神様には頼らない

三冬月マヨ

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神様には頼らない・前編

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 パチュンパチュン、スプラッタ再び。
 血飛沫の舞う、爽やかな青空の下からこんにちは、ライザーです。
 実況は不詳ながら、この元勇者ライザーがお送り…。

「ちょっと、ライザー君! 遠い目してないで、アレ、何とかしてよおっ!!」

 血飛沫を浴びながら、マリエルが高い澄んだ声で歌っています。

「そうだぞ! 何で13日の〇曜日やら、エ〇ム街の悪夢やらを実体験しなきゃならないんだよ!? いや、バイオでハザードか!? とにかく! アレをどうにか出来るのは、お前だけだろ!?」

 同じく内臓を浴びながら、低い声でレンが歌っています。

「ハ、ハ、ハ! ドウニカデキルナラ、トックニヤッテマスゼ、ダンナガタ!」

「何のドラマよ、それ!?」

「現実逃避するなーっ!!」

 いやー…したくなるよな…?
 なんで、こうなったんだろな?
 俺は鼻歌でも歌ってそうな、現実逃避の原因を作っている"アレ"こと、オニキスを見た。
 オニキスが指を鳴らす度に、魔物がパチュンパチュン弾けて行く。
 その度に俺達…俺とレンとマリエルが、びちゃんびちゃん景気良く血と内臓塗れになる。
 最初は何とか避けようと頑張ったさ。
 だけどな?
 避ける方、避ける方に、狙ったかの様にスプラッタされた物が飛んで来るんだよ。
 人間、諦めって肝心だよなー…と、俺は二人より先にギブアップした。
 諦め切れない二人は、今もギャーキャー騒いでいる。
 俺より年上なのに、元気だよなー…。
 取り敢えずは頭に乗った内臓とか、顔に付いた血を拭いながら、俺はオニキスの後に続いて行く。
 俺達が今居るのは、かの魔王城がある広大な森の中だ。
 目的地は、魔王城。
 その中にある、闇の精霊の住む場所へと移動出来ると云う、ど〇でもドア、もとい、門だ。
 そんな物があるなんて知らなかったな。
 初めてここへ来た時は、とにかくオニキスを…魔王を倒す事しか、頭に無かったからな…。
 それが、今ではその魔王が仲間と云うか…その…まあ…何と云うか…アレなんだよな…。
 その…アレだよ、うん。
 アレと云ったら、アレなんだよ、そう、アレだ。
 まあ、良いか。
 とにかく、何故、今俺達がそんな場所に居るのかと云うと、闇の精霊に殴り込みを掛けに行く為だ。
 事の発端は、オニキスのアレ発言の日に遡る。
 アレ発言にパニクった俺が、オニキスの腹に飛び膝蹴りかまして逃げたあの日。

 ◆

「何故、逃げるのだ? 恥ずかしがる事は無いと云うのに」

 逃げるわ、ボケェッ!!
 勝手にプロポーズされた気になって、勝手に夫婦とか言ってんじゃねえっ!!
 俺は知らないし、認めてないしっ!!
 セッ…セセセセセセ…クロスだって、魔剣の支払いだしっ!!
 夫婦の営みって訳じゃないしっ!!
 それに、突っ込まれる方が嫁なら、俺、嫁なのか!?
 俺が、嫁!?
 アホかーっ!!
 ったく、どの顔がそんな事を言ってんだよ!?
 と、俺の後を付いて走って来るオニキスを振り返ると。
 …何か…顔青いな…てか、そんな青い顔して笑うなよ。
 ついでに言うなら、口の端から血ぃ垂らしてんなよ。
 怖すぎるだろ。
 俺、ホラー嫌いだって言ったろ?
 てか、何で血ぃ出してんだ?
 よくよく顔を見たら、玉の様な汗が浮かんで…って、脂汗かっ!?
 そう思った途端、走っていたオニキスがパタリと前のめりに倒れた。
 何の予兆も無く倒れるとか、お前はウサギかっ!!

「…っ…! オニキス…ッ…!!」

 俺は慌てて、倒れたオニキスに走り寄って、俯せに倒れた身体を仰向けにさせる。

 まさか、あの蹴りで内臓でもやられたとか!?
 まさか、骨折れて、内臓に刺さったとか!?
 アホか!! 回復魔法使えるんだろ!!

