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帰ってきた愛娘
しおりを挟む侍女達にせかされるようにして、アニータは生家のガーランド公爵家に帰った。
母の公爵夫人は、アニータを抱きしめて慰めてくれた。
「まあ、アニータ。こんなに窶れてしまってかわいそうに。」
「お母様。ロビンが、、、」
「いいのですよ。侍女達に話は聞いています。貴方はゆっくり休んで体調を回復させましょう。後の事は私たちに任せて頂戴。」
アニータは、結婚前と変わらない自室のベッドに横になった。
広くて高価な家具が備えられているアニータの自室は、グリセンコフ侯爵邸の部屋の2倍近い広さがある。
狭くてもグリセンコフ侯爵邸でアニータは幸せだった。
公爵家から付いて来ていた侍女達が侯爵邸の待遇に不満を持っている事に薄々感じていた。
ガーランド公爵家は、国内で有数の資産家だった。なにもかも規模が違う。
私を捨てて、ロビンは本当に大丈夫なのだろうか?
少し心配になったアニータだが、
ロビンにしがみつくように寄り添っていたクリスティーナを思い出し被りを振る。
ロビンを支えると言っていたではないか。クリスティーナが。
アニータは、涙を流しながら懐かしい自室で眠りについた。
その頃、ガーランド公爵夫妻は話し合っていた。
ガーランド公爵夫人が言う。
「かわいそうなアニータ。ねえ、貴方。ロビン・グリセンコフはクリスティーナと付き合っていなかったはずでしょ。噂だけだと、結婚前に調べた時は言っていたではありませんか?」
ガーランド公爵は言った。
「ああ、クリスティーナが、幼馴染のロビンを利用していたらしいな。グリセンコフ侯爵がクリスティーナとロビンの仲を許すはずがない。」
公爵夫人は言った。
「では、今回の事はアニータの誤解なのでしょうか?それにしては、かなり気に病んでいるようですわ。侍女達もロビン侯爵子息とクリスティーナという女がかなり親しそうにしているのを目撃したと言っていますし。」
公爵は微笑みながら言った。
「グリセンコフ侯爵家へ話し合いに行ってくるよ。離婚の手続きも進めないといけないからな。」
公爵夫人は、夫を疑い深い目で睨みつける。
「まさか、貴方、なにかしたのではないですよね。アニータの結婚には初め反対されていたでしょう。」
公爵は妻から目を逸らしながら言った。
「そんなはずないだろう。すぐに結婚には了承したはずだ。おかげで事業もうまく行っている。アニータとロビンの結婚生活が上手くいかなかったのは仕方がない。アニータは我が家で暫くゆっくりさせてやった方がいいだろう。」
公爵夫人は、何かを察したのか考え込んでいた。
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