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3.野営地潜入
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野営地でメイナは、端に設置されているテントへ潜り込んだ。
中心部には行く必要がない。今日は偵察だけが目的だった。
テントの中には数人が寝ていた。
茶色のズボンに、襟がついた制服が干してある。10人程が寝るテントは従者のテントらしかった。
(当たりね。)
一番端で寝ている男に近づき、顔を見る。小柄で茶髪の若い男が寝ていた。
強い睡眠薬で湿らした布を男の口に当てる。ピクリとも動かず、男は深い眠りについた。
メイナは持っていた透明の魔石を男に近づける。
すぐに魔石は男と同じ茶色に染まった。
メイナはその魔石を自分の腕輪の魔石と入れ替える。
メイナの眼と髪は黒から茶へ変化した。
(これでいい。)
テントからぐっすり寝ている男を外に出す。
シーツと枯葉で覆い隠し、メイナは男の布団へ1人潜り込んだ。
(明日までここにいるなら、元に戻してあげるわ。たまには枯葉のベットもいいんじゃない?)
朝になり周囲が動き出す音がする。
メイナも起き、周囲の従者と同じように服を着て身だしなみを整える。
テントから出て、野営地を探ろうとしていた時に声をかけられた。
「貴方。手を貸して。これを皇帝様の寝所まで運んでほしいの。昨日の者は使い物にならなくなったわ。貴方も行ける所まででいいから。」
(食事を運ぶだけなのにやけに大袈裟だな。でも私にとっては都合がいい。)
声をかけてきた女が渡してきたのは、お盆にのった数種類のパンと飲み物、スープだった。
「分かりました。皇帝様の寝所は、、」
「ああ、向こうよ。この道を真っ直ぐ行って一番大きいテントになるわ。気分が悪ければ、側近の方に渡して。」
メイナは頷き、野営地の中央の道をお盆を持って歩き出した。
進めば進むほどテントの数が少なくなる。
(普通は、皇帝の周りを厳重にするのでは?まるで皇帝を避けているみたいな配置ね。)
中央の大きなテントにメイナはたどり着いた。
野営地の東は明るくなり、空の雲が紅いグラデーションに染まっている。
テントをくぐり抜け、中に入る。
(本当。拍子抜けね。こんなにすぐに接近できるなんて。寝所は、この奥かしら?)
広大なテントは、いくつかの部屋に分かれていた。
入ってすぐテーブルが置いてある。そこに食事が乗っているお盆を置いた。
確認したばかりの暗器も持っている。テントの中に人がいる気配が無い。
(好機だわ。あの布の向こうに。)
気配を立てないように、メイナは、寝所に入って行った。
寝所の入口の布を捲り中に入ると、そこには豪華な寝台があった。床は複雑な模様が描かれた絨毯が敷かれている。
寝台には、白銀の短い髪の体格がいい男が寝ている。目を閉じた状態でも、相手の顔が整っている事が分かる。
(まさか、本当に。残虐王エーリヒ。地神の加護があるはずなのに、髪の色が銀だわ。だけど、本物でも偽物でも殺す価値はある。)
滴る血を想像して、メイナは興奮した。
加護持ちを確実に殺すには心臓に刃を突き立てる事が一番だ。
寝ている男の髪の色が一瞬黄金に輝いたように見えた。
(何?いいえ、今がチャンスよ。)
音を立てないように近づき、メイナは思いっきり相手の心臓に暗器を振り下ろした。
刃が心臓に届いた時思った瞬間、刃先が止まる。
(何!!!)
