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黄色や赤に染まった紅葉や、楓、銀杏の葉が舞う大通りを、豪華な馬車が列をなして走っていく。将来の皇妃への歓声があがり、通りの人々はインダルア王国の国旗を振り二人の姫の美しさを口々に称えた。
ルーナ姫とリーナ姫が帝国へ旅経つのをルミアは城から眺め下ろしていた。
二人の姉姫は、たびたびルミアに嫌がらせをしてきた。
社交や礼儀作法で劣っていたルミアが、すぐに二人に追いつき教師から褒められる事が気に入らないらしい。リリアンナ妃に甘やかされて育った二人の姫の帝国語は覚束なく、帝国へ向かったとしても、他国からも何人も招かれている皇子の婚約者候補に勝るとは思えなかった。
第2妃のリリアンナ妃も付き添いとして帝国へ暫く滞在するみたいだ。
父王は本当にリリアンナ妃に無関心だ。妃が他国に滞在するなんて考えられないのに。
ルミアは、少し微笑みながら窓から離れ、城の最北にある古い書庫へ向かった。
夏の終わりに見つけた古い書庫には、普段は図書室に置かれていない古い本や外国の本が保管されている。
ルミアには調べたい事がある。あの日ロンから渡されたシルバーの指輪は、インダルア王国の物ではない。指輪の裏側に文字のような文様が刻まれており、外国語だと分かる。ルミアには読む事ができなかった。
書庫の中はひんやりと涼しく、狭い通路に沢山の本が並べられていた。帝国の書物を中心にルミアは分厚い本をパラパラと捲った。
いつの間にか日が暮れ夕方になっていた。帝国語で書かれている分厚い本の中に指輪の文様と同じ文字を見つけた。
『ライカー国』
どうやら十数年前に滅びた国の文字らしい。帝国との戦争で滅び吸収されたと書かれている。
ライカー国があった場所は、帝国の西端で、インダルア王国からは帝国を縦断しなければ辿り着けない。
「ロイ。貴方はどこにいるの?」
書庫を出たルミアは、薄暗くなった裏口を抜けて、迷路庭園の中に入っていった。
枯葉に囲まれたコテージはやはり静まり返っている。
誰も訪れた気配がない。
ずっとルミアは待っている。
城の豪華は部屋を与えられ、十分な教育と、たくさんの衣装や宝石を手に入れた。塔で生活していた時とは比べものにならない程の待遇を受けている。だけど、本当に欲しいものがどうしても足りない。
歓迎しているように見える父王だが、なにかが可笑しい。
父王はルミアの事を気にかけているように見える。
だけど、、、
王はルミアを教育し、王女の衣を着せ、その進歩を教師に尋ねるが、ルミアには話しかけてこない。目の前にいるのに、第3王女という殻だけを大事にしているようだ。
優しそうなルクラシア王妃とは、殆ど接点がない。公共の場で遠くに会釈を交わす程度だ。
弟王子ルキアは、病弱らしく部屋に籠る事が多い。城に移って半年になるのに王子ルキアに一度も会った事がなかった。
コテージのドアを開けて中に入る。
一瞬大柄なロイが長い腕を広げて椅子に座っているように見えた。
目をこすりもう一度見ると、薄暗い部屋に古びたテーブルと椅子だけが置かれていた。
分かっている。ロイはいなくなった。
ずっと待っている。
一人で、暗闇の中。
ただ貴方が来てくれるのを。
「ロイ。どこにいるの?逢いたい。逢いたいの」
暗闇の中ルミアは一筋の涙を流した。
ルーナ姫とリーナ姫が帝国へ旅経つのをルミアは城から眺め下ろしていた。
二人の姉姫は、たびたびルミアに嫌がらせをしてきた。
社交や礼儀作法で劣っていたルミアが、すぐに二人に追いつき教師から褒められる事が気に入らないらしい。リリアンナ妃に甘やかされて育った二人の姫の帝国語は覚束なく、帝国へ向かったとしても、他国からも何人も招かれている皇子の婚約者候補に勝るとは思えなかった。
第2妃のリリアンナ妃も付き添いとして帝国へ暫く滞在するみたいだ。
父王は本当にリリアンナ妃に無関心だ。妃が他国に滞在するなんて考えられないのに。
ルミアは、少し微笑みながら窓から離れ、城の最北にある古い書庫へ向かった。
夏の終わりに見つけた古い書庫には、普段は図書室に置かれていない古い本や外国の本が保管されている。
ルミアには調べたい事がある。あの日ロンから渡されたシルバーの指輪は、インダルア王国の物ではない。指輪の裏側に文字のような文様が刻まれており、外国語だと分かる。ルミアには読む事ができなかった。
書庫の中はひんやりと涼しく、狭い通路に沢山の本が並べられていた。帝国の書物を中心にルミアは分厚い本をパラパラと捲った。
いつの間にか日が暮れ夕方になっていた。帝国語で書かれている分厚い本の中に指輪の文様と同じ文字を見つけた。
『ライカー国』
どうやら十数年前に滅びた国の文字らしい。帝国との戦争で滅び吸収されたと書かれている。
ライカー国があった場所は、帝国の西端で、インダルア王国からは帝国を縦断しなければ辿り着けない。
「ロイ。貴方はどこにいるの?」
書庫を出たルミアは、薄暗くなった裏口を抜けて、迷路庭園の中に入っていった。
枯葉に囲まれたコテージはやはり静まり返っている。
誰も訪れた気配がない。
ずっとルミアは待っている。
城の豪華は部屋を与えられ、十分な教育と、たくさんの衣装や宝石を手に入れた。塔で生活していた時とは比べものにならない程の待遇を受けている。だけど、本当に欲しいものがどうしても足りない。
歓迎しているように見える父王だが、なにかが可笑しい。
父王はルミアの事を気にかけているように見える。
だけど、、、
王はルミアを教育し、王女の衣を着せ、その進歩を教師に尋ねるが、ルミアには話しかけてこない。目の前にいるのに、第3王女という殻だけを大事にしているようだ。
優しそうなルクラシア王妃とは、殆ど接点がない。公共の場で遠くに会釈を交わす程度だ。
弟王子ルキアは、病弱らしく部屋に籠る事が多い。城に移って半年になるのに王子ルキアに一度も会った事がなかった。
コテージのドアを開けて中に入る。
一瞬大柄なロイが長い腕を広げて椅子に座っているように見えた。
目をこすりもう一度見ると、薄暗い部屋に古びたテーブルと椅子だけが置かれていた。
分かっている。ロイはいなくなった。
ずっと待っている。
一人で、暗闇の中。
ただ貴方が来てくれるのを。
「ロイ。どこにいるの?逢いたい。逢いたいの」
暗闇の中ルミアは一筋の涙を流した。
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