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第25話 隠宿
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馬車は、帝国大学から離れ、皇都の南部へ向かった。整然と並ぶ石畳を進んでいき、海岸沿いを走り抜ける。
波の音がかすかに聞こえてくる。
壮大な白いアーチ状の門を潜り抜け、暫く走ってから馬車は止まった。
着いた場所は、ミライザが目を覚ました高級宿だった。月明かりを浴びて白く輝く建物は、自ら光を放っているかのようだった。広い庭園の向こうには屋外プールも併設されている。透き通るロビーは、高級ガラスが、随所に使われており、まるで海の中にいるような不思議な空間に整えられていた。
「ミライザ。行こう」
グランは、心なしか嬉しそうに微笑みながらミライザの手を引く。
ミライザは、促されるままグランについて行った。
グランと共にガラス板で出来た中央階段を登っていく。
ミライザのブルーシルバーのドレスは、ガラス光の乱反射を受けてより輝きを増し、キラキラと輝く。
グランの部屋にたどり着いた。一際大きなドアを開き、中に入る。光沢のある樫の一枚板のテーブル、本革のソファが置かれている。部屋の奥の真っ白なシーツを敷かれたキングサイズのベットが一際主張しているように見えた。
「ミライザ、好きだ。」
グランは、部屋に入ると共にミライザを強く抱きしめてきた。
ミライザは、咄嗟にグランの胸に腕をつけて押し除けようとする。
「グラン?銀糸ドレスが皺になるわ」
「ああ、約束したね。すぐに脱がせてあげるよ」
グランは、左腕でミライザを引き寄せながら、右手でミライザの背中に手を伸ばし、後ろのファスナーを下ろそうとしてきた。
「ねぇ、グラン。貴方にそこまでして貰わなくてもいいわ。私自分で着替えれるから」
グランからミライザは離れようとした時、グランはミライザを抱き上げた。
「え?」
「ミライザ。もう焦らすのはやめてくれ。どうにかなりそうだ。」
そのまま、グランは力強く歩き、ベッドまでミライザを運んで、押し倒してきた。
「ミライザ。僕の人魚姫。愛している」
グランはキラキラと輝いている。短い金髪は透き通り、張りがある肌、高い鼻筋、こんなに美しい男性と一緒に過ごし、愛を囁かれているだなんて信じられない。
海に落ちる前のミライザには、想像すらできない1日だった。
(早く、ドレスを脱がないといけない。とても貴重なドレスを、でも、今は)
もっと目の前の男性を見つめていたい。輝く月のように美しく逞しい男性を。
ミライザは、本当はあの時に死んで産まれ変わったのかもしれない。ならば、ここにいる私は本当のミライザ・マージャスなのだろうか。もうマージャス家にも、帝国学院にもミライザの籍はない。誰もミライザを咎めないし、気を使う相手もいない。髪根暗で不細工な才女はもういない。
「ミライザ、いいだろう?」
グランは、ベッドに横たわるミライザの頭の隣に肘をつけて、懇願しながら顔を近づいてくる。
(グランの事が気になって仕方がない。もどかしい。何かが足りない。明日には別れるから、だから、今だけは、この気持ちを確かめてもいいわよね)
ミライザは、グランを見つめながら頷いた。
波の音がかすかに聞こえてくる。
壮大な白いアーチ状の門を潜り抜け、暫く走ってから馬車は止まった。
着いた場所は、ミライザが目を覚ました高級宿だった。月明かりを浴びて白く輝く建物は、自ら光を放っているかのようだった。広い庭園の向こうには屋外プールも併設されている。透き通るロビーは、高級ガラスが、随所に使われており、まるで海の中にいるような不思議な空間に整えられていた。
「ミライザ。行こう」
グランは、心なしか嬉しそうに微笑みながらミライザの手を引く。
ミライザは、促されるままグランについて行った。
グランと共にガラス板で出来た中央階段を登っていく。
ミライザのブルーシルバーのドレスは、ガラス光の乱反射を受けてより輝きを増し、キラキラと輝く。
グランの部屋にたどり着いた。一際大きなドアを開き、中に入る。光沢のある樫の一枚板のテーブル、本革のソファが置かれている。部屋の奥の真っ白なシーツを敷かれたキングサイズのベットが一際主張しているように見えた。
「ミライザ、好きだ。」
グランは、部屋に入ると共にミライザを強く抱きしめてきた。
ミライザは、咄嗟にグランの胸に腕をつけて押し除けようとする。
「グラン?銀糸ドレスが皺になるわ」
「ああ、約束したね。すぐに脱がせてあげるよ」
グランは、左腕でミライザを引き寄せながら、右手でミライザの背中に手を伸ばし、後ろのファスナーを下ろそうとしてきた。
「ねぇ、グラン。貴方にそこまでして貰わなくてもいいわ。私自分で着替えれるから」
グランからミライザは離れようとした時、グランはミライザを抱き上げた。
「え?」
「ミライザ。もう焦らすのはやめてくれ。どうにかなりそうだ。」
そのまま、グランは力強く歩き、ベッドまでミライザを運んで、押し倒してきた。
「ミライザ。僕の人魚姫。愛している」
グランはキラキラと輝いている。短い金髪は透き通り、張りがある肌、高い鼻筋、こんなに美しい男性と一緒に過ごし、愛を囁かれているだなんて信じられない。
海に落ちる前のミライザには、想像すらできない1日だった。
(早く、ドレスを脱がないといけない。とても貴重なドレスを、でも、今は)
もっと目の前の男性を見つめていたい。輝く月のように美しく逞しい男性を。
ミライザは、本当はあの時に死んで産まれ変わったのかもしれない。ならば、ここにいる私は本当のミライザ・マージャスなのだろうか。もうマージャス家にも、帝国学院にもミライザの籍はない。誰もミライザを咎めないし、気を使う相手もいない。髪根暗で不細工な才女はもういない。
「ミライザ、いいだろう?」
グランは、ベッドに横たわるミライザの頭の隣に肘をつけて、懇願しながら顔を近づいてくる。
(グランの事が気になって仕方がない。もどかしい。何かが足りない。明日には別れるから、だから、今だけは、この気持ちを確かめてもいいわよね)
ミライザは、グランを見つめながら頷いた。
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