18 / 19
終 返してください
しおりを挟む
イリーナは、皇帝から認められ、ジン帝国の皇女の地位を与えられた。
イマージュ皇女は、リム商会へ嫌がらせをしていなかった。全て皇妃の独断でリム商会へ圧力をかけていた事が分かった。イマージュ皇女とは姉妹として再び仲良くなった。皇帝である父とは、育ての父ロイド・グロッサーの想い出を何度も語り合った。驚いた事に皇帝は、イリーナの事をよく知っていた。父ロイドが何度も手紙を送っていたらしい。イリーナが強請ると父ロイドの直筆の手紙を、皇帝は全てイリーナに渡してくれた。
皇妃は病気を患ったと発表され、郊外の離宮へ連れていかれ、事実上の幽閉措置となった。時期を見て皇帝との離婚が正式に発表されるらしい。
リム商会の資産のほとんどをグロッサー貿易会社の買収に当てたため、二つの会社は合併吸収してリグロッサー会社として再出発した。今はメロナが新しい社長となり、商売繁盛と声を上げながら経営している。
グロッサー男爵家は、継承者不在の為爵位を返還する事になった。母や妹はリグロッサー会社で働き、生計を立てている。グロッサー男爵家の貴金属や土地、屋敷を売り払い、母と妹の治療費を払い、残っていた借金を返済すると殆ど何も残らなかった。
絶望し、返してくださいと心に決めた日から、何もかもが変わってしまった。
皇女という地位も、オージンとの未来もあの時は想像していなかった。
復讐を誓い、取り返そうと行動した事を後悔していない。
あの時、必死に足掻いた行動が、今の私に繋がっている。
イリーナは、今愛する人と一緒に暮らしている。
広大な土地に、美しい建物。居心地がいいマクラビアン公爵家で、イリーナはテラスのカウチに座り、風景を眺めていた。
そこに、最愛の夫であるオージンが来て声をかけてきた。
「イリーナ。そろそろ中へ入ろう。大事な体だから。」
イリーナは、夫の言葉に頷き、自分のお腹を愛おしそうに撫でた。
イリーナには確信があった。
このお腹の子はきっと男の子だ。大好きだった父ロイドの生まれ変わりだと感じている。
結局、グロッサー男爵家は潰れ、父から貰った装飾品を失い、グロッサー貿易会社も合併吸収された。あの時イリーナが望んだ物は気がつけば全て消えていた。だけど、新しく得た大事な命がここにある。
「ありがとう。返してくれて。」
サラサラと、心地よい風が、イリーナを包みこむように吹き去っていった。
風の音と共に、亡くなった父、ロイド・グロッサーの満足そうな笑い声が聞こえた気がした。
END
イマージュ皇女は、リム商会へ嫌がらせをしていなかった。全て皇妃の独断でリム商会へ圧力をかけていた事が分かった。イマージュ皇女とは姉妹として再び仲良くなった。皇帝である父とは、育ての父ロイド・グロッサーの想い出を何度も語り合った。驚いた事に皇帝は、イリーナの事をよく知っていた。父ロイドが何度も手紙を送っていたらしい。イリーナが強請ると父ロイドの直筆の手紙を、皇帝は全てイリーナに渡してくれた。
皇妃は病気を患ったと発表され、郊外の離宮へ連れていかれ、事実上の幽閉措置となった。時期を見て皇帝との離婚が正式に発表されるらしい。
リム商会の資産のほとんどをグロッサー貿易会社の買収に当てたため、二つの会社は合併吸収してリグロッサー会社として再出発した。今はメロナが新しい社長となり、商売繁盛と声を上げながら経営している。
グロッサー男爵家は、継承者不在の為爵位を返還する事になった。母や妹はリグロッサー会社で働き、生計を立てている。グロッサー男爵家の貴金属や土地、屋敷を売り払い、母と妹の治療費を払い、残っていた借金を返済すると殆ど何も残らなかった。
絶望し、返してくださいと心に決めた日から、何もかもが変わってしまった。
皇女という地位も、オージンとの未来もあの時は想像していなかった。
復讐を誓い、取り返そうと行動した事を後悔していない。
あの時、必死に足掻いた行動が、今の私に繋がっている。
イリーナは、今愛する人と一緒に暮らしている。
広大な土地に、美しい建物。居心地がいいマクラビアン公爵家で、イリーナはテラスのカウチに座り、風景を眺めていた。
そこに、最愛の夫であるオージンが来て声をかけてきた。
「イリーナ。そろそろ中へ入ろう。大事な体だから。」
イリーナは、夫の言葉に頷き、自分のお腹を愛おしそうに撫でた。
イリーナには確信があった。
このお腹の子はきっと男の子だ。大好きだった父ロイドの生まれ変わりだと感じている。
結局、グロッサー男爵家は潰れ、父から貰った装飾品を失い、グロッサー貿易会社も合併吸収された。あの時イリーナが望んだ物は気がつけば全て消えていた。だけど、新しく得た大事な命がここにある。
「ありがとう。返してくれて。」
サラサラと、心地よい風が、イリーナを包みこむように吹き去っていった。
風の音と共に、亡くなった父、ロイド・グロッサーの満足そうな笑い声が聞こえた気がした。
END
122
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら
キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。
しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。
妹は、私から婚約相手を奪い取った。
いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。
流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。
そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。
それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。
彼は、後悔することになるだろう。
そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。
2人は、大丈夫なのかしら。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる