謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん

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竹の壁の章

引っ越し 其の二 アーニャの気持ち

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「ここが候補地か」
「はぁはぁ……。はい。あ、あの、先程は醜態をお見せしてしまい申し訳ございませんでした」

 降りしきる雨の中、アーニャは主人である来人に頭を下げた。
 主人である来人に痴態を晒してしまい、彼女は彼を背に乗せたことを後悔していた。

 ラミアの女性の生殖器は背中の下にある。
 来人を乗せた際に自身の生殖器に来人のアレが当たってしまい、アーニャは人生初のオルガズムを感じてしまったのだ。
 
「仕方ないよ。むしろここまで乗せてくれてありがとな。帰りは歩くよ」
「え? は、はい……」

 アーニャはがっかりした。
 実はまた来人を背に乗せようと思っていたからだ。
 またあの感覚を味わいたいと心から思ってしまった。
 しかし主人である来人の提案を断るのは良くないだろう。
 一旦諦めることにした。
 
「へー。アーニャの言う通り岩が多いな。傾斜もあって水が流れてる。ここなら確かに良さそうだな」
「は、はい。お気に召して頂いて嬉しいです」

「よくこんな場所を知ってたね。遊びに来てたのか?」
「それは……」

 この質問には答えられなかった。
 アーニャはこの場所を遊びにではなく、泣きに来ていたのだ。
 辛いことがあったら、誰も来ないであろうこの小高い丘で一人涙を流していた。
 
 彼女はメイドではあるが、一人の女でもある。
 もちろん恋だってする。
 しかし彼女はラミアの男性からは全く相手にされなかった。
 背中の痣のせいである。
 
 それはラミアの生態に起因する。
 ラミアの男性器は前面についているが、女性器は背中の下にある。
 つまり生殖行動を取る際は必ず後背位……つまりバックの形を取らねばならない。
 つまりラミアの男性は生殖行動を取る際、必ず女性の背中を見ることになる。
 そしていつしかラミアの男性の中では背の美しさが女性の象徴として広まっていったのだ。

 アーニャの容姿は美しい。 
 紫がかった艶やかな黒髪。均整の取れた顔立ち。引き締まった体。 
 どれを取っても一級品であった。
 異種族結婚、異種族恋愛はそれなりにある世界ではあるが、ラミアはその独特な生態故に同種族で番を作ることがほとんどだ。
 異種族でラミアと関係を持つのは変わり者とされていた。
 
 なのでアーニャは年頃になり、同種族の恋人を見つけようとしたのだが……。
 悲しいことに背中の痣が原因でラミアの男性から見向きもされなかったのだ。
 アーニャはいたたまれなくなり、一人この丘で隠れるように泣いていたのだ。

(さすがにライト様には言えませんね。で、でももしかしたら……)

 アーニャは期待した。
 王都でベストセラーになった恋愛小説がある。
 それはリディアが愛読していたものと同じだった。
 異邦人……つまり転移者が主人公であり、現地の女性とロマンスを繰り広げるというものだ。
 
 来人を起こしにいった時にアーニャは見てしまった。
 彼は裸で抱き合うようにリディアと眠っていた。
 二人は小説の登場人物と同様に恋愛関係なのだろう。

(ライト様は私を美しいと言ってくれました……)

 アーニャは期待してしまった。
 もしかしたら醜女として男性から見向きもされなかった自分を愛してくれる存在なのかもしれないと。
 この世界の結婚制度は割りと自由である。
 一夫多妻や多夫一妻もある。
 現に以前仕えていた魔貴族アスモデウスは10人の妻がいたが、特に妻達の間で嫉妬などはなく、それぞれ仲良く暮らしていた。
 
(リディアさんが許してくれるなら、もしかしたら私も……)

 と想像をするだけで、アーニャは下腹部に甘い熱がたまるのを感じていた。

「アーニャ? 何か面白いことでもあった?」
「へ? ななな、何でもありません!」

 どうやら知らぬ間ににやけていたようだ。
 
「そうか? それじゃここを第二の拠点にしよう。先に壁と小屋を建てておく。危ないからちょっと離れててね」
「壁? は、はい!」

 来人の力のことはリディアから聞いた。
 小説の中での異邦人と同様に来人も不思議な力を持っていると。
 だがその力を目の当たりにするのは初めてだ。

【壁っ!】

 ――ズズズッ

 来人が一言発するだけで、まるで地面から壁が生えるように出現する。
 
(す、すごい力……。これが異邦人の力なのですね)

 アーニャは魔法こそ使えないが、かつての主人は使っていた。
 だが彼女が知っているどの系統の魔法とも違う。
 魔力と魔法の等価交換の法則が当てはまらない。
 自由に無から有を生み出す。まるで神のような力だ。
 
「んー。人も増えたし、少し広めにするか」

 それだけではなく来人は壁で囲まれた敷地の中に、壁を加工した小屋を次々に建てていく。

「す、すごい……」
「ははは、そんなことないって。俺の力は壁を作ることだけだからさ。アーニャの家も建てておいた。家って言っても家具も何もないから不便かもしれない。少し我慢しててくれ」

 と来人は申し訳なさそうな顔をした。
 その姿にアーニャは胸がときめくような気持ちを感じる。

(素敵な人……。力があるだけじゃなくて、他者を思いやれるのですね。そ、それに良く見れば可愛い顔をしています)

 恋は盲目とはよく言ったものだ。
 アーニャは来人の容姿を初めは十人並みだと思っていた。 
 だが今は彼に好意を抱いている。来人が男前に見えているのだ。

「ふー。取り敢えずこんなもんか。アーニャ、一度戻ろう。荷物をここに運ばないと」
「は、はい! ライト様、やはりここは急ぐべきです。是非背に乗ってください」

「え? で、でもさ。また変な気持ちになっちゃうんじゃ……」
「が、我慢しますから!」

「お、おう……」

 多少強引に来人を背に乗せる。
 やはり来人のアレがアーニャのアレに当たってしまい、彼女は何度も絶頂を向かえてしまう。
 だが今回は気力を振り絞って意識を保ち続けた。

(あん……。もう駄目ぇ……。でもこれだけは聞いておきたい……)

 アーニャは朦朧とする意識の中で気になったいたことを聞いてみる。
 臆病なアーニャだが、持てる勇気を振り絞って口に出す。
 
「あ、あの。ライト様はラミアの女性を見てどう思いますか?」
「ラミア? んー、どう思うって言われても。まぁ、綺麗な種族だなって思うよ」

 アーニャはその言葉を聞いて更なる絶頂に達してしまう。
 倒れる寸前だ。だがまだだ。
 まだ倒れるわけにはいかない。

「で、ではもしラミアがライト様を慕っていたとしたら……」
「そうだな。もしリディアと付き合ってなかったら恋人にしたいかな。アーニャみたいな美人だったら大歓迎だよ」

 ――バタッ

 アーニャは倒れてしまった。
 自分にも可能性があることを知って人生で最大の快感と多幸感に包まれてしまったからだ。

「ア、アーニャ!? しっかりしろって! アーニャー!」
「きゅう……」

 気を失ったアーニャは来人に背負われてエルフ達が待つ拠点に帰っていくのだった。
 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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