「おいっ! この馬鹿が!! 早く回復しろっ!!」

「…そなたからの…痛みは…至福故…自然治癒に…」

「アホかあああああああああっ!!」

 こんの変態があああああああああっ!!
 息も絶え絶えに何を抜かしてんだっ!!
 って、どうする!?
 俺、回復魔法使えないし、回復薬持ってないしっ!!
 どうする、どうする!?
 薬草、そこらに生えて…。

 薬草を探そうと、腰を浮かし掛けた時。

「私に任せて、ライザー君!!」

 その声と同時に、オニキスの身体が淡い緑の光に包まれた。
 聖女が使う癒しの光だ。
 それは俺が知っている物よりも、各段に威力が上がっている様に思えた。

「聖女マリエル!?」

「俺も居るからな!!」

 その声と同時に、辺りの草が薙ぎ払われて…いや、これ要るか?
 オニキスが草に埋もれたんだけど?
 ねえ、息出来てる? これ?

「剣士レン!?」

 オニキスのピンチに現れたのは、山小屋の外でのびていた筈の二人だった。
 …二人とも、復帰力ぱないな。
 聖女は、まだ髪はチリチリで服も黒焦げだけど…。
 剣士は、何故か唇がタラコになっているけど…。

「…助かった、礼を言う」

 俺は立ち上がって二人に礼を述べた。

「お礼なんて要らないわよ。困っているライザー君を放って置けないもの」

 優しく、ふんわりと微笑む聖女の言葉に、俺は頭を掻く。
 やっぱ、優しいよなあ…。
 って、何か喋り方が変わってないか?

「そうだぜ! 仲間だろ、俺達!」

 いや、何、胸を張ってるんだ。
 お前は何もしていないだろ。
 てか、オニキスを窒息死させようとしただろ。
 けど、仲間か…。
 道を違えた今でも、そう言ってくれるのか…。
 ちょっと…いや…かなり嬉しい…。
 涙が出そうになるのを、俺は堪える。
 俺は男だからな。
 男は人前では泣かないんだ。
 何て思っていたら、むくりと草の山が動いた。

「…余計な事を…」

 口の端に付いた草を取りながら、オニキスが言う。

「貴様、助けて貰ってそれは何だ?」

 オニキスの顔色が元に戻っている。
 流石、聖女の癒しの魔法だ。

「そなたに介抱して貰う機会を潰されたのだ。何故、礼を述べる必要がある?」

 うお…。
 流石ストーカー、身体張ってまで何してんだ。

「私は、私に出来る事をしただけよ。あなたに聞きたい事があるの。その前に死なれたら、追って来た意味が無いわ」

 …追う…?
 え?
 聖女は魔王のストーカーだったの?

「ああ。何で俺達を殺さなかった?」

 あ。
 それは俺も気になった処だ。
 だが、オニキスは『大切な仲間』だと『良い仲間に恵まれたな』としか、言わなかった。
 けど…こいつら、角も無いし、髪だって短くなったオニキスを魔王だと確信…もするか…。
 あの時、何時からかは知らないけど、意識はあったって言って…。…それ…聖女も…?
 俺の変な声、聖女にも聞かれていた?
 いや、まあ、昨日ばっちりと見られたし…今更と云えば今更だけどさ…。
 ぶわわと顔に熱が集まって来る。
 いや、落ち着け、俺。

「…下らぬ」

 二人を一瞥して放ったオニキスの冷たい声に、顔の熱が引いて行く。

「行くぞ」

「あ、おい…っ…」

 オニキスは俺の肩に手を置いて歩き出そうとする。

「…ライザー君の仲間だから? 本当に、それだけなの?」

「ただ、それだけで殺さなかった? お前が? 魔王のお前が?」

 …ああ、聞いていたんだな…。

 縋りつく様な二人の声に、オニキスが足を止めて小さく舌打ちをした。

 ん?
 こいつでも舌打ちするのか。
 …それは…その言葉の他に、何かあるって事か?
 …それほど、聞かれたくない事なのか?

「…下らぬ。二度も言わせるな」

 しかし、それでもオニキスはそれ以上の事は言わなかった。
 今度こそ、二人に背を向けて歩き出そうとした時、俺達の目の前の地面が弾けた。

 …は…?

