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第4話 廃墟
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ミライザは海の底から浮かび上がり辺りを見渡した。
透き通った海の中には沢山の珊瑚が乱立している。
ピンクに白、真紅の珊瑚の間を青や緑、黄色の魚が泳いでいる。
ミライザの体は軽やかに海の中で浮いていた。
足を少し動かすだけで、想像以上に軽く海の中を進む。
青い海の中、遥か遠くまで色とりどりの世界が広がり太陽の光を浴びて輝いていた。
ミライザは自分の胸を見た。
ワインレッドのドレスは胸元で切り裂かれ、確かに刃を受けた後がある。
切られた胸を触って確かめるが肌には傷一つついていなかった。
家宝のブルーティアーズの短剣は泡のように消えていた。
その存在自体が幻だったように、どこにも見当たらない。
不思議な事にミライザは眼鏡をつけてないのに遠くまでよく見渡せる。それに海の中なのに苦しく無い。まるで生まれつき魚だったかのように心地いい。
(私にはもう何も残っていない。大事な物も失う物も無い。私は何をしてもいい。)
ミライザは切り裂かれたワインレッドのドレスを海の中で脱ぎ捨てた。
シルクのインナーワンピースだけを身につけて海の中を泳ぎ出した。
ミライザは腰を上下に動かし、両足を魚のヒレのように水を掻き動かし力強く前へ泳いでいく。
もしかしたら今すぐにマージャス侯爵家の船を探せば見つかるかもしれない。
でもミライザは、船を探す気にはならなかった。
軽く思い通りに動く体、クリアな視界、そして美しい海の世界に魅了され、ミライザはただ無心に前へ泳ぎ続けた。
暫く進むと、海の底に山の様に巨大な岩が見えて来た。ドーム状の岩は沢山の海藻や珊瑚に彩られている。不思議な事に岩の底の方が光り輝いている様に見える。ミライザは、深く深く潜り巨大な岩の下の隙間を目指した。
岩の隙間は洞窟になっていた。ミライザは洞窟の中を潜っていった。やはり洞窟の先から光が見える。
暫く進むと急に視界が広がった。
そこには、地底へ伸びる様に沢山の人工的な建物が聳え下がっていた。
岩の下にある空間な筈なのに、幾つもの太陽の光が帯のように降り注いでいる。
光と共に地底へ伸びる沢山の建物の中央には一際壮大な円錐状の建物があった。
ミライザは魅了されたかのように、その中央の建物に近づいていった。
精密な彫刻が彫られた中央の建物は、よく見ると海藻に覆われている。
窓のような場所からミライザは建物の中に入った。
中は大広間だった。
中央には淡く発光する玉座があり、それを取り囲む沢山の岩の円座が浮かんでいる。
ミライザは中央の玉座に向かった。
無人の玉座まで泳いで行き、ゆっくりと玉座を触る。
玉座はほのかに暖かかった。
(どうしてだろう。懐かしい感じがする。初めて来た場所なのに。)
玉座にミライザが体を委ね、周囲を見渡すと、壁一面に壁画が描かれている事に気がついた。
壁画には沢山の人魚や海の生き物、龍のような生き物が描かれていた。初めは海の中で暮らしていた生物達だが、徐々に陸に上がる生物が出てくる。人魚も例外ではなく、陸に上がる仲間と別れる時に、輝く短剣を渡している。
壁画に描かれている短剣を見た時、ミライザはブルーティアーズを思い浮かべた。
(人魚?まさかね。マージャス侯爵家が人魚の末裔だなんて聞いた事が無いわ。でも、もしこれが夢で無ければ、私の体に起こった事は人魚に関係しているのかもしれない。)
壁画は、最後の人魚が死んだ場面で終わっていた。
ここは人魚の都市だったのかもしれない。
かなり栄えた場所のように思えるが、絶滅し今は廃墟になっている。
ミライザは大広間の奥に光る物を見つけて、泳いでいった。
そこで見つけたのは、無数の財宝だった。金や銀の装飾品や透明なブルーの宝石が乱雑に置かれている。
(凄いわ。もう誰もいないのに・・・・・・)
輝く財宝は目が眩むほど輝いているのに、誰からも必要とされていない。
財宝の中の、一つの指輪を取りミライザは自分の指へはめた。
その指輪には、マージャス侯爵家の証である水色の髪と同じ色の宝石がついていた。
(私は妹が羨ましかった。髪の色が水色なだけで父から受け入れられた妹が・・・・・・
私は変わった。
もう2度と戻らない。
だけど、時々思い出すくらいならいいでしょう?)
ミライザは水色の指輪を見て懐かしそうに微笑んだ。
透き通った海の中には沢山の珊瑚が乱立している。
ピンクに白、真紅の珊瑚の間を青や緑、黄色の魚が泳いでいる。
ミライザの体は軽やかに海の中で浮いていた。
足を少し動かすだけで、想像以上に軽く海の中を進む。
青い海の中、遥か遠くまで色とりどりの世界が広がり太陽の光を浴びて輝いていた。
ミライザは自分の胸を見た。
ワインレッドのドレスは胸元で切り裂かれ、確かに刃を受けた後がある。
切られた胸を触って確かめるが肌には傷一つついていなかった。
家宝のブルーティアーズの短剣は泡のように消えていた。
その存在自体が幻だったように、どこにも見当たらない。
不思議な事にミライザは眼鏡をつけてないのに遠くまでよく見渡せる。それに海の中なのに苦しく無い。まるで生まれつき魚だったかのように心地いい。
(私にはもう何も残っていない。大事な物も失う物も無い。私は何をしてもいい。)
ミライザは切り裂かれたワインレッドのドレスを海の中で脱ぎ捨てた。
シルクのインナーワンピースだけを身につけて海の中を泳ぎ出した。
ミライザは腰を上下に動かし、両足を魚のヒレのように水を掻き動かし力強く前へ泳いでいく。
もしかしたら今すぐにマージャス侯爵家の船を探せば見つかるかもしれない。
でもミライザは、船を探す気にはならなかった。
軽く思い通りに動く体、クリアな視界、そして美しい海の世界に魅了され、ミライザはただ無心に前へ泳ぎ続けた。
暫く進むと、海の底に山の様に巨大な岩が見えて来た。ドーム状の岩は沢山の海藻や珊瑚に彩られている。不思議な事に岩の底の方が光り輝いている様に見える。ミライザは、深く深く潜り巨大な岩の下の隙間を目指した。
岩の隙間は洞窟になっていた。ミライザは洞窟の中を潜っていった。やはり洞窟の先から光が見える。
暫く進むと急に視界が広がった。
そこには、地底へ伸びる様に沢山の人工的な建物が聳え下がっていた。
岩の下にある空間な筈なのに、幾つもの太陽の光が帯のように降り注いでいる。
光と共に地底へ伸びる沢山の建物の中央には一際壮大な円錐状の建物があった。
ミライザは魅了されたかのように、その中央の建物に近づいていった。
精密な彫刻が彫られた中央の建物は、よく見ると海藻に覆われている。
窓のような場所からミライザは建物の中に入った。
中は大広間だった。
中央には淡く発光する玉座があり、それを取り囲む沢山の岩の円座が浮かんでいる。
ミライザは中央の玉座に向かった。
無人の玉座まで泳いで行き、ゆっくりと玉座を触る。
玉座はほのかに暖かかった。
(どうしてだろう。懐かしい感じがする。初めて来た場所なのに。)
玉座にミライザが体を委ね、周囲を見渡すと、壁一面に壁画が描かれている事に気がついた。
壁画には沢山の人魚や海の生き物、龍のような生き物が描かれていた。初めは海の中で暮らしていた生物達だが、徐々に陸に上がる生物が出てくる。人魚も例外ではなく、陸に上がる仲間と別れる時に、輝く短剣を渡している。
壁画に描かれている短剣を見た時、ミライザはブルーティアーズを思い浮かべた。
(人魚?まさかね。マージャス侯爵家が人魚の末裔だなんて聞いた事が無いわ。でも、もしこれが夢で無ければ、私の体に起こった事は人魚に関係しているのかもしれない。)
壁画は、最後の人魚が死んだ場面で終わっていた。
ここは人魚の都市だったのかもしれない。
かなり栄えた場所のように思えるが、絶滅し今は廃墟になっている。
ミライザは大広間の奥に光る物を見つけて、泳いでいった。
そこで見つけたのは、無数の財宝だった。金や銀の装飾品や透明なブルーの宝石が乱雑に置かれている。
(凄いわ。もう誰もいないのに・・・・・・)
輝く財宝は目が眩むほど輝いているのに、誰からも必要とされていない。
財宝の中の、一つの指輪を取りミライザは自分の指へはめた。
その指輪には、マージャス侯爵家の証である水色の髪と同じ色の宝石がついていた。
(私は妹が羨ましかった。髪の色が水色なだけで父から受け入れられた妹が・・・・・・
私は変わった。
もう2度と戻らない。
だけど、時々思い出すくらいならいいでしょう?)
ミライザは水色の指輪を見て懐かしそうに微笑んだ。
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