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第33話 交換
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賑やかな、ざわめきに包まれながら、急にミライザは目の前の男性と二人きりの空間に閉じ込められたような気がした。
周囲の笑い声や、喧騒が遠ざかって色とりどりの珊瑚礁の中にグランと二人きりで、漂っているような錯覚に陥る。
これは夢かもしれない。
帝国皇子がここにいるはずがない。
私の願望が具現化したのかもしれない。
だからこそ、本心を伝える事ができる。
「グラン。私も会いたかった。貴方の事が好きなの。ずっと一緒にいたい」
「ああ、ミライザ。嬉しいよ」
夢の中でもグランは力強い。そして、ミライザにいつも優しく、望み通りの言葉を伝えてくれる。
「行こう。僕の人魚姫」
グランに手を引かれるまま、ミライザは足を進めた。
ピチピピピ。
窓の外から鳥の囀りが聞こえてくる。
今日は、王都へ向かう日だ。
王国では、毎年夏に盛大な舞踏会が開催される。
ミライザは、その舞踏会に新しいマージャス女侯爵として参加する事になっていた。
素敵な夢を見た。愛しい人と再会する夢を。
起きて準備をしなければいけない。昼前には使用人が迎えに来るはずだ。
「ミライザ。愛している」
まだ夢が続いている。グランの声がする。
「私も、愛しているわ」
寝ぼけた状態でミライザは返事をした。
「結婚しよう」
結婚?結婚したらずっと一緒にいれる。それもいいかもしれない。皇子との結婚なんて現実的ではないが、夢の中でなら結婚できるかもしれない。
「ええ、結婚しましょう。嬉しい」
「ああ、ミライザ。もう離さないよ」
ミライザは、暖かい大きなものにギュッと抱きしめられた。
流石に驚き、瞳を開けると、目の前にはグランがいた。
朝日を浴びて輝く金髪の整った顔立ちの男性は、ミライザにキスをしてきた。
ンンン?
ミライザは驚き、目を見開く。
昨晩は海運祭に参加した。仮装して気持ちよく踊っていた気がする。そして、黒髪で海賊姿のグランに出会った。それから・・・・・・
「あっ、待って、夢じゃないの?」
「夢みたいだ。プロポーズを了承して貰えるなんて、嬉しいよ」
「えっ?何?プロポーズ」
グランの髪の色は金髪に戻っている。なんとかミライザは半身を起こして辺りを見渡す。海賊の衣装が散らばり、黒髪や赤髪の鬘も地面に放置されている。
「私、貴方がこんな所にいるはずが無いと思って」
「僕は君を探して毎年、海運祭に参加していた。まだ思い出せない?五年前、僕を助けてくれただろ」
(五年前?海上天候の研究観察の為、アーリン港に滞在していたけど、あの時、嵐で船から落ちて溺れた人を助けた事があるわ。)
五年前の嵐では、沢山の船が被害を受けた。急な天候の変化で、被害を受けた船には外国船も混じっていたはずだ。
ミライザも救助に参加して、少しでも助けれたらと手伝っていた。強い風雨の為屋外では、眼鏡を外して活動していたはずだ。
「君に助けられた後、ずっと探していた。だけど、誰も黒髪の美女の事を知らなかった。領主であるマージャス侯爵にも確認したのに、そんな人物は知らないと言われた。まさかミライザ・マージャスが僕を助けてくれた人魚だなんて」
「待って、確かにあの時、救助隊を手伝ったけど、私は貴方の事を覚えていないわ。人違いじゃないの?」
「僕はよく覚えている。君の美しい髪も、涼やかな瞳も何もかも。ずっと探してきたんだ。見間違うはずがないよ。やっと想いが通じたと思ったのに、どうして夜会の後急にいなくなったんだ?」
グランは美しい顔を切なく歪めミライザに聞いてきた。
「貴方はとても素敵だわ。色々助けてくれて感謝している。ただ、私にはやるべき事があったの。急にいなくなってごめんなさい」
「もういいよ。またこうして会えたから。」
「ええ」
グランはミライザを腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
グランは、帝国へ帰らなければいけないらしい。名残惜しそうにベットから離れ身支度をした。
グランはミライザの手を取り撫でながら言った。
「ミライザ、また直ぐに会いに来るよ。愛している」
「ふふふ。私も貴方を愛しています」
グランはミライザに惜しみなく愛を囁いてくれる。胸が暖かくて嬉しくなる。
グランは、胸ポケットから黄金の指輪を出してミライザの薬指にそっと嵌めた。
「グラン?」
「プレゼントだよ。直ぐにまた逢えるように、そして君が元気でいるように」
「ありがとう。嬉しいわ。離れてても、貴方の事を想うわ。」
そう言うと、ミライザは、海の廃墟で手に入れた水色の指輪をグランの指に嵌め返した。