 パラパラとハラハラと、抉られて舞い上がった土が、空から降り注いで来る。

「…何の真似だ…?」

 俺は身体ごと二人に向き合った。
 聖女が、世界樹の木の枝で作られたロッドを俺達へと向けていた。
 ロッドの頭に埋め込まれているのは、魔力増強の魔石か? え? そんなの、何時、手に入れたの? 決戦の時は無かったよな?
 何時も穏やかに微笑んでいる筈の顔は、今は冷たく、底冷えしそうな程の冷たい目で俺を、いや、オニキスを睨んでいる。

 …ちょ…。
 怖いんだけど…。
 何なら、小刻みに足が震えてるんだけど…。
 聖女の隣に立つ剣士も、手にした剣の切っ先をオニキスへと向けてるし…。
 めっちゃ、ガン飛ばしてる…。

「…話したくないなら、それはそれで良いわ。けどね、許せないのよ」

「ああ、許せねえな」

 ロッドを、剣先をオニキスに向けたままで、その瞳に闘志の炎を宿して、二人は言った。

「…こいつが生きている事が、か? あの時の会話を聞いていたのなら、解るだろう? こいつを殺した処で…」

 意味は無いと、許さなくて良いから見逃してくれ、と言おうとしたのだが。

「嫌がるライザー君の処女を奪った事よっ!!」

「その上、昨日もだっ!!」

 ちょっと待ってえっ!?
 そっち!?
 そっちなの!?

「レイプは犯罪よっ! 身体を堕として、快楽漬けにしてライザー君を手に入れたつもり!?」

 聖女様がそんな言葉使っちゃ駄目ーっ!!
 てか、俺、漬かってないからっ!!

「そんなのが許せるか!? 俺のライザーを、よくも…っ…!!」

 お前のじゃないし!
 俺は俺のだし!!

「…それがどうした? 俺は、こいつを見張っているだけだ。魔剣の礼もあるし。それに、あの時はそうかも知れないが、それ以降は合意だ」

 口ぃいいいいいいいっ!
 要らん事をベラベラ言わないでぇっ!!

「なっ!?」

「そ、んな…!?」

 二人が大きく瞳を見開いて、地面に力なく座り込んだ。

「…ラ…ライザー君が…何かのお礼に身体を使うだなんて…そんな…ビッチな…」

 聖女がビッチ言うな!
 てか、オニキスだけだぞ!?
 いや、ビッチって全世界共通の言葉だったの!?

「…もう…俺達の知るライザーは…居ないのか…あの、手淫すら知ら無さそうな純真無垢な…」

 いやいやいやいや?
 俺、ちゃんと、自分でちんこ弄ってたからね?
 純真無垢じゃないからね?
 そんなの、唯の不能だからね?

「…行くぞ」

「…お前達とまた会えて嬉しかったよ…じゃあな…」

 そう言って歩き出す俺達の後ろからは、嗚咽が聞こえていた。

 …悪いな…。
 勇者じゃなくなった俺を、仲間だって言ってくれた事、嬉しかったよ…。

 何て、ちょっぴし感傷に浸りながら、街に着いて飯食べて宿を取ってさ。
 風呂入って、さあ、寝るかってなったらさ。

「…っ、ま、待て…っ…! 貴様、怪我は!?」

 何で、俺、押し倒されてんの?

「見事に完治した。刺さってた骨も元通りだ」

 あ、良かったね?
 でもね?
 昨日もしたよね?
 何で、そんなに元気なの?
 ねえ?
 俺、布団被ってたよね?
 察して?
 俺、ちょっとナイーブなの。
 放っておいて欲しいの。
 何で、風呂から出て来て、さも当然の様に布団剥いで、俺の上にのし掛かって来るの?
 何の剥ぎ取りチャンスなの?
 オニキスは既に剥ぎ取られているけどね?

「また、折られたく無かったら、今日は大人しくしていろ」

 おお、お口さん素直。

「明日は相手してやる」

 おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?
 何で、そうなるの!?
 どうして、続きがあるの!?

「…断る。あの男に触らせたまま等と我慢ならぬ」

 ほ?

「唇と、男根」

 ほおおおおおおおおおおっ!?
 すっかりと忘れていたよっ!!
 その後のこいつの発言が、余りにもあんまりだったから、記憶からデリートされていたよっ!!
 せっかく忘れていたのに、思い出させるなよっ!!

「それだけでか? 醜い独占欲だな」

 おいいいいいっ!!
 煽るな、口ぃっ!!
 大人しくして、良い子だから!!

