22 / 41
第22話 了承
しおりを挟む
グランは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに嬉しそうに笑いながら言った。
「ミライザ嬉しいよ。でも、本当にここでいいの?初めてだろ?」
(そうだわ。ここは学院だから着替えがない。早く銀糸ドレスを脱ぎたいのに!)
「朝、貴方が私に貸してくれた服はどこにあるの?」
「僕の隠れ家に運んでいるはずだよ。もう用事は終わったから、一緒に帰ろう。ドレスは隠れ家で脱がしてあげるよ」
マージャス侯爵家でも、ミリラーサン産の銀糸シルクを一度だけ取り扱った事がある。十数年前だが、その時の騒動はミライザの記憶に残っていた。一反の布だけの為に、マージャス侯爵家の大型船を3艘用意し、王国兵、外交官が船に乗り込んだ。3艘の周りには、護衛船として海軍まで出動し、王国にミリラーサン産の銀糸シルクが届いた時は、盛大な祭りが開催された。ミライザは、母と一緒に港へ、父と船を出迎えに行った。青白い顔色をした母は、沢山の船と盛大な祭りを見てはしゃぐミライザを嬉しそうに眺めていた。
ミリラーサン産の銀糸シルクが王国へ届いた時の祭りは、母と一緒に出かけた最後の楽しい記憶だった。あの時は、義母のルクラシアや義妹のローザリンの存在自体を知らなかった。
何よりも貴重な銀糸シルク。今ミライザが身につけているドレスの価値は計り知れない。もし汚したり、傷つけてしまったら?
(すぐにでも着替えたいけど・・・)
「私、貴方が皇子だなんて知らなかったわ。それにまさかこのドレスが、あの銀糸シルクだなんて」
「ミライザ、僕は確かに皇帝の息子だけど、皇族としての役割は受け持っていないよ。優秀な兄達がいるし、宰相は叔父が勤めている。僕は憧れの人魚を探して世界中を巡っていたから、両親も僕にはもう多くを望んでいない。このブルーシルバーのドレスは確かに貴重だけど、5年前に作ってから一度も着られずに保管されていた物だ。ミライザが着てくれた方がいいよ」
グランは、ミライザの腰に両腕を回し引き寄せてきた。
「私、婚約なんてしていないわ」
「暫く付き合うって約束しただろう。僕がミライザを選んで、今日のパーティに連れてきた事に意味がある。ミライザは、気にしなくていいよ。帰ろう。ミライザ。着いたら脱がしてあげるから」
ミライザは、いつの間にか閉じ込められるようにして包まれているグランの腕の中で、しぶしぶ頷いた。
「ミライザ嬉しいよ。でも、本当にここでいいの?初めてだろ?」
(そうだわ。ここは学院だから着替えがない。早く銀糸ドレスを脱ぎたいのに!)
「朝、貴方が私に貸してくれた服はどこにあるの?」
「僕の隠れ家に運んでいるはずだよ。もう用事は終わったから、一緒に帰ろう。ドレスは隠れ家で脱がしてあげるよ」
マージャス侯爵家でも、ミリラーサン産の銀糸シルクを一度だけ取り扱った事がある。十数年前だが、その時の騒動はミライザの記憶に残っていた。一反の布だけの為に、マージャス侯爵家の大型船を3艘用意し、王国兵、外交官が船に乗り込んだ。3艘の周りには、護衛船として海軍まで出動し、王国にミリラーサン産の銀糸シルクが届いた時は、盛大な祭りが開催された。ミライザは、母と一緒に港へ、父と船を出迎えに行った。青白い顔色をした母は、沢山の船と盛大な祭りを見てはしゃぐミライザを嬉しそうに眺めていた。
ミリラーサン産の銀糸シルクが王国へ届いた時の祭りは、母と一緒に出かけた最後の楽しい記憶だった。あの時は、義母のルクラシアや義妹のローザリンの存在自体を知らなかった。
何よりも貴重な銀糸シルク。今ミライザが身につけているドレスの価値は計り知れない。もし汚したり、傷つけてしまったら?
(すぐにでも着替えたいけど・・・)
「私、貴方が皇子だなんて知らなかったわ。それにまさかこのドレスが、あの銀糸シルクだなんて」
「ミライザ、僕は確かに皇帝の息子だけど、皇族としての役割は受け持っていないよ。優秀な兄達がいるし、宰相は叔父が勤めている。僕は憧れの人魚を探して世界中を巡っていたから、両親も僕にはもう多くを望んでいない。このブルーシルバーのドレスは確かに貴重だけど、5年前に作ってから一度も着られずに保管されていた物だ。ミライザが着てくれた方がいいよ」
グランは、ミライザの腰に両腕を回し引き寄せてきた。
「私、婚約なんてしていないわ」
「暫く付き合うって約束しただろう。僕がミライザを選んで、今日のパーティに連れてきた事に意味がある。ミライザは、気にしなくていいよ。帰ろう。ミライザ。着いたら脱がしてあげるから」
ミライザは、いつの間にか閉じ込められるようにして包まれているグランの腕の中で、しぶしぶ頷いた。
10
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

【完結】辺境に飛ばされた聖女は角笛を吹く〜氷河の辺境伯様の熱愛で溶けそうです
香練
恋愛
ステラは最も優れた聖女、“首席聖女”、そして“大聖女”になると期待されていた。
後妻と義姉から虐げられ大神殿へ移り住み、厳しい修行に耐えて迎えた聖女認定式。
そこで神から与えられた“聖具”は角笛だった。
他の聖女達がよくある楽器を奏でる中、角笛を吹こうとするが音が出ない。
“底辺聖女”と呼ばれるようになったステラは、『ここで角笛を教えてもらえばいい』と辺境伯領の神殿へ異動を命じられる。『王都には二度と戻れない』とされる左遷人事だった。
落ち込むステラを迎えたのは美しい自然。
しかし“氷河”とも呼ばれる辺境伯のクラヴィは冷たい。
それもあるきっかけで変わっていく。孤独で不器用な二人の恋物語。
※小説家になろうでも投稿しています。転載禁止。●読者様のおかげをもちまして、2025.1.27、完結小説ランキング1位、ありがとうございます。

さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

王太子殿下の小夜曲
緑谷めい
恋愛
私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

男と女の初夜
緑谷めい
恋愛
キクナー王国との戦にあっさり敗れたコヅクーエ王国。
終戦条約の約款により、コヅクーエ王国の王女クリスティーヌは、"高圧的で粗暴"という評判のキクナー王国の国王フェリクスに嫁ぐこととなった。
しかし、クリスティーヌもまた”傲慢で我が儘”と噂される王女であった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる