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限界離婚

散乱した夜の金曜日

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良は、出張先から金曜日の夜に自宅へ帰った。

家には毎日電話をかけたが、電話に出るのはいつも祖母の文だった。

なんとか、出張先のトラブルは終息へ向かっており、今日帰ると自宅へ伝えている。

携帯電話も水曜日に購入した。だが、SIMカードは元に戻らず、電話帳も確認できなくなっていた。

自宅の電話番号だけは暗記しているが、妻や父を含め知り合いの携帯電話の番号が分からない。

祖母の文も分からないと言っていた。

なんだか嫌な予感がして、電話に出る文に、家族から携帯電話番号を伝えて貰うように言ってはいたが、翌日の電話では、文はその事を覚えていないようだった。

(物忘れかな、、、、それにしては様子がおかしいような。)

同居が始まってからは、妻の鈴奈が家事のほとんどを担っていた。文はいつも同じ椅子に座ってテレビを見ていたようだ。忙しくて異変に気付けてなかったのかもしれない。

家族に相談しようと思いながら、良は玄関のドアを開けた。












家の中には衝撃的な光景が広がっていた。



引き出しは全て開けられ、中の物が散乱している。


良は強盗でも入ったのかと、驚き奥の部屋へ行く。



一階はどの部屋も荒らされていた。



やけに家の中が蒸し暑い。



良は、窓を開き、電気をつける。




祖母の文が電話台の前で倒れこんでいた。



「御祖母さん。御祖母さん!」




文は顔を紅潮させて、意識がない様子だ。




良は、冷蔵庫から氷を取り出し、文へかけた。



「熱中症か?どうしてこんな事に、、、、」



良は、救急車を呼ぶことにした。



おかしい。こんな事になるまで、誰も気づかないなんて。



父は、、、、


母は、、、、、


妻と息子はどこに、、、、、



『ピンポーーーーン』



その時、インターホンが鳴り響く。



(こんな時に、、、、)



玄関を開いたドアの向こうに立っていたのは、30代の女性だった。



茶色に染めたショートカットのスラリとした女性は名乗った。

「すみません。玉留 麗奈と申します。広一さんと連絡が取れなくて、、、、まあ、どうなさったのですか?」

麗奈と名乗った女性は、自宅の中を見て衝撃を受けていた。
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