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贈り物

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イリーナは、オージンと共に舞踏会場を後にした。今回の舞踏会では、沢山の貴族と知り合う事ができた。既に有力貴族との約束を取り付ける事ができ、商会の宣伝として、かなりの効果があったはずだった。
馬車に揺られながら、隣に座るオージンへイリーナは話しかけた。

「オージン。ありがとう。貴方のお陰で上手くいったわ。」

オージンは、イリーナの手を握りながら言った。
「どういたしまして。イリーナ。」

オージンは、イリーナの顔を覗き込むように、自身の顔を近づけてきた。

オージンの息遣いが聞こえる。

イリーナは、間近で見る端正な顔立ちの目の前の男性に見惚れながら、胸を高鳴らせた。


オージンはゆっくりと近づいてくる。


(まだ、付き合ってもいないのに、、、


キスだなんて、、、、


でも、、、、)




イリーナは、覚悟を決めて両目を閉じた。












オージンはイリーナに言った。

「元婚約者には、本当に未練はない?」

イリーナは、驚き目を開く。


オージンは、至近距離で悲しそうな表情をして、イリーナを見つめていた。


「未練だなんて、全然ないわ。

元々彼とは政略婚約だったのよ。

それに、、、

貴方の方が何倍も魅力的だわ。」


イリーナの言葉に、オージンは唖然とした表情をした後、嬉しそうに笑って言った。

「ありがとう。イリーナ。早く俺の事を好きになってくれよ。」



(もう、好きになっている。

でも、本当に私でいいの?

皇妃も皇女もオージンの事を望んでいる。

皇帝からも優秀と認められるオージンが、平民の私とだなんて、、、

認められるはずがないのに。)



イリーナは、オージンに気持ちを打ち明けられないまま、オージンへ、そっと凭れかかった。


声に出せない気持ちが、少しでも伝わるように、、、

















舞踏会の後から、リム商会の売り上げが倍増した。ローズマリー侯爵夫人を中心に、帝国貴族から注文が相次いだのだ。それに、皇帝陛下も、皇室の取引先としてリム商会を指名したらしい。想像以上の成果に、イリーナは戸惑っていた。

皇帝からは何故か、沢山の贈り物がイリーナ宛に届くようになった。ドレスや装飾品、中には店舗権利書まで届き、さすがにイリーナは怖くなって、届けにきた使用人に皇帝からの贈り物を返却した。

皇帝の妻は皇妃だけだと聞いている。側妃だけでなく、愛人が一人もいない皇帝については、帝国民から愛妻家だと評判だ。清廉潔白な皇帝に、愛人としてイリーナが目をつけられたなんて事はないと思いたいが、あまりの贈り物に気味悪さを感じていた。

イリーナは、論文を完成させ、流通学の博士号を取得した。同時にオーブリー教授から依頼された消えた税金の行方について調査をしていたが、どんなに調べてもジェフリー公爵やその関係者の所で証拠が消えてしまっている。

ジェフリー公爵が関係している事は確かだと思われるが、公爵を調べる事ができない。ジェフリー公爵家は、現在の皇妃の実家になる。帝国内で最も影響力がある貴族だ。どうする事もできなかった。

(オージンに相談してみようかしら?いいえ、駄目だわ。マクラビアン公爵家とジェフリー公爵が対立してしまえば、帝国内は大変な事になる。だったら、皇帝陛下へ、、、、いいえ、もし本当ならかなりの金額が消えた事になる。今回の黒幕はジェフリー公爵だけじゃないかもしれない。皇妃や陛下だってもしかしたら、、、)

イリーナが、考え込んでいると、メロナが帰って来た。

「イリーナ様!全て買い占めました。準備が整いましたよ。」

イリーナは、安堵し言った。

「ありがとう。メロナ。おかげでやっと取り返す事ができるわ。」


イリーナは、窓の外を見た。そこには、母と妹の瞳によく似た澄んだ水色の空が広がっていた。


(そう、やっと。私の大事な物を返して貰いに行く。待っていて。お母様。ルアンナ)





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