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第28話 白界

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リアナの目の前で、ソウマは顔に手を当てて小刻みに震え出した。


リアナはソウマが泣いているのかと思った。だけど、暫くしてソウマから聞こえてきたのは、暗い笑い声だった。

「ククク、ククク」

「ソウマさん。笑っているの?」

ソウマはゆっくりと顔を上げ、リアナを見つめてきた。いつもの愛想笑いが消えたソウマの表情は暗く、リアナに対しての強い敵意が感じられた。

「本当に、リアナには失望するよ。僕と結婚して従順な妻になるのなら、リアナを可愛がってあげたのに。君が失踪した日、会社の金庫に入れていた複数の契約書も紛失した。あの日から、僕は社長に何度も呼び出され、問い詰められた。契約金を不正に横領しているだろと、何度も、何度も、何度も!」

強い口調でリアナに話しかけるソウマから、怒りを感じる。

「社長は、決定的な証拠が無いにも関わらず、僕を責めてきた。確かに会社の金を勝手に借りたのはいけなかったかもしれない。だけど、たかが数百万だろ。僕が今まで取ってきた契約に比べると大した額じゃ無い。そもそも、チョウ食品会社は、いずれ僕の物になる予定だった。それなのに、あの日僕を解雇すると・・・・・・だから・・・・・・」

「まさか、貴方はそんな理由で、父さんを殺したというの?」

「そんな理由?君には分からないだろう。生まれた時から恵まれている君には。僕は必死に努力してここまできた。チョウ食品会社の社長になるため、どんな事だってした。運良く産まれただけで何もかも持っている君とは違う!

残念だよ。リアナ。
君とは仲良くできると思っていた。だけど、仕方がないだろ。君が気が付かなければ長生き出来たのに。」

ソウマは、両手を前に突き出しながらリアナに近づいてきた。

リアナは、書類が散らばる部屋で、本棚に背をつけて立っている。

逃げられない。

ソウマのゴツゴツとした大きな指先がリアナの首に触れた。

「さようなら、リアナ。恨むなら自分の運の無さを恨むんだな」

「やめて、お願い」

ソウマは、リアナの首を両手で握り思いっきり締めてきた。






リアナは必死に、ソウマの腕を掴み離そうとする。

ソウマの瞳は血走っている。

苦しくて苦しくて痛い。

もがこうとするが、ソウマはびくともしない。


リアナの脳裏に、ジョージの整った顔を浮かんだ。

(ああ、ジョージに会いたい)

ただ、リアナはそう願いながら、意識が真っ白な世界に引き込まれていった。












「リアナーー!」




遠くでリアナを呼ぶジョージの声が聞こえてきた気がした。
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