【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)

文字の大きさ
上 下
26 / 55
限界離婚

役所での確認と失望

しおりを挟む
結局、妻の鈴奈との話し合いは平行線で終わった。

義父が言った通り、妻は酷く落ち込んでいるみたいだった。

しきりに子宮外妊娠で、卵管を切除した事、二人目の子供を産めなかった事を気にして良に謝ってきていた。

なんども良は妻を慰めたが、離婚したいとの妻の意思は変わらなかった。

また、退院の時に来ると言い、良は病室を後にした。

義父と勇太は、病院の前の公園で遊んでいた。

帰る前に声をかけると、義父もしばらく時間を置いた方がいいと言っていた。良と鈴奈が、仲が良い事を知っている義父は、良に同情的だった。勇太との別れを惜しみながら、良は帰って行った。

帰宅する前に、父と祖母が入院している病院へ寄る。

父は、部屋のベッドに座りお茶を飲んでいた。

思っていたより回復が早い。良は少し安心していた。

「良。よく来てくれたな。それでどうだった。」

良は、父へ告げた。
「父さんの言った通り、家の通帳がなくなっていたよ。生活費を入れていた母さん名義の通帳がね。あれには俺も生活費を振り込んでいたのに、ショックだよ。俺たち夫婦の通帳は無事だった。2階は荒らされてなかったよ。」

父は言った。
「そうか。あれには数百万入っていたはずだ。やはり京香が盗んだのだろうな。最近、自宅の貴金属が無くなる事が多くて、俺は京香を疑っていた。今日思い出したが、京香と離婚の話をする前に、小型カメラを棚の上に設置していた。多分それに、俺を襲った人物と、金品を盗んだ人物が映っているはずだ。悪いが、確認してもらえないか。」

良は、不思議そうに言う。そんなものは記憶にない。
「カメラ?」

父は言った。
「小型カメラを棚の上に置いてある箱に設置している。1ヵ月程自動的に記録するものだ。どうしても京香が俺を何か硬いもので殴ったとしか思えない。それを見たらはっきりするはずだ。」

良は、頷いた。
「ああ、分かったよ。確認してみる。」

















自宅についた良は、さっそく父が言っていたカメラを確認した。

リビングの本棚の上に、箱に入ったカメラを発見した。黒い箱には目立たないように穴が開いており、そこから録画をしていたようだった。

カメラのメモリを取り出し、自身のパソコンへ入れた。

データ量が多すぎて、読み込みと確認に時間がかかりそうだった。

良は、また後日確認する事にして一人きりになった丸田家で眠りについた。

妻の限界だという言葉を思い出しながら、、、










翌日、良は仕事終わりに市役所の夜間受付へ来ていた。

両親の離婚届が自宅にない。もしかしたら、すでに母が提出している可能性がある。

市役所で、戸籍を確認する。

母の欄は、除籍となっていた。

それを見て、良は大きく失望を感じた。

同居について、好意的だった母に違和感を持ちながら、子供より孫が可愛いという話を思い出し、母も変わったのだろうと期待していた。

だが、自分勝手な母は変わっていなかった。

夫が倒れ、嫁と孫が出て行った途端、貯金通帳を持ち出し離婚届を提出したのだろう。

離婚した母の戸籍についても申請請求をした。

母は、結婚前の実家に戸籍を戻したみたいだった。




良は、父の携帯電話の電話帳から写し取った電話番号をもとに、母の生家へ電話をかけてみた。



プルルルルプルルルル



「はい。真多です。」

「夜分遅くに失礼します。京香の息子の丸田良です。」

「ああ、京香の、、、」

母は、実家を引き継いだ兄と疎遠で、良もほとんど会った事がなかった。

「すみません。今、父が倒れ、入院しています。その後に母が通帳を持ち家を出て行き離婚届を提出したみたいで連絡が取れなくなっています。今日確認したら両親の離婚が成立しており、母はそちらに戸籍を戻しているみたいなのですが、なにか連絡はないでしょうか。」

電話の向こうで叔父はしばらく黙り込み、返事を返した。
「・・・・・・・。そうか。君も大変だな。こちらには京香から連絡は来ていない。」

良は言う。
「そうですか。実は母が、数百万円入っている預金通帳や、祖母や父の貴金属を持ち出したみたいです。証拠の動画も残っており、警察へ相談しようと思っています。もし母から連絡があれば、賠償請求を元家族が検討しているみたいだと伝えて貰っていいでしょうか。」

叔父は言った。
「あいつは、まだそんな事をしていたのだな。結婚してからは落ち着いたと思っていたが、ここにいる時も、家の物を勝手に持ち出す癖があったよ。広一さんは、金庫を設置しているから問題ないと言っていたのだが、、、京香から連絡があったら伝えよう。」

良は言った。
「そうなのですね。お手数をおかけします。」




良は電話を切り、決意した。

母は一方的に家族を捨てた。父だけでなく嫁の鈴奈や孫が大変な時に、家から金銭を持ち出し出て行った。もう母には何も期待していない。良は、自分の家族を守るための行動を取る事に決めた。幸いな事に証拠がある。



先に俺たちを捨てたのは母さんだ。

もう、あんな人は母ではない。

母との決別を報告したのなら、妻の鈴奈と息子の良太とまた一緒に暮らせるだろうか。

夕焼け空を見ながら、離れて暮らしている妻と息子の事を思い出していた。



















しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...