3 / 3
3.望まぬ来訪者
しおりを挟む
ルナは、正面玄関へ向かった。
玄関のドアは開かれたままで、外の激しい雨が強い風に吹かれて中に吹き込んできている。
ルナは、急いで階段を下りて行った。
「ザイク!いないのか!どうしてこんなに暗いのだ」
夫は執事のザイクを大声で呼び、屋敷の明かりがついていない事に戸惑っている様子だった。
夫のマイク・マックバーン伯爵は、金に近い透き通った茶髪で整った顔立ちをしている。王国貴族の中で一番人気の金髪ではないが、夫は自分自身の淡い茶髪を貴族の証だからと誇らしく思っているようだった。
ルナは、夫が一人だと思っていた。薄暗い邸宅でよく見えないが、夫は黒いコートを羽織り、大きな荷物を抱えているようだった。
ルナが、階段を降り切った時、眩しい雷光が夫を照らした。
夫の隣には、誰かがいた。
夫と体を密着させて寄り添うように立つ、燃えるような赤髪の女性は、明らかに高価だと分かる豪華なネックレスとイヤリングをつけて、複雑な銀の刺繍が施された黒のドレスを身に纏っていた。彼女の眼が雷光と共にギラリと光ったように見えた。
ルナは、呆然とその場に立ちすくんだ。
マイクは、立ち止まったルナを見てイライラしたように怒鳴りつけてきた。
「おい、お前!執事はどこだ。」
夫は、妻であるルナに気づいてさえいないようだった。
(どういう事なの?どうして、私の夫の隣に他の女性がいるの?私が必死にお義母様や家を守るために尽くしてきた時、この人は…‥)
夫の隣の女から金属音のような足音が聞こえた。
カツ、カツ、カツ。
「まあ、小汚い使用人ね。ねえ、マイク。これからは私が使用人を選んでもいいでしょ」
赤髪の女の甘くねっとりとした声が、ルナには破滅を呼ぶ悪魔のささやきのように思えた。
「ああ、もちろん。リリア。あいし・て・る・・」
ゴロゴロゴロゴロ。
夫の声が、遅れて聞こえてきた大きな雷鳴にかき消される。
ルナには、夫がなんと言っていたか分からない。
信じたくない。
認めたくない。
そんな筈がない。
「ふふふ。私も愛しているわ。マイク」
ルナがショックを受け佇んでいると、目の前の2人の影が重なった。2人は抱きしめ合い情熱的に唇を合わせている。
夫が浮気をしているという事は薄々気がついていた。
分かっていた。
だけど、気づかないフリをしていた。
どうしても信じたく無かった。
認めてしまえば、ただでさえ辛い現実に、もうこれ以上耐える事が出来そうに無かったから。
ピカーーーゴロゴロゴロゴロ。
今度の雷は近くに落ちたらしい。
開きっぱなしのドアから差し込む雷光に照らされながら、濃厚な口付けを交わす夫と赤髪の女をルナは目を見開き凝視し続けた。
ルナの瞳から一筋の涙が溢れ落ちた。
玄関のドアは開かれたままで、外の激しい雨が強い風に吹かれて中に吹き込んできている。
ルナは、急いで階段を下りて行った。
「ザイク!いないのか!どうしてこんなに暗いのだ」
夫は執事のザイクを大声で呼び、屋敷の明かりがついていない事に戸惑っている様子だった。
夫のマイク・マックバーン伯爵は、金に近い透き通った茶髪で整った顔立ちをしている。王国貴族の中で一番人気の金髪ではないが、夫は自分自身の淡い茶髪を貴族の証だからと誇らしく思っているようだった。
ルナは、夫が一人だと思っていた。薄暗い邸宅でよく見えないが、夫は黒いコートを羽織り、大きな荷物を抱えているようだった。
ルナが、階段を降り切った時、眩しい雷光が夫を照らした。
夫の隣には、誰かがいた。
夫と体を密着させて寄り添うように立つ、燃えるような赤髪の女性は、明らかに高価だと分かる豪華なネックレスとイヤリングをつけて、複雑な銀の刺繍が施された黒のドレスを身に纏っていた。彼女の眼が雷光と共にギラリと光ったように見えた。
ルナは、呆然とその場に立ちすくんだ。
マイクは、立ち止まったルナを見てイライラしたように怒鳴りつけてきた。
「おい、お前!執事はどこだ。」
夫は、妻であるルナに気づいてさえいないようだった。
(どういう事なの?どうして、私の夫の隣に他の女性がいるの?私が必死にお義母様や家を守るために尽くしてきた時、この人は…‥)
夫の隣の女から金属音のような足音が聞こえた。
カツ、カツ、カツ。
「まあ、小汚い使用人ね。ねえ、マイク。これからは私が使用人を選んでもいいでしょ」
赤髪の女の甘くねっとりとした声が、ルナには破滅を呼ぶ悪魔のささやきのように思えた。
「ああ、もちろん。リリア。あいし・て・る・・」
ゴロゴロゴロゴロ。
夫の声が、遅れて聞こえてきた大きな雷鳴にかき消される。
ルナには、夫がなんと言っていたか分からない。
信じたくない。
認めたくない。
そんな筈がない。
「ふふふ。私も愛しているわ。マイク」
ルナがショックを受け佇んでいると、目の前の2人の影が重なった。2人は抱きしめ合い情熱的に唇を合わせている。
夫が浮気をしているという事は薄々気がついていた。
分かっていた。
だけど、気づかないフリをしていた。
どうしても信じたく無かった。
認めてしまえば、ただでさえ辛い現実に、もうこれ以上耐える事が出来そうに無かったから。
ピカーーーゴロゴロゴロゴロ。
今度の雷は近くに落ちたらしい。
開きっぱなしのドアから差し込む雷光に照らされながら、濃厚な口付けを交わす夫と赤髪の女をルナは目を見開き凝視し続けた。
ルナの瞳から一筋の涙が溢れ落ちた。
0
お気に入りに追加
26
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
【完結】許してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
そんなつもりはなかったの。
まさか、こんな事になるなんて。
私はもっと強いと思っていた。
何があっても大丈夫だと思っていた。
だけど、貴方が私から離れて行って、
やっと私は目が覚めた。
もうしない。
貴方の事が大事なの。
やっと私は気がついた。
心の底から後悔しているの。
もう一度、
私の元へ帰ってきて。
お願いだから
振り向いて。
もう二度と間違えない。
だから、、、
お願い、、、
私の事を、、、
許してください。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる