神様には頼らない

三冬月マヨ

文字の大きさ
上 下
4 / 29

神様には頼らない・完結編

しおりを挟む
「まっ、おっ、うっ、さっ、まっ、あーっ!!」

 呆然と、ただ、呆然としてたら、追い打ちを掛ける様に、愕然とする事態が走って来た。

「ちょ…っ! 何よ、アレーっ!?」

 マリエルが、頭の上のハムスターが落ちない様に手で押さえながら、それを見て叫んだ。

「おいおいおいおいっ!?」

 レンも、鼻の穴に前脚を突っ込んでいたハムスターを掴みながら、叫んだ。

「おおおおお!?」

 俺も、オニキスから落ちない様に、更に首に回した腕に力を籠めた。

 だって、信じられるか?
 ハムヲの去った方から、土煙を上げて全力疾走してくる男、全裸なんだぜ?
 こんなメェルヒェンな世界に。
 牧歌的な、のどかな世界に。
 全裸で全力疾走して来る男。
 こんなの、恐怖しかないだろっ!!
 てか、何なの!?
 魔族って、変態しか居ないの!?
 それとも、何?
 イケメンだから、全裸でも許されると!?
 これ、やっぱBLゲームの世界だろ!?
 蒼い髪は肩に掛かるくらい?
 頭にある山羊みたいな角は象牙色?
 って、何か角の先が赤い?
 金色の瞳は、やや丸く大きめ。
 鼻筋は通っていて、唇は赤くやや厚め?
 歳は俺と同じぐらいか?
 全裸じゃなかったら、女の子に見えるかも知れない。
 声も、割と高めだし。筋肉の無い細い身体だし。

「ぅああああにきぃぃっ! 服っ!! 服を着て下せぇっ!!」

 その後ろから、血だるまのハムヲが走って来るのが見える。

「服などと、このめでたい日には些細な事ですっ!!」

 …あの…本当に…何が起こってるの…?
 もう、怖すぎるんだけどっ!?

「ま、ま、ま、まっ!! ご、ごっ、ごっ、ぶ、ぶぶ…あばばばばばば!?」

「落ち着けよ」

 俺達の目の前まで走って来た全裸の男が、肩で息を切らしながらも、何かを言おうとしてたのだが、オニキスが、無表情でその男の頭を鷲掴みにした。

「…お…おい…オニキス…? 何か、ミシミシ言ってないか?」

「何時もの事だ。そなたが気にする必要はない」

 いや!?
 気にするよ!?
 お前、俺から片手離して、ケツを支えてるだけだからね!?
 落ちたらどうすんの!?

「ア、ア…本日ハオ日柄モ良ク魔王様ニオカレマシテハ」

「壊れたーっ!?」

 何て思ってたら、オニキスが頭から手を離した途端に、目の前の女の子顔のイケメンがぐりんと白目を剥いて、片言で話し出した。
 だから、怖いって!
 俺、ホラー嫌いなんだってば!!

「ぅあ兄貴ぃぃぁっ!?」

「カラヲーっ!?」

 叫ぶハムヲの後ろから、また一人、全裸の男が全力疾走して来るのが見えた。
 明るい茶色の髪、いや、オレンジに近いかも知れない。
 ふわふわの猫っ毛だ。顔も何か猫っぽい。

 …ねえ?
 俺、気を失っても良いかな?
 マリエルとレンは、もう口から魂出してるみたいだから、良いよね?

「お、お前っ! 俺のカラヲに…っ!? あわ!? 魔王さにゃっ!? あにゃにゃにゃっ!?」

「ニャンタ兄ぃーッ!!」

 と、俺が気を失う前に、オレンジ頭の男がやって来て、オニキスに頭を鷲掴みに…。
 ねえ?
 これ、魔族の日常なの?
 毎日こんな事やってんの?
 てか、猫顔でにゃにゃ言ってるからニャンタなの?
 もう、俺どうすればいいの?
 倒れ捲ってる魔族の人達も、何時まで倒れてるの?
 誰が、この事態を収めてくれるの?
 てか、オニキスしか居ないよね?

