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夏の支度
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ボスと喧嘩した。
蒼二と喧嘩をして、立て続けにボスとも。もう俺はバランサーの名前を返上した方が良いのかもしれない。こんなブレブレの世界秩序、不安過ぎる。
『俺は悪くない!! …はず、でもやっぱり余計な気を回したのかな…』
『ソーヘーめっちゃブレてるー』
休日。そう、今日は完全なオフ。だけど目の前にいるのが猿石なのはある理由がある。今日は街に買い物にやって来た。
買いに来た物はシンプルに一つ。水着だ。
スクール水着しかないと答えた俺と、そもそもそんなものはないと答えた猿石に犬飼さんからさっさと買って来いと指示を受けた。
因みに水着の代金は貰えた。帰りに美味しいもの食べておいでー、と犬飼さんに万札を握らされたのだ。
『日差し強いけど大丈夫?』
『平気! サングラスあるし、ソーヘーいるし!』
俺は太陽に対してなんの効果もないよ。
しかし先生から予備の目薬を預かっているので問題ない。何より、今日は会った時から猿石の機嫌が最高潮。お出掛けだけが目的の外出が初だから、楽しいのかなと勝手に想像する。
『よし! 早く目的の物を買って、後は遊ぼうアニキ!』
『おう!』
近くのショッピングモールまで電車で向かい、一緒に水着を見に行く。年々暑さが厳しくなるが夏が来るワクワクした気持ちは止まない。
今日はTシャツに半ズボンを履いてサンダルで来たのだが、猿石は黒いタンクトップにカーキ色のズボンだ。立派な筋肉にイケメンなもんだから電車ではあらゆる視線が向いていたが本人はまるっきり無視。慣れているんだろう。
本人曰く、白い服はすぐに代紋が透けるから基本黒とかしか着ないそうだ。
『涼しい~。でも結構人が多いね。やっぱ皆、涼しいとこで過ごしたいもんなぁ』
ショッピングモール内は冷房が効いていて心地良いが土曜日ということもあり中々の混雑だった。猿石のような目立つ連れがいれば何の問題もないな、と歩き出そうとしたら急に右手が繋がれる。
『どした?』
当然のように手を繋がれて驚くが、猿石は何の疑問もなく…むしろ行き先は何処かという顔をしている。
『なんでもない! こっちだよ、アニキ!』
人混みでも猿石は大活躍だ。当然のように周囲と頭一つ分の身長差があるから相手が驚いて避けるようなレベル。身長に加えて幅や圧も違うからそれに拍車が掛かる。
『このスポーツ店が種類豊富って聞いたんだ。良いのあるかな』
店内で商品を見て回ると良い感じの水着を見つけたのでそれに決めた。無難な紺の膝丈のだ。これなら多少は成長しても長く履けるはず。
『あれ。アニキどこ行った?』
色を見ていたら猿石とはぐれてしまった。そこそこ多いお客さんの間を縫って移動しつつ店内を確認する。すると既に猿石は自分のを買ったようで店の前にあるベンチに袋を手にして座っていた。
早ぁい…。
長い足を組んでポケットに手を突っ込んだまま座る彼はあまりにも目立っている。早く行かなければと会計を済ませて来てみれば、もう騒ぎが起こっていた。
同年代くらいの女の子二人組が猿石と揉めている。慌てて近くまで行くと猿石が彼女たちに何か言っているようで耳を澄ます。
『だから。今ここでそのスマホ自分でぶっ壊すか、誠意込めた謝罪か。ハッキリしろって言ってんだろ』
無表情で淡々と話す猿石に女子高生らしき二人はぶるぶると震えていて、周囲は猿石の風貌から決して目を合わせないよう足早に去る。
なーにやってんだ、あの人は。
『早くしてくんね。こっちも暇じゃねーんだけど』
苛々し出しているようで僅かに滲むアルファの気配に相手の子たちはもう泣きそうだ。とても当人たちでは済まないだろうと仲裁に入る。
『こらっ。一般人の子に、そんな凄んだら可哀想でしょ。ごめんなさい、この人ちょっと言い方がキツくって』
『ソーヘー! 遅ぇぞ、待ちくたびれた!』
バランサーとなってアルファの気配を打ち消すように現れると猿石が笑顔で飛び付いてくる。周囲は急に現れた普通っぽい男の登場に驚くもそこはバランサー。
自然と溶け込むことができる。
『オレ悪くねぇよ。アイツらが勝手に人のこと盗撮すっから』
『盗撮…? あー…なるほど』
なんとなく事情がわかり、女の子二人に向き合う。彼女たちは怯えたように後退るが刺激しないように穏やかに話し掛ける。
『写真撮ったのは本当かな?』
優しく問いかけると、二人の内の一人が頷き何度も謝罪を口にする。
『そっか。じゃあ、フォルダの写真を消してくれるかな。ちゃんとそれを見届けたらこっちも何の問題もないから。写真撮られるの嫌なんだって』
すぐに要求を飲んだ彼女はスマホを操作して写真を消してから謝ってくれた。が、当の本人は特に何も言わずに俺に引っ付いているので殆ど俺が対応した。自分の高校を明かすと彼女たちも学校を教えてくれて、姉妹校だと少し盛り上がってから別れを言って解散した。
『よし。これでもしも写真を復元してどこかに載せても学校がわかれば特定は出来るね』
『…あーあ。ソーヘーがすっかりこっちに染まっちまった。まぁ、そーゆうとこも好きだけど』
それからショッピングモールで一緒に家具なんかも見て回った。テーブルよりもお座敷タイプが良いとか、冬はコタツが欲しいとか色々話して実物を見るのは凄く楽しい。
『お昼ご飯、なに食べたい?』
『ソーヘーの好きなとこで良い』
ならばと、少し表通りから外れた場所にあるファミレスに入る。土曜日でもかなり落ち着いた雰囲気なのでゆっくり出来るし、何より。
『今限定のアイスが出てて! 凄く食べたかったんだ!』
興奮気味にデザートのページを見せると猿石は納得したように呼び出しボタンを押す。俺はハンバーグ定食、猿石はチキンソテーランチを頼んで食後には二人でアイスを頼む。
『美味しい…! はぁ。やっぱり、限定トロピカル太陽増し増しアイス~笑顔とマンゴーを添えて~…最高だった。もう一回食べに来たい』
『ん。名前以外は文句ない』
久し振りの外食にテンションは上がり、やはり外で食べるアイスも最高で言う事なし。そのはずだった。でも、目の前に座る一足先にアイスを食べ終えた猿石は、心配そうに俺を見ていた。
『…大丈夫か』
何が? なんの問題もないだろ。買い物は無事に済ませたし、問題が少しあったけどすぐ解決。一緒に食べた初めての猿石との外食に食べたかったアイスまで。
最高の休日だと答えたのに、猿石の心配そうな顔は晴れない。
『ふとした時に、泣きそうな顔してる。ボスと喧嘩したの気にしてんだろ?』
…当然だ。なんで我慢出来なかったのかって、俺はずっと後悔している。あの時普通に帰っていたらきっと、こんな風に悩むこともなかったのに。
『…ボスに口答えしちゃった。俺は雇われの身で、ボスの温情で働かせてもらってるのに…暴言吐いて逃げ出して…
出て行けって、言われたらどうしようっ…もう要らないって言われたら』
所詮俺たちを繋ぐものなんて、契約書一枚。
『でもまだ言われてねーんだろ』
甘えん坊で、傍若無人で…世話の焼ける身勝手代表みたいなアニキなのに。
頬杖をついて俺に手を伸ばす彼の言葉は、いつだって説得力がある。魔法の言葉。
『即断即決のボスが、まだそれをしてねーってことは現状が正解ってことだろ。つまりボスが悪くてソーヘーは悪くない。または気にしてねぇ。
な? だから泣くなよ。俺は泣き虫の相手は苦手だ。どーして良いかわかんねー。泣き止ませるなんてやったことねーもん。それはボスとか金魚の糞の仕事。
俺は笑ってくれるソーヘーの傍にいる、しか…わかんねーよ』
ポンポン、と頭を軽く叩く猿石はそう言って笑った。だから釣られるように笑えば彼は満足そうに満面の笑みを浮かべる。
心が軽くなった気がして、猿石に相談というか不安を吐露して良かったと心から思う。
先を歩く彼に追い付いて、俺から手を繋いで一緒に歩くと立ち止まった猿石に抱っこをされたかと思えばそのまま肩車をされてしまう。
いつかのような肩車なのに、あの時とは比べ物にならないくらいお互いに笑顔でそのままはしゃいで帰った。
しかし、その夜。
俺はそんな彼らと敵対することになるのだが…今はまだそのことを誰も知らない。
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蒼二と喧嘩をして、立て続けにボスとも。もう俺はバランサーの名前を返上した方が良いのかもしれない。こんなブレブレの世界秩序、不安過ぎる。
『俺は悪くない!! …はず、でもやっぱり余計な気を回したのかな…』
『ソーヘーめっちゃブレてるー』
休日。そう、今日は完全なオフ。だけど目の前にいるのが猿石なのはある理由がある。今日は街に買い物にやって来た。
買いに来た物はシンプルに一つ。水着だ。
スクール水着しかないと答えた俺と、そもそもそんなものはないと答えた猿石に犬飼さんからさっさと買って来いと指示を受けた。
因みに水着の代金は貰えた。帰りに美味しいもの食べておいでー、と犬飼さんに万札を握らされたのだ。
『日差し強いけど大丈夫?』
『平気! サングラスあるし、ソーヘーいるし!』
俺は太陽に対してなんの効果もないよ。
しかし先生から予備の目薬を預かっているので問題ない。何より、今日は会った時から猿石の機嫌が最高潮。お出掛けだけが目的の外出が初だから、楽しいのかなと勝手に想像する。
『よし! 早く目的の物を買って、後は遊ぼうアニキ!』
『おう!』
近くのショッピングモールまで電車で向かい、一緒に水着を見に行く。年々暑さが厳しくなるが夏が来るワクワクした気持ちは止まない。
今日はTシャツに半ズボンを履いてサンダルで来たのだが、猿石は黒いタンクトップにカーキ色のズボンだ。立派な筋肉にイケメンなもんだから電車ではあらゆる視線が向いていたが本人はまるっきり無視。慣れているんだろう。
本人曰く、白い服はすぐに代紋が透けるから基本黒とかしか着ないそうだ。
『涼しい~。でも結構人が多いね。やっぱ皆、涼しいとこで過ごしたいもんなぁ』
ショッピングモール内は冷房が効いていて心地良いが土曜日ということもあり中々の混雑だった。猿石のような目立つ連れがいれば何の問題もないな、と歩き出そうとしたら急に右手が繋がれる。
『どした?』
当然のように手を繋がれて驚くが、猿石は何の疑問もなく…むしろ行き先は何処かという顔をしている。
『なんでもない! こっちだよ、アニキ!』
人混みでも猿石は大活躍だ。当然のように周囲と頭一つ分の身長差があるから相手が驚いて避けるようなレベル。身長に加えて幅や圧も違うからそれに拍車が掛かる。
『このスポーツ店が種類豊富って聞いたんだ。良いのあるかな』
店内で商品を見て回ると良い感じの水着を見つけたのでそれに決めた。無難な紺の膝丈のだ。これなら多少は成長しても長く履けるはず。
『あれ。アニキどこ行った?』
色を見ていたら猿石とはぐれてしまった。そこそこ多いお客さんの間を縫って移動しつつ店内を確認する。すると既に猿石は自分のを買ったようで店の前にあるベンチに袋を手にして座っていた。
早ぁい…。
長い足を組んでポケットに手を突っ込んだまま座る彼はあまりにも目立っている。早く行かなければと会計を済ませて来てみれば、もう騒ぎが起こっていた。
同年代くらいの女の子二人組が猿石と揉めている。慌てて近くまで行くと猿石が彼女たちに何か言っているようで耳を澄ます。
『だから。今ここでそのスマホ自分でぶっ壊すか、誠意込めた謝罪か。ハッキリしろって言ってんだろ』
無表情で淡々と話す猿石に女子高生らしき二人はぶるぶると震えていて、周囲は猿石の風貌から決して目を合わせないよう足早に去る。
なーにやってんだ、あの人は。
『早くしてくんね。こっちも暇じゃねーんだけど』
苛々し出しているようで僅かに滲むアルファの気配に相手の子たちはもう泣きそうだ。とても当人たちでは済まないだろうと仲裁に入る。
『こらっ。一般人の子に、そんな凄んだら可哀想でしょ。ごめんなさい、この人ちょっと言い方がキツくって』
『ソーヘー! 遅ぇぞ、待ちくたびれた!』
バランサーとなってアルファの気配を打ち消すように現れると猿石が笑顔で飛び付いてくる。周囲は急に現れた普通っぽい男の登場に驚くもそこはバランサー。
自然と溶け込むことができる。
『オレ悪くねぇよ。アイツらが勝手に人のこと盗撮すっから』
『盗撮…? あー…なるほど』
なんとなく事情がわかり、女の子二人に向き合う。彼女たちは怯えたように後退るが刺激しないように穏やかに話し掛ける。
『写真撮ったのは本当かな?』
優しく問いかけると、二人の内の一人が頷き何度も謝罪を口にする。
『そっか。じゃあ、フォルダの写真を消してくれるかな。ちゃんとそれを見届けたらこっちも何の問題もないから。写真撮られるの嫌なんだって』
すぐに要求を飲んだ彼女はスマホを操作して写真を消してから謝ってくれた。が、当の本人は特に何も言わずに俺に引っ付いているので殆ど俺が対応した。自分の高校を明かすと彼女たちも学校を教えてくれて、姉妹校だと少し盛り上がってから別れを言って解散した。
『よし。これでもしも写真を復元してどこかに載せても学校がわかれば特定は出来るね』
『…あーあ。ソーヘーがすっかりこっちに染まっちまった。まぁ、そーゆうとこも好きだけど』
それからショッピングモールで一緒に家具なんかも見て回った。テーブルよりもお座敷タイプが良いとか、冬はコタツが欲しいとか色々話して実物を見るのは凄く楽しい。
『お昼ご飯、なに食べたい?』
『ソーヘーの好きなとこで良い』
ならばと、少し表通りから外れた場所にあるファミレスに入る。土曜日でもかなり落ち着いた雰囲気なのでゆっくり出来るし、何より。
『今限定のアイスが出てて! 凄く食べたかったんだ!』
興奮気味にデザートのページを見せると猿石は納得したように呼び出しボタンを押す。俺はハンバーグ定食、猿石はチキンソテーランチを頼んで食後には二人でアイスを頼む。
『美味しい…! はぁ。やっぱり、限定トロピカル太陽増し増しアイス~笑顔とマンゴーを添えて~…最高だった。もう一回食べに来たい』
『ん。名前以外は文句ない』
久し振りの外食にテンションは上がり、やはり外で食べるアイスも最高で言う事なし。そのはずだった。でも、目の前に座る一足先にアイスを食べ終えた猿石は、心配そうに俺を見ていた。
『…大丈夫か』
何が? なんの問題もないだろ。買い物は無事に済ませたし、問題が少しあったけどすぐ解決。一緒に食べた初めての猿石との外食に食べたかったアイスまで。
最高の休日だと答えたのに、猿石の心配そうな顔は晴れない。
『ふとした時に、泣きそうな顔してる。ボスと喧嘩したの気にしてんだろ?』
…当然だ。なんで我慢出来なかったのかって、俺はずっと後悔している。あの時普通に帰っていたらきっと、こんな風に悩むこともなかったのに。
『…ボスに口答えしちゃった。俺は雇われの身で、ボスの温情で働かせてもらってるのに…暴言吐いて逃げ出して…
出て行けって、言われたらどうしようっ…もう要らないって言われたら』
所詮俺たちを繋ぐものなんて、契約書一枚。
『でもまだ言われてねーんだろ』
甘えん坊で、傍若無人で…世話の焼ける身勝手代表みたいなアニキなのに。
頬杖をついて俺に手を伸ばす彼の言葉は、いつだって説得力がある。魔法の言葉。
『即断即決のボスが、まだそれをしてねーってことは現状が正解ってことだろ。つまりボスが悪くてソーヘーは悪くない。または気にしてねぇ。
な? だから泣くなよ。俺は泣き虫の相手は苦手だ。どーして良いかわかんねー。泣き止ませるなんてやったことねーもん。それはボスとか金魚の糞の仕事。
俺は笑ってくれるソーヘーの傍にいる、しか…わかんねーよ』
ポンポン、と頭を軽く叩く猿石はそう言って笑った。だから釣られるように笑えば彼は満足そうに満面の笑みを浮かべる。
心が軽くなった気がして、猿石に相談というか不安を吐露して良かったと心から思う。
先を歩く彼に追い付いて、俺から手を繋いで一緒に歩くと立ち止まった猿石に抱っこをされたかと思えばそのまま肩車をされてしまう。
いつかのような肩車なのに、あの時とは比べ物にならないくらいお互いに笑顔でそのままはしゃいで帰った。
しかし、その夜。
俺はそんな彼らと敵対することになるのだが…今はまだそのことを誰も知らない。
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