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第17話 手首
しおりを挟むバシッ
激しい音が間近で聞こえた。
(叩かれた!でも、痛くない?)
ミライザは恐る恐る瞳を開けた。
ミライザの目の前には、顔を真っ赤にして眉間に皺を寄せながらミライザを睨みつけるキリアンが立っている。キリアンの右手はミライザの手首を掴んだままだが、力が弱まっているようだ。そしてキリアンの左手はミライザの目の前で、大きな手に掴まれていた。
筋張り大きな彼の手は、微動だにしない。
キリアンは、震えながら信じられないようにミライザを睨みつけている。
キリアンの腕を掴んだまま彼は言った。
「ミライザ?大丈夫?」
キリアンの腕を止めたのは、グランだった。キリアンの手の力が弱まった隙にミライザは、自分の手首を引き抜いた。金髪で体格のいいグランは、そのまま何事もないようにキリアンの腕を捻り上げた。
「イテテテ!離してくれ!」
ドシーン。
グランから手を急に離され、キリアンはその場に尻餅をついた。
グランは、キリアンの存在を忘れたかのように、ミライザの腰に手を当て引き寄せる。
「探したよ。僕の愛しい人。パートナーなのに急にいなくなるなんて酷いじゃないか!」
「ごめんなさい。でも・・・・・・」
(貴方には.あの人がいたから)
尻餅をついたままキリアンが抗議した。
「カ、カ、彼女は、根暗な才女です。貴方様のような方が相手にするべき女じゃありません。それに彼女は、俺の恋人なんだ。離してください。」
尻餅をついたまま、キリアンはグランへ向かって叫ぶ。身だしなみからグランを高位貴族と思ってか、先程までの勢いが無い。
グランは、キリアンを冷たく見下ろして、ミライザを包み込むように抱きしめて言った。
「恋人ねぇ。僕には関係ないかな。」
吸い込まれそうな碧眼を金色のまつ毛が彩っている。白い肌は男性なのに色気を感じさせる。目の前の極上の男性の唇がゆっくりとミライザに近づいてくる。
そのまま、ミライザはグランに食べられるようにキスされた。
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