《おやおや? 賑やかだと思ったら? お帰りとでも言った処なのかな?》

《お帰りお帰り。我の愛し子よ》

 いきなり頭上から降って来た、くぐもった男とも女とも子供かも大人かも解らない声に天を仰いだら、そこには白と黒の斑な光る球体が浮かんでいた。

 うん、もう何も考えたくない。

 その球体の下にあたる部分から、まるで脱糞の様に小さな黒い光がポロポロ排出されているのを見ながら、俺は意識を飛ばした。

 ◆

《うん。君達を見ていたらね? 一つになるのも悪くはないかと思えてね?》

《一つになったら、ほれ、この通り。長年溜まっていた宿便が出るわ出るわ》

 宿便って、魔物って闇の精霊のうんこかよ…。

 場所は変わって、オニキスの為に用意していたと云う屋敷に俺達は居た。
 せっかく意識を飛ばしたのに、オニキスに叩き起こされた。
 流石、魔王。血も涙も無い所業だ。
 そう、屋敷だ。
 日本家屋を思わせる屋敷だった。
 20畳程(途中で畳を数えるのを止めた)の部屋に、俺とオニキス、レン、マリエル、蒼い髪の男…カラヲ、オレンジ頭の猫みたいな男…ニャンタ、そして謎の白と黒の斑模様の球体…光と闇の精霊だと云う…大きさは、直径1Mぐらいか?
 球体を取り囲む様に俺達はぐるりと周りに、胡座を掻いたりして座っている。
 ハムヲは血を流しに、自分の家へと帰って行った。
 いや、流すだけじゃなく、治療もしてくれ。
 ついでに血塗れのハムスター達も洗ってやって欲しい。
 血塗れなのに、つぶらな瞳で見詰めて来るとか、どんなホラーだよ。
 カラヲとニャンタは、そこでやっと服を着てくれた。
 と云うか、オニキスが便利空間から、適当にローブを取り出して二人にあげた。何だかんだ面倒見が良いよな、オニキスって。
 カラヲは黒のローブ、ニャンタは白のローブだ。
 何故、裸だったのかと聞いたら、充電後にハムヲが魔王婚姻との報を持って来たので、慌てて出て来たとの事だった。その際に、つい勢い余って、ハムヲを血祭りにしたらしい。綺麗な顔して、中々に怖い人らしい。てか、その頭にある角の先に付いている血って、ハムヲの?
 で、その騒ぎに、寝ていたニャンタが起きて、後を追って来たらしい。

 …それよりも…充電って…。
 …いや…婚姻って…。

「…そう云えば、闇の精霊の機嫌が良いとか、オニキスさん言ってたわね~…」

 掌に乗せたハムスターを、指でツンツンしながらマリエルが言った。

「…便秘が解消されたから、機嫌が良いって事か…?」

 同じく、掌のハムスターをツンツンしながら、レンが言った。

「そんな事よりもです! 式を! 魔王様、あいや、オニキス様とライザー様の挙式をやりましょう!」

「何を寝惚けた事を。そんな事をする必要が何処にある? そもそも、こいつに名を与えたのは単に気まぐれからだし、それが求婚等と俺は知らなかったんだ。そんなの無効だ」

 目をキラキラと輝かせて興奮して、俺とオニキスを見るカラヲに、お口さんが冷たく言ってくれた。

 そうだよ。
 何だかんだ流されてるけど、こいつに名前を付けた時は、そんな気持ちなんて無かったんだ。
 ただ、魔王呼びだと色々とまずいと思っただけで。
 そう、ただ、それだけだ。

「にゃんでにゃ!? オニキス様の気持ちを弄んだのかにゃ!? オニキス様は、ずっとお前を見守って来たにゃ!」

 うお!?
 ニャンタが両腕を振り回して、泣きながら言って来た。

「そうですよ!? 幼いあなたを見ては、毎日はな…うっ、頭が…っ!?」

 おおう!?
 カラヲがいきなり両手で頭を押さえた。

「そうよ! オニキスさんの熱い告白を忘れたの!?」

 おうおう!?
 マリエルがハムスターを突き付けて来た。
 止めて、つぶらな瞳で見て来ないで。

「そうだ! あの告白を聞いて、良くそんな事が言えるな!?」

 あうあう!?
 レンも俺にハムスターを突き付けて来た。
 お願い、つぶらな瞳を向けて来ないで。

「良い。私は気にしてはおらぬ」

 隣に座るオニキスが、俺の頭をぽんぽんして来た。

 おいおい!?
 何か、俺、悪者っぽくなってない?
 てか、何?
 この外堀を埋められている感じ!?

「今はそれよりもだ。闇の精霊に言う事があるだろう」

 俺とオニキスの事よりも!
 何で、光の精霊と合体してるのとかさ、そっちの方が気になるよね!?
 で、今もポロポロと脱糞してるからね!?
 その黒い光、わさわさと何処に向かってるの!?

「あ、うん、仕方が無いわね。もう、素直になれば良いのに」

 おい。
 俺は何時だって素直だぞ?
 素直じゃないのは、この口だ。

「全くだぜ。あれだけ甘えていて、惚れてないとか無いからな」

 待て。
 誰が、何時、誰に甘えた?
 俺は何時だって、誰かに甘えたつもりはないぞ?

「それでね、闇の精霊さん? 魔物を生まなくするって出来ないの?」

 相変わらずハムスターをツンツンしながらも、真剣な表情でマリエルが言った。

「出来ないなら、出来ないで構わないが、皆、誰もが魔王が魔物を生み出してるって、思ってる。それを、魔王が操って人を襲わせてるって、思ってる。その誤解ってか、なんてーか、それを何とか出来ないのか?」

 レンも、ハムスターを弄りながら、真剣な表情で言った。

《我、生むのは自然の摂理。我が生むのは、人の闇。闇、闇を呼ぶ生き物に宿る。魔物を生み出すのは人なり》

 何…?
 今の今も脱糞しながら、何言ってんの?

「は? え? 人が、人間が魔物を生み出してるって、言うの!?」

「ちょ、待て!? 何だよ、それ!?」

《それが、世の理なんだよ? 誰しもが綺麗な人間じゃないって事。誰だって、闇を抱えて生きている。嫉妬、妬み、憎しみ、少なからず、誰だってあるよね? 闇の精霊は、それらの感情を人から、動物から、生きとし生ける物から吸い上げて、糧として存在してる。そして、闇に変換して吐き出す。それらは巡る》

 マリエルとレンの言葉に、球体は真面目な声で脱糞しながら語ってくれる。
 いや、何、この絵面?

「ええ、そうです。闇が宿り、魔物と呼ばれる事になった動物達を、私達は保護し、人を襲わない様に教育していました。中には逃げ出す物も居ましたし、いや、大半が逃げてましたけど…」

 待てカラヲ。

「闇も全部は拾えなかったしにゃ!」

 こらニャンタ。

 とんでもない話を聞かされてる時に、そんなオチをつけるな。
 てか、今のが真実なら、魔物は居なくならないって事だろ?
 人が…生き物が持つ闇、大なり小なり関係無い?

「ね? 人は、そんなの認めたがらないよね? だから、必要なんだよ。それを受け止める物が。それをぶつけられる物が。人の逃げ道が。人よりも強い物が。それが、魔族の在り方、魔王の役割」

 突然、目の前の球体の形が変わった。
 いや、分離? した?
 白い光と、黒い闇。
 それぞれ輪郭ははっきりとはしないが、人の形を取っている。
 と言っても形だけ。
 顔がある訳でも無いし、男だ女だと区別出来る物も無い。
 ただ、くぐもっていない、この光の精霊の声には聞き覚えがあった。
 俺が生まれた時に、光の精霊が現れたって言うから、その時?
 母さんも父さんも、眩しくてどんな姿をしていたかは解らないって言っていたけど…。
 こんなのっぺらぼう見たら、光だろうと闇だろうと、泣く自信あるぞ、俺。
 良かったな、生まれて直ぐに目を開かなくて。

「…何だ、それは?」

 それはそれとして、今、こいつ何て言った?
 魔族…魔王…オニキスの役割?

「人は、綺麗な物しか認めたくないでしょ? 醜いもの、汚いものからは、目をそらしたいよね? 自分の中の闇なんて認めたくない。だから、用意してあげたんだよ。分かりやすく、形にして。魔王が居るから、魔物が生まれる。うん、わかり易いよね?」

 ふざけるな!
 何だそれ!?

「解らないな! 理解もしたくない! ふざけるな。自分の過ちを認められない程、人は弱くない」

 そうだ。
 誰だって、悪い事をすれば。
 それに気付けば謝るぞ?