ミライザとグランは見つめ合い、そっと唇を合わせた。
束の間の別れを惜しむように。
周囲の笑い声や、喧騒が遠ざかって色とりどりの珊瑚礁の中にグランと二人きりで、漂っているような錯覚に陥る。
これは夢かもしれない。
帝国皇子がここにいるはずがない。
私の願望が具現化したのかもしれない。
だからこそ、本心を伝える事ができる。
「グラン。私も会いたかった。貴方の事が好きなの。ずっと一緒にいたい」
「ああ、ミライザ。嬉しいよ」
夢の中でもグランは力強い。そして、ミライザにいつも優しく、望み通りの言葉を伝えてくれる。
「行こう。僕の人魚姫」
グランに手を引かれるまま、ミライザは足を進めた。
ピチピピピ。
窓の外から鳥の囀りが聞こえてくる。
今日は、王都へ向かう日だ。
王国では、毎年夏に盛大な舞踏会が開催される。
ミライザは、その舞踏会に新しいマージャス女侯爵として参加する事になっていた。
素敵な夢を見た。愛しい人と再会する夢を。
起きて準備をしなければいけない。昼前には使用人が迎えに来るはずだ。
「ミライザ。愛している」
まだ夢が続いている。グランの声がする。
「私も、愛しているわ」
寝ぼけた状態でミライザは返事をした。
「結婚しよう」
結婚?結婚したらずっと一緒にいれる。それもいいかもしれない。皇子との結婚なんて現実的ではないが、夢の中でなら結婚できるかもしれない。
「ええ、結婚しましょう。嬉しい」
「ああ、ミライザ。もう離さないよ」
ミライザは、暖かい大きなものにギュッと抱きしめられた。
流石に驚き、瞳を開けると、目の前にはグランがいた。
朝日を浴びて輝く金髪の整った顔立ちの男性は、ミライザにキスをしてきた。
ンンン?
ミライザは驚き、目を見開く。
昨晩は海運祭に参加した。仮装して気持ちよく踊っていた気がする。そして、黒髪で海賊姿のグランに出会った。それから・・・・・・
「あっ、待って、夢じゃないの?」
「夢みたいだ。プロポーズを了承して貰えるなんて、嬉しいよ」
「えっ?何?プロポーズ」
グランの髪の色は金髪に戻っている。なんとかミライザは半身を起こして辺りを見渡す。海賊の衣装が散らばり、黒髪や赤髪の鬘も地面に放置されている。
「私、貴方がこんな所にいるはずが無いと思って」
「僕は君を探して毎年、海運祭に参加していた。まだ思い出せない?五年前、僕を助けてくれただろ」
(五年前?海上天候の研究観察の為、アーリン港に滞在していたけど、あの時、嵐で船から落ちて溺れた人を助けた事があるわ。)
五年前の嵐では、沢山の船が被害を受けた。急な天候の変化で、被害を受けた船には外国船も混じっていたはずだ。
ミライザも救助に参加して、少しでも助けれたらと手伝っていた。強い風雨の為屋外では、眼鏡を外して活動していたはずだ。
「君に助けられた後、ずっと探していた。だけど、誰も黒髪の美女の事を知らなかった。領主であるマージャス侯爵にも確認したのに、そんな人物は知らないと言われた。まさかミライザ・マージャスが僕を助けてくれた人魚だなんて」
「待って、確かにあの時、救助隊を手伝ったけど、私は貴方の事を覚えていないわ。人違いじゃないの?」
「僕はよく覚えている。君の美しい髪も、涼やかな瞳も何もかも。ずっと探してきたんだ。見間違うはずがないよ。やっと想いが通じたと思ったのに、どうして夜会の後急にいなくなったんだ?」
グランは美しい顔を切なく歪めミライザに聞いてきた。
「貴方はとても素敵だわ。色々助けてくれて感謝している。ただ、私にはやるべき事があったの。急にいなくなってごめんなさい」
「もういいよ。またこうして会えたから。」
「ええ」
グランはミライザを腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
グランは、帝国へ帰らなければいけないらしい。名残惜しそうにベットから離れ身支度をした。
グランはミライザの手を取り撫でながら言った。
「ミライザ、また直ぐに会いに来るよ。愛している」
「ふふふ。私も貴方を愛しています」
グランはミライザに惜しみなく愛を囁いてくれる。胸が暖かくて嬉しくなる。
グランは、胸ポケットから黄金の指輪を出してミライザの薬指にそっと嵌めた。
「グラン?」
「プレゼントだよ。直ぐにまた逢えるように、そして君が元気でいるように」
「ありがとう。嬉しいわ。離れてても、貴方の事を想うわ。」
そう言うと、ミライザは、海の廃墟で手に入れた水色の指輪をグランの指に嵌め返した。
ミライザとグランは見つめ合い、そっと唇を合わせた。
束の間の別れを惜しむように。
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