「醜くて良い。そなたは、私のものだ。私以外に触れさせる事は許さぬ」

 そう言いながらオニキスは俺の唇を親指の腹でなぞり、膝頭を俺の股間へと押し付けて来た。
 その金色の瞳に宿るのは、嫉妬の炎なのだろうか?

 …嫉妬…やきもち…か…。
 俺、誰かや何かにそんな気持ち持った事あったかな?
 誰かを好きになると、そんな気持ちを持つのかな?
 聖女とのムニャムニャだって、勇者は聖女とって云う暗黙の了解みたいなのがあったから…。
 だから…俺…。
 …ああ…駄目だな…。
 …そんなの、ただ流されてるだけ…。
 …ただ…ヤりたかっただけ…。
 …そんなの…良くないよな…。
 …何だかんだで…聖女の誘いを断った口は紳士だったって事なのかな…。
 …何だよ、それ…。
 …何で、今になってそんなのに気付かされるんだよ…。

「…なら…教えてくれよ…。…何で…二人を…殺さなかった…?」

 何だか泣きそうになって、左腕で顔を隠して俺はそう言った。
 何か、口素直だな…。

「…一度しか言わぬ…」

 オニキスはそう言って俺の身体を抱き起こす。

「…少々気恥ずかしいのでな…」

 恥ずかしい?
 こいつでも、そう思う事があるのか。

 何て思っていたら、身体の向きを変えられて、胡坐を掻いたオニキスの上へと座らされた。
 …いや…ケツにちんこが当たってるんですが…。
 …顔見られたくないなら、俺に背中向ければいいのに。
 何で、こうやって抱き締めるんだよ。
 まるで俺を慰めるみたいにさ。
 後ろから腕を回されて、その手で腹を撫でられる。
 ゆっくりと。
 その手付きが余りにも優しくて。
 俺はそっと背中を、その胸に預けた。

「…あの二人は…そなたを好いておる…。私は…あの日に、そなたに殺されるつもりだったのだ」

 そのせいかどうかは知らない。
 先刻までの冷たい声は消えて、優しい声に変わっていた。
 その独白に、ただ耳を傾ける。
 口を挟んだら駄目な気がした。

「…私が死んだ後は、二人の内のどちらかと結ばれれば良いと思った。…ただ…まあ…やはり、未練が勝ってな…そなたに無体を強いた。許せとは言わぬ。ただ、その身体が欲しかったのだ。気持ちは…心は貰えなくとも、せめて…その温もりをと…。その熱を持って…逝きたくなったのだ…」

 …何だ、それ…。
 随分と勝手な言い草だな…。

「…ずっと、そなたを見ておったよ…。そなたが、今のそなたになる前から…」

 …ん?
 今の俺?

「…過去世から…」

 過去…?
 え?
 前世って事か!?
 前世から、こいつストーカーだった!?
 どんだけだよっ!?

「…隠れて泣くそなたの涙を、幾度拭いたいと思った事か…。…震えるその小さな身体を、幾度抱き締めたいと思った事か…」

 お…おおお…。
 な、何か、また逃げたくなって来た…。
 いや、逃げちゃ駄目だ。
 話を聞かないと。

 ポンと頭に手を置かれて、撫でられた。

 …何故…?

「…良くぞ…あの生の中で頑張ってくれたな…」

 …あれ…?
 …何か…あれ…?
 この感じ…?
 静かで優しくて…慈しむ様な…この声…。
 顔は見えないけど…多分、きっと…表情も同じ筈…。
 …何時だったか…何処かで…?
 …何処で…?
 …いや…?
 デカくてゴツゴツした手…こんな手…今世の母さんの手とも父さんの手とも違う…。
 まあ、前世では撫でられた事なんか無いけどさ…。痛みしか貰ってないし…。
 こんな手は…前世でも…今世でも…知らない、よな?
 なのに…何か…懐かしいなんて…何だ、これ?
 …ストーカーパワーか?

「…また…そなた達は…倒れておる魔物にも、魔族にも手は出さなかったからな…」

 ん?
 話が飛んだ…いや、戻ったのか…?

「…これまでの勇者とも、その仲間とも、そなた達は違った。…それが…嬉しかったのもあるな…」

 いや…?
 だって、そんな死人に…死体に鞭打つ事なんて、普通しないよな?
 そんな、死者への冒涜なんて。

「…戦いの場に、動けぬ者は不要。斃れて動かぬ仲間を踏み付ける勇者も居ったよ。魔物や魔族の死体等、さもあらん。そなた達は、何もかもが…これまでの勇者達とは違ったのだよ」

 …それなら…お前だって…。
 お前は…聞いて来た魔王の話と違うじゃないか…。
 …冷酷無比で…倒した勇者や仲間の遺体をわざわざ人間の街や城へ送り返して、絶望を振り撒いて来たって、聞いたぞ…。
 魔物だって…魔王が生み出して、人や街を襲わせてるって…。
 俺は…俺達は…人間は…皆、そう言い聞かされて来たんだ…。
 …なのに、お前は俺も、剣士も聖女も殺さないで…いや…俺のケツは死んだけど…それどころか首を差し出して来た。
 何だよ?
 何なんだよ、お前は?
 本当に、訳が解らねーよ。
 まあ、ストーカーの考えてる事なんて解る訳ないよな…。

「…疲れて居った…終わりの見えない、繰り返される戦いに…。待って居った…そなたが成長して私に会いに来る日を…そなたが、私を殺してくれる日を…それを待つ日々は…楽しくもあった…。…ああ…甘美でもあった…」

 な、何だよ…何か…そんな夢見る様な声で言うなよ…。

「…まさか…こうして、殺されずに生きながらえるとは思いもよらなかったが…」

 …いや…言ったよな?
 お前を殺しても、消えた生命は戻らないって…。
 だから…これ以上の犠牲を出さない為に、残った魔物を倒して…。

「って、おい…」

 何でシャツの中に手を入れて来るんだ?
 今、そんな話をしていたか?

「…共に在る事を望まれた…。…そうなれば、欲も出る。欲は尽きない、飽くる事なく湧き続ける」

「…っ…同感だな…っ…!」

 本当に、何処からこんな性欲が湧いて来るんですかね!?
 ピチピチ現役二十歳の俺より、何で、推定500超えのオニキスの方がこんなに元気なの!?
 え? 何処からそんな歳が出て来たって?
 今の魔王になって500年経ったて、鼻水垂らしたガキでも知ってる話だからだよ!
 それでね?
 ケツに当たってるちんこ、硬くなって来てるからね!?
 今の話の流れの何処に勃起する要素があったんですかね!?
 教えてくれても良いんじゃないですかね、神様!?

 背中側のシャツも捲られて、そこにぬめった何かを押し付けられた。

「…っ、おい…っ…! 誰が良いと言った!?」

 俺の背中を軽く舐めてから、オニキスが口を開く。

「寂しがるそなたを慰めるのは、伴侶の努めであろう?」

 ごふっ!!
 ナイーブになってたの気付いてたのかよっ!!
 で、何でこれが慰めになるんだよっ!!

「…まあ…仕置きも含まれるがな」

「…っ…!!」

 仕置きっ!!
 剣士とのアレか!?
 ったって、軽く触れられただけだぞ!
 それも一瞬!
 聖女が飛んで来たからな!
 ちんこだって、ズボンの上からだったし!
 今、お前がしてるみたいに、ズボンの中に手を入れて直に触られていないからなっ!!
 って、待てよ…?

「…仕置きって…っ…! け、んしの唇が腫れてたのは…っ…!」

 こいつ、嫉妬だって言ってた。
 聖女も、仕置きだとか言って、ボロボロになってた!

「そなたを追う都合故、炙る程度になってしまったがな」

 怖えぇよっ!!
 ガッツリやられてたら、どうなってたんだよ!?

「…また…現状、そなたを泣かせる方法は、これしかないのでな?」

「ほぁっ!?」

 泣かせるって…っ…!
 何か、何処か楽しそうな声で言ってない!?
 てか、泣くって…泣くって…っ…!
 啼かされてるの間違いだろ!?

「…いつか…私の胸で泣く日を楽しみにしておるよ…。その時は、その涙を拭わせておくれ…」

「…言ってろ…! だがな…っ…! 貴様が喜ぶ事を言ってやる…! 俺を…啼かせて良いのは…っ…! 俺が…こうしたいと思うのは…貴様だけだと云う事だ…っ…!!」

 あっはは~んっ!!
 今夜は眠れなーいっ!!
 お口さんの馬鹿ああああああっ!!
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