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常春家の異変
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『帰んな、ソーヘー帰ったらヤダ』
『だが帰る。それじゃあお疲れ様です、お先に失礼します!』
制服に着替えて帰ろうとする俺の背中にしがみ付いて阻止しようとする猿石。それを必死に振り払おうとして一向に出来ないで数ミリその場から進む俺。
あー重い!!
『アナタこれからお仕事でしょう?! 頑張って下さいよ、俺は今回は要らないみたいなんですから!』
『はぁ?! ソーヘーが要らない案件なんてこの世にねーし! 常に俺たちと一緒にいるべきっ』
コントみたいだが両者は必死である。
周りは巻き込まれたくないのか見て見ぬふり状態だ、なんて薄情なんだろう。
松葉杖を必死に地面に突き立てて一歩を踏み出すが、すぐに後ろから妨害が入ってヒョイと身体が持ち上げられる。
おい卑怯者ぉ!!
『じゃあ次は?! 次はいつ来るんだ!』
『え? し、知らない…』
ジト目で俺を見つめる猿石。そんな、なんで? みたいな顔されたって…。
『なぁ!! ソーヘーのバイト次いつ?!』
『あー…いや、暫く…二日後? 二日後だな。土曜日。宋平、来れるか?』
『勿論です!』
『二日後ぉ?! …えー…、使えねぇ…』
ンだとゴラァ、という叫びをマルッと無視した猿石は悲しそうに眉を八の字にしてしまい、しっかりと俺に抱き付いた。
『…家まで送ってく』
『あ。アニキ、今日は駅で待ち合わせが…此処から近いから今日は大丈夫です』
あまりのショックに口を閉じ忘れている。可哀想になってきて頭を撫でると耐え難かったのか妙な叫び声を上げてしまう。
『哀れだね。ご覧、あまりに上手くいかないもんで人間を忘れてしまった』
『アニキ帰ってきてー』
犬飼がテーブルに並べた通信機の手入れをしながら勝手に猿石を人外扱いしていると今度はサンダルが後頭部を目掛けて飛んでいく。
全部命中するんだよなぁ、ノールックで。
『それではボス。本日はこれで失礼します。すみません、お騒がせしてしまって』
『ウチのモンが迷惑掛けまくってるだけだ。こっちこそ感謝するぜ。
…今日はちゃんと眠れそォかい?』
未だくっ付く猿石を放置してボスに挨拶をすると、意地悪そうな顔をしたボスに見つめられる。思わずリムジンで爆睡してたことを思い出して押し黙ると、小さく笑ったボスが手を伸ばす。
『今日は何作ったか楽しみだなァ? …今夜は遅くまで掛かる予定だ。どォしても眠れなきゃ、電話しな。
いつでも迎えに行ってやるよ』
手の甲で頬に軽く触れられる。たったそれだけのことで目が離せなくなるんだから、どうかしてる。
後ろからそれを眺めていた猿石は何故か満足そうに待機していた。
『やっぱボスは頼りになるよな!』
『テメェはさっさと支度しろ。向こうでも役立たずなら海に沈めて来るぞ』
ぶーぶー文句を言う猿石も観念したようで俺から離れる。何か言っておいた方が良いかなと口を開くと、サングラスをずらした端正な顔が近付く。
『目薬して、ソーヘー』
『痛くなった? もう…。自分で出来るようになってね、暫く会わないんだから』
光を遮るように立ってサングラスを外してから目薬をしてあげると、猿石は嬉しそうに立ち上がって目薬をポケットに入れる。
『早く来いよ? でないと俺が迎えに行くからな!』
『…それはちょっと…、うん…歩いて来てね?』
絶対にバイクでは来ないで下さい。
『気を付けて。怪我しちゃダメですよ?』
今日の荒れっぷりを知っているから心配で声を掛けたけど、振り返った猿石はサングラスをかけてから余裕そうに笑って手を振った。
…良かった。大丈夫そうだな。
『下で付き添い待たしてる。駅の近くで離れるよう指示してっから、一人でも安心だろ』
なるほど…つまり尾行モードで誰かいるというわけか。駅まで数分なのになんて高待遇だ。
…俺が散々やらかしてるからか…!!