「それなら、何故、争いは起こるの? 何故、人間同士で争うの?」

「…っ…!!」

「ほら、答えられない。まあ、良いんだよ、それで。答えなんかない。それが世の理なんだから」

「闇は巡る。光も巡る。それは理。断ち切る事の出来ない連鎖。歪み合い、殺し合い、奪い合い、与えあい、許し合い、愛し合う、それが世の理」

「光があるから闇が生まれる」

「闇があるから光は輝く」

「常に光なら、誰もその輝きに気付かない」

「常に闇なら、誰もその昏さに気付かない」

「だから、僕は」

「だから、我は」

「闇を求める」

「光を求める」

 歌うように紡がれる言葉に、頭が混乱する。
 何だ、これ。
 今、何の話をしてたんだっけ?
 何で、こんな話になったんだっけ?

「僕は気付いた」

「我は気付いた」

「互いが必要なら、一つになれば良い」

「簡単な事だった。そなた達に気付かされた」

 光の精霊も、闇の精霊も、目なんか無い。
 だけど、精霊達は確かに俺達を…俺とオニキスを…勇者と魔王を見た。

「二人一つになれば、どちらも補える」

 で?
 合体したって?
 てか、分離した途端に脱糞が止まったな。

「ええと…何かもう訳解んねえんだけどさ…つまり、何が言いたいんだ? 今の話ってさ、オニキスが言ってたのと同じなんだろ? 世の理だか何だか知らないけどさ、魔族は…オニキスはあんたらに利用されてたって事か?」

 利用…光が勇者なら、闇は魔王。
 魔王は闇の精霊が?
 俺の時みたく、闇の精霊がオニキスの前に現れて、オニキスを魔王にした?
 人の憎しみを向ける為に?
 人が自分の弱さから逃げる為に?
 …何だ…それ?

「…オニキス…貴様、何か言う事は無いのか? 今のこいつらの話、知っていたのか?」

「知っておったよ。だが、それは勇者のそなたも同じ事。人々の期待を、願いを、光を齎す物、それを光の精霊に捧げる物、それが勇者」

 瞳を軽く伏せて語るオニキスの声は、とても静かで落ち着いていた。
 それが何だか癇に障った。

「俺は、どうだって構わない。前世では、嫌われるだけで誰にも必要とされなかった。そんな俺が、必要とされたんだ。ああ、俺は喜んださ! 本当は嫌だった! だがな、俺が何かすれば、皆が喜んでくれたんだ! 前世では知らなかった事を経験出来た! だが、貴様は!? 皆から、憎しみや恨み、妬み、人の負の感情を…っ…全部…ずっと長い…永い間…向けられていた貴様は…っ…!? 辛いだけ…何も…喜びなんて…っ…!」

 …あ…やばい…泣きそうだ…。
 何で…何で俺が泣きそうになってんだよ?

「…話したであろう? そなたに癒されていたと」

 癒され…? 何だよ…?
 …俺をストーカーしてて、癒やされた?
 訳解んねーよ…。
 頭ぽんぽんするなよ…。
 だから、何で、そんな眩しそうに俺を見るんだよ…?
 俺は…皆が笑うから…。
 ただ、笑顔が見たいだけで…。
 何も、考えてなんかいなかった…。
 周りの皆がくれる笑顔が嬉しくて、それだけなんだよ…。
 ただ、それだけなんだよぉ…。
 誰かの事なんて、他人の事なんて、何も考えてなかったよ…。
 俺が、皆の笑顔を見たかっただけなんだよ…。

「……そうやって、自らよりも他人を思うそなたであるから、私は…。…こうして、そなたと居られる事が、私の喜びで幸せなのだ」

 何だよ…。
 何時まで頭ぽんぽんしてんだよ…。
 だから…何で…お前はそうなんだよ…。
 自分より他人って…それ…お前だろ…?
 お前の方こそ…自分より…俺の事ばかり考えてるじゃないか…。
 俺より…俺の事を解ってるじゃないか…。
 …だから…お前には俺の言葉が解るんだろ…?
 …だから…お前には俺の言葉が届くんだろ…?
 …だから…。

「…名前…」

 手を伸ばして、オニキスの腰の辺りのローブをぎゅっと掴んで、俯いてポツリと呟いた。

 名前を呼んでくれよ。
 俺を。
 俺の名前を。

「…ライザー?」

 ローブを掴む俺の手に、頭をぽんぽんと叩く手とは別のオニキスの手が重ねられた。

 …ああ…畜生…。
 名前呼ばれて、こんなに嬉しいって、何なんだよ。

「…ああ、ライザーだ。今、お前から貰った、それが俺の名前だ」

 ぽんぽんするオニキスの手が止まった。

 くそっ。
 くっそっ!
 お前も、あの時こんな気持ちだったのか? なあ?

