12 / 88
末っ子のみる夢
しおりを挟む
倉庫街の事件は、瞬く間に報道された。大々的というわけではないが俺が帰った後にバイヤーとの本格的なドンパチがあったようで二、三日はちらほらテレビでも報道された。
そしてあの日から俺はかなりの寝不足である。なんとか眠れはするが夢見が悪く目覚めてしまう。ずっとあの子に言われたことを引き摺っているようで、
…情け無いことに軽いトラウマとなったらしい。
[明日、九時からな。あとボスに弁当頼む]
『…弁当? はっ!!』
学校帰りに来たメッセージを見てから一瞬だけ悩み、すぐに思い出す。それはボスと交わした出前とお弁当の取引だ。
…あ、あれって本気だったんだ…。
続け様にスマホが鳴ると電子財布にお金が振り込まれていた。どうやらこれで材料を買えとのことらしく、中身については全てお任せらしい。
『って! 一回のチャージに万札ぶち込むか普通!』
千円かとゼロを数え直すがどう見ても一万円がある。何回かあるとしても流石に多過ぎやしないだろうか。
…にしても。
『兄さんたちが作ってくれたり、自分に作ったりはしたけど…誰かに作るって初めてかも』
兄は三人全員がある程度は料理が出来る上に双子は学食、兄ちゃんは外の現場が多いから何処かで食べたりが多い。
ボスが食べるから兄たちに任せるわけにはいかないので、早速スーパーへ向かった。
『あ、明日さ…バイト先にお弁当持って行きたくて、その…ちょっと作りたい料理とか詰めたくて、だからそのっ…俺が作って行く』
『ああ。確かカラオケでバイトしてるんだったな。最近のカラオケってつまめる料理中心でお昼ご飯にはバリエーションが少ない。
良いじゃないか。ついでに作って余ったやつ、俺たちの朝ごはんにしてくれ』
エコバッグに買った食材片手に帰れば、家には次男の双子の片割れである蒼士兄さんが丁度キッチンに立っていた。眼鏡をかけた知的な印象通り蒼士兄さんは優しく賢い。
真面目で堅物な兄さんだが、頼りになる自慢の兄。
『勿論! ねぇ、兄さん。唐揚げ入れたいから今日一緒に唐揚げ作ろうよ。材料買って来たから!』
『わざわざ多めに買って来てくれたのか? そうか…、唐揚げならみんな喜ぶし材料もあるなら作るか』
兄さんと一緒に唐揚げを揚げていると三男が帰って来た。バタバタと走る足音に兄さんと顔を合わせて笑っていると勢いよく扉が開く。
『ちょー良い匂いするんだけど!! ヤバい、帰って来て良かった!』
『早く手を洗って来い。飯にするぞ』
揚げたてーっ、と声を上げながら洗面所に行く兄貴に蒼士兄さんはやれやれと言いながらご飯を盛り始める。そんな中で再び玄関の扉が開く音がして、まさかと思ってリビングから出ると…そこには玄関に座って靴を脱ぐ兄ちゃんの背中があった。
『兄ちゃん…!!』
『え? 兄さん帰って来たのか?』
長兄である創一郎兄ちゃんに駆け寄ると、振り返った兄ちゃんが笑顔で俺の頭を撫でる。その頬には未だに大きな絆創膏が貼られ痣を隠しているのだろうが当初より腫れも引いてるし他の怪我も治ってきているようだし、当然新しい怪我などない。
彼らはちゃんと俺との取引に応じてくれた。
『ただいま、宋平! ほら。ケーキ買って来たから飯食ったらみんなで食べような』
『おかえりっ。わ! 此処の美味しいやつ。兄ちゃんありがとう!』
ケーキを抱えながら撫で回されていると兄さんがエプロンを外しながらやって来た。
『おかえり。まだ十八時なのに珍しいな。…職場は安定したのか?』
『…ああ。どうやらなんとかなるらしい。心配かけてごめんな? これからは早く帰れるようになる。宋平も、心配かけたな』
良かった。良かった。社長さんは残った借金はなんとか返せるみたいだ、厳しいと思うけど返せなくはないとボスも言ってた。
後は俺が頑張れば良いだけ。良かった、本当に。
『心配した! 兄さんたちだって心配してたんだからなっ』
『悪かった。…うん、本当に悪かったよ』
ぎゅうぎゅうと兄ちゃんの腹にくっ付けば何度も優しく頭を撫でられる。背中を摩ってくれているのは兄さんだろうか。
『兎も角、問題が解決したなら何よりだ。先に飯にしよう。今日の夕飯は宋平と作ったんだ。熱いうちに食べないと』
『そーそー。ブラザーの熱い絆も良いけどさぁ、唐揚げも熱い内に食べなきゃだよね~』
『お前何もしてないだろ、蒼二』
その日は久しぶりに四人で食卓を囲んだ。騒がしくて楽しい、少し前まで当たり前だった日常。ご飯を食べて、ケーキを食べて…みんなでテレビを見たり一緒にリビングで過ごす。
ずっと求めてきた取り戻したかった未来。
俺は、この時間が欲しかった。
『あれ? 宋ちゃんってばテレビ見ながら寝てんじゃん』
『はしゃいでたから疲れたんだろう。…丁度良いから少し寝かせてやれ』
リビングのソファでうとうとしていたら不意に身体に何かタオルケットのようなものがかけられ、そのままずるずると誰かの膝に頭を乗せる。薄っすらとした意識の中で取り敢えず寝たフリをすることにした。
テレビが消されると誰かのマグカップを置く音さえやけに響いた。
『…それで。さっきはああ言っていたが、本当に終わったのか?』
蒼士兄さんの言葉にずっとスマホを弄っていた蒼二もカチリとボタンを押してテーブルに置いた音がする。三人の真剣な話し合いが始まったようだ。
『ああ…、本当だ。詳しくはわからないが何故か終わったようなんだ』
『マジ? 油断させといて後からワーッ! …って来たりしない?』
『それを警戒して暫く様子を見ていたんだが向こうから正式に書状が届いて借金が何故か大幅に減額されていたと社長から相談されてたんだ。
…半信半疑でも親戚中に頭下げて、なんとか掻き集めた金を渡したら綺麗さっぱり関わって来なくなった』
兄ちゃんの言葉を聞いて思わず頬が緩む。
『嘘でしょ…? ああいう輩に目を付けられたら最後じゃん。それに、身内が金を借りたって大義名分がある以上は堂々と乗り込んできてたのに?』
『そう、なんだ。だけど…本当に来なくなってな。完済したわけではないらしい。それでも奴等が来ないのになんでですか、なんて聞きに行く勇気は社長にもない。もう心身共に弱り切ってたから…自分から関わりに行くなんて不可能だろう』
それは社長さんの判断は懸命だ。そのまま彼らには平和に過ごしていてほしい、いつか俺が全ての借金を返すまでは。
三年後には無事に完済できるだろうか? 頑張らないと。幸い彼らは使える俺には優しいのだから。
『…奴等が来なくなったのに、釈然としない。終わったはずなのに何故か胸騒ぎがする』
『うへー。イッチーの勘は当たるんだから、勘弁してよね。…今回みたいなことが続いたらこの子が無茶しちゃうかもなんだよ? そりゃさ、この力は強力だけど世にバレたら最後だ』
肩からズレたタオルケットが直され、そのまま誰かに腕を撫でられる。なんだか視線が集まっているような気がして内心冷や汗ものだ。
もしかして俺のこと…?!
『最近はバイトを頑張ってるようだし、もう少しでバランサーとしての時間は終わる。それまでは守り通さないと…勿論、それからまた新しい宋平の人生が始まっても俺は兄として弟を守りたい』
『え? 宋平、バイト始めたのか…?』
『ああ。そういえばイッチー全然帰って来ないから知らないんだ。多分今回の件で宋ちゃんも気ぃ遣ってたんじゃない?』
ふにふに、と頬を突かれるがすぐに誰かの止めろ、という鋭い声が入る。多分兄貴が面白がって突いてたのを兄さんが止めたんだな。
本当似てないからな、この双子。
『そ、そんな…普段からバランサーとして周囲の調和を保っているのにバイトなんてして大丈夫なのか? 無理してなさそうか? 平気か?』
『今まで無理しかしてなかった人が言ってもねぇ…。まぁ、宋ちゃんのしたいようにさせてあげなよ。高校生なんだし大丈夫っしょ』
そうだよ。
俺はバランサーで、大きくなったんだから。
だから今度は俺がみんなの荷物を一緒に背負うんだ。俺にだって出来るし、たくさん背負える。
そう、だから…だから、笑ってよ。
『そうか…。
宋平も働くくらいの歳か。いや、政府からはバランサーとしての給金も出てたが。宋平がやりたいと思ったなら、見守るべきか…俺も散々やりたいようにしたわけだし』
笑う兄たちは、次第に明るい話をするようになる。
そんな笑い声を聴きながら眠りに着いた俺は幸せな夢を見たような気がするが途中で歯磨きをしなさいと兄たちに起こされてしまった。
元の道を歩き出した三人を見届け、
自分は振り返って真っ赤な道を進む。
そんな幸せな夢を見ながら明日の為にいつもより早い就寝をするのだ。
.
そしてあの日から俺はかなりの寝不足である。なんとか眠れはするが夢見が悪く目覚めてしまう。ずっとあの子に言われたことを引き摺っているようで、
…情け無いことに軽いトラウマとなったらしい。
[明日、九時からな。あとボスに弁当頼む]
『…弁当? はっ!!』
学校帰りに来たメッセージを見てから一瞬だけ悩み、すぐに思い出す。それはボスと交わした出前とお弁当の取引だ。
…あ、あれって本気だったんだ…。
続け様にスマホが鳴ると電子財布にお金が振り込まれていた。どうやらこれで材料を買えとのことらしく、中身については全てお任せらしい。
『って! 一回のチャージに万札ぶち込むか普通!』
千円かとゼロを数え直すがどう見ても一万円がある。何回かあるとしても流石に多過ぎやしないだろうか。
…にしても。
『兄さんたちが作ってくれたり、自分に作ったりはしたけど…誰かに作るって初めてかも』
兄は三人全員がある程度は料理が出来る上に双子は学食、兄ちゃんは外の現場が多いから何処かで食べたりが多い。
ボスが食べるから兄たちに任せるわけにはいかないので、早速スーパーへ向かった。
『あ、明日さ…バイト先にお弁当持って行きたくて、その…ちょっと作りたい料理とか詰めたくて、だからそのっ…俺が作って行く』
『ああ。確かカラオケでバイトしてるんだったな。最近のカラオケってつまめる料理中心でお昼ご飯にはバリエーションが少ない。
良いじゃないか。ついでに作って余ったやつ、俺たちの朝ごはんにしてくれ』
エコバッグに買った食材片手に帰れば、家には次男の双子の片割れである蒼士兄さんが丁度キッチンに立っていた。眼鏡をかけた知的な印象通り蒼士兄さんは優しく賢い。
真面目で堅物な兄さんだが、頼りになる自慢の兄。
『勿論! ねぇ、兄さん。唐揚げ入れたいから今日一緒に唐揚げ作ろうよ。材料買って来たから!』
『わざわざ多めに買って来てくれたのか? そうか…、唐揚げならみんな喜ぶし材料もあるなら作るか』
兄さんと一緒に唐揚げを揚げていると三男が帰って来た。バタバタと走る足音に兄さんと顔を合わせて笑っていると勢いよく扉が開く。
『ちょー良い匂いするんだけど!! ヤバい、帰って来て良かった!』
『早く手を洗って来い。飯にするぞ』
揚げたてーっ、と声を上げながら洗面所に行く兄貴に蒼士兄さんはやれやれと言いながらご飯を盛り始める。そんな中で再び玄関の扉が開く音がして、まさかと思ってリビングから出ると…そこには玄関に座って靴を脱ぐ兄ちゃんの背中があった。
『兄ちゃん…!!』
『え? 兄さん帰って来たのか?』
長兄である創一郎兄ちゃんに駆け寄ると、振り返った兄ちゃんが笑顔で俺の頭を撫でる。その頬には未だに大きな絆創膏が貼られ痣を隠しているのだろうが当初より腫れも引いてるし他の怪我も治ってきているようだし、当然新しい怪我などない。
彼らはちゃんと俺との取引に応じてくれた。
『ただいま、宋平! ほら。ケーキ買って来たから飯食ったらみんなで食べような』
『おかえりっ。わ! 此処の美味しいやつ。兄ちゃんありがとう!』
ケーキを抱えながら撫で回されていると兄さんがエプロンを外しながらやって来た。
『おかえり。まだ十八時なのに珍しいな。…職場は安定したのか?』
『…ああ。どうやらなんとかなるらしい。心配かけてごめんな? これからは早く帰れるようになる。宋平も、心配かけたな』
良かった。良かった。社長さんは残った借金はなんとか返せるみたいだ、厳しいと思うけど返せなくはないとボスも言ってた。
後は俺が頑張れば良いだけ。良かった、本当に。
『心配した! 兄さんたちだって心配してたんだからなっ』
『悪かった。…うん、本当に悪かったよ』
ぎゅうぎゅうと兄ちゃんの腹にくっ付けば何度も優しく頭を撫でられる。背中を摩ってくれているのは兄さんだろうか。
『兎も角、問題が解決したなら何よりだ。先に飯にしよう。今日の夕飯は宋平と作ったんだ。熱いうちに食べないと』
『そーそー。ブラザーの熱い絆も良いけどさぁ、唐揚げも熱い内に食べなきゃだよね~』
『お前何もしてないだろ、蒼二』
その日は久しぶりに四人で食卓を囲んだ。騒がしくて楽しい、少し前まで当たり前だった日常。ご飯を食べて、ケーキを食べて…みんなでテレビを見たり一緒にリビングで過ごす。
ずっと求めてきた取り戻したかった未来。
俺は、この時間が欲しかった。
『あれ? 宋ちゃんってばテレビ見ながら寝てんじゃん』
『はしゃいでたから疲れたんだろう。…丁度良いから少し寝かせてやれ』
リビングのソファでうとうとしていたら不意に身体に何かタオルケットのようなものがかけられ、そのままずるずると誰かの膝に頭を乗せる。薄っすらとした意識の中で取り敢えず寝たフリをすることにした。
テレビが消されると誰かのマグカップを置く音さえやけに響いた。
