【完結】リアナの婚約条件

仲 奈華 (nakanaka)

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第26話 舞宙

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音に気がつき、リアナはドアを見た。

ソウマは満足そうに微笑みながらリアナにゆっくりと近づいてくる。

「木龍?違うだろ。リアナ。君が頼るべきなのは僕だろ。やっと邪魔者を皆処分したよ。結婚しよう」

こんな人だっただろうか?ソウマはいつも和かに笑い、人当たりのいい人物だった。チョウ食品会社の営業としてとても優秀で、父がリアナの婚約者に選んだ。

ソウマは笑ってリアナに近づいてくる。その微笑みがなぜか気味悪くリアナは感じられた。

「ソウマさん。何を言っているの?貴方はお姉さんと結婚したのでしょ。私はもう貴方の婚約者じゃないわ。」

「エリナとはすぐにでも別れるつもりだよ。さっきも言っただろ。リアナが帰ってこないから仕方がなく籍をいれただけだ。あんな借金まみれの女うんざりだ」

「だけど、私は」

「リアナ。君が必要なんだ。僕にもチョウ食品会社にも」

ソウマは強引にリアナに近づいて来た。

話し合いになりそうにない。有無を言わさないソウマの態度にリアナは不安を感じ、ソファから立ち上がって壁一面に設置されている本棚へ逃げた。

「リアナ。君は逃げてばかりだね。だけど、もうおしまいだ。君は僕の花嫁になる。約束したじゃないか。一緒にチョウ食品会社を立て直そうって」

「ええ、でも状況が違うわ。父さんは亡くなってしまった。貴方はもう姉と結婚して社長になったじゃない。私と結婚する必要なんて無いはずよ」

ソウマを見つめながら後退るリアナの背に本棚が当たった。

ソウマは相変わらず微笑みながら近づいてくる。

「君の事が好きなんだ。心の底からね」

そう言うソウマの口元はリアナを嘲るように歪んでいた。

(違う。ソウマさんは嘘をついている。)

リアナはジョージに告白された時の事を思い出していた。リアナに告白する時のキラキラしたジョージの瞳。真剣な表情。必死な声色。ジョージは心からリアナの事を想ってくれていた。

(ジョージに会いたい。私はジョージの事が・・・・・・・)

「嘘よ。どうして今更そんな嘘を言うの?ソウマさん。私の事を好きだなんて、姉と結婚した貴方がどうして?」

ソウマは、リアナを威嚇するように睨みつけて言った。

「面倒だね。とにかく君は僕の言う通りにしたらいい。失踪している間、余計な経験でも積んだのか。確かめてあげるよ」

ソウマはリアナに近づき、腕を掴もうとしてきた。

身の危険を感じたリアナは後ろの本棚から、ファイルを取り手当たり次第ソウマに投げつけた。

ソウマは、手でファイルを乱雑に払いのける。

衝撃でファイルから飛び出した無数の紙が宙を舞う。

ソウマは、目を細めながらリアナに言った。

「なんのつもりだ?リアナ。」


リアナは、険しい口調のソウマの声を上の空で聞いていた。

ヒラヒラ宙を舞いながら床に落ちた書類に、亡くなった父の筆跡を見つけたからだ。





『主犯はソウマ』





ファイルに纏められていたのは、チョウ食品会社の会計報告書だった。おかしな事に、書類は2種類ある。いくつものチェックとメモが書かれた紙が散らばる。リアナの脳裏に横領の二文字が浮かび上がる。

(生前父はソウマの横領を疑っていたみたい。父はきっとソウマを問いただしたはず。なのにどうして彼が父の死後社長に?)


気がついたリアナは、ソウマの顔を見て、か細い声で言った。


「まさか、貴方が?父さんを殺したの?」


ソウマは、眉間に皺を寄せて険しい表情をしていた。






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