「…俺も…お前に名前をやる。オニキス。それが、お前の名前だ。俺の傍にずっと居る奴の名前だ! それ以外は認めない! お前以外要らないっ!! 忘れるな、離れるな、逃げるな! 解ったな!?」

 一気に言ってから、オニキスを睨んでやった。
 もう、喉痛いし、何だか鼻の奥がツンとする。
 この気持ちが、何なのかは解らないけど。
 けどさ、ただ、もう一度、言いたくなったんだ。
 もう一度、ちゃんと名前を付けたくなったんだ。

 何か、視界の端でカラヲとニャンタが抱き合って号泣してるのが見えるし、マリエルは天を仰いで目の上にハムスター乗せてるし、レンは畳に突っ伏して後頭部にハムスター乗せてるし、光と闇の精霊は、やたら明滅してるのが見えるけど。
 気にしない。気にしたら負けだ。

「…そなたに…ライザーに命を捧げた時より、私はライザーの物だ。他の誰の元にも行かぬよ…」

 重ねられていたオニキスの手が、俺の手をぎゅっと掴むものに変わる。
 俺の頭にあった手は、今はゆっくりと髪を撫でている。
 俺を見て来る金の瞳は、何処までも穏やかで優しくて。

 ああ、もう。
 何で、これが。
 何で、こんな事が嬉しいんだよ?
 …でも…。
 でもさ…お前と居れば…お前が教えてくれるんだろ…?
 俺が知らない事。
 俺が知らなかった事。
 教えてくれるんだろ?
 その強引な優しさでさ。
 …違う。
 俺が、教えて欲しいんだ。
 お前に。
 お前から、教えられたいんだ、何もかも。
 お前だけに、教えられたい。
 お前だけが、俺を知ってるなんてずるいだろ。
 教えろよ、お前の事を、もっと。
 もっと知りたいんだよ、お前の事を。
 俺が、知りたいんだ。
 だから、傍に居てくれよ。

 じっと睨んでいたら、頭を撫でるオニキスの手が頬へと移動して来て、流れてもいない涙を拭う様に動かされた。

 …馬鹿だな。
 泣いてなんかいないよ。
 まあ、何か泣きたい気分だけどさ。
 けど、やっぱこんな仕草も嬉しいんだよな。

 そのまま、手は顎へと移動して来て軽く力を入れられて上へと向かされて、自然と俺は目を閉じ……………………………………。

「…っ、る訳あるかああああああああああっ!!」

 掴まれてた手を振り解いて、両手でオニキスの胸を押して、俺は立ち上がった。

 あっぶねー、あぶねーっ!!
 また、衆人観衆の目の前でキスされる処だったっ!!
 だから、お前は、羞恥心と云う物を覚えろっ!!

「あ、じゃ~んにぇん」

 マリエル!
 ハムスター吸って見てんなっ!!

「…おわった…?」

 レン!
 何時まで畳に挨拶してんだっ!!

「んん~、意外と流されないんですね~?」

 カラヲ!
 首を傾げるな!

「裸よりは恥ずかしくないにゃ?」

 ニャンタ!
 ローブを脱ごうとするな!

「…ふむ…。夜までお預けか…?」

 オニキス!
 真面目な顔をしながら、自分の股間に話し掛けるなっ!!

「そんな愛し合う二人に」

「我等から褒美を。表へ出い」

 あ、あ、愛!?

