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侵入
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殯宮の扉に近づくと、扉越しに声が聞こえてくる。
忠臣の三輪逆の声だ。
「お待ちください。太后様が中におられます。」
止める三輪逆を諫めるよく知った人物の声がする。
「俺を誰だと思って言う。中に入る権利があるはずだ。」
私は驚いた。
三輪逆と言い争っているのは、従弟の穴穂部皇子だった。
私は昔の事を思い出し、震えながら門の向こうの従弟へ声をかける。
「穴穂部皇子。何用ですか?大王の眠りを妨げてはなりません。」
「額田部!この門を開けろ!新しい大王になる俺に仕えろ!お前も俺の妻にしてやろう。もともとお前は俺の物だったのだ。それをあんな年寄りに奪われた。だが、もう彼奴は死んだ。彼奴の目の前でお前を愛してやろう。クククク。あの世から悔しがるだろうな!」
私は、ドアから離れる。
(狂っている。以前から可笑しいと思っていたけど、殯宮に押し入って私を犯そうとするなんて!)
皇族の姫達の地位は弱い。私も、私の娘たちも穴穂部皇子に蹂躙される未来を思わず思い浮かべた。ずっと守ってくれていた夫はもういない。だけど、もしそこのドアが開かれたら、私は穴穂部皇子に対抗できるだろうか?
忠臣の三輪逆が穴穂部皇子へ声をかける。
「皇子様、おやめください。」
穴穂部皇子の激高した声が聞こえる。
「なにを言う!早くこの門を開けないか!将来の主に逆らいというのか!」
三輪逆は言った。
「私の主は、今でも他田大王です。それは大王が亡くなられたしても変わりません。主の殯宮に押し入り太后様に手を出そうとするなど、いくら皇子でも認められるはずがありません。貴方様と太后様との関係は私如きには分かりませんが、正式な手順で婚姻申し込みを、、、」
私は、大声で言った。
「いいえ!穴穂部皇子とは絶対に婚姻しません。私は他田大王に生涯愛すると誓いました。もう誰とも婚姻するつもりはありません!」
穴穂部が強くドアを叩く。
ドン
ドン
ドン
「この門を開けろ。額田部!お前の意思など関係ない。新しい主に仕えろ。お前は俺の物だ!」
(どうして、こんな、昔から私に執着している気がしていたけど、、、、あんまりだわ。)
三輪逆が言う。
「なりません。お帰り下さい。」
穴穂部皇子は叫ぶ。
「門を開けろ!額田部!」
何度も穴穂部皇子は門前で叫び、怒りに任せて門を強く叩いてから帰って行った。
私は、その場に座り込んだ。
守らないと、、、なんとしても守らないと。
私が子供達を守らないと。
門を開け、中に入って来た三輪逆へお礼を言う。
「ありがとう。貴方のお陰で助かりました。」
三輪逆は、私に向かって頭を下げた。
忠臣の三輪逆の声だ。
「お待ちください。太后様が中におられます。」
止める三輪逆を諫めるよく知った人物の声がする。
「俺を誰だと思って言う。中に入る権利があるはずだ。」
私は驚いた。
三輪逆と言い争っているのは、従弟の穴穂部皇子だった。
私は昔の事を思い出し、震えながら門の向こうの従弟へ声をかける。
「穴穂部皇子。何用ですか?大王の眠りを妨げてはなりません。」
「額田部!この門を開けろ!新しい大王になる俺に仕えろ!お前も俺の妻にしてやろう。もともとお前は俺の物だったのだ。それをあんな年寄りに奪われた。だが、もう彼奴は死んだ。彼奴の目の前でお前を愛してやろう。クククク。あの世から悔しがるだろうな!」
私は、ドアから離れる。
(狂っている。以前から可笑しいと思っていたけど、殯宮に押し入って私を犯そうとするなんて!)
皇族の姫達の地位は弱い。私も、私の娘たちも穴穂部皇子に蹂躙される未来を思わず思い浮かべた。ずっと守ってくれていた夫はもういない。だけど、もしそこのドアが開かれたら、私は穴穂部皇子に対抗できるだろうか?
忠臣の三輪逆が穴穂部皇子へ声をかける。
「皇子様、おやめください。」
穴穂部皇子の激高した声が聞こえる。
「なにを言う!早くこの門を開けないか!将来の主に逆らいというのか!」
三輪逆は言った。
「私の主は、今でも他田大王です。それは大王が亡くなられたしても変わりません。主の殯宮に押し入り太后様に手を出そうとするなど、いくら皇子でも認められるはずがありません。貴方様と太后様との関係は私如きには分かりませんが、正式な手順で婚姻申し込みを、、、」
私は、大声で言った。
「いいえ!穴穂部皇子とは絶対に婚姻しません。私は他田大王に生涯愛すると誓いました。もう誰とも婚姻するつもりはありません!」
穴穂部が強くドアを叩く。
ドン
ドン
ドン
「この門を開けろ。額田部!お前の意思など関係ない。新しい主に仕えろ。お前は俺の物だ!」
(どうして、こんな、昔から私に執着している気がしていたけど、、、、あんまりだわ。)
三輪逆が言う。
「なりません。お帰り下さい。」
穴穂部皇子は叫ぶ。
「門を開けろ!額田部!」
何度も穴穂部皇子は門前で叫び、怒りに任せて門を強く叩いてから帰って行った。
私は、その場に座り込んだ。
守らないと、、、なんとしても守らないと。
私が子供達を守らないと。
門を開け、中に入って来た三輪逆へお礼を言う。
「ありがとう。貴方のお陰で助かりました。」
三輪逆は、私に向かって頭を下げた。
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