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進言する側近

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皇帝の側近であるグロウはうんざりしていた。

また皇帝の病気が始まった。

昔の恋人のクロエの手がかりが見つかったから探しに行くというのだ。










グロウは代々皇帝の側近として使えるキーリニア伯爵家の嫡男として生まれた。

グロウは幼少期から次の皇帝の側近となるように教育を受けてきた。

グロウが仕える皇太子のザイラ・イルム・ガイアは、体が弱かった。季節の変わり目や疲労が溜まるとすぐに体調を崩してします。だが、学業はとても優秀で、グロウは皇太子のザイラに仕える事を誇りに思っていた。

成人し政務を手伝う皇太子の頭脳の優秀さに、帝国貴族達も次の皇帝はザイラだと信じていた。第2皇子のジークには放浪癖があり、皇城にいる事が少なくどこかで遊び惚けていると言われていた。

だが、グロウの主は突然毒を盛られ死んでしまった。

皇帝と皇太子が同時に倒れた帝国は混乱した。

居場所が分からない第2皇子ではなく、優秀なマイラー公爵家の嫡男ロブス・マイラーを次の皇帝にするべきと発言する貴族までいた。

このままでは内戦になる。だが、ガージニア王国が帝国への侵略を進めている今はそんな時期ではない。




しかし、皇太子には既に意識がない。




グロウには、どうする事も出来なかった。



そんな時に、ジーク第2皇子が帰還した。

黒髪で体格がいいジークの事を見た事がある貴族はほとんどいなかった。ジークの赤い瞳は猛禽類のようにギラギラと周囲を睨みつけていた。


瀕死の皇帝は、ジークを次の皇帝に指名した。


正式な後継者に指名されたジークに異論を唱えれるものはおらず、すぐに後継者争いは鎮火する。


無能で放浪癖がある第2皇子。


だれもがそう言っていたが、実情は全く違っていた。


ジーク皇帝は優秀だった。兄のザイラに劣らない知能、国を渡り歩いてきた体力と経験、商人を演じていた時に培った行動力と交渉力。


ジーク皇帝はすぐに、帝国を纏め、ガージニア王国へ攻め入った。


騎士団長ガーラック侯爵とジーク皇帝は旧知の仲らしい。


帝国軍がガージニア王国へ攻め入ると、すぐにガージニア王国は窮地に立たされ、1ヵ月で滅ぼされた。


だれも、ジーク皇帝の資質を疑う者はいない。


優秀で強いジーク皇帝を軍だけでなく、帝国民や貴族達も歓迎した。











グロウも以前の主であったザイラに変わってジーク皇帝へ忠誠を誓った。

グロウは、これほどの主に仕えられる事に喜びを感じていた。

正確で容赦がない執務。高い支持。市民の生活に配慮した施策。ジーク皇帝は、周囲の1歩も2歩も先を見通しているようだった。

グロウはジーク皇帝を心の底から尊敬していた。

ただ、1点だけを除いては、、、








グロウはウンザリしながら皇帝へ進言した。

「まさか、また探しに行かれるのですか?もうあれから2年も経ちます。」

ジーク皇帝は、グロウへ言う。

「こんどこそ、クロエだ。やっと見つけたかもしれない。」

グロウは言った。

「たかが侍女です。貴方が茶髪の娘を探していると帝国だけでなく、大陸全土に噂が広まっています。最近は帝国と交渉をするときは茶髪の娘を連れていけとまで言われているのですよ。ご自分の影響力を考えてください。」

ジークは言った。
「分かっている。政務は終わらせているはずだ。私がしばらく帝都を離れても問題ないだろう。」

声を荒げグロウは言った。

「そういう問題ではありません。

女一人を探すために、皇帝が商人に変装して大陸中を飛び回る事が問題なのです。

ですが、私が言っても無駄でしょう。

陛下、約束をしてください。今回で娘を探しに行く事を最後にすると。」





ジークはグロウを見た。
「最後とは?」

グロウは言った。
「今回の娘が違っていたら、諦めて皇妃を娶ってください。帝国内だけでなく国外からも沢山の縁談が申し込まれています。いつまでも皇帝に妃がいないのは問題です。」

ジークはしぶしぶ頷いた。
「分かった。帰ってきたら結婚相手を決める。それでいいだろう。」

グロウは頷いた。
「ええ、そうです。皇妃ができればまた忙しくなります。

過去の女を忘れる事もできるでしょう。

侍女の恋人を見つけても皇帝の貴方とは先はありません。

いい加減あきらめて、

あの娘の事は探さないでください。」








ジーク皇帝は、その赤い瞳で遥か遠くを見ながら言った。

「ああ、これで最後だ。約束しよう。」
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