ピキピキピキピキ
刃先から刃が凍りつき、すぐに粉々に砕け散る。
驚いたメイナが、暗器を離し逃げようとするが、その手は既に岩のような塊に拘束されていた。
目の前の男は両目を開き、メイナを見ていた。その茶色の目は真っ黒な深淵に縁取られていた。
「ああ、いつもの夢かと思ったよ。まさかメイナから来てくれるとは。」
メイナは、その声に聞き覚えがあった。一緒に食事をしてからまだ1日も経っていない。
驚いて声をあげようとするが、いつのまにかメイナの口は石の拘束魔術で固定されている。
「ンーンウウン。」
「今の俺は皇帝をしているんだ。一応暗殺者は調べる規定だからね。身体中を確かめてあげるよ。こんなに嬉しい暗殺者は初めてだよ。メイナ。」
そういうと、魔術師ライザーの声で話す残虐王は、怪しく微笑んだ。
中心部には行く必要がない。今日は偵察だけが目的だった。
テントの中には数人が寝ていた。
茶色のズボンに、襟がついた制服が干してある。10人程が寝るテントは従者のテントらしかった。
(当たりね。)
一番端で寝ている男に近づき、顔を見る。小柄で茶髪の若い男が寝ていた。
強い睡眠薬で湿らした布を男の口に当てる。ピクリとも動かず、男は深い眠りについた。
メイナは持っていた透明の魔石を男に近づける。
すぐに魔石は男と同じ茶色に染まった。
メイナはその魔石を自分の腕輪の魔石と入れ替える。
メイナの眼と髪は黒から茶へ変化した。
(これでいい。)
テントからぐっすり寝ている男を外に出す。
シーツと枯葉で覆い隠し、メイナは男の布団へ1人潜り込んだ。
(明日までここにいるなら、元に戻してあげるわ。たまには枯葉のベットもいいんじゃない?)
朝になり周囲が動き出す音がする。
メイナも起き、周囲の従者と同じように服を着て身だしなみを整える。
テントから出て、野営地を探ろうとしていた時に声をかけられた。
「貴方。手を貸して。これを皇帝様の寝所まで運んでほしいの。昨日の者は使い物にならなくなったわ。貴方も行ける所まででいいから。」
(食事を運ぶだけなのにやけに大袈裟だな。でも私にとっては都合がいい。)
声をかけてきた女が渡してきたのは、お盆にのった数種類のパンと飲み物、スープだった。
「分かりました。皇帝様の寝所は、、」
「ああ、向こうよ。この道を真っ直ぐ行って一番大きいテントになるわ。気分が悪ければ、側近の方に渡して。」
メイナは頷き、野営地の中央の道をお盆を持って歩き出した。
進めば進むほどテントの数が少なくなる。
(普通は、皇帝の周りを厳重にするのでは?まるで皇帝を避けているみたいな配置ね。)
中央の大きなテントにメイナはたどり着いた。
野営地の東は明るくなり、空の雲が紅いグラデーションに染まっている。
テントをくぐり抜け、中に入る。
(本当。拍子抜けね。こんなにすぐに接近できるなんて。寝所は、この奥かしら?)
広大なテントは、いくつかの部屋に分かれていた。
入ってすぐテーブルが置いてある。そこに食事が乗っているお盆を置いた。
確認したばかりの暗器も持っている。テントの中に人がいる気配が無い。
(好機だわ。あの布の向こうに。)
気配を立てないように、メイナは、寝所に入って行った。
寝所の入口の布を捲り中に入ると、そこには豪華な寝台があった。床は複雑な模様が描かれた絨毯が敷かれている。
寝台には、白銀の短い髪の体格がいい男が寝ている。目を閉じた状態でも、相手の顔が整っている事が分かる。
(まさか、本当に。残虐王エーリヒ。地神の加護があるはずなのに、髪の色が銀だわ。だけど、本物でも偽物でも殺す価値はある。)
滴る血を想像して、メイナは興奮した。
加護持ちを確実に殺すには心臓に刃を突き立てる事が一番だ。
寝ている男の髪の色が一瞬黄金に輝いたように見えた。
(何?いいえ、今がチャンスよ。)
音を立てないように近づき、メイナは思いっきり相手の心臓に暗器を振り下ろした。
刃が心臓に届いた時思った瞬間、刃先が止まる。
(何!!!)
ピキピキピキピキ
刃先から刃が凍りつき、すぐに粉々に砕け散る。
驚いたメイナが、暗器を離し逃げようとするが、その手は既に岩のような塊に拘束されていた。
目の前の男は両目を開き、メイナを見ていた。その茶色の目は真っ黒な深淵に縁取られていた。
「ああ、いつもの夢かと思ったよ。まさかメイナから来てくれるとは。」
メイナは、その声に聞き覚えがあった。一緒に食事をしてからまだ1日も経っていない。
驚いて声をあげようとするが、いつのまにかメイナの口は石の拘束魔術で固定されている。
「ンーンウウン。」
「今の俺は皇帝をしているんだ。一応暗殺者は調べる規定だからね。身体中を確かめてあげるよ。こんなに嬉しい暗殺者は初めてだよ。メイナ。」
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