『スマホ』
『持ちました! 持たせて頂きました!』
釘を刺すようにボスが呟くもんだから思わずスマホを掲げて宣言する。途端に皆が笑い出すものだから、恥ずかしくなりつつエレベーターまで向かう。
下までは刃斬が一緒にいてくれる。
『待ち合わせってーと、兄貴か?』
『はい! なんか近くで大学の集まりみたいなのがあったみたいで、帰りは一緒に帰ろうって。俺…近くのカラオケ店で働いてるってことになってるので』
待ち合わせをしてるのは三男の蒼二。チャラっとした見た目だけど、男女問わず結構モテるようで大学も楽しくやってるらしい。
『そうか。兄貴が一緒なら安心だな。二日後の詳細はまた連絡するから待ってろ。
今日はありがとな。猿の面倒見てくれて助かった。アイツの深ぇとこまで寄り添ってくれたこと、感謝してる。あんな奴だが…まぁ、色々あるからな。これからも一つ頼む』
エレベーターが一階に到着すると扉を腕で遮った刃斬がもう片方の手で俺の後頭部を撫でてから優しく押して中から出す。
誰もいないロビーを不安に思いながら振り返ると、まだ俺を見守っていた刃斬が手を振る。その姿に安心して自動ドアを出るとすっかり暗くなった夜道を歩き出す。静かな夜道には自分の足音しかしない。
…本当に誰かいるのかな?
つい悪戯心が発動してしまい、少し歩いてから路地裏へと足を向ける。ここ最近何回か通ったから簡単には迷ったりしない。
暫く歩いていると向こうから二人くらいだろうか、少し焦ったような足音がして思わず走り出す。
ピコン! とスマホが鳴ると追って来てる兄貴たちが遊ぶな、と短いメッセージを送ってきた。
『えー。楽しかったのになぁ』
観念して大通りに戻ろうとした瞬間、曲がり角から誰かが飛び出して来てぶつかってしまった。思わず尻もちをついてしまい、相手に謝罪しようと顔を上げるとそこにいたのは蒼二だった。
『あにき?』
『っ宋ちゃん?!』
息を上げた蒼二が振り返ると何人かの足音がする。すぐに蒼二に腕を引かれて走ると、逃げる必要はないと言おうとしたのに背後から追って来る男たちにまるで心当たりがない。
え?! 兄貴たちじゃない?
『っ、やばー! もう無理! 宋ちゃん、お願い!』
頭の中にあるコントローラーを握ると、すぐにアルファのボタンを押してアルファに切り替わる。ぐん、と蒼二を追い越して今度は俺が引っ張る側になりどんどん引き離す。
その後も複雑な路地を走り、なんとか駅まで辿り着いて二人で電車に乗り込む。路地で兄と会ったことをスマホで兄貴たちに伝えるとすぐに了解、と返事が来た。
…こっちはこれで良いか。
『ごめんごめん! いやー変な輩に因縁付けられて参ってたとこ。本当に宋ちゃんってば、ナイスタイミングじゃん!』
参った参った、と笑う兄貴。だけどその声は心なしか震えていて空元気ではないのかとすぐに疑った。そんな疑惑の眼差しに気付いたけど、気付かなかったフリをした蒼二は早急に話題を変える。
『蒼二兄』
小さい頃の呼び方で呼べば、すぐに蒼二はピタリと止まってから俺を見る。
『…本当に、平気? 今回だけ?』
電車に並んで座る俺たち。周囲に人は少なく、電車の走る音が二人の間を過ぎる。
『…うん。大丈夫だよ。もう会わないし、平気。本当ありがと…。ごめんね、宋ちゃんまで危ない目に遭わせそうになって』
『全然平気! 足だってもう大丈夫だし、丁度良いリハビリだった』
最近は色んな人が俺を抱っこしたり、おんぶしたりで運動不足気味だ。しかもあの人たちはそれをなんの負荷とも思わない!
チクショウ、俺だって将来はムキムキだい!
『…そっか。なら、良かった。
そうだ。お詫びにアイス買って帰ろうか。どこのコンビニにする?』
え。アイス?!
丁度コンビニ限定のアイスが食べたかった俺はすぐに蒼二の話に食い付いて、食べたかったアイスが載ったネット記事を見せる。
無事にアイスを買って、二人の兄にもお土産として買って帰った。皆で食べれると思ったのにその日の夜、二人の兄の喧嘩によってその予定は消えた。
『お前巫山戯るなよッ!! あれだけ成績だけは落とすなって言ったろ!』
『あーあー五月蝿いなぁ。そんなに叫ばなくても聞こえてますぅ』
蒼士と蒼二は、よく喧嘩をする。だけど軽く言い合うくらいで終わるし今夜みたいなのは珍しい。
帰ってすぐにアイスを冷凍庫に入れに行く俺と、お風呂の支度をしようとしてた蒼二に二階から降りて来た蒼士が物凄い剣幕で怒鳴ったのだ。
原因は蒼二の大学でのこと。
『二年になってから浮かれ過ぎだ。学業に専念出来ないならバイトなんて辞めろ』
『はぁ? お前はいつから俺の親になったのさ。数分早く産まれたくらいで本当に生意気だよね? 良いよねぇ、ガリ勉君は。俺みたいに忙しくなくて?』
『それで成績を落とすようならお前はただの馬鹿だ』
睨み合う両者に完全に蚊帳の外の俺。なんとか落ち着いてもらおうとしたけど、二人は同時にそっぽを向いてそれぞれの部屋に籠ってしまう。
そこだけシンクロすんなよ…。
その後、帰宅した長男に泣き付き、事の顛末を説明するも…兄ちゃんからも悲しい知らせを受けた。
『…蒼二については本当に成績が悪くなってるようでな。授業に出てない日も多くなってるらしい。あの二人は特待生として通ってるから、もしかしたらそれも厳しくなるかもしれない』
その夜、深夜までベッドで悶々と悩む俺の仕事用のスマホが
まるで見透かしたように鳴り出した。
.
『だが帰る。それじゃあお疲れ様です、お先に失礼します!』
制服に着替えて帰ろうとする俺の背中にしがみ付いて阻止しようとする猿石。それを必死に振り払おうとして一向に出来ないで数ミリその場から進む俺。
あー重い!!
『アナタこれからお仕事でしょう?! 頑張って下さいよ、俺は今回は要らないみたいなんですから!』
『はぁ?! ソーヘーが要らない案件なんてこの世にねーし! 常に俺たちと一緒にいるべきっ』
コントみたいだが両者は必死である。
周りは巻き込まれたくないのか見て見ぬふり状態だ、なんて薄情なんだろう。
松葉杖を必死に地面に突き立てて一歩を踏み出すが、すぐに後ろから妨害が入ってヒョイと身体が持ち上げられる。
おい卑怯者ぉ!!
