6 / 136
新入り子分
しおりを挟む
『そーへーっ!! おら、何処行った迷子ォ! お前どんだけアジトで迷子になりゃ気が済むんだ!』
『ずみまぜんんっ!!』
わーん、と涙ぐみながら迎えに来てくれた兄貴たちに駆け寄ると仕方ないとばかりに頭を軽く叩かれる。
昨日から晴れてヤクザの仲間入りをしてしまった俺は次の日もアジトに来ていた。連休だし予定もないと言ったら多少は馴染んでおけと下っ端の兄貴たちの部屋に放り込まれ、雑用をしていたのだが。
『だって…、ビル広いし全部黒いしっ何階とかも書いてないし地図もなくて…』
『敵勢力が突っ込んでくるかもしんねーのに親切に地図なんか書いとくバカいるわけねーだろ』
ショッピングモールじゃねーんだぞ、とペチペチと頬を叩かれると再び嘘泣き開始。
覚えられるかチクショウ!!
『流石におつかいはまだ早ぇって』
『したら何さすんだよ。ずっと溜まり部屋にいても同じ奴しかいねーじゃん』
『急いても仕方ねぇって。十五の舎弟が出来たなんてあっという間に広まるだろうし、その内周知されんだろーよ』
お兄様方は意外と面倒見が良い。顔面凶器だし、口を開けば大変教育に宜しくない言語を操るが腕っぷしは間違いないんだろう。大半のメンバーは筋骨隆々な上にアルファが多い。体格に恵まれるのはアルファの特徴の一つだ。
『…兄貴たちは普段は何をするんですか?』
『そうだな…。基本的には金の回収にシマの見回り。取引の現場で護衛、…後は…色々だ』
へー…結構色々あるんだなぁ。
ぞろぞろとみんなで部屋に戻る。そこは基本、溜まり部屋と呼ばれる部屋で自由に使って良い憩いの場だ。他の部屋より圧倒的に広々としていて畳のスペースなんかもあり快適で寝ている人やスマホを弄る人、テレビを見ている人など様々。
『戻ったは良いが、そろそろ昼だな』
『腹減ったなー。なんか頼むか』
そんな言葉を皮切りに次々とみんなが壁にぶら下がっていた出前用のメニューを取る。
ほう。出前が一般的なのか。
『宋平! お前なんにする?』
『俺、お弁当持って来たから大丈夫です』
生憎と出前を取れるほどの金銭的な余裕はないんだよなぁ、借金うん千万の世界だし。
畳の隅に置いてあった鞄からお弁当箱を取り出すとみんなが興味津々、とばかりに寄って来た。弁当だ、弁当? みたいな言葉が飛び交うからちょっと面白い。
『…それ、まさかお前自分でか?』
『はい。いつもは兄たちが作ってくれるんですけどお休みの日だから…パパッと作って持って来ました』
兄貴だけは未だ部屋で寝ていたみたいだから、料理の痕跡を残さないよう静かに作って最速で仕上げた。おにぎりを頬張り、水筒のお茶をグビグビ飲んでいると物珍しそうにしていた一人が話し掛けてきた。
『宋平。茶は給湯室で好きに淹れて良いから、水筒は持って来なくて良いぜ? それ重いだろ』
『…良いんですか?』
『おう! 弁当も冷蔵庫あるから、好きに入れろよ』
『宋平! レンジも使って良いんだからな!』
次々に声を掛けられ、嬉しくて何度も頷く。畳で寝転がっていた人がズイ、とお弁当を覗き込むと無言で卵焼きを指差す。他の人がボカボカとその人の頭を殴るが構わず卵焼きを口に放ってあげた。
『…んめぇ』
更にわらわらと人が集まって来てお弁当を覗かれる。流石に恥ずかしくなって来たところで出前が続々と到着したらしい。人手がいるようでみんなが出払い、ようやく静かにお弁当を突く。
これからも夕飯用にお弁当作ったりしないとなぁ。というか、バイト始めたって兄ちゃんたちに言わなきゃ。
それから俺は頑張ってビルの部屋を覚えたり、簡単な書類の記入や運搬などをした。何度か刃斬が様子を見に来たが他の兄貴たちにしっかりと着いていく姿に安心したようですぐに持ち場に戻ってしまった。
『宋平ー! お前もう帰って良いってよ! お疲れさん』
『はーい。本日はお世話になりました。お先に失礼します!』
お疲れー、お疲れ様ー。と各所から声が響く。エレベーターに乗り込もうとボタンを押すと、すぐに一番左のやつが来たのでそれに乗り込む。
ラッキー!
