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手を取る相手
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なんか大変なことになってるみたい。
つまり、正統派な弟とヤクザ適正が満点の兄が弐条会の次期当主になる為に争ってるって? よく聞くような話だが、当事者になると話は別だ。
だって、もしも正統派のくせに過激派な弐条弟がボスになったら治安とかヤバいんじゃないか? 今回の事件って弐条弟が絡んでるってことだろ?
そんなのボスが当主になってほしいに決まってんじゃん!
『正統派の動きが活発化しています。奴等は資金集めに武器の調達、おまけに人材も集め始めて徐々に勢力を拡大。
おまけに実績を上げているボスの手柄まで自分たちがやったと吹聴する始末。手に負えません』
『何が嫌って、上役共は正統なる血筋とかが大好きってことネ。多少弐条の名が汚れても正統派がやることにはクソ甘いんだから…やだネ~』
ということは、この争いはボスが劣勢なのか。
『ボスが戦いの土俵に立っていることが本来なら有り得ないことだからな。…いや、立つ為の条件が揃っての今ってことか』
戦いの土俵に立つ条件?
これは知らない人もいたのか身を乗り出す者が何人かいる。というより、知っていたのは刃斬と双子だけのようだ。
『一つは実績…これはあの古城での一件がより強く評価されている。弐条会の名を広めた功績としてな。
二つ目に一定層からの推薦。これも長年力を入れたこともあって支持する声は多数ある。そして、最後に…
オメガの番を見つけること。…つまり今、全ての条件が満たされているというわけだ』
オメガの、番…。
ガタ、と音を立てて隣に座っていた猿石が立ち上がる。その顔には怒りが滲み出ていて…だけど、それをどこに向けて良いかわからないような、そんな複雑な顔だった。
『…なんだ。猿』
そんな猿石に、ボスは冷静に言い放った。
『用がないなら大人しく座ってろ』
ギチギチと固く手を握る姿を見て、慌ててその手を掴んでソファに座るよう引っ張る。ハッとしたように俺を見た猿石は何かから守るように俺を抱えてソファに座った。
…優しい奴め。
『なるほど…。オメガの番は、次の世代を約束するという意思表明ですか』
『そういうことだ。これから過激派との衝突に、襲撃…色々と忙しくなる。こちらとしては早々にケリを付けたいからな。
各自、警戒を怠るなよ』
刃斬の言葉に頷く面々。フロアから出て仕事に向かう者もいる中、猿石は双子に呼び出されたので嫌々向かっている。
…そっか。皆、忙しくなるのか…俺も何か役に立てるのかな?
『宋平』
上の空になる中、ボスに呼ばれたので向かおうとしたら既に刃斬が来ていて抱っこで移動した。ボスに渡されてその膝に乗せられると、なんでここなんだよ…と身を固くする。
『お前の家には暫く監視がつく。兄貴たちにも同様に見張りがついて安全が確保されるまでは続ける』
『本当ですか?! 良かった…、ありがとうボス!』
家族全員が良いカモだ、なんて言われて不安しかなかったから嬉しい。多少は窮屈な思いをしても命には変えられない。
『俺もボスの為に働きますからね! いくら身内だからって言っても、ボスは俺の声に応えて助けてくれたんですから!
だから俺もボスを支持します! 暮らすならボスが守るシマで暮らした方が安全安心ですもん』
間違いないな、と熱弁するとボスは少し驚いたようにこちらを見つめてから蕩けるような甘い瞳を向けて微笑む。
ひっ、イケメン…!
あまりの破壊力に目を覆い隠すとボスの腕の中にすっぽりと収まる。
『助かる。ありがとよ、宋平』
『っ…はい! どんとこい、ですね!』
フロアからはすっかり人がいなくなり、俺とボスと刃斬だけになってしまった。そんな中で俺の腹が盛大に鳴り響くものだから刃斬が出前のメニューを手渡してくれる。
『わぁ…。冷やし中華だ。家だと具材を揃えるのが中々大変なんですよね』
『夏らしいじゃねぇか。それにするか?』
刃斬の後押しもあり冷やし中華に決めると、ボスにもメニューを見せる。するとボスも同じものを指差すのでお揃いになった。
…ふふ。ちょっと嬉しい…。
『家族への言い訳は既に兄貴が終えてるはずだ。話を合わせれば問題ないだろう。…かなり喧嘩腰だったらしいが性格が変わったのか?
資料だとそこまで好戦的ではないと記されていたはずなんだが…』
まさか弟が誑かされていると思っているから喧嘩腰だなんて言えず、事件のせいで気が立っていたのだろうと説明すると刃斬も納得してくれた。
やれやれ…、全く。そうだよ、そんなんじゃない。俺が未だに…一方的に忘れられないだけ。
この人は、自分の未来の為に相応しい人を選んだ。それだけの話だ。
『美味しい! ボス、美味しいですか?』
二人で冷やし中華を食べる。向かい側に座るボスに話し掛けたら丁度食べるのを中断して、こちらを見ていた。
『ああ、美味いな。…ゆっくり食えよ?』
ボスと一緒に美味しいものを共有できるのが嬉しくて仕方ない。元気よく返事をしてからまた食べ始める俺の前で、ボスも食べるのを再開した。
夕飯を食べ終え、二人が仕事をする間は邪魔にならないように遊び場に一人でいる。モコモコのラグの上に座ってテレビを点けてもらい、冷感ブランケットなるものまで渡されて暇を潰す。
…うーん、退屈だ。
テレビに集中出来なくてフロアを見渡す。ボスは書類の確認、刃斬はパソコンで作業中。邪魔をしてはいけないと、再びラグに座ってからパタンと倒れる。
あーあ、アニキだけでもいてくれたらなぁ。
『ん?』
そんな時。ふと起き上がって見るとエレベーターが開いていることに気付く。作業をする二人は気付いていないので、松葉杖を使って様子を見に行く。
しかしエレベーターの中に入った瞬間、まるで狙っていたかのように扉が閉じて動き出してしまった。
『え?! ちょ、QRコードは!?』
やっぱりこのエレベーター俺に恨みがあるだろ!
まるで罠にかけられたような気分で待っていれば、エレベーターは溜まり部屋のある階に止まる。取り敢えず出てみれば、丁度部屋から出て来た兄貴たちと目が合う。
『あれ?! 宋平じゃねーか。どうしたんだ?』
『おお、宋平! 足は大丈夫かー?』
一気に騒がしくなる空気が嬉しくて輪に入る。スーツやTシャツ、ジャージ姿の人もいる彼らが皆、ボスの為に一緒に戦う味方なんだと思うと愛おしさが止まない。休憩中の兄貴たちに招かれて部屋に入ると途中だった麻雀が雑に片付けられ、トランプか? UNOにするか? と聞かれて後者を選んだ。
『しかしお前は足ばっかりやられるなぁ』
『そろそろコレ、俺専用になるかもしれません』
松葉杖を掲げれば皆が笑って違ェねぇ! と笑って盛り上がる。
『抗争に入ったら油断すんなよ? お前の家にも何人かいるから、なんかあったらすぐ言え』
『え! 兄貴たちがいるんですか?』
『バカ。護衛でいるんだから、いつもみてーに笑顔で駆け寄って来んなよ?』
笑って雑に頭を撫でられると周りもその光景が浮かんだのか大爆笑だ。ゲームをしていない、テレビを見ている人やご飯を食べている人も苦笑い気味。
再び仕事に向かう人を見送ると、また休憩に入って来た人に驚かれて構ってもらう。人が少なくなると口数の少ない兄貴と共にゴルフを見る。ルールがわからないと言うと、ボソボソと…しかし丁寧に解説しつつフォームなどに口を出している。
『ゴルフ楽しい?』
『そう、だな…。まぁ、最近はやらないが良い気分転換になる。俺はあの音が好きだ』
『へぇー。確かに、良い音。ああいう音を出せるまで沢山練習が要るんだろうなぁ』
こう? と畳スペースでスイングのポーズをすると一気に残っていたメンバーがバタバタと駆け寄って来て強制的に終了させられる。
『おう、お転婆。オメェはもう騒ぐんじゃねぇ。俺らがボスに殺されんだろ』
『抗争入る前に身内でやり合ってちゃあなぁ』
『この抗争もある意味、身内争いだろ』
確かに。と皆がしみじみと頷くので一緒になって頷いていたら軽く頭を叩かれる。大人しくしろと言われて不貞腐れていたら、いつの間にか畳に寝転がったまま寝ていて誰かの上着を掛けてもらったような気がする。
『すんません、刃斬さん…。てっきり退屈だから許可を得て降りて来たもんだと』
『いや…、大丈夫だ。監視カメラで追って来たからな。ったく。どうやって抜け出したんだか。悪かったな、休んでる時に』
誰かに抱き上げられ、広い肩に寄り掛かる。知っている煙草の匂いにスッと掴まって再び眠る。
『ふ。遊んでもらって満足したらしいな。また頼む』
『はい! お疲れ様です! …は、すんません…』
心地良い揺れを感じているとエレベーターの音がして、耳に大好きな人の声が届く。
『…居たか』
『はい。溜まり部屋で遊び疲れたようで、寝ていました』
『ったく。遂に脱走まで覚えやがって』
呆れたような言い方だが、どこか優しい声色に安心して微睡めばそっと頭を撫でられてから移動して柔らかなベッドに下ろされる。軽い夏用の布団を掛けられて部屋が暗くなる。
『犬飼から連絡があり、何度か怪しい人間の目撃情報があります』
『防衛の強化が必要か。…黒河にも防衛側の任務を預ける。どうにか早めに向こうの戦力を削ぐぞ』
『御意』
遂に始まった本格的な抗争。
その苛烈さを知らない俺は、今はまだ夢の世界で幸せな時を過ごす。
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つまり、正統派な弟とヤクザ適正が満点の兄が弐条会の次期当主になる為に争ってるって? よく聞くような話だが、当事者になると話は別だ。
だって、もしも正統派のくせに過激派な弐条弟がボスになったら治安とかヤバいんじゃないか? 今回の事件って弐条弟が絡んでるってことだろ?
そんなのボスが当主になってほしいに決まってんじゃん!
『正統派の動きが活発化しています。奴等は資金集めに武器の調達、おまけに人材も集め始めて徐々に勢力を拡大。
おまけに実績を上げているボスの手柄まで自分たちがやったと吹聴する始末。手に負えません』
『何が嫌って、上役共は正統なる血筋とかが大好きってことネ。多少弐条の名が汚れても正統派がやることにはクソ甘いんだから…やだネ~』
ということは、この争いはボスが劣勢なのか。
『ボスが戦いの土俵に立っていることが本来なら有り得ないことだからな。…いや、立つ為の条件が揃っての今ってことか』
戦いの土俵に立つ条件?
これは知らない人もいたのか身を乗り出す者が何人かいる。というより、知っていたのは刃斬と双子だけのようだ。
『一つは実績…これはあの古城での一件がより強く評価されている。弐条会の名を広めた功績としてな。
二つ目に一定層からの推薦。これも長年力を入れたこともあって支持する声は多数ある。そして、最後に…
オメガの番を見つけること。…つまり今、全ての条件が満たされているというわけだ』
オメガの、番…。
ガタ、と音を立てて隣に座っていた猿石が立ち上がる。その顔には怒りが滲み出ていて…だけど、それをどこに向けて良いかわからないような、そんな複雑な顔だった。
『…なんだ。猿』
そんな猿石に、ボスは冷静に言い放った。
『用がないなら大人しく座ってろ』
ギチギチと固く手を握る姿を見て、慌ててその手を掴んでソファに座るよう引っ張る。ハッとしたように俺を見た猿石は何かから守るように俺を抱えてソファに座った。
…優しい奴め。
『なるほど…。オメガの番は、次の世代を約束するという意思表明ですか』
『そういうことだ。これから過激派との衝突に、襲撃…色々と忙しくなる。こちらとしては早々にケリを付けたいからな。
各自、警戒を怠るなよ』
刃斬の言葉に頷く面々。フロアから出て仕事に向かう者もいる中、猿石は双子に呼び出されたので嫌々向かっている。
…そっか。皆、忙しくなるのか…俺も何か役に立てるのかな?
『宋平』
上の空になる中、ボスに呼ばれたので向かおうとしたら既に刃斬が来ていて抱っこで移動した。ボスに渡されてその膝に乗せられると、なんでここなんだよ…と身を固くする。
『お前の家には暫く監視がつく。兄貴たちにも同様に見張りがついて安全が確保されるまでは続ける』
『本当ですか?! 良かった…、ありがとうボス!』
家族全員が良いカモだ、なんて言われて不安しかなかったから嬉しい。多少は窮屈な思いをしても命には変えられない。
『俺もボスの為に働きますからね! いくら身内だからって言っても、ボスは俺の声に応えて助けてくれたんですから!
だから俺もボスを支持します! 暮らすならボスが守るシマで暮らした方が安全安心ですもん』
間違いないな、と熱弁するとボスは少し驚いたようにこちらを見つめてから蕩けるような甘い瞳を向けて微笑む。
ひっ、イケメン…!
あまりの破壊力に目を覆い隠すとボスの腕の中にすっぽりと収まる。
『助かる。ありがとよ、宋平』
『っ…はい! どんとこい、ですね!』
フロアからはすっかり人がいなくなり、俺とボスと刃斬だけになってしまった。そんな中で俺の腹が盛大に鳴り響くものだから刃斬が出前のメニューを手渡してくれる。
『わぁ…。冷やし中華だ。家だと具材を揃えるのが中々大変なんですよね』
『夏らしいじゃねぇか。それにするか?』
刃斬の後押しもあり冷やし中華に決めると、ボスにもメニューを見せる。するとボスも同じものを指差すのでお揃いになった。
…ふふ。ちょっと嬉しい…。
『家族への言い訳は既に兄貴が終えてるはずだ。話を合わせれば問題ないだろう。…かなり喧嘩腰だったらしいが性格が変わったのか?
資料だとそこまで好戦的ではないと記されていたはずなんだが…』
まさか弟が誑かされていると思っているから喧嘩腰だなんて言えず、事件のせいで気が立っていたのだろうと説明すると刃斬も納得してくれた。
やれやれ…、全く。そうだよ、そんなんじゃない。俺が未だに…一方的に忘れられないだけ。
この人は、自分の未来の為に相応しい人を選んだ。それだけの話だ。
『美味しい! ボス、美味しいですか?』
二人で冷やし中華を食べる。向かい側に座るボスに話し掛けたら丁度食べるのを中断して、こちらを見ていた。
『ああ、美味いな。…ゆっくり食えよ?』
ボスと一緒に美味しいものを共有できるのが嬉しくて仕方ない。元気よく返事をしてからまた食べ始める俺の前で、ボスも食べるのを再開した。
夕飯を食べ終え、二人が仕事をする間は邪魔にならないように遊び場に一人でいる。モコモコのラグの上に座ってテレビを点けてもらい、冷感ブランケットなるものまで渡されて暇を潰す。
…うーん、退屈だ。
テレビに集中出来なくてフロアを見渡す。ボスは書類の確認、刃斬はパソコンで作業中。邪魔をしてはいけないと、再びラグに座ってからパタンと倒れる。
あーあ、アニキだけでもいてくれたらなぁ。
『ん?』
そんな時。ふと起き上がって見るとエレベーターが開いていることに気付く。作業をする二人は気付いていないので、松葉杖を使って様子を見に行く。
しかしエレベーターの中に入った瞬間、まるで狙っていたかのように扉が閉じて動き出してしまった。
『え?! ちょ、QRコードは!?』
やっぱりこのエレベーター俺に恨みがあるだろ!
まるで罠にかけられたような気分で待っていれば、エレベーターは溜まり部屋のある階に止まる。取り敢えず出てみれば、丁度部屋から出て来た兄貴たちと目が合う。
『あれ?! 宋平じゃねーか。どうしたんだ?』
『おお、宋平! 足は大丈夫かー?』
一気に騒がしくなる空気が嬉しくて輪に入る。スーツやTシャツ、ジャージ姿の人もいる彼らが皆、ボスの為に一緒に戦う味方なんだと思うと愛おしさが止まない。休憩中の兄貴たちに招かれて部屋に入ると途中だった麻雀が雑に片付けられ、トランプか? UNOにするか? と聞かれて後者を選んだ。
『しかしお前は足ばっかりやられるなぁ』
『そろそろコレ、俺専用になるかもしれません』
松葉杖を掲げれば皆が笑って違ェねぇ! と笑って盛り上がる。
『抗争に入ったら油断すんなよ? お前の家にも何人かいるから、なんかあったらすぐ言え』
『え! 兄貴たちがいるんですか?』
『バカ。護衛でいるんだから、いつもみてーに笑顔で駆け寄って来んなよ?』
笑って雑に頭を撫でられると周りもその光景が浮かんだのか大爆笑だ。ゲームをしていない、テレビを見ている人やご飯を食べている人も苦笑い気味。
再び仕事に向かう人を見送ると、また休憩に入って来た人に驚かれて構ってもらう。人が少なくなると口数の少ない兄貴と共にゴルフを見る。ルールがわからないと言うと、ボソボソと…しかし丁寧に解説しつつフォームなどに口を出している。
『ゴルフ楽しい?』
『そう、だな…。まぁ、最近はやらないが良い気分転換になる。俺はあの音が好きだ』
『へぇー。確かに、良い音。ああいう音を出せるまで沢山練習が要るんだろうなぁ』
こう? と畳スペースでスイングのポーズをすると一気に残っていたメンバーがバタバタと駆け寄って来て強制的に終了させられる。
『おう、お転婆。オメェはもう騒ぐんじゃねぇ。俺らがボスに殺されんだろ』
『抗争入る前に身内でやり合ってちゃあなぁ』
『この抗争もある意味、身内争いだろ』
確かに。と皆がしみじみと頷くので一緒になって頷いていたら軽く頭を叩かれる。大人しくしろと言われて不貞腐れていたら、いつの間にか畳に寝転がったまま寝ていて誰かの上着を掛けてもらったような気がする。
『すんません、刃斬さん…。てっきり退屈だから許可を得て降りて来たもんだと』
『いや…、大丈夫だ。監視カメラで追って来たからな。ったく。どうやって抜け出したんだか。悪かったな、休んでる時に』
誰かに抱き上げられ、広い肩に寄り掛かる。知っている煙草の匂いにスッと掴まって再び眠る。
『ふ。遊んでもらって満足したらしいな。また頼む』
『はい! お疲れ様です! …は、すんません…』
心地良い揺れを感じているとエレベーターの音がして、耳に大好きな人の声が届く。
『…居たか』
『はい。溜まり部屋で遊び疲れたようで、寝ていました』
『ったく。遂に脱走まで覚えやがって』
呆れたような言い方だが、どこか優しい声色に安心して微睡めばそっと頭を撫でられてから移動して柔らかなベッドに下ろされる。軽い夏用の布団を掛けられて部屋が暗くなる。
『犬飼から連絡があり、何度か怪しい人間の目撃情報があります』
『防衛の強化が必要か。…黒河にも防衛側の任務を預ける。どうにか早めに向こうの戦力を削ぐぞ』
『御意』
遂に始まった本格的な抗争。
その苛烈さを知らない俺は、今はまだ夢の世界で幸せな時を過ごす。
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