『じゃあ次は?! 次はいつ来るんだ!』
『え? し、知らない…』
ジト目で俺を見つめる猿石。そんな、なんで? みたいな顔されたって…。
『なぁ!! ソーヘーのバイト次いつ?!』
『あー…いや、暫く…二日後? 二日後だな。土曜日。宋平、来れるか?』
『勿論です!』
『二日後ぉ?! …えー…、使えねぇ…』
ンだとゴラァ、という叫びをマルッと無視した猿石は悲しそうに眉を八の字にしてしまい、しっかりと俺に抱き付いた。
『…家まで送ってく』
『あ。アニキ、今日は駅で待ち合わせが…此処から近いから今日は大丈夫です』
あまりのショックに口を閉じ忘れている。可哀想になってきて頭を撫でると耐え難かったのか妙な叫び声を上げてしまう。
『哀れだね。ご覧、あまりに上手くいかないもんで人間を忘れてしまった』
『アニキ帰ってきてー』
犬飼がテーブルに並べた通信機の手入れをしながら勝手に猿石を人外扱いしていると今度はサンダルが後頭部を目掛けて飛んでいく。
全部命中するんだよなぁ、ノールックで。
『それではボス。本日はこれで失礼します。すみません、お騒がせしてしまって』
『ウチのモンが迷惑掛けまくってるだけだ。こっちこそ感謝するぜ。
…今日はちゃんと眠れそォかい?』
未だくっ付く猿石を放置してボスに挨拶をすると、意地悪そうな顔をしたボスに見つめられる。思わずリムジンで爆睡してたことを思い出して押し黙ると、小さく笑ったボスが手を伸ばす。
『今日は何作ったか楽しみだなァ? …今夜は遅くまで掛かる予定だ。どォしても眠れなきゃ、電話しな。
いつでも迎えに行ってやるよ』
手の甲で頬に軽く触れられる。たったそれだけのことで目が離せなくなるんだから、どうかしてる。
後ろからそれを眺めていた猿石は何故か満足そうに待機していた。
『やっぱボスは頼りになるよな!』
『テメェはさっさと支度しろ。向こうでも役立たずなら海に沈めて来るぞ』
ぶーぶー文句を言う猿石も観念したようで俺から離れる。何か言っておいた方が良いかなと口を開くと、サングラスをずらした端正な顔が近付く。
『目薬して、ソーヘー』
『痛くなった? もう…。自分で出来るようになってね、暫く会わないんだから』
光を遮るように立ってサングラスを外してから目薬をしてあげると、猿石は嬉しそうに立ち上がって目薬をポケットに入れる。
『早く来いよ? でないと俺が迎えに行くからな!』
『…それはちょっと…、うん…歩いて来てね?』
絶対にバイクでは来ないで下さい。
『気を付けて。怪我しちゃダメですよ?』
今日の荒れっぷりを知っているから心配で声を掛けたけど、振り返った猿石はサングラスをかけてから余裕そうに笑って手を振った。
…良かった。大丈夫そうだな。
『下で付き添い待たしてる。駅の近くで離れるよう指示してっから、一人でも安心だろ』
なるほど…つまり尾行モードで誰かいるというわけか。駅まで数分なのになんて高待遇だ。
…俺が散々やらかしてるからか…!!
『スマホ』
『持ちました! 持たせて頂きました!』
釘を刺すようにボスが呟くもんだから思わずスマホを掲げて宣言する。途端に皆が笑い出すものだから、恥ずかしくなりつつエレベーターまで向かう。
下までは刃斬が一緒にいてくれる。
『待ち合わせってーと、兄貴か?』
『はい! なんか近くで大学の集まりみたいなのがあったみたいで、帰りは一緒に帰ろうって。俺…近くのカラオケ店で働いてるってことになってるので』
待ち合わせをしてるのは三男の蒼二。チャラっとした見た目だけど、男女問わず結構モテるようで大学も楽しくやってるらしい。
『そうか。兄貴が一緒なら安心だな。二日後の詳細はまた連絡するから待ってろ。
今日はありがとな。猿の面倒見てくれて助かった。アイツの深ぇとこまで寄り添ってくれたこと、感謝してる。あんな奴だが…まぁ、色々あるからな。これからも一つ頼む』
エレベーターが一階に到着すると扉を腕で遮った刃斬がもう片方の手で俺の後頭部を撫でてから優しく押して中から出す。
誰もいないロビーを不安に思いながら振り返ると、まだ俺を見守っていた刃斬が手を振る。その姿に安心して自動ドアを出るとすっかり暗くなった夜道を歩き出す。静かな夜道には自分の足音しかしない。
…本当に誰かいるのかな?
つい悪戯心が発動してしまい、少し歩いてから路地裏へと足を向ける。ここ最近何回か通ったから簡単には迷ったりしない。
暫く歩いていると向こうから二人くらいだろうか、少し焦ったような足音がして思わず走り出す。
ピコン! とスマホが鳴ると追って来てる兄貴たちが遊ぶな、と短いメッセージを送ってきた。
『えー。楽しかったのになぁ』
観念して大通りに戻ろうとした瞬間、曲がり角から誰かが飛び出して来てぶつかってしまった。思わず尻もちをついてしまい、相手に謝罪しようと顔を上げるとそこにいたのは蒼二だった。
『あにき?』
『っ宋ちゃん?!』
息を上げた蒼二が振り返ると何人かの足音がする。すぐに蒼二に腕を引かれて走ると、逃げる必要はないと言おうとしたのに背後から追って来る男たちにまるで心当たりがない。
え?! 兄貴たちじゃない?
『っ、やばー! もう無理! 宋ちゃん、お願い!』
頭の中にあるコントローラーを握ると、すぐにアルファのボタンを押してアルファに切り替わる。ぐん、と蒼二を追い越して今度は俺が引っ張る側になりどんどん引き離す。
その後も複雑な路地を走り、なんとか駅まで辿り着いて二人で電車に乗り込む。路地で兄と会ったことをスマホで兄貴たちに伝えるとすぐに了解、と返事が来た。
…こっちはこれで良いか。
『ごめんごめん! いやー変な輩に因縁付けられて参ってたとこ。本当に宋ちゃんってば、ナイスタイミングじゃん!』
参った参った、と笑う兄貴。だけどその声は心なしか震えていて空元気ではないのかとすぐに疑った。そんな疑惑の眼差しに気付いたけど、気付かなかったフリをした蒼二は早急に話題を変える。
『蒼二兄』
小さい頃の呼び方で呼べば、すぐに蒼二はピタリと止まってから俺を見る。
『…本当に、平気? 今回だけ?』
電車に並んで座る俺たち。周囲に人は少なく、電車の走る音が二人の間を過ぎる。
『…うん。大丈夫だよ。もう会わないし、平気。本当ありがと…。ごめんね、宋ちゃんまで危ない目に遭わせそうになって』
『全然平気! 足だってもう大丈夫だし、丁度良いリハビリだった』
最近は色んな人が俺を抱っこしたり、おんぶしたりで運動不足気味だ。しかもあの人たちはそれをなんの負荷とも思わない!
チクショウ、俺だって将来はムキムキだい!
『…そっか。なら、良かった。
そうだ。お詫びにアイス買って帰ろうか。どこのコンビニにする?』
え。アイス?!
丁度コンビニ限定のアイスが食べたかった俺はすぐに蒼二の話に食い付いて、食べたかったアイスが載ったネット記事を見せる。
無事にアイスを買って、二人の兄にもお土産として買って帰った。皆で食べれると思ったのにその日の夜、二人の兄の喧嘩によってその予定は消えた。
『お前巫山戯るなよッ!! あれだけ成績だけは落とすなって言ったろ!』
『あーあー五月蝿いなぁ。そんなに叫ばなくても聞こえてますぅ』
蒼士と蒼二は、よく喧嘩をする。だけど軽く言い合うくらいで終わるし今夜みたいなのは珍しい。
帰ってすぐにアイスを冷凍庫に入れに行く俺と、お風呂の支度をしようとしてた蒼二に二階から降りて来た蒼士が物凄い剣幕で怒鳴ったのだ。
原因は蒼二の大学でのこと。
『二年になってから浮かれ過ぎだ。学業に専念出来ないならバイトなんて辞めろ』
『はぁ? お前はいつから俺の親になったのさ。数分早く産まれたくらいで本当に生意気だよね? 良いよねぇ、ガリ勉君は。俺みたいに忙しくなくて?』
『それで成績を落とすようならお前はただの馬鹿だ』
睨み合う両者に完全に蚊帳の外の俺。なんとか落ち着いてもらおうとしたけど、二人は同時にそっぽを向いてそれぞれの部屋に籠ってしまう。
そこだけシンクロすんなよ…。
その後、帰宅した長男に泣き付き、事の顛末を説明するも…兄ちゃんからも悲しい知らせを受けた。
『…蒼二については本当に成績が悪くなってるようでな。授業に出てない日も多くなってるらしい。あの二人は特待生として通ってるから、もしかしたらそれも厳しくなるかもしれない』
その夜、深夜までベッドで悶々と悩む俺の仕事用のスマホが
まるで見透かしたように鳴り出した。
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