『…あ?
なぁ、もしかしてアイツ…ボスんとこの直行エレベーター乗ったか…?』
エレベーターに乗り込むとすぐに上へと上がって行ってしまう。誰かが上の階にいて先にボタン押してるんだなー、なんて暢気に考えていたらとある階にてエレベーターが完全に止まってしまう。
【QRコードを翳してください】
…ん?
機械から発せられる言葉に頭の中は疑問符でいっぱいだ。
QRコード? え。いや、知らないけど。
【QRコードを翳してください】
『…わ、わからん。取り敢えずもう一回ロビーのボタンを…』
【QRコードを翳してください】
受け付けてくれないんですけど!!
何度もロビーのボタンを押すが、ウンともスンとも言わない…というかQRコードしか言わない!
嘘だろ?! これって確実に閉じ込められてないか?!
『うわぁあああ!! やだーっ、出してくれー!』
エレベーター…密室、死…。
閉塞感と絶望感によって完全に泣き出した俺はバンバンと扉を叩く。このまま死ぬのでは、という恐怖が最高潮に達した瞬間…何故か赤い光が灯ってゆっくりと扉が開く。
『…何騒いでんだ』
『はっ。ぼ、ボスぅううー!!』
扉が開いた先には真っ黒な着流しに身を包んだボスが気怠げに立っていた。迷うことなくボスの身に突進した俺はえぐえぐと情けなく泣きながらエレベーターを指差す。
『もうエレベーターなんか乗んないですっ、ずっとQRとかわけわかんないこと言って…! 俺はロビーのボタン押したのにぃ~っ』
階段だ! これからは階段使うからな、このポンコツエレベーターが!
『うっ、うぅ…死ぬかと思った、腰抜けた』
『お前はビビリなのか度胸があんのか、わけわかんねェな。ったく…ウチのモンが、んなピーピー泣くんじゃねェよ。ほら、来い』
ボスに抱っこをされると、静かに閉まるエレベーターが目に入る。思わずベッ、と舌を出すとボスの肩に顔を突っ伏す。
はぁ…。おんなじ体温、マジ安心する…。
『良いか? 向かって一番左のはこの階に直行のエレベーターだ。三つエレベーターがあるフロアじゃ俺に用がない限りは左のには乗るな。この階には専用のQRコードがねェと入れねェんだよ』
ソファに下ろされると、ボスから直々にエレベーターの種明かしをされてほーん…と聞き入る。まさかそんな仕組みとは思わず驚いた。
だって完全にエレベーターぶっ壊れたと思ったし。
『俺の部屋にはあのエレベーターの内部が映された防犯カメラがある。偶々それを見てみりゃ…、泣き叫ぶガキがいるもんだから我が目を疑ったぜ』
はいごめんなさい、もうしません。
未だに笑みを浮かべるボスは俺の目尻から涙を拭ってくれた。すると机の上に置かれたスマホが振動し、ボスがそれを取る。
どうやら電話らしい。
『…なんだ。ああ、此処にいる。出られなくなってピーピー泣いてたから、今慰めてるとこだ』
大きな手が頭に乗せられ優しく撫でられる。明らかに俺のことを話しているとわかる会話だ。きっと瞬く間にこの醜態が広がるに違いない、泣きそう。
『いや、良い。俺が下まで送る。…良いってんだろ、黙れ』
ピッ。と通話を切ると社長椅子に掛けてあった上着を取り、ボスが下を指差す。
『おら迷子。この俺が直々に送ってやるから、行くぞ』
『えー…エレベーター乗るんですか…?』
階段なんかで行けるか、と笑うボスに促されてソファから立つと広い背中を追っていく。先にエレベーターに乗ったボスの前であからさまに嫌そうな顔をすると、そっと手を伸ばされる。
『なんだ。この俺が一緒にいて、怖いモンでもあるってえのか?』
『…うう。俺が良いって言うまで離れないで下さいよ、絶対約束ですからね!』
『喧しい新入りだな。俺は約束は破らねェよ』
エレベーターに乗り込むとボスの左腕にしっかりとしがみ付き、電子版の数字が少なくなっていく様子を齧り付くように見つめていた。
…確かにこのエレベーターは、兄貴たちと乗ったやつより早いし中も豪華な気がする。
『着いたぞ』
今度はしっかりとロビーに着いた。ボスが降りるから若干引き摺られるようにして一緒に出ると、エレベーターの前で頭を下げて待機していた人たちが俺を見てギョッとしている。
『で? 俺はいつまでお前から離れちゃならねェんだ?』
『うぐ。た、大変ありがとうございました…もう離れていただいて大丈夫デス』
そうかよ、と笑うボスからそっと離れる。
『宋平』
自動ドアまで歩いているとボスに呼ばれて小走りで近くまで戻る。袖から何かを取り出したボスがそれを渡してきたので受け取れば、真っ黒な最新式のスマホだった。
『仕事用だ。必要な連絡先やらは全て入ってる。しっかり充電して肌身離さず持ってな』
『貰って良いんですか?! やったー!』
最新式だ、ワーイ!!
『なんかあったらそれ、絶対ェ壊せよ』
『あ。はい』
まぁ、重要機密ですもんね…御意。
『ま。それを壊す機会がないよう、精々お祈りしておくんだな』
『…ボスぅ。それフラグです…』
再びお礼を言ってからアジトを出る。自動ドアを出る間際、チラッと後ろを振り返ったけどそこにはもう誰もいなかった。暗くなり始めた街を駆け、駅まで走る。
『早くしねーとっ、これ逃したら暫くない…!』
急げー、と走る俺のとんでもないバイトが始まった。
.
『ずみまぜんんっ!!』
わーん、と涙ぐみながら迎えに来てくれた兄貴たちに駆け寄ると仕方ないとばかりに頭を軽く叩かれる。
昨日から晴れてヤクザの仲間入りをしてしまった俺は次の日もアジトに来ていた。連休だし予定もないと言ったら多少は馴染んでおけと下っ端の兄貴たちの部屋に放り込まれ、雑用をしていたのだが。
『だって…、ビル広いし全部黒いしっ何階とかも書いてないし地図もなくて…』
『敵勢力が突っ込んでくるかもしんねーのに親切に地図なんか書いとくバカいるわけねーだろ』
ショッピングモールじゃねーんだぞ、とペチペチと頬を叩かれると再び嘘泣き開始。
覚えられるかチクショウ!!
『流石におつかいはまだ早ぇって』
『したら何さすんだよ。ずっと溜まり部屋にいても同じ奴しかいねーじゃん』
『急いても仕方ねぇって。十五の舎弟が出来たなんてあっという間に広まるだろうし、その内周知されんだろーよ』
お兄様方は意外と面倒見が良い。顔面凶器だし、口を開けば大変教育に宜しくない言語を操るが腕っぷしは間違いないんだろう。大半のメンバーは筋骨隆々な上にアルファが多い。体格に恵まれるのはアルファの特徴の一つだ。
『…兄貴たちは普段は何をするんですか?』
『そうだな…。基本的には金の回収にシマの見回り。取引の現場で護衛、…後は…色々だ』
へー…結構色々あるんだなぁ。
ぞろぞろとみんなで部屋に戻る。そこは基本、溜まり部屋と呼ばれる部屋で自由に使って良い憩いの場だ。他の部屋より圧倒的に広々としていて畳のスペースなんかもあり快適で寝ている人やスマホを弄る人、テレビを見ている人など様々。
『戻ったは良いが、そろそろ昼だな』
『腹減ったなー。なんか頼むか』
そんな言葉を皮切りに次々とみんなが壁にぶら下がっていた出前用のメニューを取る。
ほう。出前が一般的なのか。
『宋平! お前なんにする?』
『俺、お弁当持って来たから大丈夫です』
生憎と出前を取れるほどの金銭的な余裕はないんだよなぁ、借金うん千万の世界だし。
畳の隅に置いてあった鞄からお弁当箱を取り出すとみんなが興味津々、とばかりに寄って来た。弁当だ、弁当? みたいな言葉が飛び交うからちょっと面白い。
『…それ、まさかお前自分でか?』
『はい。いつもは兄たちが作ってくれるんですけどお休みの日だから…パパッと作って持って来ました』
兄貴だけは未だ部屋で寝ていたみたいだから、料理の痕跡を残さないよう静かに作って最速で仕上げた。おにぎりを頬張り、水筒のお茶をグビグビ飲んでいると物珍しそうにしていた一人が話し掛けてきた。
『宋平。茶は給湯室で好きに淹れて良いから、水筒は持って来なくて良いぜ? それ重いだろ』
『…良いんですか?』
『おう! 弁当も冷蔵庫あるから、好きに入れろよ』
『宋平! レンジも使って良いんだからな!』
次々に声を掛けられ、嬉しくて何度も頷く。畳で寝転がっていた人がズイ、とお弁当を覗き込むと無言で卵焼きを指差す。他の人がボカボカとその人の頭を殴るが構わず卵焼きを口に放ってあげた。
『…んめぇ』
更にわらわらと人が集まって来てお弁当を覗かれる。流石に恥ずかしくなって来たところで出前が続々と到着したらしい。人手がいるようでみんなが出払い、ようやく静かにお弁当を突く。
これからも夕飯用にお弁当作ったりしないとなぁ。というか、バイト始めたって兄ちゃんたちに言わなきゃ。
それから俺は頑張ってビルの部屋を覚えたり、簡単な書類の記入や運搬などをした。何度か刃斬が様子を見に来たが他の兄貴たちにしっかりと着いていく姿に安心したようですぐに持ち場に戻ってしまった。
『宋平ー! お前もう帰って良いってよ! お疲れさん』
『はーい。本日はお世話になりました。お先に失礼します!』
お疲れー、お疲れ様ー。と各所から声が響く。エレベーターに乗り込もうとボタンを押すと、すぐに一番左のやつが来たのでそれに乗り込む。
ラッキー!
『…あ?
なぁ、もしかしてアイツ…ボスんとこの直行エレベーター乗ったか…?』
エレベーターに乗り込むとすぐに上へと上がって行ってしまう。誰かが上の階にいて先にボタン押してるんだなー、なんて暢気に考えていたらとある階にてエレベーターが完全に止まってしまう。
【QRコードを翳してください】
…ん?
機械から発せられる言葉に頭の中は疑問符でいっぱいだ。
QRコード? え。いや、知らないけど。
【QRコードを翳してください】
『…わ、わからん。取り敢えずもう一回ロビーのボタンを…』
【QRコードを翳してください】
受け付けてくれないんですけど!!
何度もロビーのボタンを押すが、ウンともスンとも言わない…というかQRコードしか言わない!
嘘だろ?! これって確実に閉じ込められてないか?!
『うわぁあああ!! やだーっ、出してくれー!』
エレベーター…密室、死…。
閉塞感と絶望感によって完全に泣き出した俺はバンバンと扉を叩く。このまま死ぬのでは、という恐怖が最高潮に達した瞬間…何故か赤い光が灯ってゆっくりと扉が開く。
『…何騒いでんだ』
『はっ。ぼ、ボスぅううー!!』
扉が開いた先には真っ黒な着流しに身を包んだボスが気怠げに立っていた。迷うことなくボスの身に突進した俺はえぐえぐと情けなく泣きながらエレベーターを指差す。
『もうエレベーターなんか乗んないですっ、ずっとQRとかわけわかんないこと言って…! 俺はロビーのボタン押したのにぃ~っ』
階段だ! これからは階段使うからな、このポンコツエレベーターが!
『うっ、うぅ…死ぬかと思った、腰抜けた』
『お前はビビリなのか度胸があんのか、わけわかんねェな。ったく…ウチのモンが、んなピーピー泣くんじゃねェよ。ほら、来い』
ボスに抱っこをされると、静かに閉まるエレベーターが目に入る。思わずベッ、と舌を出すとボスの肩に顔を突っ伏す。
はぁ…。おんなじ体温、マジ安心する…。
『良いか? 向かって一番左のはこの階に直行のエレベーターだ。三つエレベーターがあるフロアじゃ俺に用がない限りは左のには乗るな。この階には専用のQRコードがねェと入れねェんだよ』
ソファに下ろされると、ボスから直々にエレベーターの種明かしをされてほーん…と聞き入る。まさかそんな仕組みとは思わず驚いた。
だって完全にエレベーターぶっ壊れたと思ったし。
『俺の部屋にはあのエレベーターの内部が映された防犯カメラがある。偶々それを見てみりゃ…、泣き叫ぶガキがいるもんだから我が目を疑ったぜ』
はいごめんなさい、もうしません。
未だに笑みを浮かべるボスは俺の目尻から涙を拭ってくれた。すると机の上に置かれたスマホが振動し、ボスがそれを取る。
どうやら電話らしい。
『…なんだ。ああ、此処にいる。出られなくなってピーピー泣いてたから、今慰めてるとこだ』
大きな手が頭に乗せられ優しく撫でられる。明らかに俺のことを話しているとわかる会話だ。きっと瞬く間にこの醜態が広がるに違いない、泣きそう。
『いや、良い。俺が下まで送る。…良いってんだろ、黙れ』
ピッ。と通話を切ると社長椅子に掛けてあった上着を取り、ボスが下を指差す。
『おら迷子。この俺が直々に送ってやるから、行くぞ』
『えー…エレベーター乗るんですか…?』
階段なんかで行けるか、と笑うボスに促されてソファから立つと広い背中を追っていく。先にエレベーターに乗ったボスの前であからさまに嫌そうな顔をすると、そっと手を伸ばされる。
『なんだ。この俺が一緒にいて、怖いモンでもあるってえのか?』
『…うう。俺が良いって言うまで離れないで下さいよ、絶対約束ですからね!』
『喧しい新入りだな。俺は約束は破らねェよ』
エレベーターに乗り込むとボスの左腕にしっかりとしがみ付き、電子版の数字が少なくなっていく様子を齧り付くように見つめていた。
…確かにこのエレベーターは、兄貴たちと乗ったやつより早いし中も豪華な気がする。
『着いたぞ』
今度はしっかりとロビーに着いた。ボスが降りるから若干引き摺られるようにして一緒に出ると、エレベーターの前で頭を下げて待機していた人たちが俺を見てギョッとしている。
『で? 俺はいつまでお前から離れちゃならねェんだ?』
『うぐ。た、大変ありがとうございました…もう離れていただいて大丈夫デス』
そうかよ、と笑うボスからそっと離れる。
『宋平』
自動ドアまで歩いているとボスに呼ばれて小走りで近くまで戻る。袖から何かを取り出したボスがそれを渡してきたので受け取れば、真っ黒な最新式のスマホだった。
『仕事用だ。必要な連絡先やらは全て入ってる。しっかり充電して肌身離さず持ってな』
『貰って良いんですか?! やったー!』
最新式だ、ワーイ!!
『なんかあったらそれ、絶対ェ壊せよ』
『あ。はい』
まぁ、重要機密ですもんね…御意。
『ま。それを壊す機会がないよう、精々お祈りしておくんだな』
『…ボスぅ。それフラグです…』
再びお礼を言ってからアジトを出る。自動ドアを出る間際、チラッと後ろを振り返ったけどそこにはもう誰もいなかった。暗くなり始めた街を駆け、駅まで走る。
『早くしねーとっ、これ逃したら暫くない…!』
急げー、と走る俺のとんでもないバイトが始まった。
.
64
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

ウンメイのツガイ探し 〜相性100%なのに第一印象が最悪でした〜
陽凪 優子
BL
五十嵐新は、幼い頃にある一人のアルファが一人のオメガを探して旅に出る小説を読んだ。
この世にはアルファと運命で繋がっているオメガが必ず存在するらしい。日本にいるかもしれないし、地球の裏側にいるかもしれない。世界のどこかに存在している運命のオメガと生きている間に出会えることは奇跡らしく、ほとんどが運命の番と巡り合うことなく生涯を終える。
小説の主人公であるアルファは何年も世界中を探し回った。雨の日も雪の日も日光が照りつける暑い日も1日も休まず探し続けた。世界各地に散らばるヒントを手がかりに運命のオメガと巡り会えたという物語である。
新は幼いながらこの物語を読み思った。
運命のオメガと巡り合いたい、と。
数年の月日をかけて探し、やっと巡り会えた運命のオメガの第一印象は最悪だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる