上 下
17 / 25

しおりを挟む
ミラージュの乗った馬車は、王都の外れのローニャ侯爵邸へ向かった。ローニャ侯爵邸の外門は無数の蔦に覆われ、石畳の隙間から所々草が生えて来ていた。

重厚感のある鉄門がゆっくりと開かれる。

ギギギイーー

馬車は、ローニャ侯爵邸の敷地へ入って行った。

ローニャ侯爵邸は広大な敷地の中に佇んでいた。黒と茶色を基調とした屋敷は、外門と同じように茶緑の蔦に覆われている。

馬車が、ローニャ侯爵邸の前で止まってから、ミラージュは馬車からゆっくりと降りた。

ミラージュを迎えてくれたのは、壮年の男性だった。
白髪が混じる髪を後ろで纏め、清潔感のある執事服を着こなしている。

「ようこそお越しくださいました。ミラージュお嬢様。主がお待ちです。」

執事は、ミラージュに対して恭しくお辞儀をして挨拶をしてきた。

「ありがとうございます。」

ミラージュは、執事の後をついてローニャ侯爵邸へ足を踏み入れた。

ローニャ侯爵邸の内部は、茶色を基調とした落ち着いた色合いの空間が広がっていた。エントランスの正面の階段の木製の手すりには複雑な彫刻が施され、窓から差し込む光で輝いている。赤茶色の長毛の絨毯には埃一つなく、隅々まで整頓されていた。

「主は、寝室におられます。ここ数年はベッドから離れる事が出来ない状態です。思考はしっかりされており、寝室から政務をされていました。ずっと後継者を探されていたのです。」

「ローニャ侯爵様のご子息は亡くなられたと聞きました。養子に向かえて頂き感謝しております。ですが、私でよろしかったのでしょうか?」
「ええ、もちろんです。ミラージュ様ほど相応しい後継者はおられません。主は貴方に会える日を心待ちにされていました。さあ、こちらです。」

ミラージュは、屋敷の最奥の部屋に案内された。

ゆっくりとドアが開かれ、中に入る。

その部屋は、とても明るかった。

大きな窓、白と黄色の壁紙、中央のベッドには青白い顔の老人が座っていた。

老人の目は白っぽい茶色だった。白い髪に所々黒髪が混じっている。

老人は、目を細めミラージュを見つめて言った。

「もっとこっちへ来て、顔をよく見せてくれ。ラナリーンの娘よ。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

【完結】許してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
そんなつもりはなかったの。 まさか、こんな事になるなんて。 私はもっと強いと思っていた。 何があっても大丈夫だと思っていた。 だけど、貴方が私から離れて行って、 やっと私は目が覚めた。 もうしない。 貴方の事が大事なの。 やっと私は気がついた。 心の底から後悔しているの。 もう一度、 私の元へ帰ってきて。 お願いだから 振り向いて。 もう二度と間違えない。 だから、、、 お願い、、、 私の事を、、、 許してください。

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。

石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。 色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。 *この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!

奏音 美都
恋愛
 ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。  そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。  あぁ、なんてことでしょう……  こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

さよならまでの六ヶ月

おてんば松尾
恋愛
余命半年の妻は、不倫をしている夫と最後まで添い遂げるつもりだった……【小春】 小春は人の寿命が分かる能力を持っている。 ある日突然自分に残された寿命があと半年だということを知る。 自分の家が社家で、神主として跡を継がなければならない小春。 そんな小春のことを好きになってくれた夫は浮気をしている。 残された半年を穏やかに生きたいと思う小春…… 他サイトでも公開中

ヒロイン転生〜ざまあお断り!私はモブとして幸せになりたいのです〜

みおな
恋愛
 乙女ゲーム『薔薇の乙女は月に恋われる』  薔薇の乙女と呼ばれるヒロインが、家族に虐げられながらも健気に頑張って生きていく中、攻略対象達と出会い、恋を深めていく話である。  私はこのゲームのヒロインが嫌いだ。家族に虐げられる?父親は放蕩していたが、母親はヒロインを育てるために父親の暴力にも耐えていたのに?  攻略対象と恋を深める?いやいや、婚約者のいる相手と何してるの?単なるビッチでしょ?それ。  なのに、事故で転生したと思ったら、ヒロイン転生?冗談じゃない!  こう言う場合、悪役令嬢に転生して、ヒロインにざまあするんじゃないの?なんで、事もあろうに嫌いなヒロインなのよ!  こうなったら、攻略対象や家族なんてどうでもいい!モブ扱いでお願いします。

処理中です...