謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん

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石の壁の章

悲しい休日

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「んん……。ライトさん……」
「ライトさまぁ……」

 俺の両隣で裸の美女が眠っている。
 昨日はシャニがイチャイチャしているところに侵入してくるというトラブルはあったが、貴重な休日前ということで、夜更けまで三人で盛り上がってしまった。
 ふぅー、寝不足なので本当は俺ももう少し眠っていたいところだ。
 
 しかし今日は村で初めての何もしない休日、安息日だ。
 せっかくの休みなのにいつまでも寝ていてはもったいない。
 それに俺は可愛い恋人のために時間を使うって約束したからな。
 
 アーニャのおでこにキスをする。
 起こさないとベッドから出られないからな。
 基本的にアーニャは寝る時に蛇の下半身を俺に巻き付けて眠る。
 蛇に飲まれる前のネズミみたいな状態になっているのだ。

「ん……。ふふ、もっとしてください」
「おはよ。そろそろ離してくれるかな?」

 仕方ないので彼女が満足するまで顔中にキスをしておいた。
 甘えん坊だなぁ。

「ずるーい。私もー」
「リディア? 起きたんだね。いいよ」

 ついでにリディアにも同じことをして、さらに長い耳を優しく噛み噛みしておいた。
 
 少し盛り上がってしまったが……。
 気持ちを静めてからベッドを出ることにした。

「もう少しグータラしてていいぞ。俺はこれから食材をもらってくるから」
「うふふ、お言葉に甘えてしまいます」
「ふふ、ライトさんの手料理かー。久しぶりですね。アーニャ、楽しみだねー」

 リディアとアーニャは裸でベッドにうつ伏せになったまま今日のことを楽しそうに話し始めた。
 絵になるなぁ。いつまでも二人を見ていたいが貴重な休みなんだしな。
 少しでも楽しめるよう動くとするか。

 まずは家を出て倉庫に向かう。
 倉庫は二つあり、一つは食材を入れてある倉庫、そして毛皮や生活用品、もう一つは武器庫として使っている。
 村民達には常識の範囲内でなら自由に持っていっていいと伝えてあるが、最近は畑を広くしたことで採れる作物はかなり増えた。
 むしろ倉庫がいっぱいになりそうなので、たまに生産を止めることすらある。

 さと、今日必要なのはっと。
 俺は倉庫の中を漁る。

・ナババの粉:パンの原料。
・岩塩:少々
・魚醤:少々
・ミルク:適量
 
 他にも様々な食材を取り出した。
 特に冷蔵庫などはないが、リディアや精霊魔法が使える者が倉庫全体に魔法をかけてくれているので、食材の腐敗をかなり遅らせることが出来るのだ。
 敷地内限定ではあるが魔法を使える者は多い。
 おかげで俺達は新鮮な食材を味わうことが出来るってわけだ。

 食材を持って家に戻る道中。

「Arraщy」
「あぁ、おはよう」

 とおばちゃんラミアが笑顔で手を振っていた。
 言葉は通じないが安息日を楽しむよう笑顔を返しておく。
 他にもすれ違う村民全員から声をかけられた。

「慕われていますね」

 ん!? この声はシャニか?
 後ろを振り向くとシャニが相変わらずのポーカーフェイスで立っていた。
 昨日はリディア達とイチャイチャしてるところを見られたからな。
 ちょっと気まずいぞ。

「そ、そうか?」
「はい。ライト殿は村民の言葉が理解出来ないのですよね。皆、ライト殿に感謝の言葉を伝えていました。聞きますか?」

「いやいいよ。照れくさいし」
「そうですか。ライト殿、少し持ちましょう。手伝います」

 シャニは荷物を半分奪うように持ってくれた。
 せっかくなので話しながら戻ることに。

「あのさ、これからラーメンでも作ろうと思うんだが。この世界って麺料理ってあるのか?」
「パスタはあります。王都ではよく食べられていました。しかしラーメンというのは初めて聞きます。どのような料理なのですか?」

「ははは、そうか。ラーメンは知られてなかったか。まぁシャニにも食べてもらうからさ。楽しみにしててくれ」
「はい」 

 シャニは抑揚もなく答えるのだが。

 ――ブンブンブンブンブンブンブンブンッ!

 うわ、いつもより喜んでるな。
 尻尾が千切れそうだよ。
 こんなに楽しみにしてるんだ。
 料理は好きだが所詮素人。
 どこまで作れるか分からんが、頑張ってみるか。

 家に戻り、調理開始だ。
 一階には小さいがキッチンスペースがある。
 鍋に水を入れ、獣の骨からとったスープに塩と魚醤で味をつける。
 ちなみにこの魚醤はデュパが作ったものだ。
 湖で獲れた魚を塩に漬け込むことで作る調味料だな。
 臭みがほとんど無く、かなり醤油に近い。
 デュパに魚の代わりに豆を使ったらどうかと提案したら試してみると言ってくれた。
 この村で醤油が生産出来る日も近いのかもしれないな。

 スープを作っている間に麺を打つことに。
 水加減とかは良く分からんが、リディア達と一緒にパンを作ることもある。
 生地の作り方くらいならお手のものだ。

「ちょっと水が少ないんじゃないですか?」

 とリディアが寄ってくる。
 続いてアーニャ、シャニも俺の横で調理している様を見ているんだけど。

「こら、近いって。水はこれくらいでいいと思うぞ。生地を切ってから茹でるんだからさ」
「へー、パン生地とは違うんですね」
「ねぇライトさん。スープからすごくいい匂いがしますね。味見してもいいですか?」
「麺の太さがバラバラです。それでは火の入り方にムラができます」

 もうみんな好き勝手なことを言い始めた。 
 うるさいって。大人しく座ってろよ……なんてことは言えんしなぁ。
 仕方ないので手伝わせることにした。

「リディアさん、お肉はもっと細かく切らないと」
「いいの! これくらいじゃないと食べた気がしないでしょ!」
「二人とも刃物の扱いが上手くありません。貸してください」

 うーん、女三人集まればってか。
 姦しいなあ。
 でもみんな楽しそうに料理してる。
 ふふ、なんか家族みたいだな。

「あれ? ライトさん、なんでそんな可愛い顔してるんですか?」
「ん? いやね、みんな仲がいいなって思ってさ。まるで家族みたいだ」

 ――ピタッ

 俺の言葉を聞いたシャニが突然動きを止めた。
 先ほどまで忙しなく振られていた尻尾も力無く垂れ下がる。
 耳も伏せてあった。
 いきなり落ち込んだみたいだな。俺何か変なこと言ったかな?

「ど、どうした? 元気無いみたいだけど」
「いえ、特には」

 とシャニは言う。いつも無表情ではあるが、それなりに彼女とは同じ空間で生活してきた。
 空気が変わったことくらい分かるぞ。
 それはリディア達も同じようで、こっそり俺に理由を話してくれた。

「ライトさん……。シャニは気にしてるんです」
「気にしてるって……。何を?」

 リディアは耳元で話し続ける。
 シャニに聞こえないように小さな声で。

「私達は仲良くなりました。でも私達とシャニでは関係が違うでしょ?」

 なるほどね。確かにそうだ。
 俺達はかなり打ち解けたとは思う。
 しかしリディア、アーニャとは恋人関係にあるが、シャニはただの同居人だ。
 
 今度はアーニャが耳元でささやく。
 
「ライト様はシャニのことをどう思いますか?」

 アーニャは敢えてシャニに聞こえるように尋ねてくる。
 なるほどね。こういうことだったか。
 理解した。だからこそ今は言えない。

「どうって……。すまんが答えられない。少し時間をくれないか」

 今度は俺がシャニに向かって伝える。
 二人の話で理解した。だってアーニャを恋人にした時と同じ流れだもん。
 アーニャの時はすぐに答えが出せた。
 俺自身アーニャに魅かれていたからな。
 シャニも態度から察するに俺を嫌いではない……っていうか好意を持ってくれているのは分かる。
 だがリディア達のようにすぐには答えは出せない。

 もしシャニを受け入れたとしよう。
 恋人になるということはもちろんエッチなこともするわけだ。
 そうなればシャニの体の秘密がリディア達に漏れる可能性がある。
 
 二人は彼女の体の秘密を知って、今まで通り接することが出来るか心配だった。
 だから俺は今すぐに答えを出せないでいた。

 シャニは黙ってまま俺達を見つめる。
 そして背を向けて小屋を出ようとした。

「お、おい、どこに行くんだ?」
「ライト殿、リディア姉、アーニャ姉。ごめんなさい。雰囲気を壊してしまいました。少し外の空気を吸ってきます」

 そう言ってシャニは出ていった。

「シャニを追ってあげてください」
「お願いします……」

 と二人は涙目でお願いしてくる。
 彼女達もシャニが好きなんだな。
 だが俺達がシャニを受け入れるには知っておかなければならないことがある。
 そしてそれを受け入れる覚悟もだ。
 
「分かった。二人が考えてることもな。だがその前に聞いておく。シャニには秘密がある。それは俺の口からは言えないことだ。だがシャニの秘密を知ってもなお二人はシャニと友人でいられるか? それが出来ないのであれば俺はシャニを追わない。そのまま離れて暮らすことがお互いにとって最善なんだろう」

 ちょっと厳しいことを言ってみた。
 だが二人はにっこりと笑うだけだ。
 聞く必要はないってか?

 ははは、本当に出来た女だよ。
 俺にはもったいないな。

「行ってくる」

 俺は一言だけ言ってシャニを探しに向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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