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「ロン?本当に?」

「そうだよ。ルミー。一年ぶりだね。」

「私、あの日本当に行くつもりだったの。逢いたかった。ずっと待っていたの」

ルミアは、ロンの頬に両手を当て、確かめるようにより近づいた。
込み上げてきた色々な想いが急にあふれ出し、目が潤む。
泣きたいわけではないのに、どうしても涙が溢れる。

「ルミー。落ち着いて。昨日レナリア商会で倒れそうになっている所を見つけて、ここへ連れてきた。逢えてよかったよ。」

「ロン。ロン。お願い。抱きしめて。ずっと一緒にいたいって思っていたの」

「ルミー?」

ロンは、ルミーを抱きしめながら、慰めるように背中を擦り続けた。






コンコン

暫くして、ドアがノックされた。ルミアは、顔を寄せていたロンの胸から離れドアを見た。
ロンは、起き上がり返事をする。

「誰だ」

「ご主人様、昼食をお持ちしました」

「入れ」

部屋に入ってきたのは、細身で鋭い眼の女使用人だった。ルミアを睨みつけながら、ベッドの側のテーブルに食事を並べていく。

女性使用人は、ルミアとロンを伺いながら何かを告げようとしているようだったが、何も言わずに部屋から出て行った。

「彼女は誰?」

「ああ、母の使用人だ。ルミアの服や着替えは彼女が手伝ってくれた。酷く汚れていたからね。ルミア食事にしよう。なにがあったか聞かせてくれ」

窓から差し込む光は強く、ルミアは長い間寝ていた事に気が付いた。

少しでも離れたら、また逢えなくなるかもしれない。

そんな不安を感じて、ルミアはロンと指を絡めたまま起き上がった。

「ロンはどこにいたの?約束の日に間に合わなくて、あの後探したのに、使者団にロンはいなかったって聞いたわ。私、どうしてもあなたに逢いたくて城から抜け出してきたの」

ロンは複雑そうな表情でルミアを抱き上げたまま椅子に座り、言った。

「僕もルミーを探していたよ。あの時、どうしても帰らないといけなくて、後で人を雇って迎えにいかせた。でも、インダルア城でルミーが見つからなくて、街でも探させたけど誰も君の事を知らなかった。もう城を離れたと思っていた。ルミーはずっと城にいたの?」

ルミアはずっと城にいた。王女として教育を受けていた。使用人ルミーは去年の来春祭の最終日に城を離れた事になっている。使用人仲間にもそう告げたし、実際にそうするつもりだった。

ルミアは、ロンに自分が幽霊姫と呼ばれるインダルア王国第3王女である事を告げようかと思った。

(ルミア王女はモンタスア国へ嫁がなければならない。見つかったら絶対に連れ戻され、結婚を強要される。モンタスア国へ行ったら、もう2度とロンには会えないかもしれない。やっと会えたのに、もう離れたくない。王女に戻るつもりなんてない。ルミア王女として与えられた全ては城に捨ててきた。王女の身分に未練なんてない)

「私はずっとインダルア城にいたわ。きっとなにか行き違いがあったのね。でも、本当に逢えてよかった。」

ルミアは、ロンに擦り寄って、そっと唇を寄せてキスをした。
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