『…それで。さっきはああ言っていたが、本当に終わったのか?』
蒼士兄さんの言葉にずっとスマホを弄っていた蒼二もカチリとボタンを押してテーブルに置いた音がする。三人の真剣な話し合いが始まったようだ。
『ああ…、本当だ。詳しくはわからないが何故か終わったようなんだ』
『マジ? 油断させといて後からワーッ! …って来たりしない?』
『それを警戒して暫く様子を見ていたんだが向こうから正式に書状が届いて借金が何故か大幅に減額されていたと社長から相談されてたんだ。
…半信半疑でも親戚中に頭下げて、なんとか掻き集めた金を渡したら綺麗さっぱり関わって来なくなった』
兄ちゃんの言葉を聞いて思わず頬が緩む。
『嘘でしょ…? ああいう輩に目を付けられたら最後じゃん。それに、身内が金を借りたって大義名分がある以上は堂々と乗り込んできてたのに?』
『そう、なんだ。だけど…本当に来なくなってな。完済したわけではないらしい。それでも奴等が来ないのになんでですか、なんて聞きに行く勇気は社長にもない。もう心身共に弱り切ってたから…自分から関わりに行くなんて不可能だろう』
それは社長さんの判断は懸命だ。そのまま彼らには平和に過ごしていてほしい、いつか俺が全ての借金を返すまでは。
三年後には無事に完済できるだろうか? 頑張らないと。幸い彼らは使える俺には優しいのだから。
『…奴等が来なくなったのに、釈然としない。終わったはずなのに何故か胸騒ぎがする』
『うへー。イッチーの勘は当たるんだから、勘弁してよね。…今回みたいなことが続いたらこの子が無茶しちゃうかもなんだよ? そりゃさ、この力は強力だけど世にバレたら最後だ』
肩からズレたタオルケットが直され、そのまま誰かに腕を撫でられる。なんだか視線が集まっているような気がして内心冷や汗ものだ。
もしかして俺のこと…?!
『最近はバイトを頑張ってるようだし、もう少しでバランサーとしての時間は終わる。それまでは守り通さないと…勿論、それからまた新しい宋平の人生が始まっても俺は兄として弟を守りたい』
『え? 宋平、バイト始めたのか…?』
『ああ。そういえばイッチー全然帰って来ないから知らないんだ。多分今回の件で宋ちゃんも気ぃ遣ってたんじゃない?』
ふにふに、と頬を突かれるがすぐに誰かの止めろ、という鋭い声が入る。多分兄貴が面白がって突いてたのを兄さんが止めたんだな。
本当似てないからな、この双子。
『そ、そんな…普段からバランサーとして周囲の調和を保っているのにバイトなんてして大丈夫なのか? 無理してなさそうか? 平気か?』
『今まで無理しかしてなかった人が言ってもねぇ…。まぁ、宋ちゃんのしたいようにさせてあげなよ。高校生なんだし大丈夫っしょ』
そうだよ。
俺はバランサーで、大きくなったんだから。
だから今度は俺がみんなの荷物を一緒に背負うんだ。俺にだって出来るし、たくさん背負える。
そう、だから…だから、笑ってよ。
『そうか…。
宋平も働くくらいの歳か。いや、政府からはバランサーとしての給金も出てたが。宋平がやりたいと思ったなら、見守るべきか…俺も散々やりたいようにしたわけだし』
笑う兄たちは、次第に明るい話をするようになる。
そんな笑い声を聴きながら眠りに着いた俺は幸せな夢を見たような気がするが途中で歯磨きをしなさいと兄たちに起こされてしまった。
元の道を歩き出した三人を見届け、
自分は振り返って真っ赤な道を進む。
そんな幸せな夢を見ながら明日の為にいつもより早い就寝をするのだ。
.
21
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ
秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」
ワタクシ、フラれてしまいました。
でも、これで良かったのです。
どのみち、結婚は無理でしたもの。
だってー。
実はワタクシ…男なんだわ。
だからオレは逃げ出した。
貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。
なのにー。
「ずっと、君の事が好きだったんだ」
数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?
この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。
幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
第12回BL小説大賞に参加中!
よろしくお願いします🙇♀️
不幸体質っすけど役に立って、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる