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27.クローディア
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クローディア・オーガスはキーベルデルク神国のオーガス公爵家の娘だった。オーガス公爵家からは過去に何人もの王妃を輩出していた。クローディアも、産まれた時から将来の王妃になると決まっていた。
キーベルデルク神国には二人の王子がいた。マロイ第一王子の母親はマロイを産むときに亡くなった。マイサー第2王子は、マロイ王子の5歳下で、母親はオーガス公爵家傘下の伯爵家の出身だった。マイサー王子は、魔力が強く強い水属性の魔法を使えた。対してマロイ第一王子の魔力はあまり強くなく、後ろ盾が弱いマロイ王子は、第2王子が産まれた後すぐに、国外へ留学した。
クローディアだけでなく、オーガス公爵家や他の貴族達のほとんどが、マイサー王子が時期国王になると思っていた。神の加護を得るために、王族は兄弟殺しを繰り返してきた歴史がある。だが、マロイ王子はあきらかに魔力が弱く早々に後継者争いから外れていると誰もが思っていた。
クローディアは、マイサー王子と婚前交渉を持っていた。どうせ、すぐにクローディアが王妃になる。マイサーとは、一緒にいると楽しいし話もよく合った。マイサー王子が神の加護に選ばれたらすぐに結婚する予定だった。
だが、前王が死に、水神の加護に選ばれたのはマロイ王子だった。
マロイ王子は、留学先のメイス聖国から帰国した。
学者風の出立のマロイ王子は、くたびれた服を着て、付き添いは従者一人と侍女が一人だけであった。クローディアは青色の髪と瞳の、目の前のマロイ王子を見て失望する。父のオーガス公爵からは、水神の加護に選ばれたマロイ王子と結婚するように言われていたが、マロイはマイサー王子とあまり似ておらず、惹かれる所が無かった。
「お帰りなさいませ。マロイ様。国王への就任おめでとうございます。」
国王となったマロイは、義母弟のマイサーを殺さなかった。新王の戴冠式までに、キーベルデルク神国では反逆を防ぐ為に戴冠式前までに兄弟を殺す慣例があったが、マロイ国王は子供がいない事を理由に、弟の殺害を拒否した。マロイ国王の一言でマイサーの死は見送られた。
クローディアは内心喜んだ。表面上はマロイと仲が良い夫婦を演じながら、蔭でマイサーとの逢瀬を楽しんだ。マロイ国王は、公務をしながら、夜は留学先で学んだ魔術具や古代文字の研究を続けているらしい。どうやら子供が産まれて、弟を殺すのは気が引けるらしくクローディアとの性交渉も数か月に一度と少なかった。
王妃の寝室にほとんど訪れない国王に見つからないように王妃が行動するのは簡単だった。
王妃になって3年後クローディアは妊娠した。クローディアはお腹の中の子供がマイサー王弟の子供だと確信していた。マロイ国王に伝えた時は少し驚いた表情をしていたが、すぐに喜び祝福された。
もうすぐ子供が産まれる。待ち遠しい我が子。だが、産まれる前に片付けなければいけない、、、、、
マロイ王は、公平で穏やかな王だが、貴族より国民を優先する傾向があり、不満を持つ貴族も多かった。帝国から複数の加護をもつエーリヒ皇子が訪れた事もあり、強い魔力を持つマイサー王弟が国王に相応しいとの意見が高まっていた。クローディアは、マロイ国王がかなりの公費を使い込んだとの噂を広めさせた。徐々に高まる国王への不信。他国の脅威への不安。マイサー王弟も、覚悟を決めたらしく暗殺者を大量に雇い、そしてあの日マロイ国王は殺された。
王城の中が騒がしい。
今日は、暗殺者がマロイ国王を追い詰め、マイサー王弟が止めを刺す日だ。
黒装束の暗殺者が、マロイ国王が座っている謁見室へ向かっている。
王城の中の使用人は、反逆に賛同する者達だけが残っている。
謁見室から大きな音が鳴り響く。
なにかが爆発する音。壊れる音。
クローディアは、王妃の自室で、反逆が成功する事を確信していた。
数時間して、王城が静かになった。
思っていたよりマロイ王が抵抗したらしい。あの魔力の弱い王でも、神の加護があれば、違うのかもしれない。
「ふふふ。私の子供。もうすぐ貴方の本当のお父様が国王になるわ。」
クローディアは、大きくなったお腹を撫でて、話しかけていた。
バタバタと複数の人間が慌てたように近づいてくる音がする。
ドンドン ドンドン
「クローディア。ここにいるのか!開けてくれ。」
マイサー王弟の声がした。
「ええ。今開けますわ。」
クローディアは、反逆の今日は厳重に鍵を閉めて部屋から一歩もでないようにマイサー王弟に言われていた。
ドアを開けると、そこには血まみれのマイサー王弟が、鬼の形相でクローディアを睨みつけていた。
「え?。どうされましたの?成功したのでしょう。」
クローディアは戸惑う。
マイサー王弟はクローディアに詰め寄ってきた。
「俺が行った時には兄はすでに死んでいた。クローディアが殺したのか!」
クローディアは驚き、後退る。
「まさか。私は一歩もこの部屋から出ていないわ。」
マイサー王弟は言う。
「何度刃を突き刺しても、水神の加護が得られない。いくら弱っていても、神の加護を持つ王を王族以外の者が止めを刺せるはずがない。王族の子を腹に宿すクローディア以外考えられない。」
クローディアは、言う。
「違うわ。私じゃない。違う。」
血だらけのマイサー王弟の後ろには、何度も刃を突き刺され見る影もないマイナ国王の遺体を担いだ騎士がいた。
マイサー王弟は言う。
「どちらにせよ。その腹の子を殺せば、王族は俺だけだ。俺が神の加護を得れる。」
クローディアの目の前で、マイサーは、血だらけの剣を鞘から抜いた。
ふと、思い出す。夫のマロイ国王が、神の加護は呪われていると言っていた事を。
クローディアは言った。
「違う。違うわ。この子は貴方の子供よ。マイサー。殺さないで。違うわ。」
クローディアは、マイサーが剣を振り下ろそうと高く持ち上げたのを見て、叫び声をあげた。
「キャアアアアアアアアアアアアア。」
キーベルデルク神国には二人の王子がいた。マロイ第一王子の母親はマロイを産むときに亡くなった。マイサー第2王子は、マロイ王子の5歳下で、母親はオーガス公爵家傘下の伯爵家の出身だった。マイサー王子は、魔力が強く強い水属性の魔法を使えた。対してマロイ第一王子の魔力はあまり強くなく、後ろ盾が弱いマロイ王子は、第2王子が産まれた後すぐに、国外へ留学した。
クローディアだけでなく、オーガス公爵家や他の貴族達のほとんどが、マイサー王子が時期国王になると思っていた。神の加護を得るために、王族は兄弟殺しを繰り返してきた歴史がある。だが、マロイ王子はあきらかに魔力が弱く早々に後継者争いから外れていると誰もが思っていた。
クローディアは、マイサー王子と婚前交渉を持っていた。どうせ、すぐにクローディアが王妃になる。マイサーとは、一緒にいると楽しいし話もよく合った。マイサー王子が神の加護に選ばれたらすぐに結婚する予定だった。
だが、前王が死に、水神の加護に選ばれたのはマロイ王子だった。
マロイ王子は、留学先のメイス聖国から帰国した。
学者風の出立のマロイ王子は、くたびれた服を着て、付き添いは従者一人と侍女が一人だけであった。クローディアは青色の髪と瞳の、目の前のマロイ王子を見て失望する。父のオーガス公爵からは、水神の加護に選ばれたマロイ王子と結婚するように言われていたが、マロイはマイサー王子とあまり似ておらず、惹かれる所が無かった。
「お帰りなさいませ。マロイ様。国王への就任おめでとうございます。」
国王となったマロイは、義母弟のマイサーを殺さなかった。新王の戴冠式までに、キーベルデルク神国では反逆を防ぐ為に戴冠式前までに兄弟を殺す慣例があったが、マロイ国王は子供がいない事を理由に、弟の殺害を拒否した。マロイ国王の一言でマイサーの死は見送られた。
クローディアは内心喜んだ。表面上はマロイと仲が良い夫婦を演じながら、蔭でマイサーとの逢瀬を楽しんだ。マロイ国王は、公務をしながら、夜は留学先で学んだ魔術具や古代文字の研究を続けているらしい。どうやら子供が産まれて、弟を殺すのは気が引けるらしくクローディアとの性交渉も数か月に一度と少なかった。
王妃の寝室にほとんど訪れない国王に見つからないように王妃が行動するのは簡単だった。
王妃になって3年後クローディアは妊娠した。クローディアはお腹の中の子供がマイサー王弟の子供だと確信していた。マロイ国王に伝えた時は少し驚いた表情をしていたが、すぐに喜び祝福された。
もうすぐ子供が産まれる。待ち遠しい我が子。だが、産まれる前に片付けなければいけない、、、、、
マロイ王は、公平で穏やかな王だが、貴族より国民を優先する傾向があり、不満を持つ貴族も多かった。帝国から複数の加護をもつエーリヒ皇子が訪れた事もあり、強い魔力を持つマイサー王弟が国王に相応しいとの意見が高まっていた。クローディアは、マロイ国王がかなりの公費を使い込んだとの噂を広めさせた。徐々に高まる国王への不信。他国の脅威への不安。マイサー王弟も、覚悟を決めたらしく暗殺者を大量に雇い、そしてあの日マロイ国王は殺された。
王城の中が騒がしい。
今日は、暗殺者がマロイ国王を追い詰め、マイサー王弟が止めを刺す日だ。
黒装束の暗殺者が、マロイ国王が座っている謁見室へ向かっている。
王城の中の使用人は、反逆に賛同する者達だけが残っている。
謁見室から大きな音が鳴り響く。
なにかが爆発する音。壊れる音。
クローディアは、王妃の自室で、反逆が成功する事を確信していた。
数時間して、王城が静かになった。
思っていたよりマロイ王が抵抗したらしい。あの魔力の弱い王でも、神の加護があれば、違うのかもしれない。
「ふふふ。私の子供。もうすぐ貴方の本当のお父様が国王になるわ。」
クローディアは、大きくなったお腹を撫でて、話しかけていた。
バタバタと複数の人間が慌てたように近づいてくる音がする。
ドンドン ドンドン
「クローディア。ここにいるのか!開けてくれ。」
マイサー王弟の声がした。
「ええ。今開けますわ。」
クローディアは、反逆の今日は厳重に鍵を閉めて部屋から一歩もでないようにマイサー王弟に言われていた。
ドアを開けると、そこには血まみれのマイサー王弟が、鬼の形相でクローディアを睨みつけていた。
「え?。どうされましたの?成功したのでしょう。」
クローディアは戸惑う。
マイサー王弟はクローディアに詰め寄ってきた。
「俺が行った時には兄はすでに死んでいた。クローディアが殺したのか!」
クローディアは驚き、後退る。
「まさか。私は一歩もこの部屋から出ていないわ。」
マイサー王弟は言う。
「何度刃を突き刺しても、水神の加護が得られない。いくら弱っていても、神の加護を持つ王を王族以外の者が止めを刺せるはずがない。王族の子を腹に宿すクローディア以外考えられない。」
クローディアは、言う。
「違うわ。私じゃない。違う。」
血だらけのマイサー王弟の後ろには、何度も刃を突き刺され見る影もないマイナ国王の遺体を担いだ騎士がいた。
マイサー王弟は言う。
「どちらにせよ。その腹の子を殺せば、王族は俺だけだ。俺が神の加護を得れる。」
クローディアの目の前で、マイサーは、血だらけの剣を鞘から抜いた。
ふと、思い出す。夫のマロイ国王が、神の加護は呪われていると言っていた事を。
クローディアは言った。
「違う。違うわ。この子は貴方の子供よ。マイサー。殺さないで。違うわ。」
クローディアは、マイサーが剣を振り下ろそうと高く持ち上げたのを見て、叫び声をあげた。
「キャアアアアアアアアアアアアア。」
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