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第8話 折合

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(な、な、な、な、舐められた。)

ミライザは慌ててグランの唇から手を離した。

グランは唇を僅かに開き、ミライザに見せつけるように舌を覗かせている。グランの妖艶な色気にミライザは思わず顔を顰めた。

「本当に、いい加減離して!」

ミライザは、グランへ腕を振り上げた。













ミライザが振り上げた腕をグランは掴みベッドへ押し付ける。

ミライザはグランに押し倒され、腕を固定された状態で身動きが取れなくなった。

もがけばもがくほど、どんどん絡め取られる。

「もう!なんなの!お願いだから、離して。」



目の前の金髪の美形は、苛立ちを隠せないミライザを見つめながら言った。

「どうして?離さないといけないの?君を助けたのは僕だよ。君が元気になるまで責任を持って面倒を見るつもりだ。思いっきり甘えてくれたらいい。美しい人。君の名前を教えてくれないかい?」





「私はミライザよ。いくら貴方が恩人でも初対面なのに距離が可笑しいわ。」

ミライザは、グランを睨みつけながら言った。

グランは少し困った表情でボソリと呟いた。

「初対面ねぇ・・・・・・」



グランは名残惜しそうに、ミライザから体を離し起き上がった。ミライザを愛おしそうに引き起こし、髪を整えてくる。

あまりにも当然のようにグランがミライザに触れてくるので、拒否する事ができない。


金髪で整った顔立ちのグランは、筋肉質な上半身を惜しげもなくさらしている。

ミライザは、男性の裸を間近で見るのは初めてだった。幼い頃から父とは疎遠で、交際相手もいないミライザは、ついつい目の前の男性の体を見つめてしまう。

盛り上がった大胸筋は呼吸と共にゆっくりと動き張りがある。盛り上がった上腕二頭筋は力強く、割れた腹筋は固く引き締まり、その不思議な美しさにミライザは思わず顔を赤らめた。

(そもそもこの人はどうして裸なの?)


「浜で見つけた時に比べたら、顔色が良くなったね。ミライザ。」

グランは、ミライザの手を取り、愛おしそうに手の甲に口づけをしようとした。


ミライザは、グランの唇が手の甲に触れた瞬間、手を引きそれを拒否した。



グランは、整った顔をわずかに顰め、ため息をつき笑った。


「僕の人魚姫は警戒心が強いらしい。少しづつ仲良くなれると嬉しいな。」


ミライザは、彼の美しい微笑みに見惚れながら本心を告げた。


「そんな事より、服を着て下さい!」



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