 口をパクパクしてたら、光と闇の精霊がふよふよと移動を始めたから、皆が立ち上がって後を付いて行く。
 俺も、オニキスに肩を抱かれて促されたから、口をパクパクしたまま歩き出した。

 俺達が、外へ出た途端にドンッと地面が揺れて空が黒く染まった。

「…な…っ!?」

 一面、真っ暗だった。
 何の明かりも見えない。
 これが、本当の暗闇。
 俺の肩を抱くオニキスの手だって見えない。
 その手の温もりも伝わって来ない。
 自分の姿さえ、存在さえ、失くしてしまう様な。

 愕然と目を見開いていたら、その闇に突然の光が。
 いや、七色の虹が次から次へと、闇の空へと掛かって行く。
 そして、浮かび上がる自分。
 はっきりと、自分がここに居るのだと、認識出来る。
 オニキスの手から伝わる温もりも、しっかりと感じ取れる。

 もう、言葉なんて、無い。
 真っ暗な闇に輝く虹の架け橋。
 360度のパノラマに浮かび上がる幻想的で荘厳な光景。

《…聞け、人の子等よ。愛しい我等が子等よ》

 頭に直接響く厳かな声。

《魔王は討たれ、勇者は光へと消えた》

 心に染み入る澄んだ声。

《だが、人は何時、また、争うとも限らぬ》

 怒鳴っている訳では無い。

《残された魔物は戒め》

 叫んでいる訳では無い。

《共に手を取り合い、助け合い、慈しみ合い、許し合い、愛し合え》

 ただ、ただ、その声は心に静かに入り込んで来た。

《人の世が乱れた時》

《利だけを。欲だけを。殺戮だけを》

《ただ、それだけを求めた時》

《魔王以上の存在が、そなた等を苦しめる事となるだろう》

《覚悟せよ。胸に刻めよ。その時に勇者は現れぬ。考えよ》

《我等は、そなた等を何時も見守っている》

《光差す雲の合間から》

《夜の闇の静寂から》

《そなた等の未来に幸あらん事を願っている》

『…そなたの未来に幸あらん事を…』

 …あれ…?
 今の…誰の言葉…?
 何時だったか…誰だったか…言われた気がする…?
 え?
 何時?

「はい、サービス終了。ついでに、これ返すよ」

 そんな俺の考えを打ち消す様な、軽い軽い声が直ぐ傍から聞こえて、意識を向けたら目の前に光の精霊が居た。
 その手に、聖剣を持って。
 気が付けば、闇も虹も消えていて、空には青空が広がっていた。

「それ! ライザー君の!?」

「神殿に厳重に保管され…っ!?」

 マリエルとレンの瞳が、驚きに見開かれた。
 それぞれの頭の上に居るハムスターが、同時に首を傾げた。

「だって、勇者が消えたら聖剣も消える決まりだもの。存在してたら駄目でしょ」

 何だか拗ねてそうな精霊の声に、俺は軽く肩を竦めた。

「…俺にそれは必要無い。俺は…」

 言いながら、俺は右手をオニキスに差し出す。
 すると、オニキスが一つ頷いて、便利空間から魔剣を取り出して、差し出した俺の手に握らせてくれた。

「…俺には、オニキスがくれたこれがあるから、その剣は必要無い。…その剣は勇者が持つ物だ」

「んん~? 魔王の精液を注がれたから、勇者じゃないなんて言ってるのなら、それは唯の勘違いだからね? そんなの通じるのは聖女でしょ」

 ぶふっ!!
 言い方あっ!!

「君は、誰よりも勇気を持つ者。誰よりも、光を持つ者。それは、どれだけ魔王の魔力に染められた処で変わる事は無い。君は、何にも変わらない。君は、誰よりも皆に勇気を、希望を、光を与えて来た。誇りに思って良い事だよ?」

 いやいやいや!?

「勇気を、希望を、光を貰って来たのは俺だ。皆の笑顔が、俺をずっと支えて来てくれた」

 そうだ。
 皆の笑顔があったから、ここまで来れたんだ。

「んん~、もう。本当に馬鹿の子だね」

 ごふぁっ!?

「まあ、必要になったら何時でも言ってよ。僕はここに闇の精霊と居るからさ」

 え? また合体するの?

「そうだよ? こんなに僕が輝くのに相応しい場所はないでしょ?」

 ナルシスト?

「失礼だね、君も」

 おい、心を読んでるのか?

「まあ、どうでも良いけどね。ああ、そうだ。君のその口。言葉使いとか、その内に素に戻ると思うよ? 勇者はこうあるべきって言葉を、君が皆の期待に応えて言っていただけだからね。先刻も言った通り、もう、勇者も魔王も居ない。居るのは、ただのライザーとオニキスだけ。誰も何も、君達に期待はしないし、絶望もしない。だから、オニキスもオニキスらしく振る舞えば良いと思うよ? 台詞の練習なんか要らな…」

 そこまで言った時、光の精霊が聖剣ごとパチュンした。

「はあああああああっ!?」

「ええええぇっ!?」

「せ、せいれ、神にも等しっ! 手、出せ…っ!?」

「あ」

「にゃ」

「光のーっ!?」

 俺、マリエル、レンが同時に叫んだ。
 そして、カラヲとニャンタが仲良く地面に後頭部をぶつけた。
 闇の精霊が、わたわたと明滅を繰り返してる。

「…ふむ…。効くのか…怒りのせいか…?」

 そんな俺達をよそに、オニキスは顎に手をあてて何やら納得してた。

 …いや、精霊には手は出せないって言ったのお前だろ…?
 怒りって…そんな、何処かの野菜の宇宙人みたいな…。
 …本当に…人外…規格外過ぎるだろ…。
 …けど、こんな奴じゃなきゃ、皆からの負の感情を受け続けて、内心はどうあれ、平然としていられる訳がないか…。

「…んもう。僕じゃなきゃ死んでたからね? 本当に君も規格外だよ。…向こうから来ない限り人は襲わないし、全くもう…」

 細かく弾けた筈の光の粒が集まって、また人型になった。
 タフいな。
 てか、後半の方、何て言ったんだ?
 小さくてよく聞き取れなかった…。

「まあ、じゃあね」

「光のぉ~」

 光の精霊が軽く手を振って、俺達に別れを告げる。
 そんな光の精霊に、闇の精霊が抱き締める様にまとわりついて、融合していく。
 白と黒が混ざり合って、また、謎の球体になった。
 そして、球体になった途端にまた脱糞しだした。

 …なあ…これ…もしかして、出産…?

「…ん?」

 それまでは、黒い小さな光しか出てなかったのに、白い小さな光がポコッと出て来た。
 不思議に思って見ていたら、ふよふよと俺の方へと来たから、つい手を出してしまう。

《…おや…?》

《おやおや?》

「…何だ?」

 俺の掌にある白い光を、球体は見ている様だった。

《それ、聖剣だね》

《だな》

 ほ?

《君と居たいみたいだ》

《一人にされて寂しかったのだろう》 

 ほへ?

《君の魔力だ》

《受け入れれば良い》

 球体の言葉に、思わずオニキスを見てしまう。
 目があったオニキスは、ただ静かに微笑んで俺の頭をぽんぽんと叩いた。

「…還って来い…」

 だから、俺は掌に浮かぶそれに、そう語り掛けた。
 途端に、俺は光に包まれた。
 優しく穏やかで暖かな光が、俺の中に入って来る。
 全身に…いや、魂に染み渡る様な、そんな感じがした。

「…うん…」

 光が消えて、俺は目を閉じて一つ頷いた。
 違和感とか、何も感じない。
 強いて言うなら、力が漲ってる…そんな感じだ。

《うん。あ、そうだ。良かったね? 君の言葉が届く人に出逢えて》

「え?」

 目を開けた時には球体は、遥か空の彼方へと消えて行く処だった。
 ポポポと脱糞…いや、出産しながら…。

「…早…。…自由だな…」

 けど…。
 言葉が届く人…?
 あれ…?
 何か…何処かで…いつか…?
 何時…って…ああ…俺、死ぬ時に思ったんだ。

 ――――――素直に曲解なく受け止めてくれる奴と出逢いたい…――――――。

 めちゃくちゃ曲解してくれてるけど、好意的に受け止めてくれる…。

 ――――――それが男なら、無二の親友になって――――――。

 無二の親友では無いけど、多分…それ以上の…。

 ――――――それが女なら、嫁さんにしてめちゃくちゃ大切にする――――――。

 嫁じゃなくて、旦那だけど…多分…めちゃくちゃ大切にされてる気がする…。

『…来世では、君の言葉が届く人に逢えるよ…』

 …あ…。
 何か…ダンプに撥ねられた後…何か夢を見て…。
 …何か…良い夢を見て…泣きたくなる様な…そしたら光が…包まれて…。
 …何か、暖かい手に包まれて…そんな事を言われた…ような…?

