11 / 23
ストーカーではありません!
オイダサレタ!
しおりを挟む
メイド長に貰った巾着には数十枚の金貨が入っていた。
私は、ガイヤ公爵家を出て、城下町へ向かって歩いていった。ガイヤ公爵家は、城下町の高級住宅街にある。この辺りは王都で最も地価が高い場所の一つだ。乗合馬車なんて通っていない。1時間程歩き王都の中心にたどり着いた。メイド長のおかげで、早く脱出することができた。私は、裏道の目立たない服飾店に入り、目立たないロープと服、靴を貰った金貨を使って購入した。
店の中で着替えて着ている服は引き取ってもらった。私はお釣りの銀貨と銅貨を持って、中央乗合馬車乗り場へ向かった。すでに周囲は真っ暗だが、中央乗合馬車乗り場には沢山の人がいる。品種改良で夜目が効くようになった馬車は、夜遅くでも乗る事ができると需要が高い。
周囲をみても、私と同じような服装の人たちが多くいる。明日は休日。これから地方に帰ったり、旅行に行く労働民達だろう。
私は、北方向へ行く目当ての馬車を見つけて乗り込んだ。
馬車で30分程走ると、王都の外れに出た。王都の端で馬車から降りると、そこから私はさらに北へ歩いて行った。
王都の北は森が近く、不便な事からあまり人気がない住宅街だ。グレゴール侯爵邸はそんな場所にひっそりと佇んでいた。敷地だけは広いグレゴール侯爵邸だが、建物の老朽化は進んでいる。裏道からグレゴール侯爵邸に私は入る。もう夜中だが、一刻もはやくお嬢様に報告しなければならない。私は、本邸の使用人口にむかった。
使用人口から中に入ろうとしたとき、声をかけられた。
「ソフィア。帰ってきたんだね。心配したよ。」
私に声をかけてきたのは、見事な赤毛の女性のシーラだった。シーラは私と同じように子供のころからグレゴール侯爵邸で働いている。シーラは私を、使用人口から少し離れた木陰に連れて行った。
「あんた。なにがあったんだい。お嬢様が、ソフィアを追放するって大変お怒りだよ。なんでも学院でソフィアの主を探している貴族がいるって。昨日は私達を集めて、ソフィアを見かけたらすぐに追い出すように言っていたんだよ。あんたの事は絶対に誰にも言うなって。」
シーラは、小声で私に伝えてきた。
私は驚き、シーラに告げた。
「お嬢様の命令であの方を探っている時に、例のあの方にバレちゃったんだ。グレゴール侯爵家の事は喋って無いんだけど、、、そう、お嬢様がそんな事を。」
「それにね。昨晩ジョンの容体が急変したんだよ。今朝亡くなっている所を庭師のマイクが見つけたんだ。明日にはジョンの小屋を取り壊すようにお嬢様が命令していたんだ。たぶんソフィアの痕跡も消したいみたい。今日帰ってこれてよかったよ。明日の昼間まで、取り壊すのを待ってもらうように伝えてみる。大丈夫。みんなソフィアの味方だよ。」
ジョンはもう1か月近く寝たきりの生活だった。使用人達で交代で様子を見ていたが、とうとう亡くなったらしい。グレゴール侯爵邸に残っている高齢の使用人達は身寄りがいないものばかりだ。
「ありがとう。シーラ。明日の昼までには出て行くよ。シーラも元気でね。」
お嬢様に会うのは止めておいた方が良さそうだ。元々グレゴール侯爵家を辞めようと思っていた。でも、いろんな仕事を任されてきた私はお嬢様から捨てられるとは思っていなかった。少し寂しいが、仕方がない。
「ああ、後の事は任せて。なにかあれば町の皆を頼るんだよ。」
「ええ。」
私は暗闇の中ジョンの小屋へ向かう。
ジョンの小屋は、グレゴール侯爵邸から歩いて10分程の林の中にある。
古い木材の壁に覆われた小屋は中心に立派な大黒柱が立っている。小屋の中には年老いたジョンが安置されていた。そっとジョンの冥福を祈って手を合わせる。
ジョンは私が物心ついた時から、一緒に暮らしていた。私は、グレゴール侯爵邸の託児所に預けられていたらしい。10年前、グレゴール前侯爵が領地の土砂災害で亡くなった。妻と嫡男と共に滞在していた別邸が土砂崩れに巻き込まれたのだ。
その後、前侯爵の姉が噂を聞きつけて侯爵家に戻ってきた。姉のマリアンヌ・グレゴールは、舞台俳優と駆け落ちしてグレゴール侯爵家から勘当されていた。舞台俳優とは別れたのか、戻ってきた時には5歳のマーガレットお嬢様だけを連れて帰ってきた。
マリアンヌ・グレゴールは屋敷について早々気に入らない使用人を解雇して行った。領地へついて行き前当主と共に亡くなった使用人もいて、屋敷は混乱した。使用人の中には金目の物を持って逃亡する者まで現れた。
グレゴール侯爵邸の託児所には、いつの間にか親がいない子供で溢れていた。
それに気がついたジョンは、すぐに親を探した。中には親が見つかる子もいたが、逃亡した使用人もいて、親が分からない子供もいた。その中の一人が私だった。
私は、ガイヤ公爵家を出て、城下町へ向かって歩いていった。ガイヤ公爵家は、城下町の高級住宅街にある。この辺りは王都で最も地価が高い場所の一つだ。乗合馬車なんて通っていない。1時間程歩き王都の中心にたどり着いた。メイド長のおかげで、早く脱出することができた。私は、裏道の目立たない服飾店に入り、目立たないロープと服、靴を貰った金貨を使って購入した。
店の中で着替えて着ている服は引き取ってもらった。私はお釣りの銀貨と銅貨を持って、中央乗合馬車乗り場へ向かった。すでに周囲は真っ暗だが、中央乗合馬車乗り場には沢山の人がいる。品種改良で夜目が効くようになった馬車は、夜遅くでも乗る事ができると需要が高い。
周囲をみても、私と同じような服装の人たちが多くいる。明日は休日。これから地方に帰ったり、旅行に行く労働民達だろう。
私は、北方向へ行く目当ての馬車を見つけて乗り込んだ。
馬車で30分程走ると、王都の外れに出た。王都の端で馬車から降りると、そこから私はさらに北へ歩いて行った。
王都の北は森が近く、不便な事からあまり人気がない住宅街だ。グレゴール侯爵邸はそんな場所にひっそりと佇んでいた。敷地だけは広いグレゴール侯爵邸だが、建物の老朽化は進んでいる。裏道からグレゴール侯爵邸に私は入る。もう夜中だが、一刻もはやくお嬢様に報告しなければならない。私は、本邸の使用人口にむかった。
使用人口から中に入ろうとしたとき、声をかけられた。
「ソフィア。帰ってきたんだね。心配したよ。」
私に声をかけてきたのは、見事な赤毛の女性のシーラだった。シーラは私と同じように子供のころからグレゴール侯爵邸で働いている。シーラは私を、使用人口から少し離れた木陰に連れて行った。
「あんた。なにがあったんだい。お嬢様が、ソフィアを追放するって大変お怒りだよ。なんでも学院でソフィアの主を探している貴族がいるって。昨日は私達を集めて、ソフィアを見かけたらすぐに追い出すように言っていたんだよ。あんたの事は絶対に誰にも言うなって。」
シーラは、小声で私に伝えてきた。
私は驚き、シーラに告げた。
「お嬢様の命令であの方を探っている時に、例のあの方にバレちゃったんだ。グレゴール侯爵家の事は喋って無いんだけど、、、そう、お嬢様がそんな事を。」
「それにね。昨晩ジョンの容体が急変したんだよ。今朝亡くなっている所を庭師のマイクが見つけたんだ。明日にはジョンの小屋を取り壊すようにお嬢様が命令していたんだ。たぶんソフィアの痕跡も消したいみたい。今日帰ってこれてよかったよ。明日の昼間まで、取り壊すのを待ってもらうように伝えてみる。大丈夫。みんなソフィアの味方だよ。」
ジョンはもう1か月近く寝たきりの生活だった。使用人達で交代で様子を見ていたが、とうとう亡くなったらしい。グレゴール侯爵邸に残っている高齢の使用人達は身寄りがいないものばかりだ。
「ありがとう。シーラ。明日の昼までには出て行くよ。シーラも元気でね。」
お嬢様に会うのは止めておいた方が良さそうだ。元々グレゴール侯爵家を辞めようと思っていた。でも、いろんな仕事を任されてきた私はお嬢様から捨てられるとは思っていなかった。少し寂しいが、仕方がない。
「ああ、後の事は任せて。なにかあれば町の皆を頼るんだよ。」
「ええ。」
私は暗闇の中ジョンの小屋へ向かう。
ジョンの小屋は、グレゴール侯爵邸から歩いて10分程の林の中にある。
古い木材の壁に覆われた小屋は中心に立派な大黒柱が立っている。小屋の中には年老いたジョンが安置されていた。そっとジョンの冥福を祈って手を合わせる。
ジョンは私が物心ついた時から、一緒に暮らしていた。私は、グレゴール侯爵邸の託児所に預けられていたらしい。10年前、グレゴール前侯爵が領地の土砂災害で亡くなった。妻と嫡男と共に滞在していた別邸が土砂崩れに巻き込まれたのだ。
その後、前侯爵の姉が噂を聞きつけて侯爵家に戻ってきた。姉のマリアンヌ・グレゴールは、舞台俳優と駆け落ちしてグレゴール侯爵家から勘当されていた。舞台俳優とは別れたのか、戻ってきた時には5歳のマーガレットお嬢様だけを連れて帰ってきた。
マリアンヌ・グレゴールは屋敷について早々気に入らない使用人を解雇して行った。領地へついて行き前当主と共に亡くなった使用人もいて、屋敷は混乱した。使用人の中には金目の物を持って逃亡する者まで現れた。
グレゴール侯爵邸の託児所には、いつの間にか親がいない子供で溢れていた。
それに気がついたジョンは、すぐに親を探した。中には親が見つかる子もいたが、逃亡した使用人もいて、親が分からない子供もいた。その中の一人が私だった。
0
お気に入りに追加
769
あなたにおすすめの小説
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?

麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」


【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる