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貴方の為のバースデイ
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無事に海の日が終わると、車に乗ってからの記憶がない。気絶するように眠ってしまったから何も覚えていないらしい。体力が追い付かなかったようだ。
目を覚ましたら真っ暗な部屋の中で、一人ベッドに横になっていた。記憶の整理に手間取ったが、ベッドから微かにするボスの匂いに気付く。
『花…』
枕元に仕事用のスマホはあったが、周囲を照らしても花がない。大切な花束が何処かに行ってしまった。
探さないと。アレは大事なものなのに。
時刻は深夜二時。ベッドのすぐ近くに松葉杖があり、足も丁寧に治療されていた。きっと寝ている間に辰見が処置をしてくれたんだろうと胸を撫で下ろす。
真っ暗な部屋だが、もう構造は理解している。松葉杖を使ってなんとか部屋を出るとボスのフロアはいつもより灯りを一つ落として静かだ。シンとしたフロアには誰もいない。
『花は、…花は何処に…』
目が熱くなりバランサーの力を遺憾なく発揮した。何としてもでも探し出したい。そんな必死な想いで五感をフル稼働。建物全体にバランサーの力を流し込む。
…うーん。やっぱりアジトは広い。せめてフロアから出れたら…。
『あ。これって』
どうしようかとエレベーターの前で悩んでいたら一件のメールが入っていた。刃斬からのそれは、急な仕事が入ったから待っていろとのこと。そして何かあった時の為にと使い捨てのQRコードが添えられていた。
QRコードを使ってエレベーターに入る。しかし、何処に行ったものかと悩んでいた、その時だ。
【一定時間の滞在を確認。…移動を開始します】
え?
階数のボタンと睨めっこしていたら、突然エレベーターが動き出す。まだボタンは何も押していない。
『は?! ちょ、待てこのポンコツ!』
慌てて他のボタンを押すが、反応はない。それどころか上から下へボタンが光っていて若干の恐怖すら感じる。上に向かっているのか、下りているのかもよくわからない。
半泣き状態の俺を連れたエレベーターは、とある階で止まるが電子掲示板には何も表示されていない。
【入室には虹彩認証、指紋認証をお願いします】
…なに?
【カメラに向かって顔を向けて下さい。開くボタンを親指で強く押して下さい】
言われるがままに顔を向けてから親指で強くボタンを押す。どうせ無駄だろうと投げやりでやっていたが、暫くしてから扉を開錠するような音がしてからエレベーターが静かに開く。
やべー部屋開いちゃったかもしれない。
『暗いな』
謎の部屋はボスのフロアとは比べ物にならないレベルで真っ暗だ。外の光とか、太陽光を入れる気はなし。何も見えないからその場に立ち竦むと何か軽快な音が流れる。
【初めまして。貴方の為のバースデイ。ようこそ、ご要望にお応えして室内を点灯致します】
『は?!』
突如として響いた機械音にビビるも、それから一斉に部屋の電気が点灯して更にビビる。広々としたそのフロアは今までとは雰囲気が違ってどこか和を感じる。壁は全体的に黒なんだけどその中にも金色の模様なんかが入っていて美しい。しかも、よく見れば畳なもんだから慌てて靴を脱ぐ。
【私は人工知能、サポートAI。より良い今日を、より良い明日を。産まれてきたことに感謝を。
気軽にディーちゃん、と。お呼びください】
『は、初めまして…』
【はい。初めまして、頂きました。どうかお名前もお聞かせ願います】
なんかホストみたいだな。
中性的な声なのに、どこかお茶目なAI。何処から俺を認識しているんだろうと天井を見たらカメラらしきものがある。
『俺は常春宋平。よろしくな、ディーちゃん』
【宋平様。不束なAIですが、どうぞ宜しくお願いします】
こちらこそご丁寧に。
しかし、どうしたものかとフロアを眺める。明らかに引き返した方が良さそうな雰囲気だが…なんということだ。
このフロアに、俺の探し物があるらしい。
『…ディーちゃん。此処って入っても良いところ?』
【どうぞ、ご遠慮なく。ごゆっくりお過ごしください】
良いのか…。
松葉杖を持っていたハンカチで拭いてから、恐る恐る足を踏み入れる。調度品は大体が暗い色で纏められていて和風寄り。高そうな家具や襖など俺の場違い感が激しい。
そんな中、やっとの思いで俺の花束を見つけることが出来た。容器は立派な花瓶に変わっていたが間違いない。
『ディーちゃん。じゃあ、俺は帰るね』
【お待ちください。…検索中、検索中。
宋平様。良い部屋がございます。是非、ご覧ください。そちらの大きな鳥の絵がある襖にございます】
『良い部屋? …本当に入っても良いのか?』
花瓶を一旦置いてからヨタヨタと歩くと、ディーちゃんに誘われるがまま襖の前に行く。鳥とは言っても両翼を広げた尾の長い鳥。現実にいるかはわからないが、もしかしたら架空の伝説の鳥、鳳凰なんじゃないかと思う。
ゆっくりと襖を開けてから俺はその向こうにあった光景を目にする。
『此処は…』
そこはなんてことない、部屋がある。だが普通の部屋ではなく…なんというか誰かの為に用意されたような部屋。和風の雰囲気を壊さない天蓋付きの大きなベッドに生活に必要な家具や家電の全てが整えられているが、少し可愛らしいという印象を与える家具が多い。
花や小動物の絵がふんだんに使われ、まるで…誰かがいなくなってそのままにしたような部屋。
たまにしか掃除をしないせいか、少し埃っぽいのもある。
『…なんだ、この部屋』
中に入ってみるとベッドの近くにあるサイドチェストの上に壊れた容器があった。蓋が外れて放置されたそれに手を伸ばして蓋を外し、息を呑む。
そこには、オメガが使うチョーカーが入っていた。オメガの為のチョーカーを扱う老舗のロゴが入っていてデザインも凄くカッコ良くて高級品だと一目でわかる。
…まさか、これ…。
『…ディーちゃん。一つ、教えてほしいんだけど』
【はい。何なりと】
声が震えるのは、もう既に確信に近いものを持っているから。
『このフロアは、誰のものなの?』
【このフロアの主人は弐条様です。私の主人もまた、彼です。より良い今日を、より良い明日を。産まれてきたことに感謝を。
貴方をサポートするAI。何なりとお申し付けください】
ああ。と…気持ちに蓋をするのを再現するように、チョーカーの蓋を閉めた。零れそうになる涙を拭いながら出口まで足早に向かう。
花は、持って行けない。
『帰るよ。さようなら、ディーちゃん。俺は多分二度とこの部屋には来ないけどお話できて楽しかった。同じくボスの身を守る者として会えて良かったよ』
【…二度と、来ない…。
了承。私も、素晴らしい一時でした。お身体にお気を付けて、いってらっしゃいませ】
何故か少し悲しげだったような気がするけど、恐らくボスのことだ。滅多に他人なんか入れないからバースデイが張り切って接待をしたんだろう。
だけど、二度と来れないのは事実だ。
『…さようなら』
自分に言い聞かせるようにエレベーターに乗り込めば、フロアがどんどん消灯されていく光景を眺めつつ扉が閉まる。
元の仕事用のフロアに戻れば、フラフラしながらベッドへと戻った。
『なんで…っ、バカっ。ボスの大馬鹿…!』
オメガがいたんだ。今の許嫁ではない、きっとボスが心から愛していたであろうオメガ。それが覚のような死別か、または家柄のせいで引き裂かれたか…だが間違いなく彼には愛する人がいる。
でなきゃ、あんな部屋は作らない。自分のスペースをわざわざ割いてまで作られた専用の部屋。ずっと前からある、伴侶の部屋。
ねぇ、ボス…形だけでも貴方の許嫁になった羽魅と、心から愛したオメガがいた貴方の心のどこに、俺はいるのかな。
『っ、そもそも…揶揄われてただけかもな…』
吐き捨てるようにそう言えば、途端に溢れる思い出の数々。あまりにも新しく、強烈に刻まれたそれらに俺は声を上げて泣きながらベッドに蹲る。
どうして、なんで?
思い浮かぶのはそればかり。こんなに気持ちを大きくしてから、絶望に叩き落とすなんてタチが悪い。
流石はヤクザ。汚い、あまりにも汚いじゃないか。
『…最低。バカ、泥棒、あんぽんたん、…きらい。大っ嫌いだ…』
泣き腫らして眠る中
明け方、一人の男が部屋に入って来たことにも気付かずに寝ていた。
『傷が痛んだのか…?』
腫れた目元を優しく撫でて、落ちた布団をしっかりと掛けてから男は再び頬を撫でてから触れるだけのキスを瞼に落とす。
『…おやすみ』
目立つ場所に花を飾ってから部屋を出た男を、俺は一晩中…夢の中で罵倒するのだった。
.
目を覚ましたら真っ暗な部屋の中で、一人ベッドに横になっていた。記憶の整理に手間取ったが、ベッドから微かにするボスの匂いに気付く。
『花…』
枕元に仕事用のスマホはあったが、周囲を照らしても花がない。大切な花束が何処かに行ってしまった。
探さないと。アレは大事なものなのに。
時刻は深夜二時。ベッドのすぐ近くに松葉杖があり、足も丁寧に治療されていた。きっと寝ている間に辰見が処置をしてくれたんだろうと胸を撫で下ろす。
真っ暗な部屋だが、もう構造は理解している。松葉杖を使ってなんとか部屋を出るとボスのフロアはいつもより灯りを一つ落として静かだ。シンとしたフロアには誰もいない。
『花は、…花は何処に…』
目が熱くなりバランサーの力を遺憾なく発揮した。何としてもでも探し出したい。そんな必死な想いで五感をフル稼働。建物全体にバランサーの力を流し込む。
…うーん。やっぱりアジトは広い。せめてフロアから出れたら…。
『あ。これって』
どうしようかとエレベーターの前で悩んでいたら一件のメールが入っていた。刃斬からのそれは、急な仕事が入ったから待っていろとのこと。そして何かあった時の為にと使い捨てのQRコードが添えられていた。
QRコードを使ってエレベーターに入る。しかし、何処に行ったものかと悩んでいた、その時だ。
【一定時間の滞在を確認。…移動を開始します】
え?
階数のボタンと睨めっこしていたら、突然エレベーターが動き出す。まだボタンは何も押していない。
『は?! ちょ、待てこのポンコツ!』
慌てて他のボタンを押すが、反応はない。それどころか上から下へボタンが光っていて若干の恐怖すら感じる。上に向かっているのか、下りているのかもよくわからない。
半泣き状態の俺を連れたエレベーターは、とある階で止まるが電子掲示板には何も表示されていない。
【入室には虹彩認証、指紋認証をお願いします】
…なに?
【カメラに向かって顔を向けて下さい。開くボタンを親指で強く押して下さい】
言われるがままに顔を向けてから親指で強くボタンを押す。どうせ無駄だろうと投げやりでやっていたが、暫くしてから扉を開錠するような音がしてからエレベーターが静かに開く。
やべー部屋開いちゃったかもしれない。
『暗いな』
謎の部屋はボスのフロアとは比べ物にならないレベルで真っ暗だ。外の光とか、太陽光を入れる気はなし。何も見えないからその場に立ち竦むと何か軽快な音が流れる。
【初めまして。貴方の為のバースデイ。ようこそ、ご要望にお応えして室内を点灯致します】
『は?!』
突如として響いた機械音にビビるも、それから一斉に部屋の電気が点灯して更にビビる。広々としたそのフロアは今までとは雰囲気が違ってどこか和を感じる。壁は全体的に黒なんだけどその中にも金色の模様なんかが入っていて美しい。しかも、よく見れば畳なもんだから慌てて靴を脱ぐ。
【私は人工知能、サポートAI。より良い今日を、より良い明日を。産まれてきたことに感謝を。
気軽にディーちゃん、と。お呼びください】
『は、初めまして…』
【はい。初めまして、頂きました。どうかお名前もお聞かせ願います】
なんかホストみたいだな。
中性的な声なのに、どこかお茶目なAI。何処から俺を認識しているんだろうと天井を見たらカメラらしきものがある。
『俺は常春宋平。よろしくな、ディーちゃん』
【宋平様。不束なAIですが、どうぞ宜しくお願いします】
こちらこそご丁寧に。
しかし、どうしたものかとフロアを眺める。明らかに引き返した方が良さそうな雰囲気だが…なんということだ。
このフロアに、俺の探し物があるらしい。
『…ディーちゃん。此処って入っても良いところ?』
【どうぞ、ご遠慮なく。ごゆっくりお過ごしください】
良いのか…。
松葉杖を持っていたハンカチで拭いてから、恐る恐る足を踏み入れる。調度品は大体が暗い色で纏められていて和風寄り。高そうな家具や襖など俺の場違い感が激しい。
そんな中、やっとの思いで俺の花束を見つけることが出来た。容器は立派な花瓶に変わっていたが間違いない。
『ディーちゃん。じゃあ、俺は帰るね』
【お待ちください。…検索中、検索中。
宋平様。良い部屋がございます。是非、ご覧ください。そちらの大きな鳥の絵がある襖にございます】
『良い部屋? …本当に入っても良いのか?』
花瓶を一旦置いてからヨタヨタと歩くと、ディーちゃんに誘われるがまま襖の前に行く。鳥とは言っても両翼を広げた尾の長い鳥。現実にいるかはわからないが、もしかしたら架空の伝説の鳥、鳳凰なんじゃないかと思う。
ゆっくりと襖を開けてから俺はその向こうにあった光景を目にする。
『此処は…』
そこはなんてことない、部屋がある。だが普通の部屋ではなく…なんというか誰かの為に用意されたような部屋。和風の雰囲気を壊さない天蓋付きの大きなベッドに生活に必要な家具や家電の全てが整えられているが、少し可愛らしいという印象を与える家具が多い。
花や小動物の絵がふんだんに使われ、まるで…誰かがいなくなってそのままにしたような部屋。
たまにしか掃除をしないせいか、少し埃っぽいのもある。
『…なんだ、この部屋』
中に入ってみるとベッドの近くにあるサイドチェストの上に壊れた容器があった。蓋が外れて放置されたそれに手を伸ばして蓋を外し、息を呑む。
そこには、オメガが使うチョーカーが入っていた。オメガの為のチョーカーを扱う老舗のロゴが入っていてデザインも凄くカッコ良くて高級品だと一目でわかる。
…まさか、これ…。
『…ディーちゃん。一つ、教えてほしいんだけど』
【はい。何なりと】
声が震えるのは、もう既に確信に近いものを持っているから。
『このフロアは、誰のものなの?』
【このフロアの主人は弐条様です。私の主人もまた、彼です。より良い今日を、より良い明日を。産まれてきたことに感謝を。
貴方をサポートするAI。何なりとお申し付けください】
ああ。と…気持ちに蓋をするのを再現するように、チョーカーの蓋を閉めた。零れそうになる涙を拭いながら出口まで足早に向かう。
花は、持って行けない。
『帰るよ。さようなら、ディーちゃん。俺は多分二度とこの部屋には来ないけどお話できて楽しかった。同じくボスの身を守る者として会えて良かったよ』
【…二度と、来ない…。
了承。私も、素晴らしい一時でした。お身体にお気を付けて、いってらっしゃいませ】
何故か少し悲しげだったような気がするけど、恐らくボスのことだ。滅多に他人なんか入れないからバースデイが張り切って接待をしたんだろう。
だけど、二度と来れないのは事実だ。
『…さようなら』
自分に言い聞かせるようにエレベーターに乗り込めば、フロアがどんどん消灯されていく光景を眺めつつ扉が閉まる。
元の仕事用のフロアに戻れば、フラフラしながらベッドへと戻った。
『なんで…っ、バカっ。ボスの大馬鹿…!』
オメガがいたんだ。今の許嫁ではない、きっとボスが心から愛していたであろうオメガ。それが覚のような死別か、または家柄のせいで引き裂かれたか…だが間違いなく彼には愛する人がいる。
でなきゃ、あんな部屋は作らない。自分のスペースをわざわざ割いてまで作られた専用の部屋。ずっと前からある、伴侶の部屋。
ねぇ、ボス…形だけでも貴方の許嫁になった羽魅と、心から愛したオメガがいた貴方の心のどこに、俺はいるのかな。
『っ、そもそも…揶揄われてただけかもな…』
吐き捨てるようにそう言えば、途端に溢れる思い出の数々。あまりにも新しく、強烈に刻まれたそれらに俺は声を上げて泣きながらベッドに蹲る。
どうして、なんで?
思い浮かぶのはそればかり。こんなに気持ちを大きくしてから、絶望に叩き落とすなんてタチが悪い。
流石はヤクザ。汚い、あまりにも汚いじゃないか。
『…最低。バカ、泥棒、あんぽんたん、…きらい。大っ嫌いだ…』
泣き腫らして眠る中
明け方、一人の男が部屋に入って来たことにも気付かずに寝ていた。
『傷が痛んだのか…?』
腫れた目元を優しく撫でて、落ちた布団をしっかりと掛けてから男は再び頬を撫でてから触れるだけのキスを瞼に落とす。
『…おやすみ』
目立つ場所に花を飾ってから部屋を出た男を、俺は一晩中…夢の中で罵倒するのだった。
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