きにしたまま部屋を出て廊下を歩き寝室へと。
そこは既に、カラヲの手に寄って布団が敷かれていた。
…ああ…帰る前に『今日は必要無いかも知れませんけど』って言ってたなあ…。
はは…要らねえ…世話係、本当に要らない…。
俺を横抱きにしたまま、オニキスは布団へと腰を下ろして胡坐を掻いた。
必然的に、俺はオニキスの膝の上ぇ。
そして、何やら硬い物がケツにあたる不思議ぃ。
「…あ、あの、さ…その…」
ぱっくんちょとか、ぺろりんちょとか、無理っ!
いや、オニキスは俺のを、ぱっくんもぺろりんもやってるけどさ!
けどけどけどっ!
あうあうしてたら、頭にぽんと手を置かれて、そのまま軽くぽんぽんされた。
「無理せずとも良い。そなたに無理強いはせぬよ」
おお、話がわか…。
「俺を舐めるな。それぐらい、俺にだって出来る」
なぁんでえええええええええええぇぇえぇぇえぇっ!?
ねえ、口!?
何で、ここに来て回避しないで突っ込んで行くの!?
ねえっ!?
これ、何のチキンレースなの!?
ブレーキ踏んでっ!!
壊れてるなら全力で回避してっ!!
「良い。解っておる」
頭をぽんぽんしながら、優しいとさえ思える微笑をオニキスは浮かべているけど。
「…い、いや…」
めちゃくちゃ硬くなって来てますやん…。
めちゃくちゃ期待されてますやん…。
めちゃくちゃヤバいですやん…。
上のお口でぱっくんちょもぺろりんちょもしなくても、下のお口でそれをする流れですやん…。
ま、まあ…クリスマス事件から、その、俺を気遣ってか何もなかったし…。
今年、最後だし…。
いやいや、落ち着け、俺。
落ち着いて、オニキスの拘束から抜け出してだな、そうそう、正面に座ってだな、そうそう、その着物を捲ってだな、そうそう、身を屈めて顔を寄せてだな、そうそう、下着の中からオニキスのちんこを取り出し…。
「ふぉっ!?」
ちんこを握り、口を開けた処で俺は我に返った。
「うあ…うあ…あう…」
あ、あぁれぇ?
何、流れる様にやってるの、俺ぇ!?
やっぱり、エロゲーの世界だろ、ここはっ!!
こんなの、有り得ないだろ!!
涙目でオニキスを見上げたら、くしゃりと頭を撫でられた。
「うう…」
その金色の双眸が熱を孕んで俺を見ている。
ちんこを握り締める俺の指が濡れて来た。
「…あう…」
見てないで、何か言えよぉ…。
「うぐぐぐ…」
そろそろと手を離して、濡れた指を口に含んだ。
無理! 俺には、まだ無理っ!!
これが精一杯っ!!
勘弁して、お願いっ!
てか、何だよこの味…しょっぱいとか、苦いとか…ない…?
え…何か…甘い…?
え…? 嘘だろ…?
確認する様に、もう一度手を伸ばしてちんこの先端から零れている我慢汁を指で掬って、口に含む。
…うん…甘い…。
何か…ふわりと溶ける様な…生クリームみたいな…優しい甘さ…?
「…んん?」
指を咥えたまま首を傾げたら、ぐっと腕を掴まれ引かれて、オニキスの胸に顔をぶつけてしまった。
「んな…っ!」
見上げて、いきなり何だと文句を言うより早く。
「そう、可愛い事をしてくれるな」
恍惚とした顔をしたオニキスに顎を取られ、口の中から指を抜かれて、唇を重ねられた。
「んぅ…っ…」
差し込まれたオニキスの舌に、自然と自分の舌を絡ませる。
何度も何度も絡ませて、貪る様に。
ぴちゃぴちゃとした音が、耳の中で木霊する。
「…んで…あま…」
どちらからともなく、唇を離して、零れた唾液を指先で拭うオニキスに聞けば。
「相性が良いのであろう? そなたも口にしていたではないか」
掬った唾液をぺろりと舐めてから、オニキスがそう言った。
「…んあ…?」
…ああ…。
魔剣を貰った時…か…。
「…私も、常々言うておろう? そなたは甘いと…」
…いや…それは単に比喩と云うか、揶揄と云うか…ゲームとか、漫画や小説なんかで良くある奴かと。
実際に、本当にそうだとは思わなかったんだよ!
背中に手を回され、身体を押され、ゆっくりと布団へと押し付けられた。
膝を立たせられ、着物の裾をはだけられる。
着物を着る様になって、オニキスが喜んだのは、これだ。
曰く、脱がす手間が省けた、と。
いや、お前、指ぱっちんで服剥ぎ取れるだろ。
何処の悪代官だよぉ。
帯の端を掴んでクルクルさせられて『あ~れ~』とか、俺は言わないからな!
「…ん…っ…」
立たせて、開かれた脚の間にオニキスが蹲り、俺の下着をずり下ろして、ちんこを取り出す。
少しだけ頭をもたげてるちんこの先を、軽く舐められただけで、何とも言えない声が出る。
「そなたのこれは、砂糖菓子の様に甘い…」
だから、そんな処で話すな!
息を吹きかけるな!
ただ、それだけで、ちんこが元気になって来て、我慢汁が溢れて来るから、何かもう困る。
何時の間に、こんなんになってしまったのやら。
「…あ…う…」
執拗に先端を舐められ、時には吸われ、甘噛みされ、やわやわと玉を揉まれる。
「…は…ん…」
竿にも舌を這わされ、裏筋を舐めあげられ、腰が踊ってしまう。
僅かながらに腰が浮いた隙を逃さずに、オニキスの指がケツの穴に触れて来る。
「んあ、あ…」
俺の我慢汁で湿らせた指で、何度も軽く押す様にしてから、ゆっくりと、指を挿れて来る。
その間も、俺のちんこをぴちゃぴちゃと舐める音は止まない。
「あ、あ、あ…っ…!」
繰り返されるそれに、身体も思考も溶かされて行く。
ただ、ただ、この行為が続けばと願ってしまう。
最初は訳の解らない内に、犯されて。
終わったと思ったら、優しく抱き締められていて、謝られた。
何だ、こいつ。そう、思った。
それが。
気が付けば。
何時の間にか。
本当に、何時の間にかに。
「ふっ…あ、ああああっ!」
こうやって、容赦無く挿入って来る熱を。
俺の中をかき乱す熱を。
「うっ、ん、ん…っ…!」
待ち望む様になっているなんて。
「…ひっ…や…あっ…!」
ただ、みっともなく声を上げて、強請る様になっているだなんて。
揺さぶられて、自らも腰を振って。
もっと、もっと感じさせて欲しいって。
もっと、もっと俺で感じて欲しいって。
「あ、あ、あ…っ…!!」
なあ…?
教えてくれよ…?
これは…この気持ちは、何なんだよ…?
何で、こんな事を思うんだよ…?
まだ、解らないんだよ…。
この気持ちが…思いが…何なのか…俺には…まだ…。
これは…お前と…同じ気持ちなのか…?
…なあ…?
「あ、う…っ…! や…っ…で…っ…!!」
オニキスの背中に回した腕に力を込めて、爪を立てて食い込ませたのと同時に、俺はイッた。
「…っ…!」
少し遅れて、俺の中に熱い何かが弾けた。
「…あ…は…あ…」
乱れる息を整えようとした時、いきなりそれが鳴り響いて来た。
『ゴンゴンガンガンゴンゴンガンガンゴンゴンガンガンゴンッガンッ!!』
「んな、何だっ!?」
頭が割れそうな程の、けたたましい、何か銅鑼を叩く様な音だ。
「見て来る。そなたは休んでおれ」
「…っん…」
ずるりと、俺の中からちんこを抜いて、はだけた着物を整えて、オニキスが障子へと向かう。
それを目で追ってから気が付いた。
何か、外が明るくないか? と。
気怠い身体を起こして、俺も着物を整えて、そろそろと四つん這いでオニキスの後を追う。
そして、障子が開けられた先には。
「…は…?」
空に。
夜の空に、沢山の白と黒の鐘が浮いていて、それが一斉に揺れていた。
呆然とそれを見上げていたら。
「除夜の鐘だよ~」
「煩悩退散~」
光の精霊と、闇の精霊の声が聞こえて来た。
…え…?
あの鐘…光と闇の精霊の仕業…?
「あひゃひゃ~ひゃくはちありゅ~」
「ほんとだゃ~」
「心ガ洗ワレマス」
「ソウデスニャ~」
遠くから、酔っ払い組とあばば組の声が聞こえて来た。
…いや…鐘が108個では無くて、108回、鐘を突くんだけど…。
一斉に108個の鐘を鳴らすって意味では無いんだけど…。
「…頭痛ぇ…」
「む。風邪を引いてはいかん。今一度、熱くなろうぞ」
頭を押さえてそう呟いたら、オニキスが真面目な声と顔で、ひょいっと、俺の腰を掴んで肩に担ぎ上げた。
「お、おいっ!? こんな騒音の中でっ!?」
鐘は、まだゴンゴンガンガン鳴っている。
周囲からは、ざわざわとしたざわめきも聞こえて来ている。
「掻き消せば良かろう」
オニキスがぱちんと指を鳴らすと、周りの音が、微かに聞こえる程度になった。
うわあい、消音機能便利~。
何て思うかよっ!!
ヤりながら年越しかよっ!?
煩悩の塊だな、おいっ!?
皆で初日の出を拝むとか、夢だったんだけどっ!?
「…ごっ、御来光っ!! それを拝む…っ…!!」
再び布団の上に降ろされて、オニキスの腕を掴みながら言えば、奴は神妙な顔で俺の帯を外しながら、頷いた。
「ふむ、理解した」
と。
当然、俺は朝日を拝む為に早くに終わらせろ、と云う意味で言った。
しかし、オニキスは当然の様に、朝日が昇って来るまで、俺を離さなかった。
教えてくれよ、魔王様。
俺の言い方の何処が悪かったのか、何が足りなかったのかっ!!
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