「もう、精霊って勝手よねえ~」

「今のって、世界中に中継されてたのか?」

 俺が物思いに耽っている間に、マリエルとレンが気を取り直した様だ。

「はあ~凄かったですね~」

「んにゃ!」

 お前ら、何時の間に復活してたんだ。
 つか、オニキスいつまで頭ぽんぽんしてんだ。

「あ、あのさ、オニキス…」

 俺は手にした魔剣を見ながら、オニキスに声を掛けた。

「…む? 遠慮する事は無いぞ? 私とそなたの仲なのだから」

 お、おおおう…。
 何だ…何か…めちゃくちゃ砂を吐きたくなる様な微笑だな…。

「…いや…この…剣さ…その…俺…金払うってか…その…対価がどうとか言ったと思うんだけどさ…」

 あの時のオニキスは、酷く傷付いている様に見えた…。
 …嫌だ…。
 お前に、そんな表情させたままなんて…。
 …俺が…これを使う度に、お前を傷付けて行くなんて嫌だ…。

「そ…その、だな! これは、伴侶からの貢ぎ物って事だから、対価等求めてはいないのだろう? この先もそれは必要ない、そうだな?」

 口ぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっぃっ!!
 何で、ここぞって時にそうなるの!?
 ねえ!?
 もう、勇者は消えたんだよね!?
 俺は、ただのライザーだよね!?
 あああああ、もおおおおおおおっ!!

「うわ!?」

 内心でわたわたしていたら、オニキスに抱き上げられた。

 何でぇ!?
 何で、そんな嬉しそうな顔をしてるの!?
 俺、ありがとうって、そう言いたかったのに!
 この、馬鹿口がっ!!

「そうであるよ」

 だけど、オニキスは。
 笑って言うんだ。

「私にはそなたが居れば良い」

 俺が言いたい事を、自分に都合良く解釈して。
 …俺に…都合良く解釈してくれるんだ。

「おおおおおおお!! 私、寝所を用意して来ますね!!」

 …は?

 カラヲがガッツポーズを決めてから、屋敷の中へ入って行った。

「俺は、風呂を沸かしてくるにゃ!」

 …へ…?

 ニャンタが二ヘラと笑ってカラヲの後に続く。

「回復は任せて、ライザー君!」

 …何て…?

 マリエルが豊満な胸を叩いてそう言った。

「精の付くもん食わせてやるぜ!」

 …何で…?

 レンが白い歯を見せてサムズアップして来た。

「良い友人に恵まれたな」

 …へあ…?

 オニキスが青い空をバックに爽やかに笑って言った。

「…これから先は、暫く眠れると思うなよ」

 続けて放たれた言葉に、俺は全身から血の気が引いた。
 そして、全身がぷるぷると震え出す。

 いいいいいいい、無理っ!!
 だって、レンとマリエルが友達になってから、どれぐらい経つ!?
 その間、皆同じ部屋でだべって…。
 …え…あの…その…溜まってた分…全部一気に吐き出すとか…ない、よね?
 そんな願いを籠めながら、ぷるぷると震える目でオニキスを見れば、その金の瞳は爛々と輝いていた。

 …あ…ヲワタ…。

 レンとマリエルも、鼻息荒く俺を見ている…助けは…望めない…。
 …友達って…何…?

 神様仏様閻魔様魔王様友達様。
 俺、もう、誰にも頼らないっ!!
 頼れるのは、信じられるのは自分だけだ―――――――――っ!!

「ふん…。臨む処だ。せいぜい期待を裏切らない事だな」

 いやっ!!
 自分も頼れないぃ―――――――――っ!!
 誰か助けてぇ―――――――――――っ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

神様お願い

三冬月マヨ
BL
俺はクリスマスの夜に事故で死んだ。 誰も彼もから、嫌われ捲った人生からおさらばしたんだ。 来世では、俺の言葉を聞いてくれる人に出会いたいな、なんて思いながら。 そうしたら、転生した俺は勇者をしていた。 誰も彼もが、俺に話し掛けてくれて笑顔を向けてくれる。 ありがとう、神様。 俺、魔王討伐頑張るからな! からの、逆に魔王に討伐されちゃった俺ぇ…な話。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

悪役にもハッピーエンドを

三冬月マヨ
BL
ゲーム世界のシナリオを書き換えていたら、原作者に捕まりました。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

処理中です...