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「カリュウ」
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ゴンダラス火山にたどり着いたイリナ達は、火口へ向かった。
ゴンダラス火山には、複数の火竜の群れが生息する。火口付近には必ず一番強く火竜の群れが住んでいる。
火口に近づくにつれて、ドンドン周囲の温度が上がる。時折流れる溶岩の川。吹き出す灼熱の蒸気。熱で溶けた大地。イリナは惜しげもなく氷冷魔術を使う。
イリナが玩具の魔剣を振り下ろす度に、周囲の気温は下がり、快適な温度に包まれる。火竜の討伐に強い魔術師が必要なのは、ゴンダラス火山の環境が悪すぎるからだ。
守護騎士ローガスが言った。ローガスは、ギース・インガスのコスプレをしているが、服のサイズが小さいのかピチピチで動きにくそうだ。
「本当に見事だな。攻撃魔術の実力だけならインガスより上じゃないか?」
聖女メルーシアが言う。
「そうよね。素晴らしい才能だわ。インガスがそろそろ隠居したいって言っていたし、正式にセイちゃんがパーティメンバーになってくれたら嬉しいわね。」
メルーシアは、藍色の魔術師長のローブを着て、グロリア・インガスのコスプレをしていた。妖艶な美魔女でイリナは流し目で誘われてドキドキした。
イリナは答えた。
「そんな。嬉しいです。コスプレの才能があるだなんて。パーティコスプレして本当によかった。」
そんなイリナを見てダガーが言った。
「その趣味さえ自重できるならな。」
ゴンダラス火山は足元が悪い。劣悪な環境で生息できる生物は限りなく少ない。銀風刃パーティは火口に到着した。
火口を見下ろすと、グツグツと灼熱のマグマの端の岩場に12匹の火竜がいた。
中央の火竜は、他の火竜の二倍近い大きさがあった。
カイザーはイリナに言った。
「予定通り、氷冷魔術をお願いするよ。全部凍らせるつもりでいいから。」
イリナはカイザーに疑問を伝える。
「でも、凍らせたら、眼や心臓が手に入らないのでは。」
カイザーは言った。
「火竜は、存在そのものが炎だからね。一度凍っても、時間が経てば溶けるはずだ。その前に接近する。」
カイザーは全員に声をかけた。
「いくぞ。」
「「おう。」」
イリナは、火口全体を覆うほどの強力な氷冷魔術を使った。
こんな大規模の魔術を思いっきり使えるのは久しぶりだ。
メイナが玩具の魔剣を振り下ろした瞬間、火口が氷に包まれた。
マグマが黒く固まり凍り付く。火竜はマグマと同じように表面が黒く変化し、氷に包まれた。火口の中はキラキラと細かい氷が舞っている。
一斉に魔剣士のカイザー、守護騎士ローガス、暗殺者のダガー、聖女メルーシアが飛び出した。おくれたイリナも慌てて後を追う。
数秒後、中央の大きな火竜の氷が崩れ落ち、大きな咆哮を上げた。
ダガーが黒光りする短剣を火竜に投げる。短剣は火竜に突き刺さるがすぐに溶けてしまった。火竜が方向を上げて火のブレスを放った。守護騎士のローガスが前に立ち、大きな盾を構えてブレスから身を守る。ローガスの後ろにいたパーティにはブレスが届かない。
ブレスが途絶え、聖女メルーシアが負傷したローガスに治癒魔法を施している間に、カイザーが大きなバスダードソードを構えて火竜を切った。バスダードソードに魔法を付与したのか、剣は銀色に変化し輝いている。白銀の刃は火竜の首を一刀両断した。
そのあと、残った火竜もカイザーとダガーが手際よく殺していった。
イリナは驚く。初めの大規模魔術以外イリナは殆ど何もせずに戦闘が終わってしまった。
やっと皆に追いついたイリナは、せめて雑用はしようと、解体の為に近づいていった。
カイザーはイリナに気が付き声をかけてきた。
「ありがとう。イリナの魔術があるから、スムーズに討伐できたよ。もともと俺は魔術師になりたかったんだ。養父が魔術師でね。だけど魔術師の適性が少なくて、今は魔剣士をやっている。」
イリナは驚きカイザーを見た。
「わたしも、前は会社で働いていたの。才能がない。無能だって言われて首になったの。祖母が大事にしていた会社だから、もう少し続けたかったんだけど。」
カイザーはイリナに微笑み言った。
「イリナを首にするなんて見る目がない会社だね。こんに魅力的なのに。」
イリナは嬉しくなった。Sランクの魔剣士の誉め言葉だ。誰よりも信頼できる。
「ありがとう。カイザー。」
ゴンダラス火山には、複数の火竜の群れが生息する。火口付近には必ず一番強く火竜の群れが住んでいる。
火口に近づくにつれて、ドンドン周囲の温度が上がる。時折流れる溶岩の川。吹き出す灼熱の蒸気。熱で溶けた大地。イリナは惜しげもなく氷冷魔術を使う。
イリナが玩具の魔剣を振り下ろす度に、周囲の気温は下がり、快適な温度に包まれる。火竜の討伐に強い魔術師が必要なのは、ゴンダラス火山の環境が悪すぎるからだ。
守護騎士ローガスが言った。ローガスは、ギース・インガスのコスプレをしているが、服のサイズが小さいのかピチピチで動きにくそうだ。
「本当に見事だな。攻撃魔術の実力だけならインガスより上じゃないか?」
聖女メルーシアが言う。
「そうよね。素晴らしい才能だわ。インガスがそろそろ隠居したいって言っていたし、正式にセイちゃんがパーティメンバーになってくれたら嬉しいわね。」
メルーシアは、藍色の魔術師長のローブを着て、グロリア・インガスのコスプレをしていた。妖艶な美魔女でイリナは流し目で誘われてドキドキした。
イリナは答えた。
「そんな。嬉しいです。コスプレの才能があるだなんて。パーティコスプレして本当によかった。」
そんなイリナを見てダガーが言った。
「その趣味さえ自重できるならな。」
ゴンダラス火山は足元が悪い。劣悪な環境で生息できる生物は限りなく少ない。銀風刃パーティは火口に到着した。
火口を見下ろすと、グツグツと灼熱のマグマの端の岩場に12匹の火竜がいた。
中央の火竜は、他の火竜の二倍近い大きさがあった。
カイザーはイリナに言った。
「予定通り、氷冷魔術をお願いするよ。全部凍らせるつもりでいいから。」
イリナはカイザーに疑問を伝える。
「でも、凍らせたら、眼や心臓が手に入らないのでは。」
カイザーは言った。
「火竜は、存在そのものが炎だからね。一度凍っても、時間が経てば溶けるはずだ。その前に接近する。」
カイザーは全員に声をかけた。
「いくぞ。」
「「おう。」」
イリナは、火口全体を覆うほどの強力な氷冷魔術を使った。
こんな大規模の魔術を思いっきり使えるのは久しぶりだ。
メイナが玩具の魔剣を振り下ろした瞬間、火口が氷に包まれた。
マグマが黒く固まり凍り付く。火竜はマグマと同じように表面が黒く変化し、氷に包まれた。火口の中はキラキラと細かい氷が舞っている。
一斉に魔剣士のカイザー、守護騎士ローガス、暗殺者のダガー、聖女メルーシアが飛び出した。おくれたイリナも慌てて後を追う。
数秒後、中央の大きな火竜の氷が崩れ落ち、大きな咆哮を上げた。
ダガーが黒光りする短剣を火竜に投げる。短剣は火竜に突き刺さるがすぐに溶けてしまった。火竜が方向を上げて火のブレスを放った。守護騎士のローガスが前に立ち、大きな盾を構えてブレスから身を守る。ローガスの後ろにいたパーティにはブレスが届かない。
ブレスが途絶え、聖女メルーシアが負傷したローガスに治癒魔法を施している間に、カイザーが大きなバスダードソードを構えて火竜を切った。バスダードソードに魔法を付与したのか、剣は銀色に変化し輝いている。白銀の刃は火竜の首を一刀両断した。
そのあと、残った火竜もカイザーとダガーが手際よく殺していった。
イリナは驚く。初めの大規模魔術以外イリナは殆ど何もせずに戦闘が終わってしまった。
やっと皆に追いついたイリナは、せめて雑用はしようと、解体の為に近づいていった。
カイザーはイリナに気が付き声をかけてきた。
「ありがとう。イリナの魔術があるから、スムーズに討伐できたよ。もともと俺は魔術師になりたかったんだ。養父が魔術師でね。だけど魔術師の適性が少なくて、今は魔剣士をやっている。」
イリナは驚きカイザーを見た。
「わたしも、前は会社で働いていたの。才能がない。無能だって言われて首になったの。祖母が大事にしていた会社だから、もう少し続けたかったんだけど。」
カイザーはイリナに微笑み言った。
「イリナを首にするなんて見る目がない会社だね。こんに魅力的なのに。」
イリナは嬉しくなった。Sランクの魔剣士の誉め言葉だ。誰よりも信頼できる。
「ありがとう。カイザー。」
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