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18.闇神の加護

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メイナがぶつかったのはヘル国王子グロウ・ヘルだった。


「メイナ様、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。」

黒髪黒髪の整った顔のグロウ・ヘルは心配そうにメイナに声をかける。

その声で、メイナは兄を思い出した。

(兄さん。兄さんを助けないと。その為に残虐王へ近づいたのに。どうしてこんな事に。)


思わず、涙目になったメイナの手をグロウ・ヘルは掴み、声をかけた。

「メイナ様、こちらへどうぞ。」 

グロウに手を引かれ、たどり着いたのはグロウの執務室だった。落ち着いた色で統一された執務室には、数人の侍従が控えている。

革張りのソファに座らされ、メイナは反対側に座るグロウに話しかけられた。


「落ち着かれましたか?メイナ様。」


「ええ、重ね重ねすみません。助かりました。」

仮にも寵姫であるメイナが城内を泣きながら歩いていては良からぬ噂を呼ぶ。

目の前のお茶を飲み、メイナは一息ついた。

(どうして、あんなに動揺してしまったのだろう。エーリヒが誰を愛していようと私には関係ないのに。)

また考え込んでいたメイナにグロウが声をかける。

「その黒の指輪はエーリヒ様ですか?」

「えっ?」

メイナは驚いでグロウを見る。

「私はヘル国の正統な跡取りでした。戦争で父がエーリヒ・ランドルフに敗れ闇神の加護を奪われた為、私はヘル国を継ぐ事が出来なくなりました。今、属国となったヘル国の人質としてこの国に滞在し、ヘル国の執務をここで行っています。

私は神の加護こそありませんが、闇魔術においては、エーリヒ・ランドルフより詳しいと自負しています。」

「この指輪は、、、」

メイナは、黒の隷属指輪を隠すように押さえた。

「それは隷属指輪ですね。私ならそれを外す事ができます。」

「え?本当に?ですがこれは、エーリヒ様の魔術で。」


「ええ、大丈夫です。少し時間がかかりますが、隷属魔術を外す方法があります。ヘル国の私しかできないでしょう。闇神の加護は奪われましだが、闇の魔術を全て残虐王に奪われた訳ではありません。」

グロウ・ヘルは身を乗り出し、メイナの手を取り、その指輪に触れた。


「私に貴方の力になる機会をいただけませんか?」


グロウは、メイナの前に跪き、両手でメイナの手を持ち上げ、その指に恭しく口づけをした。


メイナの胸はドキドキと音を立てる。


(なに?なんだか、、、)


涙目になりながらグロウを見るメイナをゆっくりとグロウが抱きしめてきた。


メイナを包み込むように抱きしめてくるグロウにメイナは身を任せ、兄に抱きしめられているように錯覚をする。


さっきまで、エーリヒの事ばかり考えていたはずのメイナは、何も考えれなくなっていた。憂いが無くなったように穏やかな心地よさに包まれている。


「メイナ。また私の所へ来てくれますよね。」

「はい。グロウ様」

「いい子だね。メイナ。」


頭をグロウに撫でられながらメイナはうっとりと頷いていた。





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